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遺産分割協議書とは?2024年相続登記義務化に対応した作成方法と必要書類・注意点を徹底解説

遺産分割協議書とは?2024年相続登記義務化に対応した作成方法と必要書類・注意点を徹底解説

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執筆者:

公開:

2025.07.11

更新:

2025.07.11

相続

遺産分割協議書は相続時の財産分配を円滑に進めるために必要ですが、意外と細かなルールがあり、多くの人が作成段階でつまずきます。特に2024年4月から「相続登記の義務化」が施行され、不動産の相続は「死亡を知った日から3年以内」の登記申請が必須となります。遅れると最大10万円の過料が科されるため注意が必要です。本記事では、戸籍収集から財産目録作成、協議書の書き方まで、専門知識がなくても理解できるよう体系的に解説します。遺産分割協議書を確実に作成し、スムーズな相続手続きを完了させましょう。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むと、遺産分割協議書を正しく作成し、相続手続きをスムーズに完了させるための具体的な手順やポイントが明確になります。相続人全員の合意を取りまとめる方法、戸籍収集や財産目録作成の進め方、預貯金や不動産など財産別の書き方を網羅しているため、迷わず手続きを進められます。また、2024年4月施行の「相続登記義務化(死亡を知った日から3年以内)」や「死亡後10か月の相続税申告」といった期限付きの重要ルールも整理されているので、期限を守りつつ円満な相続を実現できます。

目次

遺産分割協議書とは?相続トラブルを防ぐ「相続人全員の合意書」

遺産分割協議書の法的効力:相続人全員を拘束し、手続きの公的な証明書となる

遺産分割協議書の役割:相続人の間で合意した内容の証跡

「遺産分割協議」と「遺産分割」の違いは?協議は分割のための話し合い

遺産分割協議書はどんな時に必要?作成が必須なケースと不要なケース

遺産分割協議書が必須なケース:不動産・預貯金・株式など名義変更が必要な財産がある場合

遺産分割協議書が必須なケース:相続人が1人だけ、または有効な遺言書で分割方法が指定されている場合

【チェックリスト】遺産分割協議書の作成前に必ず準備すべき2つのこと

ステップ1:戸籍謄本一式で「誰が相続人か」を漏れなく確定させる

ステップ2:財産目録で「何を分けるか」をプラス・マイナス共に洗い出す

遺産分割協議書の書き方を徹底解説|財産別に記載例も紹介

ポイント1.基本項目の書き方:誰の遺産か特定し、全員の合意を示す

ポイント2.財産の具体的な記載方法:公的書類通りに正確に書く

ポイント3.署名・押印のルール:実印を使い、複数ページなら契印も必須

完成した遺産分割協議書の提出先はどこ?3つの手続きと期限を解説

手続き1:法務局での相続登記【期限:相続を知った日から3年以内】

手続き2:金融機関での相続手続き(預貯金の解約・名義変更など)

手続き3:税務署への相続税申告【期限:死亡を知った日の翌日から10か月以内】

遺産分割協議書は誰に相談するべき?専門家の選び方

まずは状況を整理|専門家に相談すべき4つのケース

【目的別】4つの専門家の役割・得意分野・相談の相場

遺産分割協議書とは?相続トラブルを防ぐ「相続人全員の合意書」

遺産分割協議書とは、亡くなった方(被相続人)の遺産をどのように分けるかについて、相続人全員で話し合って決めた内容を記録した書面のことです。民法907条に基づき、相続人は協議によって遺産の全部または一部をいつでも分割できます。

この協議結果を文書化した遺産分割協議書は、相続人全員が署名押印することで初めて法的な効力を持ち、記載内容に従って遺産を分配する拘束力を生じます。以下では、遺産分割協議書の法的効力と役割、そして「遺産分割」と「遺産分割協議」の違いについて専門的に解説します。

遺産分割協議書の法的効力:相続人全員を拘束し、手続きの公的な証明書となる

遺産分割協議書は、相続人全員が合意した遺産の分け方を記録する、法的効力を持つ文書です。性質としては契約書に近く、相続人全員が署名・押印することで成立し、その内容に従って遺産を分配する法的な義務が生じます。

民法907条1項では、「共同相続人は、協議によって遺産の全部または一部を分割することができる」と定められており、この協議にはすべての相続人が参加している必要があります。したがって、1人でも欠けたまま行われた協議や、相続人以外の者が加わっていた協議は無効となります。

このため、遺産分割協議書が有効であるためには、共同相続人全員が正しく当事者として署名・実印を押していることが不可欠です。署名・押印に不備があると、協議書が無効となり、手続きが進まない可能性もあるため、慎重に作成・確認する必要があります。

遺産分割協議書の役割:相続人の間で合意した内容の証跡

遺産分割協議書の第一の役割は、相続人間の合意内容を明確な証拠として残すことです。口頭の約束だけでは、後から「そんな内容は聞いていない」などと言われて紛争になる恐れがあります。

協議書を作成しておけば、「言った言わない」のトラブルを防ぎ、後日のやり直し要求を封じることができます。第二に、遺産分割協議書は各種相続手続きの提出資料として機能します。相続財産の名義変更や相続税申告などで「誰がどの遺産を相続するか」を第三者に証明する書類となり、金融機関や法務局等への手続きで要求される重要書面です。

例えば不動産登記や預貯金の引き出し手続きでは、遺産分割協議書がないと受理されないケースが多く、実務上ほぼ必須といえます。このように、遺産分割協議書は相続人間の合意を法的に確定させ、対外的な証明資料ともなる重要な書類です。

「遺産分割協議」と「遺産分割」の違いは?協議は分割のための話し合い

「遺産分割」とは、複数の相続人がいる場合に遺産の分け方を決定する行為そのものを指し、遺産を具体的に各相続人の所有に帰属させることです。

一方「遺産分割協議」は、その遺産分割の方法を相続人全員で話し合うプロセスを意味します。簡単に言えば、遺産分割協議は遺産分割を実現するための手段であり、遺産分割協議で全員の合意が得られれば遺産分割が成立します。

遺産分割を実現する3つの方法と協議の必要性

遺産分割の方法は大きく分けて3通りあり、①被相続人の遺言による指定、②相続人全員の協議による決定、③家庭裁判所の審判による決定です。被相続人が有効な遺言書を残している場合は原則その内容通りに遺産分割が行われ、相続人同士の協議(遺産分割協議)は不要になります。しかし遺言書が無い場合や遺言で分割が禁じられていない場合、相続人全員で遺産分割協議を行って分割方法を決める必要があります。協議が成立すれば遺産分割協議書を作成し、その内容に従って各財産を分配します。

協議がまとまるまで遺産は「相続人全員の共有状態」になる

なお、遺産分割協議が成立するまでの間、遺産は法律上相続人全員の共有状態(法定相続分に応じた持分での共有)になります。共有状態では勝手に売却したり処分できないため、円滑な相続手続のためには速やかに協議をまとめることが望ましいでしょう。

遺産分割協議書はどんな時に必要?作成が必須なケースと不要なケース

遺産分割協議書は相続が発生した全ての場合に必ず作成しなければならないものではありません。以下では、協議書の作成が必要となる主なケースと、作成が不要と考えられるケースをそれぞれ解説します。一般に、不要なケースに当てはまらない相続では作成が必要と考えておくとよいでしょう。

遺産分割協議書が必須なケース:不動産・預貯金・株式など名義変更が必要な財産がある場合

相続財産に不動産や預貯金、株式など名義変更が必要な資産が含まれる場合、遺産分割協議書の作成が事実上必須となります。法務局や金融機関での手続きでは、「誰が財産を相続したか」を証明する公的な書類が求められるためです。

金融機関所定の書類で代用できるケースもありますが、将来のトラブルを防ぐためにも、正式な協議書を作成しておくことを強く推奨します。

不動産:法務局での相続登記に必須

相続不動産の登記申請では、法定相続分と異なる分割をする場合に遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書の提出が必須です。遺産分割協議により不動産を相続する人を決めた場合、その内容を記した協議書がなければ法務局は相続登記を受理しません。

預貯金:銀行での口座解約・名義変更に必要

銀行口座の相続手続きでも、誰が預金を引き出すか決めた遺産分割協議書の提出を求められるのが一般的です。特に近年の判例変更により、預貯金も遺産分割の対象財産と位置付けられたため、相続人各自が法定相続分だけ自動的に引き出せる仕組みはなくなりました。そのため、口座の解約・名義変更には相続人全員の合意書が必要になります。

株式・有価証券:証券会社での名義書換に必要

証券会社での口座名義書換や株式の名義変更手続きでも、遺産分割協議書の提出が必要です。誰がどの証券を相続するか明示する必要があるためです。

自動車など:運輸支局での移転登録などにも

自動車の名義変更(相続による移転登録)でも、協議書で承継者を決めていればその提出が求められます。また、貴金属や現金以外の資産で、公式な名義変更や引き渡し手続きがあるものは同様に協議書が必要となるケースが多いです。

遺産分割協議書が必須なケース:相続人が1人だけ、または有効な遺言書で分割方法が指定されている場合

遺産分割協議書は、必ずしもすべての相続で必要になるわけではありません。相続人が1人しかいない場合や、有効な遺言書で分割方法が指定されている場合など、法律上または実務上、作成しなくても手続きを進められる代表的なケースを解説します。ただし、不要な場合でもトラブル防止のために作成しておくと安心です。

相続人が1人しかいない場合

相続人が単独の場合は、民法907条1項の「共同相続人による協議」がそもそも成立しないため、遺産分割協議書は不要です。

そもそも話し合う相手がいないためで、この場合は協議書も不要です。相続手続きでは、被相続人と自分との関係が分かる戸籍謄本を提出するだけで、不動産の名義変更や預金払戻しなどを単独で行えます。

有効な遺言書があり、その内容通りに分ける場合

被相続人が公正証書遺言など有効な遺言書を残しており、相続人全員がその指示に従って遺産を承継する場合は、遺産分割協議を行いません。法的には遺言の指定が優先されるため、この場合も協議書は不要です。各種手続きでは遺言書(原本または写し)を提出すれば足ります。例えば「全財産を妻に相続させる」という遺言があれば、妻が単独で戸籍と遺言書を用意して手続き可能です。ただし、遺言執行者が指定されている場合はその人が手続きを行います。

遺言で遺産分割が一定期間禁止されている場合

被相続人は民法908条(遺言による遺産分割の禁止)により、最長5年間、遺産を分割してはならない旨を遺言で定めることができます。

この遺産分割禁止の遺言がある場合、その期間中は相続人間で遺産分割協議自体ができません。したがって協議書も作成できず不要となります。期間経過後に改めて協議することになりますが、それまでは法定相続分どおりの共有状態で財産を管理します。

相続財産が名義変更不要な現金など、ごく一部の資産のみの場合

たとえば金庫にある現金だけを法定相続分に応じて分け合うようなケースでは、役所や金融機関での名義変更手続きが発生しません。このように純粋な現金のみで完結する相続などでは、協議書がなくても実質的な分配が可能です。ただし、この場合でも後日の争いを防ぐため、誰がいくら受け取ったか書面に残しておくことが望ましいです。相続人が複数いるなら簡易なメモでも合意書でも良いので証拠を残す方が安心でしょう。

【チェックリスト】遺産分割協議書の作成前に必ず準備すべき2つのこと

遺産分割協議書をスムーズかつ正確に作成するには、事前の準備が重要です。誰が相続人かの確定作業と、遺産の全体像を把握する作業を十分に行いましょう。ここでは、協議書作成前に準備すべき主な書類と情報として、「相続人確定に必要な戸籍謄本一式」と「財産リスト(財産目録)の作成方法と漏れ防止のポイント」を解説します。

ステップ1:戸籍謄本一式で「誰が相続人か」を漏れなく確定させる

遺産分割協議を始める最初のステップは、戸籍謄本を集めて相続人全員を正確に確定させることです。一人でも相続人が漏れてしまうと協議そのものが無効になるため、この作業は極めて重要です。

戸籍収集の手間を省きたい場合は、法務局の「法定相続情報一覧図」制度を活用するのが便利です。また、手続きが難しい場合は司法書士や行政書士などの専門家に依頼することもできます。

①被相続人の出生から死亡までの全戸籍

被相続人が生まれてから亡くなるまでに在籍していた戸籍(改製原戸籍・除籍を含む)を連続して取得します。これにより、被相続人に婚姻歴や認知した子がいないか、過去に除籍された子供はいないか等を確認します。例えば最初の結婚で子がいなかったか、離婚や再婚による子供の有無などもここで判明します。

②直系尊属の戸籍(※子や配偶者がいない場合など)

被相続人に子供や配偶者がいない場合、相続人となる可能性がある父母や祖父母(直系尊属)の戸籍も辿ります。これにより、父母が既に他界しているか、健在なら相続人に該当するかを確認します。また兄弟姉妹相続の場合、両親の記録から兄弟姉妹の人数を把握します。

③相続人全員の現在の戸籍謄本

確定した相続人それぞれについて最新の戸籍謄本を取得し、生存を確認します。例えば兄弟姉妹が相続人の場合、兄弟姉妹それぞれが被相続人死亡時に存命だった証拠として戸籍を用意します(死亡していればその子が代襲相続人となり、その子の戸籍が必要です)。

④被相続人の住民票の除票と相続人の住民票

被相続人の最後の住所地を証明する住民票除票や、相続人の現住所を証明する住民票等も併せて準備します。特に登記申請や金融機関手続きで住所確認が必要になるためです。

ステップ2:財産目録で「何を分けるか」をプラス・マイナス共に洗い出す

相続人が確定したら、次は「何を分けるか」を明確にするため、財産目録を作成しましょう。これは、プラスの資産とマイナスの負債をすべて洗い出し、公平な遺産分割協議の土台を作る極めて重要な作業です。作成自体は義務ではありませんが、調査漏れは後のトラブルに直結するため、時間をかけてでも正確に作成することが不可欠です。不安な点や評価が難しい財産があれば、税理士や司法書士といった専門家の力を借りることも検討しましょう。

①プラス・マイナスの全財産を具体的にリストアップする

財産目録には、プラスの財産(現金・預貯金・不動産・有価証券・自動車・貴金属など)だけでなく、マイナスの財産(借入金・未払い税金・債務保証など)も含めて記載します。相続では資産と債務の両方を承継するため、負債も含めて全体像を把握しておく必要があります。書式に決まりはありませんが、財産の種類ごとに分け、漏れなく具体的に特定できるよう記載することが重要です。

例えば預貯金なら「○○銀行△△支店普通預金口座番号XXXXXXX」のように金融機関名・支店名・口座番号まで書いておけば、後から口座を特定しやすくなります。不動産であれば登記事項証明書の記載通りに所在地・地番などを記載し、株式なら証券会社名・銘柄・株数まで書き出します。「おそらくこれだけだろう」と見込みで進めず、一つ一つ正確に洗い出すことが大切です。

②資産調査の進め方とチェックリスト

被相続人の遺品や自宅の書類を確認し、以下のような情報源から財産を探します。

  • 預金通帳・キャッシュカード、銀行からの郵便物(取引のあった銀行・支店がわかる):判明した口座については銀行に残高証明書を発行してもらうと正確です。
  • 不動産の固定資産税納税通知書や権利証(登記識別情報):不動産がどこにあるか、評価額の概算が掴めます。
  • 証券会社の取引報告書、株式配当金のお知らせ、証券口座のログイン情報等:株式や投資信託、債券などの有無を確認します。
  • 保険証券、年金通知:生命保険金(受取人次第では相続財産ではない場合もあります)や未支給年金の有無を確認します。
  • 借入金の返済予定表、クレジットカードの明細:負債や未払い金を把握します。
  • その他、車検証(自動車)、貴金属の鑑定書、貸金庫の契約書など。

被相続人が利用していたパソコン・スマホやネットサービスのアカウントも確認しましょう。ネット銀行の口座・ネット証券の資産・仮想通貨・電子マネーなど、いわゆるデジタル遺産は見落とされやすい財産です。ログインIDやメールから所有を推測できる場合もあります。必要に応じて専門業者に依頼してデジタル遺産を調査することも検討してください。

遺産分割協議書の書き方を徹底解説|財産別に記載例も紹介

遺産分割協議書は形式と内容に一定の決まりがありますが、決して難解な文章を書く必要はありません。基本的な構成を踏まえれば、専門家でなくとも作成可能です。ここでは、協議書に盛り込むべき項目と具体的な書き方について、3つのステップに分けて説明します。

ポイント1.基本項目の書き方:誰の遺産か特定し、全員の合意を示す

まず協議書の冒頭で、協議の対象となる「被相続人」と、協議の当事者である「相続人」、そして「合意日」を明確にします。

タイトルと被相続人の情報で「誰の遺産か」を明記する

まず協議書の一番上には、書類のタイトルとして大きく「遺産分割協議書」と明記します。次に、その協議書が誰の遺産についてのものかを特定するため、被相続人の氏名(フルネーム)、死亡年月日、最後の住所地、最後の本籍地を記載します。これらの項目は被相続人の住民票除票や戸籍謄本を参照して正確に書き写します。

前文で「いつ・誰が合意したか」を記載する

タイトルと被相続人情報の下に、前文(書き出しの文章)を配置します。前文には協議成立の日時と参加者(相続人全員)を明示します。「令和◯年◯月◯日、以下の相続人は協議の結果、被相続人〇〇の遺産を次の通り分割することに合意した。」といった形が典型です。この後に具体的な分割内容を記載しますが、その前提として「誰が話し合ったか」「いつ合意したか」を明確にするわけです。

前文の記載例

「相続人全員(配偶者 山田花子、長男 山田太郎、長女 鈴木(山田)桃子)は、令和7年8月1日、本協議により被相続人山田一郎の遺産について以下のとおり分割することに合意した。」

ポイント2.財産の具体的な記載方法:公的書類通りに正確に書く

前文の後に、遺産を種類ごとに区分して「誰がどの財産を取得するか」を具体的に記載していきます。財産が特定できない曖昧な書き方では、手続きで受理されない可能性があるため注意が必要です。

【不動産】登記簿謄本通りに正確に記載する

不動産については、所在地や地番、地目、地積、家屋番号などを登記簿謄本(登記事項証明書)の記載と完全に一致させて書きます。登記記録と少しでも違う記載をすると法務局が登記を受理しない恐れがあるためです。

土地と建物、マンションなど、それぞれの登記事項を細かく転記します。また、不動産の一部分(持分)を相続する場合は、「持分○分の○」とその割合も明記します。

【預貯金・有価証券】口座を特定し、金額は記載しない

預貯金は、銀行名・支店名・預金種別・口座番号を記載して、どの口座かを特定します。残高は変動するため記載しないのが通常です。

有価証券(株式等)は、証券会社名・支店名・口座番号と、その口座内の内訳(銘柄名・株数等)をすべて書き出します。

【その他の財産】自動車や美術品なども特定できるように書く

自動車は、車検証に記載の登録番号(ナンバー)と車台番号で特定します。美術品や貴金属は「◯◯作の絵画『作品名』1点」など具体的に示します。債権(貸付金など)があれば債務者名・契約日・金額を記載します。

【債務(借金)】相続人間の負担割合を明記する

借金などの債務は、相続人間で誰が負担するかを取り決めて記載することができます。ただし、この取り決めは相続人間の内部的な約束であり、債権者(貸主)に対して法的な主張はできません。債権者に主張するには、別途その承諾が必要です。

結びの文言と作成部数

各項目の分割内容を記載し終えたら、最後に「以上のとおり遺産分割協議が成立したことを証するため本書を作成した」旨の文言を入れ、協議書を相続人の人数分作成し、各自が1通ずつ保管することを記します。

ポイント3.署名・押印のルール:実印を使い、複数ページなら契印も必須

協議書の本文が完成したら、相続人全員で署名・押印します。ここでの不備は手続きの遅延に直結するため、ルールを正確に守りましょう。

相続人全員の署名と「実印」での押印が原則

協議書の末尾に相続人全員が住所・氏名を自署し、各自の実印を押します。認印でも協議書自体は有効ですが、法務局や金融機関の手続きでは実印と印鑑証明書の提出が求められるため、実印以外の選択肢は実務上ありません。押印漏れや、印鑑証明書と異なる印鑑を押してしまうと、手続きは受理されず、協議書の再作成が必要になる場合もあります。

複数ページの場合は「契印」で一体性を証明する

遺産分割協議書が2ページ以上に及ぶ場合、ページとページの間にまたがるように相続人全員の実印で契印(けいいん)を押します。これにより、書類が連続した一体のものであることを証明し、ページの差し替えなどの不正を防ぎます。

※よく似た言葉に「割印(わりいん)」がありますが、これは契約書の原本と写しなど、2つ以上の独立した文書の関連性を示すために押すものです。複数ページの書類を一つにまとめる役割を持つ「契印」とは異なりますので、覚えておきましょう。

誤記の訂正方法と捨印の扱い

万が一誤記があった場合は、訂正箇所を二重線で消し、その近くに正しい内容を記載した上で、欄外に相続人全員の訂正印(実印)を押します。ただし、訂正が多いと見栄えも悪く、受理されないリスクもあるため、清書し直すのが無難です。将来の軽微な訂正に備えてあらかじめ欄外に押しておく「捨印」は、意図しない修正に悪用されるリスクがあるため、近年は推奨されません。

完成した遺産分割協議書の提出先はどこ?3つの手続きと期限を解説

完成した遺産分割協議書は、相続に関する各種手続きを進める際に提出・提示することになります。主な手続き先とそのフローについて、「相続登記(法務局)」「銀行・証券会社での預貯金解約・名義変更」「相続税申告」と絡めて説明します。それぞれ期限や留意点がありますので、順を追って確認しましょう。

手続き1:法務局での相続登記【期限:相続を知った日から3年以内】

相続財産に不動産が含まれる場合、法務局で所有者名義を相続人に変更する「相続登記」を行います。この手続きにおいて、遺産分割協議書は相続の事実を証明する重要な書類となります。

2024年4月から義務化、3年以内の申請が必須に

従来は任意だった相続登記は、不動産登記法第76条の2〈令和3年法律第24号による新設〉により、2024年4月1日から『相続を知った日から3年以内』の申請が義務となりました。同条5項で違反時の過料(10万円以下)も規定されています。

「不動産を相続したと知った日から3年以内」に相続登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。これは過去に発生した相続にも適用されるため、不動産を相続した場合は速やかに手続きを済ませることが重要です。

相続登記の申請手順(必要書類・申請書作成・提出)

相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に、以下の手順で申請します。

  1. 必要書類の準備:登記申請書、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類、相続人全員の戸籍謄本、不動産を取得する相続人の住民票、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、固定資産評価証明書などを用意します。
  2. 登記申請書の作成:法務局の様式に従い、不動産の情報や相続の事実を記載します。
  3. 法務局への提出・納税:作成した申請書と必要書類一式を法務局に提出し、登録免許税(不動産の固定資産税評価額の0.4%)を納付します。
  4. 登記識別情報等の受領:登記が完了すると、新しい所有者に登記識別情報通知(権利証)が交付され、手続きは完了です。

期限に間に合わない場合の「相続人申告登記」制度

相続登記を怠ると、過料のリスクだけでなく、不動産の売却ができない、次の相続が発生して権利関係が複雑化するなどの不利益が大きいです。もし3年の期限内に遺産分割協議がまとまらない場合は、暫定的な措置として「相続人申告登記」という制度を利用できます。これを申請しておけば義務を果たしたと見なされ過料を免れられますが、正式な名義変更ではないため、その後、改めて正式な相続登記が必要です。

手続き2:金融機関での相続手続き(預貯金の解約・名義変更など)

被相続人名義の預貯金や証券口座は、死亡の事実を金融機関が知った時点で凍結され、入出金などができなくなります。これを解除し、相続人が財産を引き継ぐために手続きが必要です。

口座凍結を解除し、預貯金や有価証券を承継する

相続人は、金融機関の窓口に相続が発生したことを連絡し、必要書類を確認します。一般的に、遺産分割協議書、被相続人や相続人の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書などが求められます。これらの書類を提出することで、口座の凍結が解除され、預貯金の解約・払戻しや、株式など有価証券の名義変更が可能になります。

金融機関での手続きの基本的な流れ

手続きは金融機関ごとに多少異なりますが、おおむね以下の流れで進みます。

  1. 金融機関へ連絡し、必要書類を確認する。
  2. 遺産分割協議書や戸籍謄本などを準備して提出する。金融機関所定の同意書で代用できる場合もありますが、その場合も相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。
  3. 払戻し・名義変更の実行。書類に不備がなければ、指定の口座に払い戻されたり、相続人名義の口座に資産が移管されたりします。
  4. 手続き完了の通知を受け取る。

手続きの留意点(書類の不備・有効期限など)

金融機関での手続きは、書類に不備があると大幅に遅れます。押印漏れや実印の間違い、印鑑証明書や戸籍謄本の有効期限(一般に発行後3~6か月以内)などに注意が必要です。不備を指摘された場合は、速やかに正しい書類を準備して再提出しましょう。適切な遺産分割協議書があれば、手続きはスムーズに進みます。

手続き3:税務署への相続税申告【期限:死亡を知った日の翌日から10か月以内】

相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納税が必要です。申告期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内」と定められており、この「10か月ルール」に合わせて遺産分割協議を進めることが重要です。

相続税の特例適用に遺産分割の確定が条件

相続税申告では、遺産分割協議書は「誰がどの財産を相続したか」を証明する重要な添付書類となります。配偶者の税額軽減(相続税法第19条の2)や小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)は、申告期限(死亡を知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割が確定していることが適用条件です。

協議書がない未分割の状態ではこれらの特例が使えず、納税額が大きくなる可能性があります。

10か月以内に協議が整わない場合は「未分割申告」を行う

もし10か月の期限内に協議がまとまらない場合でも、申告・納税は必ず行わなければなりません。その際は、一旦法定相続分で分割したものとして計算する「未分割申告」を行います。この時点では各種特例は適用できませんが、申告後に協議が成立し、申告期限から3年以内に正式な分割内容で「更正の請求」を行えば、特例が適用されて納めすぎた税金が還付されます。

協議成立後は申告書に協議書を添付して提出

無事に協議が成立したら、相続税申告書に遺産分割協議書の写しを添付して税務署に提出します。税務署は協議書の内容に基づき、申告が正しく行われているかを確認します。財産の分け方によっては贈与とみなされるリスクなどもあるため、不安な場合は税理士に相談すると安心です。

遺産分割協議書は誰に相談するべき?専門家の選び方

遺産分割協議書の作成はご自身で行うことも可能ですが、相続人の関係性や財産の状況によっては、専門家のサポートが不可欠となるケースも少なくありません。手続きをスムーズに進め、将来のトラブルを防ぐためには、ご自身の状況に合わせて「どの専門家に」「どのタイミングで」相談するかを見極めることが重要です。

相続の相談先の専門家の選び方は以下記事でも詳しく解説しています。

まずは状況を整理|専門家に相談すべき4つのケース

遺産分割協議や協議書の作成で、特に以下のような状況に当てはまる場合は、早期に専門家へ相談することを強く推奨します。

ケース1:相続人同士で意見が対立している、またはその可能性がある場合

話し合いがまとまらない、特定の相続人と連絡が取れないなど、当事者間での解決が難しい場合は、交渉の代理人となれる弁護士への相談が第一選択肢となります。

ケース2:相続財産の種類が多い、または評価が複雑な場合

不動産が多数ある、非上場株式や美術品が含まれるなど、財産の評価に専門知識が必要なケースです。特に相続税が発生する可能性がある場合は、財産評価と税務の専門家である税理士の助力が不可欠です。

ケース3:手続きが煩雑で時間がない、または自分でやる自信がない場合

相続人が多い、集めるべき戸籍が膨大、平日に役所や法務局へ行く時間がないといった場合は、書類作成や手続き代行の専門家である司法書士や行政書士に依頼することで、負担を大幅に軽減できます。

ケース4:特殊な法律知識が必要なケース

相続人に行方不明者や認知症の方がいる(成年後見制度の利用など)、遺留分侵害額請求が想定される、海外に資産があるなど、特殊な事情が絡む場合は、法的な問題を整理・解決できる弁護士への相談が必要です。

相続における遺留分制度については以下の記事で詳しく解説しています。

【目的別】4つの専門家の役割・得意分野・相談の相場

相続手続きに関わる専門家は主に4種類あり、それぞれに役割と得意分野があります。目的別に誰に相談すべきかを理解しておきましょう。

【弁護士】交渉や裁判など「トラブル解決」のプロ

相続人間の紛争解決を代理できる唯一の専門家です。交渉、調停、審判といった法的な手続き全般に対応できます。「争族」になりそうな場合は、まず弁護士に相談しましょう。

交渉や調停を依頼する場合、「着手金」と「成功報酬」の体系が一般的です。着手金は数十万円、成功報酬は獲得した遺産額の数%~十数%が目安となり、総額で100万円以上になることもあります。

【司法書士】不動産登記や「法務書類作成」のプロ

遺産分割協議書の作成から、不動産の名義変更(相続登記)までをワンストップで依頼できます。相続人間の争いがなく、手続きをスムーズに進めたい場合に適しています。

遺産分割協議書の作成が3〜10万円程度、不動産の相続登記が1件あたり7〜10万円程度が相場です。戸籍収集などの実費は別途かかります。

【税理士】「相続税」と「財産評価」のプロ

相続税の申告が必要な場合に相談します。節税を考慮した分割案の提案や、複雑な財産の評価を行ってくれます。相続税がかかるかどうかの判断も含め、税金面の相談ができます。

続税申告の報酬は、遺産総額の0.5〜1.0%程度が目安とされます。例えば遺産総額が1億円であれば、50万~100万円程度が相場感です。

【行政書士】争いのない「各種書類作成」のプロ

弁護士や司法書士に比べてリーズナブルに、遺産分割協議書や自動車の名義変更などの書類作成を依頼できます。ただし、交渉代理や登記申請は行えないため、相続人間で合意が形成されていることが前提です。

遺産分割協議書の作成代行が3〜5万円程度と、比較的リーズナブルです。

よくある質問(FAQ)

この記事のまとめ

遺産分割協議書は、相続手続きを円滑に進めるための重要な書類です。相続人全員の合意を正しく書面化することで、不動産登記や預貯金の名義変更が滞りなく行えるほか、相続税の特例や控除を受ける際にも欠かせません。特に2024年4月から施行される相続登記義務化に伴い、不動産は「死亡を知った日から3年以内」の登記申請が必須となります。期限を守れない場合は過料のリスクも生じます。早めに戸籍収集や財産目録を準備し、漏れやミスがないよう、必要に応じて弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談しながら、手続きを確実に進めましょう。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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遺産分割協議書

遺産分割協議書とは、相続人全員が話し合って決めた遺産の分け方を文書にまとめたものです。被相続人が遺言を残していない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合、相続人同士でどの財産を誰が受け取るかを決める必要があります。 その合意内容を正式に記録し、全員が署名・押印することで作成されるのが遺産分割協議書です。この書類は、相続した不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなど、実際の手続きを進める際に必須となることが多いため、非常に重要な役割を持ちます。作成の際は、相続人全員の同意が必要で、1人でも欠けていると無効になってしまう点に注意が必要です。資産運用においても、円満な財産の承継や手続きのスムーズ化に役立つ書類です。

被相続人

被相続人とは、亡くなったことにより、その人の財産や権利義務が他の人に引き継がれる対象となる人のことです。つまり、相続が発生したときに、その資産の元々の持ち主だった人を指します。たとえば、父親が亡くなって子どもたちが財産を受け継ぐ場合、その父親が「被相続人」となります。相続は被相続人の死亡と同時に始まり、相続人は法律や遺言の内容にしたがって財産を引き継ぎます。資産運用や相続対策を考える際、この「被相続人」という概念はすべての出発点となる重要な言葉です。

相続人(法定相続人)

相続人(法定相続人)とは、民法で定められた相続権を持つ人のことを指します。被相続人が亡くなった際に、配偶者や子ども、親、兄弟姉妹などが法律上の順位に従って財産を相続する権利を持ちます。配偶者は常に相続人となり、子がいない場合は直系尊属(親や祖父母)、それもいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。相続税の基礎控除額の計算や遺産分割の際に重要な概念であり、相続対策を検討する上で欠かせない要素となります。

遺産分割

遺産分割とは、亡くなった方が残した財産を、相続人たちがどのように分け合うかを決める手続きのことです。遺言書がある場合は、その内容に従って分けるのが基本ですが、遺言がない場合や一部しか書かれていない場合には、相続人全員で話し合って分け方を決める必要があります。分割の対象には、現金や不動産だけでなく、株式や投資信託などの金融資産も含まれます。 話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることもあります。遺産分割は、相続税の申告や資産の名義変更にも影響するため、早めの準備と手続きが大切です。

遺産分割協議

遺産分割協議とは、相続人が複数いる場合に、誰がどの財産をどのように受け取るかを話し合って決める手続きのことです。預貯金や不動産、有価証券などすべての遺産が対象になります。原則として相続人全員の合意が必要で、話し合いの結果を「遺産分割協議書」という文書にまとめて、全員が署名・押印します。遺言書がない場合や、遺言があっても一部の財産について分け方が指定されていないときに行われます。もし話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停手続きに進むことになります。

共有状態

共有状態とは、土地や建物などの財産を複数の人が一緒に所有している状態のことを指します。たとえば、相続によって一つの不動産を兄弟姉妹で受け継いだ場合、それぞれがその不動産の一部を所有する「共有者」となります。この状態では、共有者全員の同意がないと売却や建て替えといった大きな決定ができないことが多く、意思決定に時間がかかったりトラブルになることもあります。 特に不動産のような分けづらい資産では、共有状態が長期間続くと管理や利用に支障が出ることがあります。そのため、将来的には共有状態を解消し、誰か1人が単独で所有する「単独所有」や、持ち分を売却・分割するなどの対応が取られることもあります。

法定相続分

法定相続分とは、相続人が相続できる取り分について、民法であらかじめ定められている割合のことをいいます。 たとえば、被相続人に配偶者と子どもがいる場合、配偶者が2分の1、残りの2分の1を子どもたちが均等に分けるというように、法定相続分が設定されています。 相続人の組み合わせによって割合は異なり、たとえば「配偶者と親」が相続人の場合は、配偶者が3分の2、親が3分の1、「配偶者と兄弟姉妹」の場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1というように決まっています。 遺言書がある場合は、その内容が優先されますが、遺言がない場合や、遺産分割協議の目安として法定相続分が使われることが一般的です。 この割合はあくまで「基準」であり、相続人間の話し合いで異なる分け方をすることも可能です。

相続登記

相続登記とは、不動産を所有していた人が亡くなったときに、その不動産の名義を相続人へ変更する手続きのことです。この登記を行うことで、相続人が正式な所有者として法的に認められ、売却や担保設定などの権利行使が可能になります。これまでは義務ではありませんでしたが、2024年からは相続登記が法律上の義務となり、正当な理由なく放置すると過料(罰金)が科される可能性があります。 相続登記を行うには、戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類を用意し、法務局に申請する必要があります。不動産の相続が発生した場合には、早めに登記を済ませることで、後のトラブルを防ぎ、相続資産を円滑に活用できるようになります。

印鑑証明書

印鑑証明書とは、市区町村の役所にあらかじめ登録された印鑑(実印)が、確かに本人のものであることを証明する公的な書類です。たとえば、不動産の売買や自動車の登録、遺産分割協議書の提出など、法的効力を持つ重要な手続きにおいて、本人確認の一環として利用されます。印鑑そのものは簡単に複製できる可能性があるため、「この印影は確かに本人のものです」と自治体が公的に保証することで、取引や契約の信頼性を高める役割を果たしています。印鑑証明書の取得には、印鑑登録を済ませている必要があり、発行は原則として本人か代理人によって行われます。

契印

契印とは、契約書や合意書などが複数ページにわたる場合に、それらのページが差し替えられたり改ざんされたりしないようにするために、ページのつなぎ目に押す印のことを指します。たとえば、契約書が2枚以上あるときに、1ページ目の下端と2ページ目の上端にまたがるように印鑑を押すことで、「このページと次のページはひとつながりの正当な文書である」と証明します。契印は、印鑑証明書が必要な実印とは異なり、認印や会社の角印などが使われることも多いですが、法的トラブルを防ぐ意味で重要な役割を果たします。契印を押しておくことで、文書の信頼性と正当性を高めることができるのです。

割印

割印とは、同じ内容の契約書や文書を複数部作成し、それぞれの部を当事者が持つ場合に、それらが同一の文書であることを証明するために、2枚の文書の境目にまたがって押す印のことです。たとえば、契約書を2通作って一方を自分が、もう一方を相手が保管する際に、ページの間に印をまたがせて押すことで、これらが対になった正当な文書であると示します。割印には、文書のすり替えや差し替えを防ぐ目的があり、契印と同じく印鑑の信用性を高める役割を果たします。実印である必要はなく、認印や社印が使われることが一般的ですが、重要な契約では正式な印が使われることもあります。

財産目録

財産目録とは、自分や家族が所有している財産の内容を一覧にした書類のことです。現金や預金、不動産、有価証券(株式や債券)、自動車、貴金属などの資産のほか、住宅ローンや借金といった負債も含めて記載されます。遺言書に添付されたり、相続や贈与の際の準備資料として作成されたりすることが多く、遺族が財産の全体像を把握しやすくするために役立ちます。 資産運用の観点からも、自分の財産を整理し、どこに何があるかを明確にすることは、資産形成や老後の生活設計、相続対策などにおいて非常に重要です。財産目録を作っておくことで、将来のトラブルを未然に防ぎ、家族への安心にもつながります。

戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)

戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)とは、日本における家族関係を公的に証明する書類で、本籍地の市区町村役場で管理・発行されています。 相続手続きでは、誰が法定相続人であるかを確認するために必要不可欠な書類です。被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍をすべて取得することで、配偶者・子ども・親・兄弟姉妹など、関係する相続人を明らかにできます。 戸籍は複数の場所に分かれていることもあるため、「戸籍の取り寄せ」は相続手続きの最初のステップとして重要です。

住民票

住民票とは、日本国内に住所を有する人の氏名、生年月日、性別、住所などの情報を記録した公的な書類で、市区町村が作成・管理しています。これは個人がどこに住んでいるかを証明するためのもので、行政サービスや各種手続きを受ける際に必要となる基本的な身分証明書の一つです。 たとえば、年金・健康保険・税金・就職・進学・引っ越し・結婚・相続など、日常生活のさまざまな場面で提出を求められます。住民票は本人の分だけでなく、同一世帯の家族の情報を含む「世帯全員分」や、特定の情報のみを記載した「住民票の写し」として取得することも可能です。 役所の窓口のほか、マイナンバーカードがあればコンビニでも取得できます。住民票は「その人がどこで生活しているか」を公的に証明する、非常に基本的かつ重要な書類です。

住民票の除票

住民票の除票とは、ある人が引越しや死亡などによって、以前住んでいた住所から住民登録を移した場合に、元の市区町村に残される記録のことを指します。これは、もともとの住民票が「除かれた(除票された)」状態で保存されたもので、氏名や生年月日、旧住所、転出日などの情報が記載されています。通常の住民票とは異なり、すでにその場所に住んでいないことを示す証明書として、相続手続きや過去の居住確認、公的な申請の際に必要になることがあります。保存期間は法律上5年間とされており、それ以降は請求しても取得できないケースがあるため、必要なときには早めに取得しておくことが大切です。

相続税

相続税とは、人が亡くなった際に、その人の財産を配偶者や子どもなどの相続人が受け継いだときに課される税金です。対象となる財産には、預貯金や不動産、株式、貴金属、事業用資産などが含まれ、相続財産の合計額が一定の基準額を超えると課税対象となります。 相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があり、この範囲内であれば原則として税金はかかりません。しかし、資産規模が大きい場合や相続人の数が少ない場合には、課税対象となり、10%〜55%の累進税率が適用されます。 さらに、相続税にはさまざまな非課税枠や控除制度が設けられており、これらを適切に活用することで税負担を抑えることが可能です。代表的な制度には以下のようなものがあります。 - 生命保険金の非課税枠:法定相続人1人あたり500万円まで非課税 - 死亡退職金の非課税枠:生命保険と同様に1人あたり500万円まで非課税 - 債務控除:被相続人に借入金などの債務があった場合、その金額を控除可能 - 葬式費用の控除:通夜・葬儀などにかかった費用は、相続財産から差し引くことができる また、配偶者には配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)が認められており、適切に遺産分割を行えば、税額を大幅に減らすことができます。 相続税は、財産の種類や分割の仕方、受け取る人の立場によって税額が大きく変動するため、生前からの対策が非常に重要です。生命保険や不動産の活用、資産の組み替えなどを通じて、相続税評価額をコントロールすることが、家族への負担を減らし、スムーズな資産承継を実現するための鍵となります。

基礎控除

基礎控除とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律で適用される控除のことを指す。一定額の所得については課税対象から除外されるため、納税者の負担を軽減する役割を持つ。所得に応じて控除額が変動する場合もあり、申告不要で自動適用される。

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、相続税における特例の一つで、亡くなった方の配偶者が相続する財産について、一定の金額までは相続税が課されない、または大きく軽減される制度です。 具体的には、「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか大きい金額までの相続について、配偶者には相続税がかからないという非常に大きな優遇措置です。 これは、夫婦の共同生活によって築かれた財産を配偶者が引き継ぐことを社会的に保護するための制度です。配偶者がその後亡くなった場合に、残された財産が再度相続税の対象になるため、一時的な繰延べ的性格も持ちますが、結果として相続税の負担を大きく軽くする効果があります。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、相続が発生した際に、被相続人が居住や事業に使用していた土地について、一定の条件を満たせば、その土地の相続税評価額を大幅に減額できる制度です。主な目的は、相続税負担によって自宅や事業用不動産を手放すことを防ぎ、円滑な資産承継を支援することにあります。 たとえば、亡くなった方の自宅に配偶者や同居していた親族が引き続き居住する場合、その宅地の評価額を最大で80%まで減額できる可能性があります。事業用地や貸付事業に用いられていた土地についても、50%〜80%の減額が認められるケースがあります。この減額によって相続税の課税対象となる財産の価額が抑えられるため、納税資金の負担が軽減され、不動産を売却せずに相続を完了できる事例も多く見られます。 ただし、この特例の適用には、居住や事業の継続に関する要件、土地の面積制限(最大330㎡まで)など、細かな条件を満たす必要があります。また、相続税申告期限内に適用を受ける旨を申告することが必須であり、準備不足や誤解によって適用を逃すケースもあるため注意が必要です。 自宅や事業用不動産を含む資産を次世代に円滑に引き継ぐ上で、この特例は極めて重要な制度のひとつです。早めに対策を講じ、制度の内容を正しく理解したうえで、税理士など専門家のサポートを受けながら計画的に進めることが求められます。

未分割申告

未分割申告とは、相続が発生したものの、相続人同士で遺産の分け方(遺産分割)がまだ決まっていない状態のまま行う相続税の申告手続きのことです。相続税の申告期限は原則として相続開始から10か月以内と定められているため、たとえ話し合いが終わっていなくても、期限内に申告を行う必要があります。 このような場合、遺産全体を法定相続分に従って仮に分けたものとして相続税を計算し、申告と納税を行います。後日、遺産分割が確定した際には「更正の請求」や「修正申告」といった手続きによって、正しい内容に修正することができます。申告期限を守りながら柔軟に対応できる制度ですが、各種控除や特例が受けられなくなる可能性もあるため、注意が必要です。

更正の請求

更正の請求とは、すでに提出した確定申告書に誤りがあり、納め過ぎた税金が発生していると納税者自身が気付いた場合に、税務署へ修正を求めて還付を受ける手続きです。 原則として法定申告期限から5年以内に請求でき、追加で適用できる控除や所得計上の誤りを正すことで、正しい税額との差額が返金されます。 還付申告と似ていますが、こちらは一度提出した申告内容を「訂正」する点が特徴で、提出後に控除証明書が届いたり投資損失の繰越忘れに気付いたりしたときに役立ちます。e-Tax経由でも郵送でも手続きでき、請求が認められると登録口座へ還付金が振り込まれます。

弁護士

弁護士とは、法律に関する問題について助言や代理を行うことができる、国家資格を持った法律の専門家です。 相続においては、遺産分割協議がまとまらない場合や、遺留分を巡るトラブル、遺言の無効主張、相続放棄の手続きなど、法的な対応が必要な場面で頼れる存在です。必要に応じて、調停や訴訟の代理人として交渉や手続きも代行してくれます。 相続人同士での意見の対立や紛争があるとき、また法的に複雑な問題が関係する場合には、早い段階で弁護士に相談することでトラブルを最小限に抑えることができます

司法書士

司法書士とは、不動産の名義変更や会社設立などの登記手続き、さらには裁判所に提出する書類の作成などを専門に扱う法律の専門家です。 相続の場面では、相続登記(不動産の名義変更)を代行したり、家庭裁判所への遺産分割調停申立書や遺言書の検認申立書などの作成を支援したりするなど、法的手続きをスムーズに進める役割を担います。 また、成年後見制度の申立てや、商業登記(会社役員変更など)にも対応できるため、相続以外の場面でも幅広くサポートを受けられます。特に相続に関する不動産がある場合、登記の専門家である司法書士の力は欠かせない存在です。

税理士

税理士とは、税金に関する専門的な知識と国家資格を持ち、税務申告や相談、書類作成などを行うことができる税務のプロフェッショナルです。 税理士には、税金の計算・申告を代理する「申告代理」、税務書類を作成する「書類作成」、税務に関する相談を受ける「税務相談」といった独占業務があります。 相続の場面では、相続税の申告や節税対策、複雑な財産評価、各種税務特例の適用などをサポートしてくれる、心強い存在です。さらに、税務署とのやりとりや税務調査への対応も税理士の重要な役割の一つです。 また、生前贈与や不動産の活用、法人化などを含む将来を見据えた資産設計についても、税務の観点からアドバイスを受けることができます。 税理士は弁護士や司法書士などと連携しながら、税金という専門領域を通じて、円滑で安心な相続手続きを支えてくれる存在です。

行政書士

行政書士とは、主に官公署に提出する書類を作成したり、手続きを代行したりする国家資格を持つ専門家です。資産運用や相続に関しては、遺産分割協議書の作成や相続手続きの支援、遺言書の文案作成など、法律に基づいた書類作成を通じてサポートします。 弁護士や司法書士とは違い、基本的には「書類作成の専門家」として業務を行うため、争いごとに直接関与することはできませんが、相続や許認可手続きなどの実務面で頼れる存在です。投資や相続に関わるさまざまな制度やルールをわかりやすく説明し、手続きを円滑に進める橋渡し役として活躍しています。

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