遺言の基本方式は何があり特徴はどう違いますか?
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2025/06/26 15:04
男性
60代
遺言書を検討中ですが、どの方式を選べば良いのか迷っています。手軽さと確実性のどちらを優先すべきか整理したいので、主要な方式の種類と違いを教えてもらえますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。自筆証書遺言は、全文を自筆して押印することで作成でき、費用がかからないのが利点です。しかし、書式不備で無効になるリスクがあり、原則として家庭裁判所の検認手続きが必要です。2020年からは法務局での保管制度が始まり、これを利用すれば検認が不要になり、紛失や改ざんのリスクも軽減できます。
一方、公正証書遺言は公証人と証人2名の立ち会いのもと作成し、原本が公証役場に保管されるため、形式不備や紛失の心配がほとんどなく、死後すぐに手続きに移れるのが特長です。ただし、作成には数万円以上の費用がかかります。
秘密証書遺言は、内容を他人に見せずに作成し、公証人に存在だけを証明してもらう方式です。本人が署名・押印すれば、本文はパソコン等で作成しても構いませんが、公証人が内容を確認しないため無効になる可能性があり、検認も必要です。そのため実務ではあまり使われていません。
コストを抑えつつ一定の安全性を確保したいなら自筆証書+法務局保管、確実性と円滑な相続手続きを重視するなら公正証書遺言が推奨されます。選択にあたっては、ご自身の状況や優先したい条件を整理することが重要です。
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自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者ご本人が遺言書の全文・日付・氏名を自筆し、押印することで成立する最も手軽な遺言方式です。公証役場に出向く必要がないため費用を抑えられる一方、書式の不備や保存中の紛失・偽造リスクがあるほか、相続開始後には家庭裁判所で検認を受けなければ法的効力が発揮されない点に注意が必要です。近年は法務局での自筆証書遺言の保管制度も始まり、保管と検認手続きが簡素化されるなど利用しやすさが向上していますが、内容の法的妥当性を確保するためには、作成前に専門家へ相談することをおすすめいたします。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証人が本人の意思に基づいて作成する遺言書で、遺言の中でも最も法的な信頼性と実効性が高い形式とされています。作成にあたっては、公証役場にて遺言者が口頭で内容を伝え、それを公証人が文書にまとめ、証人2名の立会いのもとで公正証書として正式に成立します。 この方式の最大の特徴は、家庭裁判所による検認手続きが不要である点です。つまり、相続開始後すぐに法的に効力を持つため、遺族による手続きがスムーズに進むという実務上の大きな利点があります。また、公証人による作成と原本保管によって、遺言の紛失や改ざん、内容不備といったリスクも大幅に軽減されます。 一方で、公正証書遺言の作成には一定の準備が必要です。財産の内容を証明する資料(不動産登記簿謄本や預金通帳の写しなど)や、相続人・受遺者の戸籍情報などが求められます。また、証人2名の同席も必須であり、これには利害関係のない成人が必要とされます。公証役場で証人を紹介してもらえるケースもありますが、費用が別途発生することもあります。 費用面では、遺言に記載する財産の価額に応じた公証人手数料がかかりますが、将来のトラブル回避や手続きの簡素化といったメリットを考えれば、特に財産規模が大きい場合や、遺産分割に不安がある家庭では非常に有効な手段と言えるでしょう。 資産運用や相続対策において、公正証書遺言は重要な役割を果たします。特定の資産を特定の人に確実に引き継がせたい場合や、相続人間の争いを未然に防ぎたい場合には、公正証書遺言を活用することで、遺言者の意思を明確かつ安全に残すことができます。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者が自ら作成した遺言書を封筒に入れて封じたうえで、公証役場で公証人と証人2名の立ち会いのもと封印・署名し、その存在だけを公正証書で証明してもらう方式の遺言です。内容を誰にも開示せずに作成できるため、生前は遺言の詳細を徹底的に秘密にしたい場合に適しています。 一方で、封をしたままでは書式の不備や法律上の要件欠如が発見しづらく、相続開始後には家庭裁判所で検認手続きを受けて初めて開封されるため、迅速な遺言執行が難しいというデメリットもあります。偽造や紛失のリスクを公正証書による存在証明で抑えつつ、内容を秘匿したいというニーズに応える方式と言えます。
公証人
公証人とは、国から任命され、法的に重要な文書の作成や認証を行う専門職のことを指します。公証役場という専用の事務所で業務を行い、契約書、遺言、公正証書などの作成を通じて、個人や法人の権利関係を明確にし、将来の紛争を予防する役割を果たします。特に「公正証書」は、公証人が関与することで強い証拠力と法的拘束力を持ち、万が一のトラブル時には裁判を経ずに強制執行できることもあります。 公証人になるのは、原則として長年の実務経験を積んだ裁判官、検察官、弁護士などで、高度な法律知識が求められます。資産運用や相続、事業承継などの場面でも公証人による書類作成は信頼性と安全性を高めるために活用されることが多く、法的トラブルのリスクを軽減するための心強い存在です。
法務局保管制度
法務局保管制度とは、遺言書を作成した人が、自分の死後に確実に内容が実行されるよう、法務局にその遺言書を保管してもらう制度です。2020年7月から始まったこの制度では、自筆で書いた遺言書を法務局に提出し、専門の職員が形式的なチェックを行ったうえで、原本を厳重に保管してくれます。これにより、遺言書の紛失や改ざん、家庭裁判所での検認が不要になるといったメリットがあり、より確実かつ安全に遺言の意思を残す手段として注目されています。特に高齢者の相続準備や財産の引き継ぎを円滑に進めるために有効な方法です。
検認手続き
検認手続きとは、遺言書が見つかった際に家庭裁判所がその形状や日付、署名押印などの状態を確認し、改ざんや偽造の防止を図るための公的な手続きです。これは遺言の内容を有効と認める審査ではなく、あくまで遺言書の存在と原本の保全を目的とするものですが、検認を経ないまま遺言を執行すると過料の対象となるため注意が必要です。公正証書遺言では不要ですが、自筆証書遺言と秘密証書遺言では相続開始後に相続人が家庭裁判所へ申し立てを行い、開封の立ち会いや写しの作成を受けて初めて遺言内容を実行できる流れとなります。