相続時精算課税と暦年課税、どちらが有利ですか?
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2025/06/26 15:04
男性
60代
親の資産を早めに承継したいのですが、相続時精算課税と暦年課税のどちらを選ぶと税負担を抑えられるのか判断に迷っています。贈与総額や余命、子の資金ニーズなど状況によって有利不利が変わると聞きました。両制度の利点と注意点を具体的に教えていただけますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
暦年課税は毎年110万円の基礎控除を繰り返し使えるため、少額贈与を積み重ねれば「贈与税+相続税」の総負担を圧縮しやすい制度です。死亡前7年を超える贈与は相続財産に持ち戻されず完全に切り離せる点も強みです。
ただし、110万円超の贈与には累進税率で贈与税が発生し、高額贈与には不向きとなります。定期贈与と認定されないよう、毎年独立した契約書作成と資金管理の分離が欠かせません。
相続時精算課税は累計2,500万円まで非課税で大口贈与が一度に可能です。贈与時の評価額が固定されるため、値上がりが見込まれる不動産・自社株などを早期に移転する場面で効果的です。
2024年改正により年間110万円までの贈与は持ち戻し不要・申告不要となり、少額贈与にも柔軟に使えます。ただし、相続時に贈与財産が合算されるため生前贈与での節税効果は限定的で、制度選択後は暦年課税に戻れません。贈与者が長生きすると受贈資産が遊休化するリスクもあります。
長期でコツコツ資産を移したい場合は暦年課税、まとまった資金や評価上昇資産を早期に移したい場合は相続時精算課税が有利となる傾向ですが、専門家と相談のうえ制度を選択することが不可欠です。
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相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ財産を贈与する場合に利用できる、特別な贈与税の制度です。この制度を使うと、贈与を受けた年に2,500万円までの金額については贈与税がかからず、それを超えた部分にも一律20%の税率が適用されます。そして、その後贈与者が亡くなったときに、過去の贈与分をすべてまとめて「相続財産」として扱い、最終的に相続税として精算します。 つまり、この制度は「贈与税を一時的に軽くし、あとで相続税の段階でまとめて精算する」という仕組みになっています。将来の相続を見据えて早めに資産を移転したい場合や、大きな金額を一括で贈与したい場合に活用されることが多いです。 ただし、一度この制度を選ぶと、同じ贈与者からの贈与については暦年課税(通常の贈与税制度)には戻せないという制限があるため、利用には慎重な判断が必要です。資産運用や相続対策を計画するうえで、制度の特徴とリスクをよく理解しておくことが大切です。
基礎控除
基礎控除とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律で適用される控除のことを指す。一定額の所得については課税対象から除外されるため、納税者の負担を軽減する役割を持つ。所得に応じて控除額が変動する場合もあり、申告不要で自動適用される。
暦年課税
暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された金額に対して課税される仕組みのことをいいます。特に贈与税の計算方法として使われており、年間の贈与額が基礎控除額である110万円を超えた部分について課税されます。たとえば、1年間に親から子へ150万円を贈与した場合、110万円を差し引いた40万円に対して贈与税がかかるというわけです。 この制度は毎年リセットされるため、長期的に少しずつ財産を移す「生前贈与」の手段として活用されることが多いです。ただし、相続税との関係で、亡くなる前の一定期間内の贈与については相続財産に加算される「10年ルール」があるため、計画的な利用が大切です。初心者の方にとっては、贈与に関する基本的な課税制度として、まず最初に押さえておくべき考え方です。
特別控除
特別控除とは、一定の条件を満たした場合に特別に認められる所得控除のことを指す。例えば、不動産譲渡所得に対する3,000万円特別控除や、住宅ローン控除などが含まれる。通常の控除とは異なり、特定の政策目的のために設けられており、適用を受けるには条件を満たす必要がある。
累進課税
累進課税とは、所得が高くなるほど税率が上がる仕組みのことを指します。この制度は、所得の多い人ほど高い税率で税金を負担し、所得の低い人の負担を軽減することで、公平性を確保することを目的としています。 代表的な累進課税制度には、所得税や相続税があります。所得税は、課税所得に応じて税率が変わり、日本では5%から45%までの7段階の税率が設定されています。例えば、課税所得が195万円以下の場合の税率は5%ですが、4,000万円を超えると税率は45%となります。このように、所得が増えるにつれて税負担も増える仕組みになっています。 相続税も同様に累進課税が適用され、相続財産が多いほど高い税率がかかります。たとえば、相続財産が1,000万円以下の場合の税率は10%ですが、6億円を超えると55%の税率が適用されます。 累進課税は、所得の再分配を促し、経済的格差を是正する効果がある一方で、高所得者層の税負担が大きくなりすぎると、節税対策や海外移住の増加につながる可能性も指摘されています。そのため、税率のバランスを保つことが重要とされています。
課税評価額
課税評価額とは、不動産や資産にかかる税金を計算する際の基準となる金額です。たとえば土地や建物を持っていると、固定資産税という税金がかかりますが、その税額は「課税評価額」に基づいて決まります。この評価額は、市町村や税務署が法律(地方税法など)に基づいて決めます。また、相続税や贈与税の計算にも使われます。実際の売買価格(実勢価格)とは異なる場合が多く、評価額の方が低くなる傾向があります。