住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない大きな理由はなんですか?
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2025/08/22 08:35
女性
30代
住宅ローンは早く返した方が安心だと考えていましたが、「繰り上げ返済をしない方がよい場合もある」と耳にしました。具体的にどのような理由で繰り上げ返済が不利になるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
住宅ローンを繰り上げ返済しない方がよいとされる理由はいくつかあります。大きく分けると「低金利」「税制優遇」「資金の流動性」「投資機会」の4つの観点があります。
まず、現在の住宅ローンは1%前後の低金利で借りられることが多いため、繰り上げ返済をしても節約できる利息はわずかです。その一方で、同じ資金を投資信託や株式運用に回せば、数%以上のリターンを得られる可能性があります。金利よりも運用利回りの方が高ければ、返済より運用の方が合理的な選択になる場合があります。
次に、住宅ローンには「住宅ローン控除」という税制優遇があります。年末のローン残高に応じて一定割合が所得税などから控除される仕組みで、実質的に利息負担を軽減する効果があります。しかし、繰り上げ返済をすると残高が減るため、この控除額も小さくなり、節税メリットを失うことがあります。
さらに、繰り上げ返済をするとお金が住宅に固定されてしまい、簡単には引き出せません。教育費や医療費、老後の生活費など、急に資金が必要になった際に手元資金が不足してしまう可能性があります。特に子育て世帯やこれから老後資金を積み立てる人にとっては、現金の流動性を確保しておくことが大切です。
最後に、低金利ローンを残したまま余剰資金を運用すれば、資産形成のスピードを高められる可能性があります。繰り上げ返済に資金を回すことで、将来的に得られたはずの投資リターンを逃してしまう恐れがあります。
このように、繰り上げ返済は心理的な安心感を得られる一方で、金利・税制・流動性・投資の面から必ずしも有利とは限りません。余裕資金をどう使うかはライフプランや資産運用の目的によって異なります。返済と運用のバランスを考え、必要であれば専門家とシミュレーションを行いながら判断することが大切です。
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繰り上げ返済
繰り上げ返済は、ローンや債務に対して予定された支払いスケジュールよりも早く、元本の一部または全部を返済することを指します。この方法は、住宅ローン、自動車ローン、学生ローンなど、さまざまなタイプの借入れに適用されることがあります。繰り上げ返済を行う主な目的は、支払う利息の総額を減らし、ローンの期間を短縮することです。 繰り上げ返済は、追加の資金が手に入った場合や、より良い投資先がない場合に特に有効です。早期に借入金を返済することで、将来の利息負担が減少し、長期的な財務的な余裕が生まれます。しかし、全てのローンが繰り上げ返済に対応しているわけではなく、場合によっては繰り上げ返済手数料が発生することもあります。この手数料は、金融機関が予定していた利息収入の一部を補填するために設定されることが多いです。 繰り上げ返済を検討する際には、手数料の有無、返済後の金融状況、その他の投資機会との比較など、様々な要因を考慮することが重要です。適切な計画と分析を行うことで、繰り上げ返済が個人の財務目標に合致するかどうかを判断することができます。
住宅ローン控除(住宅ローン減税/住宅借入金等特別控除)
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、個人が住宅ローンを利用してマイホームを購入・新築・増改築した際に、一定の条件を満たせば、ローン残高に応じた金額が所得税から控除される制度です。控除は年末時点の住宅ローン残高の一定割合を上限として行われ、最大で13年間にわたり税負担を軽減することができます。たとえば、毎年の住宅ローン残高が多いほど、控除される所得税の金額も大きくなる仕組みです。この制度は、住宅の取得を支援し、持ち家の普及を促す目的で設けられており、対象となる住宅の広さや取得時期、所得の上限など、細かな適用条件があります。確定申告を通じて手続きを行う必要があるため、住宅購入時には制度の内容をよく確認し、早めに準備することが大切です。
税制優遇措置
税制優遇措置とは、政府が特定の経済活動や投資を促進するために、税負担を軽減する制度のことを指す。具体的には、法人税の減税、所得控除、減価償却の特例などが含まれる。例えば、中小企業やスタートアップに対する税制優遇、特定の産業への投資促進策などがある。これにより、企業や個人は資金負担を抑えつつ、事業成長や投資の拡大を図ることができる。政策目的に応じて適用範囲や内容が変わるため、適用条件の確認が重要である。
流動性
流動性とは、資産を「現金に変えやすいかどうか」を表す指標です。流動性が高い資産は、短時間で簡単に売買でき、現金化しやすいという特徴があります。例えば、上場株式や国債は市場で取引量が多く、いつでも売買できるため、流動性が高い資産とされています。 一方、不動産や未上場株式のように、売買相手を見つけるのが難しかったり、取引に時間がかかったりする資産は、流動性が低いといえます。 投資をする際には、自分が必要なときに資金を取り出せるかを考えることが重要です。特に初心者は、流動性が高い資産を選ぶことで、急な資金需要にも対応しやすく、リスクを抑えることができます。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。
利回り
利回りとは、投資で得られた収益を投下元本に対する割合で示し、異なる商品や期間を比較するときの共通尺度になります。 計算式は「(期末評価額+分配金等-期首元本)÷期首元本」で、原則として年率に換算して示します。この“年率”をどの期間で切り取るかによって、利回りは年間リターンとトータルリターンの二つに大別されます。 年間リターンは「ある1年間だけの利回り」を示す瞬間値で、直近の運用成績や市場の勢いを把握するのに適しています。トータルリターンは「保有開始から売却・償還までの累積リターン」を示し、長期投資の成果を測る指標です。保有期間が異なる商品どうしを比べるときは、トータルリターンを年平均成長率(CAGR)に換算して年率をそろすことで、複利効果を含めた公平な比較ができます。 債券なら市場価格を反映した現在利回りや償還までの総収益を年率化した最終利回り(YTM)、株式なら株価に対する年間配当の割合である配当利回り、不動産投資なら純賃料収入を物件価格で割ったネット利回りと、対象資産ごとに計算対象は変わります。 また、名目利回りだけでは購買力の変化や税・手数料の影響を見落としやすいため、インフレ調整後や税控除後のネット利回りも確認することが重要です。複利運用では得た収益を再投資することでリターンが雪だるま式に増えますから、年間リターンとトータルリターンを意識しながら、複利効果・インフレ・コストを総合的に考慮すると、より適切なリスクとリターンのバランスを見極められます。