ブラックロックはやばいと聞いたのですが、どんなところがやばいのでしょうか?
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2025/08/15 08:42
男性
30代
ブラックロックという世界最大級の資産運用会社について、「やばい」と聞いたのですが、実際のところ何が問題視されているのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
ブラックロックは世界最大級の資産運用会社で、ETF(iShares)や投資信託、年金・機関投資家向け運用、運用プラットフォーム(Aladdin)など幅広い事業を展開しています。2025年4〜6月期の運用資産残高(AUM)は約12.5兆ドルに達しており、その規模と影響力は他の運用会社と比べても突出しています。
「やばい」と言われる背景には、いくつかの論点があります。まず、規模の大きさゆえに上場企業の大株主になることが多く、議決権が特定の大手運用会社に集中するというコーポレート・ガバナンス上の懸念があります。次に、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する方針や議決権行使が、米国では保守派から「政治的すぎる」と批判され、環境保護派からは「踏み込み不足」と批判されるなど、二正面からの政治的圧力を受けやすい点です。
さらに、過去には米連邦準備制度(FRB)が社債や社債ETFの購入業務を委託した際、自社ETFが対象に含まれたことで、利益相反の可能性が指摘されました。また、中国関連企業への投資が米議会で問題視され、地政学的なリスクが取り沙汰されたこともあります。
同社のリスク管理・運用基盤「Aladdin」は世界中の多くの機関が利用しており、効率性は高い反面、市場全体の運用が同質化するリスクや依存度の高さも懸念されています。さらに、iSharesの多くのファンドは保有株式を貸し出して貸株収益を得ていますが、その過程で相手先の返済リスクや担保資産の運用リスクが発生します。
こうした点は「会社そのもののリスク」というより、「商品レベルのリスク」として投資家が確認・管理できるものが多いのも事実です。個人投資家は、会社全体の評判だけで判断せず、具体的に投資するファンドの目論見書を確認し、投資対象や地域(中国比率など)、貸株の有無や条件、費用や運用の追随性をチェックすることが重要です。
また、自分の投資方針と議決権ポリシーの相性や、資産の分別管理の仕組みも把握しておく必要があります。資産は通常、運用会社とは別の保管機関で管理され、運用会社の経営状況とは切り離されますが、市場の急変による価格変動や流動性の低下は避けられません。
総じて、ブラックロックは規模と影響力ゆえに政治的・社会的な議論の対象となりやすい会社ですが、実際の投資判断では、各ファンドの中身やリスク構造を把握することが重要です。目的や投資期間、許容できるリスクに合わせて商品を選べば、過度に恐れる必要はありません。
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