任意後見人のよくあるトラブルにはどのようなものがありますか?
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2025/08/15 08:42
男性
60代
任意後見制度を利用する際、後見人との間でどのようなトラブルが起こりやすいでしょうか?具体的に教えて下さい。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
任意後見制度を利用する際には、いくつかの典型的なトラブルが起こりやすい傾向があります。まず、契約設計の不備や曖昧さが原因となるケースがあります。
代理権の範囲が広すぎたり不明確であったりすると、不動産売却や高額出費、贈与・投資の可否をめぐって後に紛争が生じる可能性があります。また、報酬や経費の基準が事前に定まっていない場合、その請求額をめぐって争いになることがあります。
役割分担が明確でないと、財産管理と身上監護の責任範囲が混在し、本人の意思が軽視されることもあります。さらに、予備後見人を指定していないと、後見人が病気や辞任、死亡した場合に業務が滞ることがあります。
開始(発効)時にも混乱が生じやすく、申立てのタイミングが遅れると重要な手続きが進まず、逆に早すぎると不要な費用や手間がかかります。任意後見監督人との連携不足により、資産目録の作成や保全措置が遅れる事例もあります。
財産管理に関しては、不正や不適切な扱いが問題となることがあります。例えば、本人資産と後見人個人の資産が混在したり、現金引き出しが多用されることがあります。後見人やその親族への貸付や贈与といった利益相反行為、事前相談や相場調査を行わない拙速な投資や不動産売却もリスクです。さらに、領収書や帳簿、残高証明が欠落していたり、報告が遅れるケースもあります。
身上監護においても、本人の意思尊重不足が見られます。住み慣れた自宅からの転居や施設選定、医療方針が本人の希望と異なったまま決定される場合や、親族との面会や情報共有が一方的に制限される場合があります。また、外部業者から高額で不要な契約を勧誘されるケースや、専門職後見人の多忙によって面談や訪問が不足し、個別事情が反映されない問題もあります。
終了時には、死亡後の財産清算や遺品・鍵・印鑑の引き渡しが滞り、相続人との調整に時間がかかることがあります。
これらのトラブルを防ぐためには、契約前から詳細な設計が必要です。代理権の範囲や禁止事項、高額支出の承認ルールを明確にし、本人の価値観や生活希望を文書化します。報酬・経費・報告の方法も契約に盛り込み、予備後見人や監査役を指定してチェック機能を強化します。資産は本人名義の専用口座にまとめ、開始時に資産目録を作成します。
開始後は、家庭裁判所への申立てや監督人との運用合意、関係者への周知を早めに行います。日常の運用では、月次会計報告や年次の資産棚卸を行い、高額契約は相見積や事前相談を必須とします。本人の意思確認は記録として残し、苦情や相談を受け付ける窓口を明示します。
不正の兆候としては、説明のない現金引き出しや残高報告の遅延、不自然な生活水準の低下、面会制限、監督人への報告欠如などが挙げられます。トラブルが発生した場合は、資料開示請求から始め、監督人への相談、家庭裁判所への申立て、必要に応じた口座利用制限や法的措置へと進めます。
任意後見制度は本人の意思を事前に反映できる点で有用ですが、透明性・記録性・多重チェックが欠けるとトラブルを招きやすくなります。契約設計と開始時の準備が予防の鍵であり、地域差や法改正も踏まえて弁護士・司法書士・社会福祉の専門職に早めに相談することが望ましいです。
関連する専門用語
任意後見
任意後見とは、自分の判断能力が低下する将来に備えて、あらかじめ信頼できる人を後見人として選び、公正証書で契約を結んでおく制度のことをいいます。これは「元気なうち」に本人の意思で準備できる後見制度であり、判断能力が実際に低下したときに、家庭裁判所の監督のもとで任意後見人が正式に活動を開始します。 任意後見人は、本人の財産管理や生活支援などを本人の希望に沿って行うことができるため、自分らしい生活を維持するための手段として注目されています。法定後見と違い、自分で「誰に、何を任せるか」を決めておける点が特徴です。高齢化や認知症のリスクが高まる中で、資産や生活の管理を将来にわたって安心して託すための、重要な準備の一つです。初心者にとっても、「自分の老後を自分で選ぶ」ための有効な制度として知っておく価値があります。
任意後見人
任意後見人とは、本人が将来判断能力を失った場合に備えて、あらかじめ信頼できる相手と結んでおいた「任意後見契約」に基づき、本人の財産管理や生活支援などを代わりに行う人のことです。この契約は、本人がまだ判断能力のあるうちに公正証書で結ばれ、実際に判断能力が不十分になったと家庭裁判所が判断し、任意後見監督人が選任された段階で効力が発生します。 任意後見人の業務は、日常の金銭管理や契約手続き、介護サービスの手配、不動産の管理など多岐にわたり、本人の意思を尊重しつつ、その権利や生活を守ることが求められます。家族や専門職(司法書士・弁護士など)が任命されることが多く、安心して老後を迎えるための備えとして注目されている制度です。
任意後見監督人
任意後見監督人とは、将来に備えてあらかじめ結んでおいた「任意後見契約」が実際に発効されたときに、任意後見人の業務が適正に行われているかを監督する立場として、家庭裁判所により選任される第三者のことです。本人の判断能力が低下し、任意後見契約の内容に基づいて後見が開始された場合、任意後見人だけでは不正やミスが起きるおそれがあるため、それをチェックする役割を担います。 任意後見監督人は通常、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれ、定期的に家庭裁判所へ報告を行いながら、任意後見人の活動を見守ります。資産管理や生活支援を本人に代わって行う制度を円滑かつ安全に機能させるための重要な存在であり、任意後見制度の信頼性を支える柱となります。
身上監護(しんじょうかんご)
身上監護(しんじょうかんご)とは、本人の生活や健康、福祉などに関わる事柄について、本人の意思を尊重しながら必要な支援や意思決定の代行を行うことを指します。これは成年後見制度において、後見人が担う重要な役割のひとつで、財産管理とは異なる側面の支援です。 たとえば、介護サービスの利用手続き、施設への入所契約、医療機関との対応、日常生活の環境整備などが含まれます。身上監護は、本人の人格と尊厳を守り、その人らしい生活を送れるよう支援することを目的としており、後見人には単なる「代行者」ではなく、本人の意思をくみ取り、必要な配慮をしながら行動することが求められます。高齢者や障がいのある方の生活を支えるうえで、身上監護は法的・実務的に非常に重要な概念です。
利益相反
利益相反とは、ある人物や組織が複数の立場や利害関係を同時に持っていることによって、どちらか一方の利益を優先することで他方の利益が損なわれるおそれがある状況のことをいいます。たとえば、投資アドバイザーが自分の利益を優先して、自社にとって都合の良い商品を顧客に勧めるようなケースがこれにあたります。 このような状況は、投資判断の公正さを損なう可能性があるため、資産運用の分野では利益相反がないかどうかを確認することがとても重要です。信頼できるアドバイザーや金融機関を選ぶ際には、この点に注意を払うことが大切です。