投資の損失を使って税金を減らす制度と手続きを詳しく教えて下さい。
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2025/07/15 08:39
男性
40代
株式や投資信託などで損失が出た場合に、他の利益と相殺して税金を減らせる「損益通算」や、損失を翌年以降に持ち越せる「損失繰越控除」という制度があると聞きました。これらは具体的にどのような仕組みで、どのような条件や手続きが必要になるのでしょうか?特定口座を使っている場合や、複数年にまたがる場合など、実務上の注意点も含めて詳しく知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
投資で損失が出たときに税金を軽減できる仕組みとして、「損益通算」と「損失繰越控除」があります。
損益通算とは、ある年に株式や投資信託などで損失が出た場合に、同じ年の他の投資の利益と相殺することで、税金の対象となる利益を減らせる制度です。たとえば、ある証券口座で50万円の利益があり、別の証券口座で30万円の損失が出た場合、実際の課税対象は差し引き20万円となります。ただし、証券会社をまたいで損益通算するには、確定申告が必要です。源泉徴収ありの特定口座を使っていても、自動的には通算されないため注意が必要です。
一方、損失繰越控除とは、その年に損失が出て、同じ年に相殺できる利益がなかった場合、その損失を翌年以降に持ち越して、将来の利益と相殺できる制度です。この繰越は最長で3年間認められており、毎年確定申告を続けることで有効になります。たとえば、1年目に100万円の損失があり、2年目に80万円の利益が出た場合、その利益を繰越損失で相殺すれば、税金はかかりません。残りの20万円はさらに翌年に繰り越せます。
これらの制度を活用するためには、損失が出た年から毎年必ず確定申告を行う必要があります。1年でも申告を忘れると、繰越の権利がなくなってしまいます。また、損益通算や繰越控除ができるのは、基本的に上場株式やETF、特定公社債など申告分離課税の対象となる商品に限られます。仮想通貨やFXなどは別の区分とされており、通算できないため注意が必要です。
このように、損失が出ても適切な手続きを行えば、翌年以降の税負担を軽減できる場合があります。確定申告や取引履歴の管理をしっかり行い、制度を上手に活用することが大切です。
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損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。
損失繰越控除
損失繰越控除とは、ある年度に発生した損失を翌年以降の所得から差し引くことで、税負担を軽減する制度のことを指します。法人税や所得税の計算に適用され、例えば事業年度内に赤字となった企業は、翌年度以降の黒字所得と相殺することで税負担を抑えることができます。特にスタートアップや新規事業においては、初期投資がかさみ赤字となることが多いため、この制度を活用することで資金繰りを安定させることが可能です。適用には一定の要件があるため、事前に確認しておくことが重要です。
特定口座
特定口座とは、投資家の税金計算を簡便にするための口座形式です。証券会社が運用益や損益を自動計算し、年間取引報告書を発行します。特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があり、「源泉徴収あり」を選択すれば、税金が取引時点で自動的に納付されます。これにより、確定申告が不要になるため、多くの投資家に利用されています。ただし、損益通算や損失の繰越控除を行う場合は確定申告が必要です。
申告分離課税
申告分離課税とは、特定の所得について他の所得と分離して税額を計算し、確定申告を通じて納税する方式です。 主な対象となる所得は以下の通りです: - 譲渡所得: 土地や建物、株式などの譲渡による所得。 - 山林所得: 山林の伐採や譲渡による所得。 - 先物取引による所得: FXや商品先物取引による所得。 例えば、株式の譲渡所得については、他の所得と合算せずに分離して課税されます。また、上場株式等の配当所得についても、申告分離課税を選択することができます。
確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算して翌年の2月16日から3月15日に申告し、納税する手続き。多くの会社では年末調整を経理部がしてくれるが、確定申告をすると年末調整では受けられない控除を受けることができる場合もある。確定申告をする必要がある人が確定申告をしないと加算税や延滞税が発生する。
特定公社債
特定公社債とは、国債や地方債、政府保証債、公募または上場された社債など、一定の条件を満たす債券を指します。2016年から導入された「上場株式等の課税制度」において、特定公社債は上場株式やETF、投資信託と同じ「上場株式等」の区分に含まれ、税制上の優遇が適用されるようになりました。これにより、利子や売却益に対しては申告分離課税(税率20.315%)が適用され、損益通算や3年間の繰越控除も可能となります。 特定公社債の最大の特徴は、株式や投資信託と同じ特定口座で一元管理できる点です。特定口座(源泉徴収あり)を選択すれば、税金の精算が自動で行われ、確定申告が不要となります。源泉徴収なしを選べば、他の上場株式等と通算して税額を最適化することも可能です。このような税制の整備により、初心者でも扱いやすく、安定した収益を狙える債券として注目されています。 一方で、これらに該当しない債券は「一般公社債」と呼ばれ、税制上の取り扱いが大きく異なります。一般公社債には、私募社債や非上場社債、一定の転換社債などが含まれます。利子については源泉分離課税のみが適用され、株式や投資信託との損益通算はできません。また、特定口座での管理が認められず、損益や取得価額、為替差損益を自己計算し、一般口座で確定申告する必要があります。 たとえば、特定公社債で発生した5万円の利益と、同年に発生したETFの4万円の損失を通算した場合、実質1万円分のみが課税対象となり、節税が可能になります。これに対し、一般公社債の利益とETFの損失は通算できず、5万円全額に対して課税されるため、税負担が大きくなります。 このように、特定公社債と一般公社債では、税制上の扱い、損益通算の可否、口座管理のしやすさにおいて明確な差があります。債券投資を行う際は、その債券が特定公社債に該当するかどうかを事前に確認し、税務上のメリットを活かせるように設計することが重要です。特に、株式や投資信託と組み合わせて運用する場合、特定公社債を選ぶことで損益の一元管理が可能となり、資産運用の効率が高まります。