株式担保ローンと処分信託は併用できますか?
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2025/04/29 15:00
男性
40代
納税資金確保のため株式担保ローンを利用し、並行して残存株を処分信託で計画的に売却するスキームを検討しています。両契約における担保権順位や質権付替、売却代金の優先分配などが競合しない契約設計上の留意点と交渉手順をご教示願えますか。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
株式担保ローンと処分信託は両立できますが、〈担保権の優先順位〉〈質権の付替え〉〈売却代金の帰属〉という三つの論点を、ローン契約と信託契約の双方で整合させることが必須です。まず金融機関が質権を設定する際は、将来の信託移管を想定して「譲渡制限の例外」および「質権者の順位保持」を明文化し、株式移転を契約上許容できる余地を残しておきます。処分信託へ移す局面では、ローンの担保対象から外れた株式のみを信託財産にするか、あるいは金融機関の同意を得て質権を信託財産に付け替えるかを選択します。後者を採る場合、信託契約に売却代金を自動的にローン返済へ充当する弁済指定口座と、質権者による代位弁済を認める条項を盛り込み、資金フローを明確にしておくことが不可欠です。
実務では、ロックアップ解除直後にブロックトレードでローン残高の数倍を確保し、その後に残存株式の一部を担保に据えた株式担保ローンを維持しつつ、余剰分を処分信託で段階的に売却する三段構えが、納税資金の確保と長期分散売却の双方を両立しやすいパターンです。交渉は必ず金融機関・信託銀行・借り手の三者で同席し、質権順位の登記、売却スケジュール、売却代金の配分方法を包括した三者契約に落とし込むことで、担保安全性と売却機動性のバランスを確保しつつ、ポートフォリオ再構築を円滑に進められます。
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関連する専門用語
株式担保ローン
株式担保ローンとは、保有している株式を担保に差し入れて資金を借りる仕組みのことを指します。借り手は株式を担保にすることで、通常よりも低い金利で資金を調達できる場合があり、運転資金や新たな投資資金として活用することができます。ただし、株式の価格が大きく下落すると、追加で担保を差し入れるよう求められたり、最悪の場合には担保として預けた株式が売却されるリスクもあります。資産運用の観点では、株式担保ローンを利用している企業や個人の財務リスクが高まる可能性があるため、その動向に注意を払うことが大切です。
処分信託
処分信託とは、企業や個人が保有している株式などの資産を、売却や譲渡といった処分を目的として信託銀行などに預ける仕組みのことを指します。信託を受けた側は、あらかじめ定められた条件や指示に従って、資産の売却などを行います。処分信託は、たとえば株式をまとめて市場に出さずにスムーズに売却したい場合や、資産の管理や処理を専門家に任せたい場合に活用されます。資産運用の場面では、大量の株式が処分信託に預けられたことが公表されると、その後の売却動向が市場に影響を与える可能性があるため、注目されることがあります。
質権
質権とは、お金を貸した側が、借りた側から受け取った財産を担保として保有し、借金が返済されない場合にはその財産を優先的に処分して返済に充てることができる権利のことを指します。たとえば、株式や不動産、貴金属などを担保にしてお金を借りると、貸し手はその財産に対して質権を持つことになります。資産運用の場面では、企業が自社株式に質権を設定して資金調達を行うケースもあり、その状況によっては財務リスクや経営権への影響を慎重に見極める必要があります。
代位弁済
代位弁済とは、本来支払うべき本人に代わって第三者が債務を支払うことを指します。たとえば、保証人が債務者に代わって借金を返済する場合などがこれにあたります。代位弁済が行われると、支払った第三者は元々の債権者と同じ立場になり、本人に対して支払った分の返済を求める権利を持つことになります。資産運用の世界では、企業の保証債務や負債リスクを分析する際に、代位弁済が発生する可能性があるかどうかを考慮することが、リスク管理において重要な視点となります。
ロックアップ
ロックアップとは、IPO(新規株式公開)時に創業者やベンチャーキャピタルなどの大株主が保有株を一定期間売却できないよう制限する取り決めです。一般に90日や180日が多いものの、業績予想の不確実性や持株比率に応じて最長1年程度に設定されることもあります。目的は、上場直後の大量売却による需給バランスの崩れと株価急落を防ぎ、投資家が安心して参加できる環境を整えることにあります。 ロックアップ期間中でも、主幹事証券会社の許諾(ワードによっては「ロックアップ解除」や「早期解除」と表記)により一部売却が認められる例があり、上場後の株価が大幅に上昇した場合や追加資金調達が必要になった場合に適用されるケースが代表的です。投資家としては、有価証券報告書や目論見書に記載されている「対象株主」「期間」「解除条件」を確認し、ロックアップ満了日前後の売却圧力や出来高急増の可能性を織り込んでおくことが重要です。
ブロックトレード
ブロックトレードとは、通常の市場取引とは別に、大量の株式や債券を一度にまとめて売買する取引のことを指します。通常の市場で大きな取引を行うと価格に大きな影響を与えてしまうため、ブロックトレードでは特別な取引ルートを使って、相対で売り手と買い手をマッチングさせます。主に大口の投資家や機関投資家同士の取引で利用されることが多いですが、場合によっては一般の市場にも影響を及ぼすことがあります。資産運用においては、大きなブロックトレードの動きがあった場合、その企業の株価にどのような影響が出るかを注意深く見守る必要があります。