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SPIVA(スピーバ)とは?インデックス vs アクティブの実力を示すベンチマーク比較レポート

SPIVA(スピーバ)とは?インデックス vs アクティブの実力を示すベンチマーク比較レポート

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執筆者:

公開:

2025.06.24

更新:

2025.06.24

アクティブファンドは本当にインデックスを上回れるのか。この問いに対して、短期の成績だけでは正確な答えは出せません。投資判断において重要なのは、勝率、生存率、コストといった長期的な視点でのデータです。

これらを体系的に比較できる指標が、世界的に参照されているベンチマーク比較レポート「SPIVA(スパイバ)」です。生存バイアスを排除し、各資産クラスごとにアクティブ運用の現実を明らかにします。本稿では、最新のSPIVA日本版2024年のデータをもとに、多くのアクティブファンドが指数に勝てない背景を読み解きます。あわせて、インデックスを軸とした合理的なポートフォリオ設計の考え方についても解説します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むことで、アクティブファンドが長期でインデックスに勝ちづらい理由である「コスト構造」「市場の効率性」「サバイバーバイアス」の仕組みが、納得感をもって理解できるようになります。また、インデックスを資産設計の中核に置きつつ、勝率の高い領域に限定してアクティブを補完する戦略を、自分の言葉で説明できるようになります。アンダーパフォーマンス率や生存率といった統計を手がかりに、短期のランキングではなく再現性のある視点でファンドを選び、新NISAを含む資産配分の判断にも明確な軸を持てるようになるはずです。

目次

SPIVA(S&P Indices Versus Active)の概要

発行元(S&P Dow Jones Indices)と評価の信頼性

調査の対象範囲(国別/資産別)

SPIVAで何がわかる?代表的な評価指標とその見方

アンダーパフォーマンス率:アクティブ運用の実力を示す中核指標

生存率:長期で残るファンドは意外と少ない

平均リターン:全体の傾向としてベンチマーク未満が多数派

リスク調整後リターン:ボラティリティを加味しても形勢は変わらず

まとめ|SPIVAは「アクティブとインデックスの選別眼」を磨くための実戦データ集

実際のデータで見るSPIVA日本版(最新版の要約)

2024年の主なハイライト:国内はやや健闘、海外は依然厳しい状況

国内 vs 米国株ファンドの構図:円安下でも指数に届かず

長期での勝率推移:時間が経つほど指数に勝てない

償還ファンドの割合:見えにくい「消えたファンド」に注目

まとめ|SPIVAが突きつける、アクティブ運用の「数字の現実」

SPIVAが示す現実|なぜアクティブファンドは勝ちづらいのか

コスト構造のハンデ|手数料(信託報酬)の影響

情報優位の喪失|市場効率性の高まり

サバイバー・バイアスの排除|見えない損失を可視化する

まとめ|アクティブファンドが勝てないのは「仕組みの宿命」

SPIVAの使い方|アクティブファンド選び・インデックス活用への実践的ヒント

インデックスファンドの優位性を裏付けるエビデンスに

長期的なリターン差をどう資産設計に活かすか

SPIVA(S&P Indices Versus Active)の概要

SPIVA(スピーバ)は「S&P Indices Versus Active」の略称で、インデックス運用 vs アクティブ運用のパフォーマンスを比較分析する定期レポートです。世界的な指数提供会社であるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が2002年に米国版を初刊行して以来、パッシブ運用とアクティブ運用の議論で高い注目を集める調査となっています。

SPIVAでは各国・地域のアクティブファンドの成績をS&P社の代表的なベンチマーク指数と突き合わせ、アクティブファンドが指数に勝ったか負けたかを統計的に示します。現在では米国・欧州・日本・インド・南アフリカなど世界各地を対象に定期的に発行されており、アクティブ運用の実力を客観的に測る代表的なデータとなっています。

SPIVAレポートでは、それぞれの市場・資産クラスごとに対応するベンチマークを設定し、ファンドのパフォーマンスを様々な投資期間(1年、3年、5年、10年、15年など)で比較します。例えばSPIVA日本版では、日本籍の大型株・中型株・小型株ファンドに加え、国際株式ファンドやグローバル株式ファンドといった主要カテゴリーを対象とし、それぞれ対応するS&P指数(大型株ならS&P/TOPIX 150指数等)に対する1年~15年の相対成績を測定しています。こうしたデータにより、「アクティブファンドがベンチマークに対してどの程度優劣を示しているか」を客観的に把握することができます。

発行元(S&P Dow Jones Indices)と評価の信頼性

SPIVAレポートを発行しているのは、S&P500やダウ平均株価で知られる世界的な指数算出機関、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(S&P DJI)です。同社はパッシブ運用向けの指数ライセンス収益を柱の一つにしているため、「インデックス運用寄りの立場ではないか」という見方があるのも事実です。

しかし、SPIVAに対しては、業界内でも高い評価が確立しており、その信頼性や透明性について大きな批判は見られません。これは、長年にわたりデータの精度向上やバイアス排除に努めてきた姿勢によるもので、単なる指数プロバイダーの枠を超えた調査機関としての地位を築いています。

SPIVAの信頼性を支える主なポイントは、次のとおりです。

生存バイアスの排除

調査対象には、途中で清算・統合などにより消滅したファンドも含まれています。多くの調査が「生き残ったファンド」のみを扱うのに対し、SPIVAはすべてのファンドを網羅することで、市場全体の実態を過不足なく反映しています。

資産加重リターンの提示

リターン集計においては、単純平均(均等加重)だけでなく、資産規模に応じた加重平均も併記されます。これにより、投資家資金が集中する大型ファンドの影響を正確に捉え、実態に近い評価が可能となっています。

適切なベンチマーク設定

アクティブファンドの運用スタイルごとに、最も適切なベンチマーク指数を選定しています。たとえば小型株ファンドには小型株指数を当てるなど、スタイルミスマッチによる比較の歪みを回避する工夫がなされています。

スタイル一貫性のチェック

ファンドが当初の運用方針から逸脱していないかもモニタリングされており、同じカテゴリー内で公正な比較ができるよう設計されています。運用スタイルの変化が与える影響を排除し、純粋な運用成績の比較が可能です。

このように、S&P DJIは厳密かつ透明な手法によりSPIVAを作成しており、そのデータの客観性と信頼性は業界でも非常に高く評価されています。アクティブファンドの実力を冷静に見極める上で、SPIVAは欠かせない基準の一つといえるでしょう。

調査の対象範囲(国別/資産別)

SPIVAの調査対象は国・地域ごとに設定され、その国に本拠を置く公募ファンドが網羅的に含まれます。現時点で米国、カナダ、欧州、日本、オーストラリア、インド、新興国市場など多岐にわたる地域版SPIVAが公開されており、各地域の投資信託の成果をそれぞれの代表的指数と比較できるようになっています。

調査対象の資産クラスは主に株式ファンドですが、一部地域では債券や不動産(REIT)まで含む例もあります。例えばSPIVAオーストラリア版では株式ファンドだけでなく不動産・債券ファンドのパフォーマンスも報告されており、各資産クラスごとにアウトパフォーム率や生存率が公表されています。一方、SPIVA日本版は基本的に株式型ファンドに焦点を当てています。国内大型株・中小型株ファンドおよび外国株式ファンド(グローバル株式、米国株式、国際株式〈日本除く先進国〉、新興国株式)の主要カテゴリーが対象となり、それぞれ該当するベンチマーク指数に対するパフォーマンスが比較されています。各カテゴリーには対応するS&P指数(例えば日本大型株=「S&P/TOPIX 150指数」、新興国株式=「S&P 新興国BMI」など)が割り当てられ、ファンドのリターンがその指数を上回ったか下回ったかが測定されます。

以上のように、SPIVAは世界各国の様々な資産クラスにおける「インデックス vs アクティブ」の勝敗を網羅的にカバーする枠組みであり、投資家は自分の関心地域・資産のデータを参照することができます。

SPIVAで何がわかる?代表的な評価指標とその見方

アンダーパフォーマンス率:アクティブ運用の実力を示す中核指標

SPIVAで最も注目される指標の一つが「アンダーパフォーマンス率」です。これは、ベンチマーク指数に対してリターンが劣ったアクティブファンドの割合を示すもので、平たく言えば「市場平均に勝てなかったファンドの比率」です。

この割合が高いほど、多くのアクティブファンドがインデックスを下回ったことになり、アクティブ運用全体が苦戦していることを意味します。逆に、低ければ多くのファンドがベンチマークを上回ったことを示します。

アクティブファンドの特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。

たとえばSPIVA日本版2024年によれば、日本大型株ファンドのアンダーパフォーマンス率は62%。つまり、全ファンドの6割超がベンチマーク(S&P/TOPIX 150)に敗れ、勝てたのはわずか38%にとどまりました。

海外株式ファンドではさらに厳しく、同年のデータではアンダーパフォーマンス率が78〜91%に達しています。つまり、指数を上回ったファンドは1〜2割に過ぎません。

このように、アンダーパフォーマンス率はアクティブ運用の「現実の勝率」を端的に示す指標として、SPIVAの中でも最も象徴的な役割を果たしています。

生存率:長期で残るファンドは意外と少ない

「生存率」は、調査期間を通じてファンドが清算・統合されずに存続した割合を示す指標です。多くのアクティブファンドは、成績不振などを理由に市場から退場しており、運用の継続自体が一つのハードルとなっています。

SPIVAでは、途中で消滅したファンドも含めて分析を行うため、生存者のみを対象とした「サバイバー・バイアス」が排除されています。

例えば2024年のSPIVA日本版によれば、直近1年では清算や統合に至ったファンドは5.0%にとどまり、生存率は約95%。短期的には多くのファンドが残存している状況です。しかし、これを15年スパンで見ると状況は一変します。2009年初時点で存在していたファンドのうち、2024年末まで生き残ったのはわずか46%。実に半数以上が途中で姿を消しています。

このように、SPIVAの生存率データは「長期で信頼できるアクティブファンドがどれほど少ないか」を如実に示しており、運用の継続性という観点からもアクティブ投資の難しさを物語っています。

平均リターン:全体の傾向としてベンチマーク未満が多数派

SPIVAでは勝率だけでなく、ファンド群全体の平均的なリターンも公表されています。特に注目すべきは、以下の2種類の平均値です。

  • 均等加重平均:すべてのファンドを同等に扱った単純平均
  • 資産加重平均:各ファンドの純資産残高に基づき、資金量に応じて重み付けした平均

これらをベンチマークと比較することで、「ファンド群全体が市場平均と比べてどうだったか」が把握できます。

たとえばSPIVA日本版2024年では、日本大型株ファンドの平均リターンは以下の通りでした。

  • 均等加重平均:+20.3%
  • 資産加重平均:+19.5%
  • 対応ベンチマーク(S&P/TOPIX150):+22.0%

いずれもベンチマークを下回っており、「平均的なファンドですらインデックスに劣っている」状況が見て取れます。さらに、新興国株式ではその差が顕著で、均等加重+14.8%、資産加重+18.3%に対し、S&P新興国BMIは+24.8%。大きな差がついています。

また、多くのケースで資産加重平均の方が低いという傾向もあり、大口資金が流入する人気ファンドほど指数を下回りやすい構造が浮き彫りになります。

リスク調整後リターン:ボラティリティを加味しても形勢は変わらず

「アクティブファンドはリスクを抑えているから、リターンが低くても仕方がない」という見方に対して、SPIVAではリスク調整後の評価も行っています。具体的には「Risk-Adjusted SPIVA」と呼ばれる別レポートで、シャープレシオ(リターン÷標準偏差)を用いて、ファンドの効率性を測定しています。

たとえば、米国株式ファンドを対象とした2020年末のRisk-Adjusted SPIVAでは、多くのファンドがボラティリティ調整後でもベンチマークを上回れなかったと報告されています。

つまり「リスクを抑えた代償でリターンが低い」わけではなく、リスクも調整したうえで、なおベンチマークに劣後しているという現実が示されているのです。ごく一部、指数並みの成績を残したファンドも存在しますが、統計的には例外にとどまり、アクティブファンド全体としての優位性は確認されませんでした。

トラッキングエラーの基礎についてはこちらのFAQもご参照ください。

まとめ|SPIVAは「アクティブとインデックスの選別眼」を磨くための実戦データ集

SPIVAは、アンダーパフォーマンス率、生存率、リスク調整後リターンなど、アクティブ運用の成果を多角的に検証する信頼性の高いデータベースです。日本株・米国株・新興国株といった市場ごとの勝率差、ファンドの継続性、過去の上位成績がいかに再現されにくいかといった「数字の現実」は、インデックス投資の優位性を浮き彫りにします。

だからこそ、アクティブファンドを検討する際は「どの市場でアクティブが通用しているか」「何年程度の実績が再現性を示しているか」といった視点が不可欠です。たとえば、日本の大型株はインデックス中心で構成し、中小型株やテーマ型に限定してアクティブを検討する、という戦略もSPIVAのデータがあってこそ合理的に判断できます。

SPIVAは単なる比較表ではありません。市場環境の変化とともに毎年アップデートされるこのデータは、あなたの資産配分やファンド選定方針を定期的に見直す「基準点」として活用できます。感覚やランキングではなく、再現性あるデータに基づく運用判断こそ、長期投資の成果を左右する分岐点となるのです。

運用方式ごとの活用法については、以下の記事で詳しく解説しています。

実際のデータで見るSPIVA日本版(最新版の要約)

2024年の主なハイライト:国内はやや健闘、海外は依然厳しい状況

2024年のSPIVA日本版レポートによると、アクティブファンド全体にとっては依然として厳しい1年となりました。調査対象となったすべてのファンドカテゴリーで、過半数が各ベンチマークをアンダーパフォームしています。

国内株式ファンドでは、前年と比べて若干改善が見られ、日本大型株ファンドでは62%、中小型株ファンドでは57%がベンチマークを下回りました。依然として「過半数が劣後」という構図に変わりはないものの、国内市場では相対的に健闘が見られたといえるでしょう。

一方、海外株式型ファンドでは、より深刻な結果が続いています。アンダーパフォーマンス率は78%〜91%に達し、特に米国株、新興国株などで多くのファンドが指数に大きく劣後する結果となりました。図表1では各カテゴリーのアンダーパフォーマンス率が一覧で確認できますが、2024年は特に海外投資型ファンドの不振が際立つ年だったといえます。

国内 vs 米国株ファンドの構図:円安下でも指数に届かず

2024年の詳細を見ると、国内株式ファンドと外国株式ファンドで明暗が分かれました。

特に目立ったのは、日本籍の米国株ファンドの大苦戦です。円安の追い風を受けて、S&P500(日本円ベース)は+39.4%という極めて高いパフォーマンスを記録しましたが、それでも78%のファンドがこの上昇に追いつけず、前年より12ポイントもアンダーパフォーマンス率が悪化しました。10年・15年といった長期スパンでは、91%ものファンドがベンチマークに勝てていません。米国市場の効率性の高さが、アクティブ運用にとっての難しさを改めて浮き彫りにしています。

一方、国内株ファンドはやや善戦。S&P日本500指数が+20.7%上昇したなかで、日本大型株ファンドでは38%がベンチマークを上回り、前年より改善が見られました。中小型株ファンドでは43%がベンチマーク超えを達成し、全カテゴリーの中で最も勝率が高くなっています。

とはいえ、それでも過半数のファンドは指数未満であり、「アクティブ優位は一部にとどまる」という点に変わりはありません。

長期での勝率推移:時間が経つほど指数に勝てない

SPIVAの重要な示唆の一つが、投資期間が長くなるほどアクティブファンドの勝率が下がるという事実です。

たとえば日本大型株ファンドの場合、1年では38%がベンチマークを上回ったものの、5年・10年・15年と期間が長くなるにつれて勝率は大きく低下。15年では80%以上のファンドが指数を下回るという結果に至っています。

日本中小型株ファンドでも同様の傾向が見られ、1年では43%が勝っていたのに対し、10年で47%、15年では33%と、長期になるほど勝率が下がっています。

海外株式型ではさらに顕著です。米国株ファンドの15年勝率はわずか9%、新興国株ファンドに至っては10年時点で全ファンドがベンチマーク未満という衝撃的なデータも。国際株式やグローバル株式カテゴリーも同様で、15年間で98〜100%が指数未満に終わっています。

これらのデータは、「短期的に勝てるファンドは存在しても、長期的に勝ち続けるのは極めて稀」であるというSPIVAの核心を示しています。時間の経過とともに、アンダーパフォーマンス率は漸増し、勝ち残れるファンドはごく一部に限られるのです。

償還ファンドの割合:見えにくい「消えたファンド」に注目

SPIVAの読み解きで見逃せないのが、「生存率」と表裏一体のファンドの償還率です。これは、ある期間に市場から消えたファンド(清算・統合等)の割合を示すもので、表面上の平均成績を押し上げる「生存者バイアス」の影響を具体的に示します。

2024年のSPIVA日本版では、調査対象ファンド全体のうち5.0%が年途中で償還・統合されました。カテゴリー別では、日本大型株ファンドで6.7%とやや高く、新興国株式ファンドでは1.8%と低水準にとどまりました。ちなみに新興国株ファンドは2022〜2023年にかけて10%以上の高い清算率を記録していましたが、2024年は一転して改善が見られました。

ただし、15年という長期で見れば、日本のアクティブファンドの54%が市場から消滅しており、半数以上が姿を消しているのが現実です。

償還されたファンドは、たいてい運用成績が振るわないものが多く、表に残る「生き残ったファンドの成績」だけを見て投資判断をするのは危険です。SPIVAはこうしたファンドも網羅した統計を示すことで、実態に近いパフォーマンス評価を可能にしているのです。

まとめ|SPIVAが突きつける、アクティブ運用の「数字の現実」

2024年のSPIVA日本版が明らかにしたのは、国内株ファンドの中でも中小型株にわずかな善戦の余地がある一方で、大型株や海外株ファンドではアクティブ運用が指数に継続して敗れ続けているという厳しい現実です。さらに、運用期間が長くなるほどアンダーパフォーマンス率は上昇し、「時間の経過」がアクティブの不利をより強く突きつけてきます。

データは雄弁です。SPIVAは、短期の好成績や人気ランキングに惑わされることなく、「長期で勝ち続けることの難しさ」や「ファンドが生き残ること自体の難しさ」を、冷静かつ具体的な数字で可視化してくれます。

だからこそ、投資判断においては「どこでインデックスを使い、どこでアクティブを許容するか」を戦略的に考える視点が欠かせません。SPIVAは、表面的な情報に流されず、自分のポートフォリオ戦略を合理的に組み立てるための「信頼できる比較基準」となるでしょう。

SPIVAが示す現実|なぜアクティブファンドは勝ちづらいのか

なぜ多くのアクティブファンドはインデックスに勝てないのか。SPIVAが示す冷静なデータの背後には、運用の巧拙だけでは片づけられない、根深い構造的な要因が存在します。ここでは、アクティブファンドが抱える「勝ちづらさ」の本質について、代表的な理由を順に解説していきます。

コスト構造のハンデ|手数料(信託報酬)の影響

アクティブファンドがインデックスに勝ちづらい最大の要因のひとつは、「コストの高さ」にあります。一般に、アクティブ運用の投資信託は年1%前後の信託報酬がかかるのに対し、インデックスファンドは年0.1〜0.3%程度と極めて低水準です。

つまり、アクティブファンドは毎年1%程度のコストという“ハンディキャップ”を背負った状態で競争をスタートしていることになります。仮に市場と同等の運用成績を上げたとしても、その1%分だけ確実にインデックスを下回ることになるのです。

この「1%の差」は、年単位では小さく見えても、10年、15年といった長期では資産に与える影響は甚大です。実際、SPIVAで示されるアクティブファンドのアンダーパフォーマンスの多くは、この構造的なコスト要因に起因していると考えられます。

インデックスファンドが「市場の平均リターンからごく小さなコストを引いたもの」を提供しているのに対し、アクティブファンドは「市場を上回る運用」を目指しながら、高コストというハードルも同時に乗り越える必要があります。このコストの壁こそが、アクティブ運用の勝率を押し下げる本質的な理由の一つです。

情報優位の喪失|市場効率性の高まり

もうひとつの構造的な障壁は、市場の情報効率性の向上です。今日の金融市場では、企業の決算情報やマクロ指標といった公開情報は即座に株価に反映されるようになっており、誰もが同じ情報にアクセスできる時代です。

市場が「セミストロング型以上の効率性」を持つ状況では、公開情報に基づいた銘柄選定(ファンダメンタル分析)では持続的な超過収益(アルファ)は得にくいというのが金融理論の基本的な考え方です。

かつては、アクティブファンドが独自のリサーチにより「割安銘柄」を見つけ出し、市場平均を上回る成績を残すこともありました。しかし今では、機関投資家・個人投資家・AIシステムがほぼリアルタイムで情報を分析・売買しており、「情報優位性」は消失しつつあります。

特に米国市場や日本の大型株市場のように成熟度と流動性が高い市場では、明白なミスプライス(誤った株価評価)はすぐに解消され、アクティブファンドが継続的にアウトパフォームするのは非常に困難です。

もちろん、市場が完全に効率的なわけではなく、中小型株や新興国などの相対的に非効率な市場では、依然として分析力が結果を左右する余地もあります。しかし、SPIVAのデータは、そうした市場でも「多数派のアクティブファンドは指数に勝てていない」ことを示しています。

「非効率な市場ならアクティブファンドが有利」という希望的観測は、統計的には裏付けが弱く、情報格差が縮小した現在において、アクティブファンドが優位性を保つことは構造的に難しくなっているといえます。

サバイバー・バイアスの排除|見えない損失を可視化する

アクティブファンドの実力を過大評価してしまうもう一つの原因が、「サバイバー・バイアス(生存者偏向)」です。メディアやSNSで取り上げられるのは、たいてい好成績を上げた一部のファンドに過ぎず、成績不振で償還されたファンドは話題にすらなりません。

しかし、その「表に残った好成績ファンド」の裏には、多数の“沈んだファンド”の存在があります。成績の悪いファンドは繰上げ償還で市場から姿を消し、その結果、実際の運用環境よりもアクティブ運用が有望に見えてしまうのです。

SPIVAの強みは、こうしたサバイバー・バイアスを徹底的に排除している点にあります。2024年の日本市場においても、過去15年間で全ファンドの54%が償還・統合などで消滅しており、残ったファンドだけを見るのでは実態を見誤ります。

例えば「勝率46%」という数値を見て「意外と善戦している」と感じるかもしれませんが、それは消えたファンドを含めていない評価です。現に残っているファンドの中にも、将来消えるものが含まれており、長期的にはさらに勝率が下がっていくことが予測されます。

SPIVAは、こうした「見えない損失」や「沈んだファンドの足跡」をも可視化することで、投資家に冷静で現実的な視座を提供しています。「成功ファンドのストーリー」だけでなく、「市場の平均的な結末」を知ることこそが、投資判断にとって不可欠なのです。

まとめ|アクティブファンドが勝てないのは「仕組みの宿命」

アクティブファンドがインデックスファンドに継続して勝てない理由は、単なる運用者の腕前ではなく、構造的に不利な仕組みに起因しています。SPIVAのデータは、その背景にある3つの要因を浮き彫りにしています。

  • 高コスト構造:信託報酬などの運用コストは毎年確実に差し引かれ、長期的にリターンの足かせとなる
  • 市場の効率性:情報が瞬時に織り込まれる市場では、割安銘柄を見つけて利益を上げ続けることは極めて困難
  • 評価の厳しさ:成績不振で市場から姿を消したファンドも含めた“全体ベース”での比較が、現実を正確に反映している

これらを踏まえれば、アクティブファンドの勝率が低いのは偶然ではなく、「必然」として理解すべきです。

SPIVAは、目立つ成功例ではなく、市場全体の平均像を客観的な数値で示してくれる貴重な指標です。ファンドを選ぶ際には、過去の短期成績に一喜一憂するのではなく、なぜインデックス運用が優位になりやすいのかという仕組みへの理解を深めることが、長期投資の納得感と再現性を高める判断軸となるでしょう。

SPIVAの使い方|アクティブファンド選び・インデックス活用への実践的ヒント

SPIVAは、ただのパフォーマンス比較データではありません。アクティブファンドとインデックスファンドの「実力差」を数値で示すことで、投資判断に実践的な示唆を与えてくれる重要な指標です。このセクションでは、SPIVAのデータをどのように読み解き、アクティブファンドの選別やインデックスファンドの活用、そして長期的な資産設計にどう活かしていけるかを解説します。

アクティブとパッシブのどちらがいいかの判断軸についてはこちらのFAQもご参照ください。

アクティブファンドを選ぶ際の「目利き」の補助線

アクティブファンドを選ぶうえで、SPIVAのような客観的なベンチマーク比較データは、冷静な判断軸を与えてくれます。とくに重要なのは、「どの市場や資産クラスでアクティブ運用が比較的成功しているのか」を把握することです。

たとえば日本株ファンドの中でも、運用対象の規模によって明確な差が見られます。2024年のSPIVA Japanによれば、日本の大型株ファンドのうち、インデックス(S&P/TOPIX 150)にアンダーパフォームした割合は1年で62%、5年・10年・15年といった長期ではいずれも80%を超えており、長期的にインデックスに勝つことが非常に難しい領域であることが浮き彫りになっています。

一方で、中小型株ファンドのアンダーパフォーマンス率は1年で57%、10年でも53%にとどまり、他の国内株式カテゴリーに比べてアクティブ運用の勝率が高くなっています。この差は、アクティブファンドの“選びやすさ”が市場によって異なるという現実を示しています。

出典:SPIVA

また、SPIVAは「短期の好成績が継続しにくい」という事実も教えてくれます。S&Pが同時に公表している「パーシスタンス・スコアカード」によると、前年にリターン上位25%だったファンドの多くは、翌年以降にその成績を維持できていません。たとえば、欧州株ファンドで4年連続上位に残れたのは2.77%、新興国株では0%、米国株でもわずか1.41%にすぎません。

このことは、「過去に優秀だったから今後も安心」とは限らないことを示しています。ランキングや直近の成績だけで選ぶのではなく、SPIVAのような長期・網羅的なデータをもとに「どの市場で」「どの程度の実績なら信頼できるか」を見極める姿勢が、アクティブファンド選びの精度を高めるのです。

インデックスファンドの優位性を裏付けるエビデンスに

SPIVAのデータは、インデックスファンドを中核に据える投資戦略の有効性も強力に裏づけています。多くのカテゴリーで、アクティブファンドの大半が市場平均に届いていないという現実は、「市場平均を確実にとらえること」が投資の成功率を高めることを示しています。

たとえば、SPIVA米国版(2024年)では、米国株大型ブレンド型ファンドの10年アンダーパフォーマンス率は約95%に達しました。これはつまり、S&P500に連動するインデックスファンドに投資していれば、上位5%以内に入るパフォーマンスを自然に得られる計算です。

日本の米国株ファンドでも10年で91%が指数に負けており、インデックス連動のシンプルな戦略が、結果的に上位9%となるようなパフォーマンスを出していたことになります。

インデックスファンドは、市場のリターンそのものを再現するため、上振れもなければ下振れも基本的にはありません。しかし、それでも多くのアクティブファンドがその平均に届かない現実を見れば、低コストで市場水準を確保できる戦略の価値は揺るぎないといえるでしょう。

こうした背景から、多くの長期投資家は、コア・サテライト戦略においてインデックスファンドを中核(コア)に据え、信頼できる一部のアクティブ戦略を補完的(サテライト)に活用する設計を選んでいます。SPIVAのデータは、その選択に対して統計的な後押しを与えてくれる存在です。

NISAでも使えるコア・サテライト戦略についてはこちらのFAQもご参照ください。

長期的なリターン差をどう資産設計に活かすか

アクティブファンドが毎年わずかでもインデックスに劣後していれば、その差は長期的に無視できない規模へと拡大します。仮に年率で2%の差があった場合、30年後にはインデックス運用の資産が約7.6倍に成長するのに対し、アクティブ運用では約4.3倍にとどまります。小さな差に見えても、時間の力がその違いを大きくします。

この現実をふまえると、資産配分を設計する際には「どこでインデックスを使い、どこでアクティブを許容するか」を戦略的に見極める必要があります。特に、長期目線の初心者や中級者にとっては、インデックス運用を資産形成の軸とし、「明確な理由がある場合に限ってアクティブを組み入れる」姿勢が、合理的かつ再現性のある選択です。

SPIVAのデータを活用すれば、たとえば以下のような判断軸が得られます。

  • 日本株の大型ファンドは、アクティブの勝率が低く、インデックス中心の構成が妥当
  • 新興国株はボラティリティが大きいため、インデックスを基本に据えつつ、厳選されたアクティブファンドを慎重に組み入れる余地あり
  • 中小型株ファンドは比較的アクティブ運用の勝率が高く、リサーチの裏付けがあれば検討価値がある

このように、客観的なデータに基づいて市場ごとの特徴を見極めることで、ポートフォリオ全体の期待リターンとリスクをバランスよく設計することが可能になります。

さらに、SPIVAは年次で更新されるため、資産配分の「検証データ」としても有効です。市場環境やファンドの性質が変化するなか、定期的にデータをもとに戦略を見直す習慣は、長期投資の成功を支える重要な要素となるでしょう。

よくある質問(FAQ)

この記事のまとめ

SPIVAの客観データは、インデックス中心の長期戦略が合理的であることを裏付けます。大型株や海外株は指数を軸に、中小型株など比較的勝率が高い領域でのみアクティブを厳選する設計が現実的です。迷ったら、本記事で示した指標を再確認し、専門家へポートフォリオ診断を相談しましょう。データを基点にした対話は手数料やリスクを見える化し、納得感のある次の一歩を後押ししてくれます。

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SPIVA(スパイバ)

SPIVA(スパイバ)とは「S&P Indices Versus Active」の略で、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが定期的に発表しているレポートのことです。このレポートでは、アクティブ運用の投資信託が、S&Pのような市場平均を示すベンチマークと比べて、どの程度の成績を上げているかが示されます。 つまり、プロのファンドマネージャーが運用する投資信託が、市場平均に勝っているのか、それとも負けているのかを確認するための資料です。多くの国や地域を対象にしたデータがあり、アクティブ運用とパッシブ運用を比較するときによく使われます。特に、長期的には市場平均に勝てるアクティブファンドが少ないという結果がよく示されることから、投資判断の参考として非常に重要です。

インデックス運用

インデックス運用は、市場全体の動きを示す指標(インデックス)に連動するように設計された運用手法です。例えば、日経平均株価やS&P500などのインデックスに基づき、同様の構成比率で資産を運用します。 市場全体に投資するためリスク分散が図りやすく、運用コストが低いのが特徴です。一方で、大きな利益を狙うというよりも、市場平均と同程度のリターンを目指す保守的な運用スタイルです。

アクティブ運用

アクティブ運用は、日経平均やNASDAQなどの市場指標(ベンチマーク)を上回る運用成績を目指す投資手法です。この手法では、ファンドマネージャーが特定の銘柄やセクターを積極的に選別して投資を行います。 運用手法には主に2つのアプローチがあります。トップダウンアプローチは市場全体を俯瞰して投資環境を予測し、そこから投資対象を決定します。一方、ボトムアップアプローチは、個別企業への調査や訪問を通じて投資対象を選定していきます。 アクティブ運用は、パッシブ運用と比べて高いリターンが期待できる反面、運用コストが高くなり、リスクも増大する傾向があります。また、運用成績はファンドマネージャーの運用能力に大きく依存するという特徴があります。

パッシブ運用

パッシブ運用とは、投資信託を選ぶ際の運用手法の一つ(対義語:アクティブ運用)。比較のために用いる指標であるベンチマーク(日経平均やNASDAQなど)と同様の動きを目標とする運用手法で、組み入れ銘柄数は多くなる傾向がある。パッシブ運用はアクティブ運用に比べて販売手数料や信託報酬などのコストは安くて済むが、リスクが分散される分、リターンも小さくなるという特徴がある。

ベンチマーク

ベンチマークとは、特定の目標や標準として用いる指標のことを指し、ビジネス、金融、技術など様々な分野で利用されます。この指標を用いて、パフォーマンスの測定や戦略の効果を評価し、改善点を見つけることができます。特に投資分野においては、ベンチマークはポートフォリオのパフォーマンスを評価するための基準点として活用され、特定の市場指数や同業他社の成績などが用いられます。 たとえば、投資ファンドの管理者は、自身のファンドのパフォーマンスをS&P 500やナスダックなどの市場指数と比較して評価することが多いです。この比較によって、ファンドの戦略が市場全体と比べてどの程度効果的であるか、またはリスクが適切に管理されているかを判断します。 ベンチマークは、透明性と目標設定を促進し、継続的な改善を目指すための重要なツールです。しかし、ベンチマークを選定する際には、その適切性や関連性を慎重に評価する必要があります。適切でないベンチマークを選ぶと、誤った方向性を示すことがあり、結果的にパフォーマンスの誤解を招くことになるためです。したがって、目標とする成果と密接に関連する、かつ実現可能なベンチマークを設定することが極めて重要です。

アンダーパフォーマンス率

アンダーパフォーマンス率とは、特定の基準(通常はベンチマーク)と比較して、成績が下回った投資信託や資産運用の割合を示す指標です。たとえば、ある年に100本のアクティブファンドがあったとして、そのうち60本が市場平均に負けていれば、アンダーパフォーマンス率は60%となります。 この指標は、特にSPIVAのレポートでよく使われ、アクティブ運用が市場全体と比べてどの程度劣っているかを把握するために用いられます。投資家がファンドを選ぶ際に、その運用実績の質を判断するうえでのひとつの参考情報となります。

均等加重(均等ウエイト)

均等加重(均等ウエイト)とは、投資信託や株価指数、ポートフォリオを構築する際に、組み入れる各銘柄や資産クラスをすべて同じ比率で保有する手法を指します。たとえば10銘柄であれば1銘柄あたり10%ずつ配分するため、時価総額の大きさや流動性にかかわらず影響力がフラットになります。これにより、特定の大型株や一部セクターへの偏りを抑えて分散効果を高められる一方、銘柄ごとの値動きが指数全体に均等に反映されるため、値上がりする銘柄を多く含めばリターンが向上し、逆に下落銘柄が多いとパフォーマンスが大きく落ち込むこともあります。リバランスの手間や取引コストがかかる点に注意しつつ、ベンチマークとして時価総額加重とは異なるリスク・リターン特性を比較したい投資家に適した配分方法です。

資産加重平均

資産加重平均とは、複数の投資信託や資産の成績を平均する際に、それぞれの資産規模に応じて重みをつけて計算する方法です。つまり、より多くのお金が集まっているファンドほど、その成績が平均に大きな影響を与えるという考え方です。 たとえば、運用資産が1億円のファンドと100万円のファンドがあった場合、単純平均ではなく、1億円のファンドの成績が全体の平均により大きく反映されます。これは、現実の投資家がどれだけの資金をその成績で運用していたかをより正確に表すために使われます。SPIVAレポートなどでも、資産加重平均は投資家全体の経験に近い指標として重要視されます。

リスク調整後リターン

リスク調整後リターンとは、投資の成果を評価する際に、どれだけのリスクを取ってそのリターンを得たのかを考慮した指標のことです。単にリターンが高いだけではなく、その成果を得るためにどれくらい値動きの大きい商品に投資したのかという「リスクの大きさ」を加味して計算されます。 たとえば、安定した運用で5%のリターンを得た場合と、大きな価格変動を経て5%のリターンを得た場合では、前者の方が効率的な投資とされるのです。この考え方に基づいて、シャープレシオやトレイナーレシオといった具体的な指標も使われます。資産運用においては、単に高いリターンを追い求めるのではなく、どれだけ効率よくリスクを取って成果を上げたかを判断することが大切です。

ボラティリティ

ボラティリティは、投資商品の価格変動の幅を示す重要な指標であり、投資におけるリスクの大きさを測る目安として使われています。一般的に、値動きが大きい商品ほどそのリスクも高くなります。 具体的には、ボラティリティが大きい商品は価格変動が激しく、逆にボラティリティが小さい商品は価格変動が穏やかであることを示します。現代ポートフォリオ理論などでは、このボラティリティを標準偏差という統計的手法で数値化し、それを商品のリスク度合いとして評価するのが一般的です。このため、投資判断においては、ボラティリティの大きい商品は高リスク、小さい商品は低リスクと判断されます。

シャープレシオ

金融商品の運用成績を測るための指標のひとつで、単純なリターンではなく、そのリターンを得るためにどのくらいのリスクを取っているかを計測したもの。 月次リターンのバラつきを示す標準偏差をリスク尺度として、負担したリスク1単位あたりの収益効率性をみるための指標。 数値の大きい方が効率よく運用されていることを示す。 ポートフォリオのリターン、標準偏差、無リスク資産の収益率で計算、具体的に以下の計算式で求められる。 (ファンドの平均リターン-安全資産利子率)÷標準偏差

コア・サテライト戦略

コア・サテライト戦略とは、資産運用において「コア資産」と「サテライト資産」を組み合わせることで、リスクとリターンのバランスを最適化する投資手法のことを指す。ポートフォリオの大部分を安定したコア資産で構成し、長期的な市場の成長に連動するリターンを確保する一方で、残りの一部をサテライト資産として運用し、高いリターンの可能性を追求する。これにより、安定性を維持しながら市場環境の変化に柔軟に対応し、資産の成長を図ることができる。

信託報酬

信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。

市場効率性

市場効率性とは、株式や債券などの金融市場において、すべての利用可能な情報がすぐに価格に反映されるという考え方です。つまり、誰もが同じ情報に基づいて投資判断をしているため、特定の情報を使って一貫して市場を上回る利益を得るのは難しいという理論です。 効率的な市場では、株価は常に妥当な水準にあり、割安や割高な銘柄を見つけて利益を出すことが難しくなります。この概念は、「効率的市場仮説」として経済学や投資理論の基本的な考え方のひとつであり、パッシブ運用の有効性を裏づける理論的支柱でもあります。

α(アルファ)

α(アルファ)とは、投資において期待収益率と実際の収益率の差を示す指標で、運用成果が市場平均(ベンチマーク)をどれだけ上回ったかを測るものです。具体的には、CAPM(資本資産評価モデル)に基づき、以下のように計算されます。 ![アルファの計算式です。α(アルファ)とは、投資において期待収益率と実際の収益率の差を示す指標で、運用成果が市場平均(ベンチマーク)をどれだけ上回ったかを測るものです。](//images.ctfassets.net/hxcyqq1v0xbu/2qDXIekPmOmkLxkxGh1vA2/1f38dc754c1126726161960f4a6b33a2/アルファの計算式.webp) αの値がプラスであれば、市場全体の動きに対して超過リターンを得たことを意味し、逆にマイナスであれば、市場平均を下回るパフォーマンスだったことを示します。市場平均(ベンチマーク)には、米国株式市場のS&P500や、日本市場のTOPIXなどが用いられます。 αは、ファンドマネージャーやアクティブ運用の投資戦略がどれだけ市場を上回る成果を出しているかを評価する際に使われます。高いαを持つファンドは、単なる市場の上昇ではなく、独自の運用戦略によって優れたリターンを生み出していると考えられます。ただし、αが高いからといって常に良い投資先とは限りません。短期間で高いリスクを取ることでαが生まれているケースもあり、リスク調整後のリターン(シャープレシオやインフォメーションレシオ)と合わせて評価することが重要です。 また、αは主にアクティブ運用の評価指標として使われ、インデックスファンドなどのパッシブ運用ではαは基本的にゼロに近くなります。そのため、アクティブ運用を選択する際には、αの継続性や一貫性にも注目し、過去の高いαが将来のリターンを保証するものではない点に注意が必要です。

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