実家を相続するときに注意すべき「やってはいけないこと」にはどんなものがありますか?
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2025/09/19 09:02
男性
60代
実家を相続する際には、感情的に判断して後から後悔することや、税金や手続きの面で不利になる行動を避けたいと考えています。実家を相続するときに注意すべき具体的な失敗例や、やってはいけない行動について教えていただけますか。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
実家を相続するときに最も避けるべきことは、共有名義にすることと、各種手続きを先送りにすることです。共有名義は将来の売却や修繕に全員の同意が必要となり、次世代に引き継がれるとさらに複雑になります。また、相続放棄や限定承認(3か月以内)、準確定申告(4か月以内)、相続税申告・納付(10か月以内)、相続登記(3年以内)などの期限を守らないと、取り返しがつかない不利益が生じます。
次に注意すべきは、税務上の特例を逃すことです。小規模宅地等の特例や、特定空き家の3,000万円控除、取得費加算の特例などは、適用期限や要件が厳格で、知らないまま進めると本来受けられる大きな節税効果を失います。売却や賃貸を検討する前に、必ず税理士などに確認すべきです。
空き家を放置することも避ける必要があります。老朽化や近隣トラブルのリスクだけでなく、固定資産税の住宅用地特例が外れることで税負担が増します。維持するか、賃貸・売却するかは早めに判断し、管理体制を整えることが大切です。
さらに、相続財産を勝手に使い込むことや、口約束で遺産分割を進めることは厳禁です。後々の紛争や税務調査の火種になります。遺産分割協議書を実印・印鑑証明付きで作成し、全員の合意を文書化することが必要です。
最後に、実家を「節税のために残す」判断も危険です。維持費や修繕費、将来の売却難を考慮しないと資産どころか負担になりかねません。必ずライフプランやキャッシュフローを基に、保有・賃貸・売却の比較を行い、現実的な判断を下すべきです。
要するに、相続では「共有名義にしない」「期限を守る」「特例を逃さない」「空き家を放置しない」「合意は必ず文書化する」という5点が最大の落とし穴です。これを避けるだけで、後のトラブルや無駄なコストを大幅に減らせます。
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関連する専門用語
共有名義
共有名義とは、一つの不動産や金融資産を複数人で所有し、それぞれの持ち分を法的に記録している状態をいいます。たとえば夫婦で住宅を購入する際や、親子で投資物件を取得する場合などに使われます。共有名義にすることで資金を出し合いやすくなる一方で、将来売却や相続を行うときには全員の合意が必要となるため、手続きが複雑になることがあります。
限定承認
限定承認とは、相続人が引き継ぐ財産について、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産(借金など)を支払うことを条件に、相続を受ける方法のことです。つまり、相続によって得られる資産が借金を上回っている場合にはその差額を受け取ることができますが、もし借金が多くても、自分の財産を使ってまで返済する必要はありません。 この方法を使えば、相続することで損をするリスクを減らすことができます。ただし、限定承認を行うには、相続の開始を知ってから原則として3か月以内に、他の相続人全員と一緒に家庭裁判所に申立てをする必要があるため、手続きがやや複雑です。
準確定申告
準確定申告とは、納税者が死亡した場合に、その人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに行う確定申告のことを指します。通常の確定申告と同様に所得税の計算を行いますが、提出期限は「死亡の翌日から4か月以内」と定められており、期限内に申告・納付する必要があります。 たとえば、年金収入や不動産収入、事業収入があった場合などには、申告が必要です。相続人全員が連名で提出するのが原則で、医療費控除や扶養控除なども通常どおり適用されます。相続の手続きと並行して行うことになるため、早めの準備と専門家への相談が勧められます。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、相続が発生した際に、被相続人が居住や事業に使用していた土地について、一定の条件を満たせば、その土地の相続税評価額を大幅に減額できる制度です。主な目的は、相続税負担によって自宅や事業用不動産を手放すことを防ぎ、円滑な資産承継を支援することにあります。 たとえば、亡くなった方の自宅に配偶者や同居していた親族が引き続き居住する場合、その宅地の評価額を最大で80%まで減額できる可能性があります。事業用地や貸付事業に用いられていた土地についても、50%〜80%の減額が認められるケースがあります。この減額によって相続税の課税対象となる財産の価額が抑えられるため、納税資金の負担が軽減され、不動産を売却せずに相続を完了できる事例も多く見られます。 ただし、この特例の適用には、居住や事業の継続に関する要件、土地の面積制限(最大330㎡まで)など、細かな条件を満たす必要があります。また、相続税申告期限内に適用を受ける旨を申告することが必須であり、準備不足や誤解によって適用を逃すケースもあるため注意が必要です。 自宅や事業用不動産を含む資産を次世代に円滑に引き継ぐ上で、この特例は極めて重要な制度のひとつです。早めに対策を講じ、制度の内容を正しく理解したうえで、税理士など専門家のサポートを受けながら計画的に進めることが求められます。
住宅用地特例
住宅用地特例とは、住宅が建っている土地や住宅を建てるための土地について、固定資産税や都市計画税の負担を軽減するための制度のことを指します。通常、土地にかかる税金はその評価額に基づいて計算されますが、住宅用地特例が適用されることで課税標準額が大きく減額されます。具体的には、200㎡以下の部分を「小規模住宅用地」として評価額の6分の1に、200㎡を超える部分を「一般住宅用地」として評価額の3分の1に軽減する仕組みです。この特例は、住宅を持つ人の税負担を和らげ、安定した住環境を維持することを目的としています。投資初心者にとっては、「家の敷地には税金を安くする特例がある」というイメージを持つと理解しやすいでしょう。
遺産分割協議書
遺産分割協議書とは、相続人全員が話し合って決めた遺産の分け方を文書にまとめたものです。被相続人が遺言を残していない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合、相続人同士でどの財産を誰が受け取るかを決める必要があります。 その合意内容を正式に記録し、全員が署名・押印することで作成されるのが遺産分割協議書です。この書類は、相続した不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなど、実際の手続きを進める際に必須となることが多いため、非常に重要な役割を持ちます。作成の際は、相続人全員の同意が必要で、1人でも欠けていると無効になってしまう点に注意が必要です。資産運用においても、円満な財産の承継や手続きのスムーズ化に役立つ書類です。