優良な高配当株を選ぶためのチェックポイントは何ですか?
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2025/07/21 10:45
女性
40代
資産運用をするにあたり、高配当株もポートフォリオに組み込みたいと考えています。ただ、配当利回りだけだと投資判断できないような気がしています。他にどのような指標を見て優良な高配当株を選ぶべきでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
高配当株をポートフォリオに組み込む際は、単に配当利回りが高いという理由だけで判断すると、将来的な減配や株価下落といったリスクに直面する可能性があります。長期的に安定したリターンを得るためには、以下のような指標や視点を複合的に確認することが重要です。
まず、基本的なスクリーニング基準として、配当利回り3~6%程度、時価総額1,000億円以上、自己資本比率30%以上を目安に、企業の財務健全性を確認します。加えて、負債依存度を示すD/Eレシオや、利払い余力を示すインタレストカバレッジレシオも確認することで、配当の持続性に対する信頼度が高まります。
次に注目すべきは、配当を継続・増加できる力です。配当性向は50%以下が望ましく、利益の範囲内で無理なく配当を出しているかを見極めます。さらに、過去5年以上の減配なし、あるいは連続増配実績のある企業は、配当へのコミットメントが強いと評価できます。その際、フリーキャッシュフロー(FCF)の安定性や、FCF配当性向(配当 ÷ FCF)にも注目することで、見かけの利益ではなく実際の余力を確認できます。
企業のビジネスモデルも重要です。景気に左右されにくいインフラ、通信、生活必需品などの業種は、収益のブレが小さく、配当の安定性が高い傾向があります。ただし、景気敏感業種でも市場シェアが高く財務が安定している企業であれば例外もあります。
収益性の観点では、ROE(自己資本利益率)に加え、ROIC(投下資本利益率)も見ると良いでしょう。ROEは自己資本が小さいと高く見えることがありますが、ROICは企業がどれだけ効率よく資本を活用しているかを表すため、より本質的な収益力を判断できます。目安としてROE 10%以上、ROIC 7〜10%以上が一つの基準になります。
さらに、配当利回りと10年国債利回りを比較し、相対的にどれだけ魅力的か(DYスプレッド)を確認することで、市場金利とのバランス感覚も得られます。また、P/E(株価収益率)やEV/EBITDAなどのバリュエーション指標を使って、割高・割安感を把握しておくことも忘れてはいけません。
最後に、海外高配当株を検討する場合は、源泉税や為替リスクが実質的な手取り利回りに影響を及ぼします。配当課税の扱いやNISAの活用可否、外貨建てでの収益変動なども踏まえたトータルの実質利回りで判断することが大切です。
このように、配当利回りという表面的な数字にとどまらず、収益性・財務・キャッシュフロー・業種特性・評価指標・税制などを多角的に確認することで、長期的に安心して保有できる優良な高配当株を選ぶことができます。ポートフォリオに組み入れる際には、1銘柄に偏らず、複数の業種に分散投資することも重要です。
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配当利回り
配当利回りは、株式を1株保有したときに1年間で受け取れる配当金が株価の何%に当たるかを示す指標です。計算式は「年間配当金÷株価×100」で、株価1,000円・配当40円なら4%になります。 指標には、実際に支払われた金額で計算する実績利回りと、会社予想やアナリスト予想を用いる予想利回りの2種類があります。株価が下がれば利回りは見かけ上上昇するため、高利回りが必ずしも割安や安全を意味するわけではありません。 安定配当の見極めには、配当性向が30~50%程度であること、フリーキャッシュフローに余裕があることが重要です。また、権利付き最終日の翌営業日には理論上配当金相当分だけ株価が下がる「配当落ち」が起こります。 日本株の配当は通常20.315%課税されますが、新NISA口座内で受け取る配当は非課税です。配当利回りは預金金利や債券利回りと比較でき、インカム収益を重視する長期投資家が銘柄や高配当ETFを選ぶ際の判断材料となります。
時価総額
時価総額、株式時価総額とは、ある上場企業の株価に発行済株式数を掛けたものであり、企業価値や規模を評価する際の指標。 時価総額が大きいということは、業績だけではなく将来の成長に対する期待も大きいことを意味する。
自己資本比率
自己資本比率とは、会社が持っている全体の資産のうち、どれだけが借金ではなく自分自身の資本(=自己資本)でまかなわれているかを示す割合のことです。 この比率が高いほど、会社は外部からの借入れに頼らずに経営していることになり、財務的に安定していると判断されやすくなります。たとえば、自己資本比率が50%であれば、会社の資産の半分が自己資本、残り半分が借入金などの他人資本ということになります。 投資家にとっては、自己資本比率が高い企業ほど経営の安定性が高く、倒産のリスクが低いと考えられるため、企業の健全性を見極めるうえで重要な指標のひとつです。特に長期投資を考える際には、注目しておきたい数字です。
配当性向
配当性向とは、会社がその期に稼いだ税引後の利益、つまり当期純利益のうち、どれくらいを株主への配当金として支払ったかを示す割合です。投資家にとっては、企業が利益をどの程度還元してくれるのかを知る目安になります。 計算方法は、1株当たりの配当額を1株当たりの当期純利益で割って求められます。たとえば、配当性向が50%であれば、会社が利益の半分を配当として出しているということになります。配当を重視する投資家にとっては重要な指標であり、企業の利益配分方針を理解するために役立ちます。
キャッシュフロー
お金の流れを表す言葉で、一定期間における「お金の収入」と「支出」を指します。投資や経済活動では特に重要な概念で、現金がどれだけ増えたか、または減ったかを把握するために使われます。キャッシュフローは大きく3つに分かれます。 1つ目は本業による収益や費用を示す「営業キャッシュフロー」、2つ目は資産の購入や売却に関連する「投資キャッシュフロー」、3つ目は借入金や配当などの「財務キャッシュフロー」です。 キャッシュフローがプラスであれば手元にお金が増えている状態、マイナスであれば減っている状態を示します。これを理解することで、資産の健全性や投資先の実態を見極めることができ、初心者でも資金管理や投資判断の基礎として役立てられます。
ROE(Return On Equity/自己資本利益率)
ROE(Return On Equity/自己資本利益率)とは、企業が株主から預かった自己資本をどれだけ効率的に活用し、利益を生み出しているかを示す財務指標です。計算式は「ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」または「ROE(%)= EPS(一株当たり利益)÷ BPS(一株当たり純資産)× 100」で求められます。 ROEが高いほど、株主資本を効率的に活用して収益を上げていると判断され、投資家にとって魅力的な企業と見なされやすくなります。ただし、自己資本を減らしてROEを意図的に高める手法もあるため、借入依存度(財務レバレッジ)とのバランスも考慮する必要があります。長期投資の際は、ROEの推移や業界平均と比較し、持続的な成長が可能かを見極めることが重要です。 「Return On Equity」(自己資本利益率)の略。企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合で、計算式はROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100、またはROE(%)=EPS(一株当たり利益)÷ BPS(一株当たり純資産)× 100。ROE(自己資本利益率)は、投資家が投下した資本に対し、企業がどれだけの利益を上げているかを表す重要な財務指標。ROEの数値が高いほど経営効率が良いと言える。