退職金をもらった翌年の税金はどうなりますか?
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2025/07/18 08:19
男性
60代
最近定年退職して退職金をもらいましたが、「翌年の税金が高くなる」という話を聞いて不安になりました。翌年に所得税や住民税が増えるのか、増えるとしたらどの程度なのか、何か対策できることがあるのか教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
退職金を受け取った翌年に税負担が大きくなるのではと心配される方もいますが、基本的にはその心配は不要です。退職金は「退職所得」という特別な区分で扱われ、給与や年金など他の所得とは分離して税額が計算されます。
具体的には、退職金から「退職所得控除」を差し引き、その残額の1/2に相当する金額を課税所得とする仕組みです。退職所得控除は勤続年数に応じて計算され、例えば勤続20年以下であれば40万円×年数、20年を超える部分については70万円×年数という計算方法になります(最低でも80万円は控除されます)。
通常、退職金は支給時に会社が所得税と住民税を源泉徴収し、その時点で納税が完了するため、翌年に追加で税金が発生することはありません。ただし、退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していない場合、退職金の全額に対して20.42%の税率で源泉徴収されます。この場合は確定申告を行うことで、退職所得控除や1/2課税が適用され、納めすぎた税金が還付されます。
なお、すべての退職金が1/2課税となるわけではありません。役員や短期勤続(5年以下)の従業員が受け取る退職金には「特定役員退職手当等」として1/2課税が適用されず、全額が課税対象となるため注意が必要です。
さらに、退職金を一時金ではなく企業年金などで年金形式で受け取る場合は、所得区分が「雑所得」となり、公的年金等控除の対象外となります。これにより、所得税や住民税だけでなく、健康保険料・介護保険料にも影響する可能性があります。高所得とみなされることで、翌年度以降の保険料が上昇することもあるため、受け取り方には慎重な検討が必要です。
また、同一年内に複数の会社から退職金を受け取った場合は、原則として合算して退職所得として課税されるため、所得の合計額や控除適用状況によっては税負担が増えるケースもあります。
このように、退職金は原則として税務上優遇されていますが、申告書の提出有無や受け取り方法、勤続年数や役職によって扱いが変わることがあります。事前に制度の仕組みを理解し、必要に応じて税理士など専門家に相談することをおすすめします。
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退職所得控除
退職所得控除とは、退職金を受け取る際に税金を軽くしてくれる制度です。長く働いた人ほど、退職金のうち税金がかからない金額が大きくなり、結果として納める税金が少なくなります。この制度は、長年の勤続に対する国からの優遇措置として設けられています。 控除額は勤続年数によって決まり、たとえば勤続年数が20年以下の場合は1年あたり40万円、20年を超える部分については1年あたり70万円が控除されます。最低でも80万円は控除される仕組みです。たとえば、30年間勤めた場合、最初の20年で800万円(20年×40万円)、残りの10年で700万円(10年×70万円)、合計で1,500万円が控除されます。この金額以下の退職金であれば、原則として税金がかかりません。 さらに、退職所得控除を差し引いた後の金額についても、全額が課税対象になるわけではありません。実際には、その半分の金額が所得とみなされて、そこに所得税や住民税がかかるため、税負担がさらに抑えられる仕組みになっています。 ただし、この退職所得控除の制度は、将来的に変更される可能性もあります。税制は社会情勢や政策の方向性に応じて見直されることがあるため、現在の内容が今後も続くとは限りません。退職金の受け取り方や老後の資産設計を考える際には、最新の制度を確認することが大切です。
源泉徴収
源泉徴収とは、給与や報酬、利子、配当などの支払いを受ける人に代わって、支払者があらかじめ所得税を差し引き、税務署に納付する制度です。特に給与所得者の場合、会社が毎月の給与から所得税を控除し、年末調整で過不足を精算します。 この制度の目的は、税金の徴収を確実に行い、納税者の負担を軽減することです。例えば、会社員は確定申告を行わずに納税が完了するケースが多くなります。ただし、個人事業主や一定の副収入がある人は、源泉徴収された金額を基に確定申告が必要になることがあります。 また、配当金や利子の源泉徴収税率は原則20.315%(所得税15.315%+住民税5%)ですが、金融商品によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
分離課税
分離課税(ぶんりかぜい)とは、特定の所得について他の所得と合算せず、その所得単独で税額を計算し、課税する方式です。分離課税には「源泉分離課税」と「申告分離課税」の2種類があります。
確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算して翌年の2月16日から3月15日に申告し、納税する手続き。多くの会社では年末調整を経理部がしてくれるが、確定申告をすると年末調整では受けられない控除を受けることができる場合もある。確定申告をする必要がある人が確定申告をしないと加算税や延滞税が発生する。
雑所得
雑所得(ざつしょとく)とは、所得税法において定められた10種類の所得のうち、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得を指します。具体的には、公的年金や副業による収入、仮想通貨の売却益、FXの利益、非営業用貸金の利子などが該当します。 経費を差し引いた金額が課税対象となり、総合課税の対象となります。また、雑所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になります。