エンジェル投資で損失が出た場合、税制上どのような扱いになりますか?
エンジェル投資で損失が出た場合、税制上どのような扱いになりますか?
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2025/03/21 19:18
男性
30代
エンジェル投資で損失が出た場合、税制上はどう扱われますか?具体的な数値例を使って説明してください。また、損失控除の仕組みをうまく活用する戦略や、一般の株式投資との違いがあれば教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
エンジェル投資で損失(譲渡損)が出ても、投資先が「特定新規事業者株式等※」に該当し、確定申告で所定の手続きを行えば、その損失は他の株式等の譲渡益と損益通算でき、控除し切れない分は最長3年間繰り越せます。
※経済産業局の確認書を添付して確定申告する必要があります。
数値例
1 年目
- スタートアップA株を売却し▲500万円の損失
- スタートアップB株を売却し+200万円の利益
- 上場株式の売却益+300万円
- まずAとBを相殺し▲300万円
- 残った▲300万円を上場株益300万円と通算→課税譲渡益0円(株式譲渡税0円)
2 年目
- 上場株式で+400万円の利益のみ
- 1年目に使い切れなかった損失はないため全額課税
3 年目
- スタートアップC株で▲600万円の損失
- 当年に相殺できる譲渡益がなければ、▲600万円の損失を4年目以降3年間繰り越し
エンジェル税制を有効に生かす鍵は、損益通算を視野に入れた投資設計にあります。まずはスタートアップ株と上場株を組み合わせた分散投資を行い、同じ年度内に利益と損失がバランスよく発生するポートフォリオを組むことで、確定申告時に損失を余すことなく相殺できます。特に、大きな譲渡益が生じる年を見込める場合は、そのタイミングに合わせて損失株を売却すれば税負担を一気に圧縮できるため、売却計画を事前に練る意義は大きいでしょう。
損失は最長3年間繰り越せるため、損失が確定した年から逆算して3年以内に利益確定の機会をつくることも重要です。上場株の譲渡益と通算できるというエンジェル税制ならではの利点を踏まえ、上場株取引を並行しながら売却タイミングを調整すれば、税金をコントロールする自由度がさらに高まります。
一般の株式投資と比べると、未上場株は本来上場株益と相殺できませんが、エンジェル税制で「特定新規事業者株式等」の認定を受けた株に限って通算が認められる点が最大の差異です。繰越期間こそ上場株と同じ3年間ですが、この優遇を享受するには損失確定前に認定手続きを済ませておく必要があるため、投資前から書類準備を進めておくと安心です。
なお、エンジェル税制は改正が相次ぐ分野であり、制度要件や手続きが更新されるたびに実務への影響も変わります。適切に損失計上や繰越控除を行うには、最新の要綱を確認したうえで税理士など専門家のサポートを受け、確定申告書を漏れなく整備することが欠かせません。
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関連する専門用語
エンジェル税制
エンジェル税制とは、個人投資家が投資時・株式売却時に受けることができる税制上の優遇措置を定めた税制。ベンチャー企業に対する投資の促進を図る観点から国税庁によって定められている。ベンチャー企業に投資した年、未上場ベンチャー企業株式を売却して売却損益が発生した年にそれぞれ優遇措置を受けることができる。
損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。
損失繰越控除
損失繰越控除とは、ある年度に発生した損失を翌年以降の所得から差し引くことで、税負担を軽減する制度のことを指します。法人税や所得税の計算に適用され、例えば事業年度内に赤字となった企業は、翌年度以降の黒字所得と相殺することで税負担を抑えることができます。特にスタートアップや新規事業においては、初期投資がかさみ赤字となることが多いため、この制度を活用することで資金繰りを安定させることが可能です。適用には一定の要件があるため、事前に確認しておくことが重要です。
譲渡益
譲渡益とは、株式や不動産などの資産を売却した際に得られる利益のことを指します。具体的には、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた金額が譲渡益となります。個人が株式を売却して利益を得た場合、通常は譲渡所得として申告分離課税(税率20.315%)の対象になります。不動産の場合、所有期間が5年以下の短期譲渡は税率39.63%、5年超の長期譲渡は20.315%の税率が適用されます。 また、投資信託の売却益も譲渡所得に分類されますが、分配金の一部は配当所得として課税される場合があります。税制上の優遇措置として、NISA(少額投資非課税制度)や居住用不動産の3000万円特別控除などがあり、適用条件を理解することが重要です。 資産運用においては、売却のタイミングや税制の影響を考慮し、適切な税対策を行うことが求められます。
確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算して翌年の2月16日から3月15日に申告し、納税する手続き。多くの会社では年末調整を経理部がしてくれるが、確定申告をすると年末調整では受けられない控除を受けることができる場合もある。確定申告をする必要がある人が確定申告をしないと加算税や延滞税が発生する。

