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リスク許容度とは?決め方と目安を5つの視点でわかりやすく解説【資産配分モデルも紹介】
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公開:
2025.02.27
更新:
2026.03.04
投資を始めるときに迷いやすいのが、「自分はどれくらいのリスクを取れるのか」という判断です。リスクを「危険」と捉えたまま運用すると、値下がり局面で慌てて売ってしまったり、逆にリスクを避けすぎて資産が増えにくくなることがあります。この記事では、投資におけるリスクの正しい意味(振れ幅)とリスク・リターンの関係から、リスク許容度の決め方、資産配分と分散、新NISAでの活かし方までを具体的に解説します。
リスク許容度とは?リスクとリターンの基本を理解しよう
リスク許容度とは、投資で生じうる損失をどの程度まで受けいれられるかを示す度合いです。自分に合った資産運用をおこなううえで、この指標を正しく把握しておく必要があります。しかし、そもそも投資における「リスク」の意味を誤解している方も少なくありません。
リスク許容度を正確に理解するには、まず「リスクとリターンの関係」を押さえておきましょう。この前提がないまま運用を始めると、想定外の値動きにパニックを起こしかねません。
投資における「リスク」は「危険」ではなく「振れ幅」
投資の世界でいう「リスク」は、日常会話でいう「危険」とは意味がちがいます。投資におけるリスクとは、リターン(運用による損益)の振れ幅のことです。統計学では、この振れ幅を「標準偏差」という数値であらわします。
たとえば、平均リターンが年5%でリスク(標準偏差)が10%の資産があるとしましょう。この場合、約68%のかくりつでリターンが「−5%〜+15%」の範囲におさまります。さらに約95%のかくりつでは「−15%〜+25%」の範囲に入るとされています。
つまりリスクが大きい資産ほど、大きく儲かる可能性もあれば大きく損する可能性もあるのです。この「振れ幅」の感覚をつかむことが、リスク許容度を決める第一歩になります。
リスクとリターンはトレードオフの関係
リスクとリターンには「トレードオフ」、つまり一方を求めるともう一方も大きくなる関係があります。高いリターンをねらえば高いリスクを受けいれる必要があり、リスクを抑えればリターンも小さくなるのが原則です。
以下の表は、おもな資産クラスごとのリスク・リターンの傾向をまとめたものです。
| 資産クラス | リスク(振れ幅) | 期待リターン | 値動きの特徴 |
|---|---|---|---|
| 預貯金・国内債券 | 低い | 低い | 安定しているが、インフレに負けるおそれがある |
| 外国債券・バランス型 | 中程度 | 中程度 | ある程度の変動はあるが比較的おだやか |
| 国内株式・外国株式 | 高い | 高い | 短期では大きく変動するが、長期では成長が期待できる |
| REIT(不動産投資信託) | 中〜高 | 中〜高 | 賃料収入と値上がり益の両方がねらえるが、景気に左右されやすい |
この表からわかるように、「ローリスク・ハイリターン」の資産は存在しません。自分がどの水準のリスクなら耐えられるかを把握し、それに見合ったリターンを目指すのが合理的な考え方です。
リスク許容度を把握しないとどうなる?よくある失敗パターン
リスク許容度を把握せずに投資をはじめると、想定外の損失で精神的に追いつめられたり、不要なリスクを取りすぎたりするおそれがあります。ここでは、リスク許容度を無視した場合に起こりがちな3つの失敗パターンを紹介します。あらかじめ知っておけば、同じ過ちを避けやすくなるでしょう。
失敗①|暴落時にパニック売りしてしまう
リスク許容度を超えた運用をしていると、相場が急落したとき冷静でいられなくなります。不安にかられて底値付近で売却し、その後の回復局面で利益をのがしてしまうパターンです。
行動経済学の「プロスペクト理論」によれば、人は同じ金額でも利益より損失のほうを約2倍つらく感じるとされています。たとえば10万円の利益で得られるよろこびより、10万円の損失で感じる苦痛のほうがはるかに大きいのです。
この心理的な傾向があるため、自分のリスク許容度を超えた運用では損失に耐えきれず、長期投資をつづけられなくなりがちでしょう。結果として、複利効果(利益が利益を生むしくみ)を活かせなくなってしまいます。
失敗②|不要なリスクを取りすぎる
リスク許容度を計算していないと、「もっと儲けたい」という気持ちに流されやすくなります。本来は年2〜3%のリターンで目標を達成できるにもかかわらず、値動きのはげしい資産に集中投資してしまうケースがその典型です。
目標達成に必要なリターンから逆算すれば、取るべきリスクの水準はおのずと決まります。必要以上のリスクを取るのは、ゴールに近づくどころか資産を大きく減らす原因になりかねません。
失敗③|リスクを避けすぎてお金が増えない
反対に、リスクを極端に避けすぎるのも問題です。すべてを預貯金や元本保証のある商品だけで運用すると、インフレ(物価の上昇)によって実質的な資産価値が目減りしていきます。
たとえば年2%のインフレが20年つづいた場合、現在100万円の価値は実質的に約67万円まで下がる計算です。「リスクを取らないこと自体がリスクになる」という視点も、リスク許容度を考えるうえで欠かせません。
リスク許容度を決める5つの視点
リスク許容度を決めるためには、「どれくらいリスクを取れるか?」を判断する基準が必要です。ただし、単純に「リスクを取るのが怖いかどうか」で決めるのはNGです。リスク許容度は、以下の5つの視点から客観的に分析することで、適切な判断ができます。
この章では、それぞれの視点について詳しく解説し、どのようにリスク許容度を決めるべきかを考えていきます。
1. 個人の基本属性
自分の年齢やライフステージ、投資の目的を考えることが大切です。
| 観点 | 状況(例) | リスク許容度の方向性 | 判断の要点 |
|---|---|---|---|
| 年齢・ライフステージ | 若い(運用期間が長い) | 相対的に高めに取りやすい | 時間を味方にでき、短期の価格変動を吸収しやすい |
| 年齢・ライフステージ | 退職が近い | 低めに寄せるべき | 「増やす」より「減らさない」こと(元本毀損回避)が重要になる |
| 家族構成 | 独身/共働き夫婦 | 相対的に高めに取りやすい | 生活費負担の柔軟性があり、損失局面でも家計が耐えやすい |
| 家族構成 | 扶養家族が多い | 低めに寄せるべき | 教育費・生活費など固定的支出が増え、家計の安定性が優先される |
| 投資目的 | 老後資金 | 中〜高めも選択肢 | 長期運用が前提になりやすく、リスクを時間分散しやすい |
| 投資目的 | 住宅購入資金(数年以内に必要) | 低めが望ましい | 必要時期が近い資金は価格変動リスクを取りにくい |
「リスク許容度=気持ちの強さ」ではなく、家計が損失に耐えられる「構造」で判断しましょう。基本は①時間(いつ使うお金か)②責任(扶養や固定費の重さ)③回復力(収入の安定性・貯蓄余力)の3軸で整理します。
たとえば若くて独身ならリスク資産比率を高めやすい一方、退職が近い・扶養家族がいる場合は、下落時に取り崩しを強いられるリスクが増えるため、価格変動の大きい資産配分を抑えるのが合理的です。
2. 財務状況
現在の収入や貯蓄の状況を把握し、生活に影響が出ない範囲でリスクを取ることが重要です。
| 観点 | 状況(例) | リスク許容度の方向性 | 判断の要点 |
|---|---|---|---|
| 資産・収入の安定性 | 収入が安定している | 相対的に高めに取りやすい | 相場下落局面でも家計が崩れにくく、継続投資や回復を待ちやすい |
| 資産・収入の安定性 | 収入が不安定 | 低めに寄せるのが無難 | 急な支出や収入減で投資資産を取り崩すリスクが高まる |
| 生活費と余裕資金 | 生活費とは別に余裕資金が十分ある | 相対的に高めに取りやすい | 生活防衛資金を確保したうえで投資でき、短期変動に耐えやすい |
| 生活費と余裕資金 | 余裕資金が少ない | 低めに寄せるべき | 価格変動が生活費に影響しやすく、資金繰りの余力が乏しい |
| 債務・ローンの有無 | 住宅ローン・借入が多い | 低めに寄せるべき | 返済負担が固定費化し、下落時の追加余力(追加入金・耐久力)が小さくなる |
リスク許容度を財務状況から決めるときは、「どれだけ増やせるか」より先に「どこまで減っても生活が崩れないか」を基準に考えましょう。
まず生活費を確保し、緊急時に使える資金(生活防衛資金)と投資に回せる余裕資金を切り分けます。そのうえで、収入が安定していて余裕資金が厚いほど、価格変動を受け止めながら運用を続けやすくなります。一方、収入の振れが大きい人やローン返済が重い人は、下落局面での取り崩しや資金繰り悪化を避けるため、リスク資産の比率を低めに設計するのが基本です。
3. 投資の時間軸
いつまでに資金が必要かを考えることで、リスクの取り方が決まります。
| 観点 | 状況(例) | リスク許容度の方向性 | 判断の要点 |
|---|---|---|---|
| 投資期間 | 10年以上運用できる | 相対的に高めに取りやすい | 短期の下落を時間で吸収しやすく、回復を待てる可能性が高い |
| 投資期間 | 1〜3年以内に必要な資金 | 低めに寄せるべき | 必要時期が近い資金は下落耐性が低く、債券・預金など中心が無難 |
| 流動性(換金性)への要求 | 近いうちに引き出す予定がある | 低めに寄せるべき | 価格が下がったタイミングでも換金が必要になりやすい |
| 流動性(換金性)への要求 | 当面使う予定がない資金 | 相対的に高めに取りやすい | 換金の制約が少なく、長期投資でリスク資産を活用しやすい |
時間軸でリスク許容度を決めるときは、「いつ使うお金か」を最初に分けるのが確実です。1〜3年以内に使う予定がある資金は、必要なタイミングで確実に用意できることが優先になるため、預金や債券など低リスクの置き場を基本に設計します。
一方で、10年以上運用できて当面換金の予定がない資金は、短期の値動きがあっても保有を継続しやすく、株式など高リスク資産も組み合わせて成長を狙う余地が広がります。結論として、短期資金は安全性重視、長期資金は成長性も取りにいく、という切り分けがリスク管理の土台になります。
4. 投資リテラシーと心理
自分の投資経験や精神的な許容範囲を知ることが大切です。
| 観点 | 状況(例) | リスク許容度の方向性 | 判断の要点 |
|---|---|---|---|
| 過去の投資経験 | 初心者 | 低めから始めるのが安全 | ルール作りや値動きへの慣れができておらず、途中でやめやすい |
| 過去の投資経験 | 経験者 | 相対的に高めも選択肢 | 変動要因や損失局面の対応を理解しており、継続しやすい |
| メンタル・性格 | 値動きのストレス耐性がある | 相対的に高めに取りやすい | 下落局面でも計画通りに保有・積立を継続しやすい |
| メンタル・性格 | 少しの損失でも不安になる | 低めが向いている | 不安からの売却・乗り換えが起きやすく、損失確定につながりやすい |
| 投資に対する知識・理解度 | 知識・理解がある | 相対的に高めも選択肢 | リスクとリターンの関係を冷静に評価し、判断が安定しやすい |
| 投資に対する知識・理解度 | 知識・理解が乏しい | 低めに寄せるのが無難 | 不確実性に過敏になりやすく、感情的な判断が増えやすい |
投資リテラシーと心理面は、リスク許容度を「続けられる設計」に落とし込むための重要な要素です。経験が浅い段階で大きな値動きにさらされると、下落局面で不安が強まり、計画外の売却や投資停止につながりやすくなります。
そのため初心者は、まずは値動きが比較的穏やかな低リスク資産や分散された商品で運用を始め、価格変動への耐性と判断の型を身につけることが基本です。知識が増え、値動きに対して冷静に判断できるようになった段階で、リスク資産の比率を段階的に引き上げると、無理なく期待リターンを高めやすくなります。
5. 外部環境
市場の動向やインフレを考慮し、リスクを調整することが必要です。
| 観点 | 状況(例) | リスク許容度の方向性 | 判断の要点 |
|---|---|---|---|
| 経済環境・市場状況 | 不況局面(景気後退・不確実性が高い) | 抑えめに調整する判断も | 価格変動が大きくなりやすく、短期の下落耐性が問われる |
| 経済環境・市場状況 | 景気回復局面(先行きの見通しが改善) | 段階的に増やす判断も | リスク資産の期待収益が相対的に上がりやすく、配分の見直し余地が出る |
| インフレ耐性 | インフレが進む(物価上昇が続く) | 現金偏重は慎重に/分散を意識 | 現金・低リスク資産は実質価値が目減りしやすい |
| インフレ耐性 | 株式などのリスク資産を保有 | インフレ対策として活用余地 | 企業収益や資産価格を通じて、実質価値の維持に寄与する可能性がある |
外部環境は自分でコントロールできないため、リスク許容度の判断では「当てにいく」より「耐えられる設計にする」ことが重要です。不況時は値動きが荒くなりやすいので、生活防衛資金や短期で使う資金を優先して守りつつ、リスク資産は一度に増減させず段階的に調整します。
一方でインフレ局面では、現金や低リスク資産だけに偏ると実質的な購買力が下がりやすいため、株式などインフレに相対的に強い資産も含めて分散し、実質価値の目減りリスクを意識した配分を検討すると整合的です。
リスク許容度に応じた資産配分の考え方
リスク許容度を把握できたら、次にやるべきは自分のリスク水準に合った「資産配分(アセットアロケーション)」を決めることです。アセットアロケーションとは、株式・債券・不動産など複数の資産クラスにどのような割合で資金を配分するかの設計図にあたります。

投資の成果の約9割は、個別の銘柄選びではなくこの資産配分で決まるともいわれており、リスク許容度と直結するもっとも重要な意思決定です。
リスク許容度別の資産配分モデル
リスク許容度に応じた資産配分の一般的な目安を、以下の表にまとめました。
| リスク許容度 | 株式の割合 | 債券の割合 | その他(REIT・コモディティなど) | 想定される年間リターンの振れ幅(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 低い | 20〜30% | 60〜70% | 0〜10% | おおむね−5%〜+10%程度 |
| 中程度 | 40〜60% | 30〜40% | 10〜20% | おおむね−15%〜+20%程度 |
| 高い | 70〜80% | 10〜20% | 10〜20% | おおむね−25%〜+30%程度 |
※上記はあくまで一般的なモデルであり、将来のリターンを保証するものではありません。
年齢をベースにした簡易的な目安として、「株式の割合=100−自分の年齢」という考え方もよく紹介されます。30歳なら株式70%、50歳なら株式50%というイメージです。ただしこれは単純化された目安にすぎず、収入の安定性や投資目的も加味して調整する必要があるでしょう。
分散投資でリスクをコントロールする
資産配分を決めたら、さらに「地域」と「時間」の分散を組みあわせることでリスクを効果的にコントロールできます。
地域の分散とは、国内資産だけでなく先進国や新興国にも投資先を広げる考え方です。特定の国や地域の経済が悪化しても、ほかの地域がカバーしてくれる可能性が高まります。
時間の分散とは、一度にまとめて投資するのではなく、毎月一定額を継続的に積みたてていく方法です。「ドルコスト平均法」とも呼ばれ、価格が高いときは少なく、安いときは多く購入できるため、平均購入単価をならす効果が期待できます。
リスク許容度の設定方法の具体例
「リスク許容度を決める5つの視点」は理解できたものの、実際にどうやって自分のリスク許容度を決めればいいのか?と悩む人も多いでしょう。
そこで、この章では具体的な事例をもとに、リスク許容度の決定プロセスを説明します。例ごとに異なる条件を設定し、「個人の基本属性」「財務状況」「投資の時間軸」「投資リテラシーと心理」「外部環境」の視点をそれぞれ考慮しながら、最適なリスク許容度を設定します。
5つの視点を組み合わせながらリスク許容度を判断する流れを解説します。
自分の状況に近い例を参考にしながら、適切なリスク設定を考えてみましょう!
例1:30歳・独身・投資経験なし(リスク許容度:低め)
状況
- 年収:500万円
- 貯金:300万円(うち100万円を投資予定)
- 投資目的:老後資金
- 運用期間:30年以上
- リスク耐性:低め(大きな損失は避けたい)
独身で30歳とライフステージの変化が比較的少ないため、資産形成に充てられる期間が長く、運用期間を十分に確保できる点がリスク許容度を考えるうえでの土台になります。目的は老後資金であり、短期的な値動きに一喜一憂せず、中長期の視点で取り組めるため、時間軸の面でも過度に短期成果へこだわる必要はありません。
一方で投資経験がないため、価格変動による心理的負担が想定されます。無理のないリスク水準から始め、ストレスを抑えながら継続できる運用設計にすることが重要です。
運用方針
- 生活防衛資金として200万円を確保し、投資は100万円
- 低リスク資産(債券・投資信託)70%、高リスク資産(株式)30%
- まずは少額で始め、投資経験を積んでリスク耐性を高める
例2:45歳・子ども2人・投資経験あり(リスク許容度:中程度)
状況
- 年収:800万円
- 貯金:800万円(うち300万円を投資予定)
- 投資目的:老後資金+教育資金
- 運用期間:老後資金は20年以上、教育資金は10年以内
- リスク耐性:中程度(バランス重視)
年収や貯蓄が安定しており、生活防衛資金を確保したうえで投資に回せる余裕資金がある点は、リスク許容度を押し上げる要素になります。加えて、資金の使い道ごとに時間軸が異なるため、一律の運用ではなく目的別にリスクを分けて考えることが重要です。
具体的には、10年以内に必要となる教育資金は元本割れを避ける観点から低リスクで運用し、20年以上先の老後資金は時間分散の効果を活かしながら、相対的に高リスク資産も取り入れた運用が選択肢になります。
運用方針
- 教育資金として100万円は低リスク運用(債券・預金)で確保
- 老後資金として200万円は高リスク資産(株式・投資信託)で運用
- 市場環境を見ながら、年に1回ポートフォリオを見直す
例3:55歳・退職まであと10年・資産を守りたい(リスク許容度:低め)
状況
- 年収:900万円
- 貯金:1,500万円(うち500万円を投資予定)
- 投資目的:老後資金
- 運用期間:10年
- リスク耐性:低め(資産を減らしたくない)
退職が近づいている段階では、資産形成よりも資産保全の重要性が高まり、大きな価格変動を伴う投資は慎重に考える必要があります。加えて、資金を10年以内に使用する可能性がある場合は、短期的な値動きによる資産減少の影響を受けやすくなるため、株式などの価格変動が大きい資産への配分は抑え、安定性を重視した資産構成を検討することが重要です。
運用方針
- 株式の割合は30%に抑え、低リスク資産(債券・定期預金)を70%確保
- 定期的に資産配分を見直し、リスクを抑えながら運用
例4:40歳・共働き・投資経験あり(リスク許容度:高め)
状況
- 年収:夫婦合計で1,500万円
- 貯金:1,000万円(うち500万円を投資予定)
- 投資目的:資産形成(特に決まった使い道なし)
- 運用期間:20年以上
- リスク耐性:高め(長期目線で運用可能)
収入が安定しており、日々の生活費や緊急時の備えとは別に投資に充てられる余裕資金がある点は、リスクを取れる前提条件になります。さらに、過去の投資経験を通じて値動きのある資産に慣れており、下落局面でも冷静に判断できる見込みがある場合、心理面の耐性も含めてリスク許容度は相対的に高いでしょう。
そのため、短期的な変動に過度に左右されない範囲で、成長性のある資産を取り入れた運用も選択肢になり得ます。
運用方針
- 長期的に資産を増やすため、高リスク資産(株式・海外ETF)を80%、債券・預金を20%
- 短期的な市場の動きに影響されず、積立投資でコツコツ運用
投資をはじめる前に|生活防衛資金の確保が最優先
リスク許容度を考えるまえに、まず確保すべきなのが「生活防衛資金」です。生活防衛資金とは、病気・失業・急な出費など予期せぬ事態にそなえるためのお金をさします。この資金が不十分なまま投資をはじめると、いざというとき含み損のある資産を売らざるをえず、長期運用の計画が大きくくずれてしまうでしょう。
生活防衛資金の目安はどれくらい?
一般的には、毎月の生活費の6か月〜1年分を生活防衛資金として確保するのが目安とされています。以下の表を参考に、自分に必要な金額を計算してみてください。
| 世帯タイプ | 月あたりの生活費(目安) | 生活防衛資金の目安(6か月分) | 生活防衛資金の目安(1年分) |
|---|---|---|---|
| 独身・実家暮らし | 5〜10万円 | 30〜60万円 | 60〜120万円 |
| 独身・一人暮らし | 15〜20万円 | 90〜120万円 | 180〜240万円 |
| 共働き夫婦(子なし) | 25〜30万円 | 150〜180万円 | 300〜360万円 |
| 片働き夫婦+子ども | 30〜40万円 | 180〜240万円 | 360〜480万円 |
※金額はあくまで目安です。住宅ローンや保険の加入状況によっても変わります。
生活防衛資金はどこに置くべきか
生活防衛資金は、すぐに引きだせる流動性の高い場所に置くのが鉄則です。普通預金がもっとも一般的ですが、一部を金利の高い定期預金やネット銀行の普通預金に分けて管理する方法もあるでしょう。
大切なのは、この資金を投資にまわさないという原則を守ることです。生活防衛資金を確保したうえで残った「余裕資金」だけを投資に充てれば、相場の下落時にもあわてて売却する必要がなくなります。リスク許容度を正しく機能させるための土台として、まずこのステップを完了させましょう。
リスク許容度の見直しタイミングと注意点
リスク許容度は一度決めたら終わりではなく、ライフステージの変化にあわせて定期的に見直すべきものです。ただし、相場の上下に反応して頻繁に変更するのは逆効果になりかねません。ここでは「いつ見直すか」「どう注意すべきか」を整理します。
見直しが必要になる5つのタイミング
以下のようなライフイベントや状況の変化があったときは、リスク許容度を再評価するタイミングです。
| 見直しのタイミング | リスク許容度への影響 |
|---|---|
| 昇進・転職で収入が大きく変わったとき | 収入増→許容度が上がる可能性、収入減→下がる可能性 |
| 結婚・出産で家族構成が変わったとき | 扶養家族が増えると許容度は下がりやすい |
| 住宅ローンを組んだ・完済したとき | ローン開始→下がる、完済→上がる |
| 退職・リタイアが近づいたとき | 収入がなくなる時期が近づくほど下がる |
| まとまった資産を相続・贈与で受けとったとき | 余裕資金が増えれば許容度が上がる可能性 |
目安として、年に1回程度はリスク許容度を再確認するのがよいでしょう。誕生日や年度の切りかわりなど、忘れにくいタイミングで習慣にしておくのがおすすめです。
相場の変動にあわせた変更はNG
株価が下がったからリスク許容度を下げ、上がったから上げるのが一見合理的です。しかし、この行動は、実は「高く買って安く売る」パターンにおちいるおそれがあります。
たとえば、相場が急落した局面で許容度を下げると、株式の割合をへらすために値下がりした株を売ることになります。その後の回復局面ではリスク資産が少ないため、上昇の恩恵を十分に受けられません。
リスク許容度の変更は、あくまで「自分自身の状況が変わったとき」に限定するのが鉄則です。市場の動きに感情的に反応しないよう、日ごろから投資方針を紙やメモアプリに書きだしておくとよいでしょう。
新NISAを活用したリスク許容度の活かし方
2024年にスタートした新NISA(少額投資非課税制度)は、運用益が非課税になる強力な税制優遇制度です。年間最大360万円、生涯で1,800万円まで非課税で投資でき、非課税期間も無期限に設定されています。この制度をリスク許容度にもとづいて使いわけることで、効率的な資産形成が可能になります。
2つの投資枠をリスク許容度で使いわける
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つがあり、同時に利用できます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
| 項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 年間投資上限 | 120万円 | 240万円 |
| 対象商品 | 金融庁の基準を満たした投資信託 | 上場株式・投資信託・ETFなど幅広い |
| 投資方法 | 積立のみ | 一括・積立どちらも可 |
| 非課税保有限度額 | 合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) | 同左 |
リスク許容度が低い方は、つみたて投資枠を中心に長期の積立でコツコツ運用するのが安心でしょう。リスク許容度が中〜高の方は、つみたて投資枠で安定した資産を積みたてつつ、成長投資枠でよりリターンの高い資産にも挑戦するという使いわけが考えられます。
非課税メリットを最大化するために
新NISAの非課税枠は、売却すると翌年以降に枠が復活するしくみです。なお2025年12月の税制改正大綱では、この復活タイミングを「翌年」から「当年中」に早める改正が正式に決定されました。ただし、年間投資枠360万円の上限は変わらないため、短期売買をくりかえす使い方は本来の制度趣旨にそぐいません。
非課税メリットをもっとも活かせるのは、自分のリスク許容度に見合った資産を長期で保有しつづけることです。リスク許容度を正しく設定していれば、相場の下落局面でもあわてて売却せず、非課税の恩恵を最大限に受けとれるでしょう。
つまり、リスク許容度を把握するというプロセスは、新NISAを上手に活用するための前提条件でもあるのです。
よくある質問(FAQ)
2026.02.24
男性30代
“日経平均株価が暴落したとき、投資家はどのように動けばよいのでしょうか?”
A. 急落時は相場予想で動かず、目的・期間・生活防衛費・許容リスクで売る/持つ/買うを判断しましょう。3年以内に使う資金は必要額を現金化し、長期の分散投信は積立を継続するのが基本です。
2025.08.22
女性30代
“住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない大きな理由はなんですか?”
A. 住宅ローンの繰り上げ返済は、低金利や税制優遇を失い、資金の流動性や投資機会を損なう可能性がある為です。
2026.02.24
男性40代
“アッパーマス層から準富裕層を目指すうえで、何をすればよいでしょうか?”
A. 準富裕層を目指すには、貯蓄率を維持し防衛資金を確保しましょう。そのうえで、資産運用を継続することが大切です。
この記事のまとめ
この記事では、リスク許容度を「損失への耐性」として捉え、投資のリスクは危険ではなくリターンの振れ幅である点、そしてリスクとリターンはトレードオフである点を整理しました。さらに、許容度を把握しないことで起きる失敗(パニック売り・取りすぎ/避けすぎ)を踏まえ、5つの視点で許容度を決め、資産配分と分散に反映する考え方を解説しました。次は、生活防衛資金を確保したうえで「いつ使う資金か」を分け、自分の許容度に沿った配分を作り、年1回を目安にライフイベント時に見直していきましょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
リスク許容度
リスク許容度とは、自分の資産運用において、どれくらいの損失までなら精神的にも経済的にも受け入れられるかという度合いを表す考え方です。 投資には必ずリスクが伴い、時には資産が目減りすることもあります。そのときに、どのくらいの下落まで冷静に対応できるか、また生活に支障が出ないかという観点で、自分のリスク許容度を見極めることが大切です。 年齢、収入、資産の状況、投資経験、投資の目的などによって人それぞれ異なり、リスク許容度が高い人は価格変動の大きい商品にも挑戦できますが、低い人は安定性の高い商品を選ぶほうが安心です。自分のリスク許容度を正しく理解することで、無理のない投資計画を立てることができます。
リスク資産
リスク資産とは、市場の変動によって価格が上下し、投資元本が増減する可能性のある資産のことを指す。代表的なものとして、株式、投資信託、外国為替、コモディティ(原油や金など)、不動産などがある。 これらの資産は、長期的に見ればリターンが期待できる一方で、短期的には価格が大きく変動することがある。そのため、リスク資産を運用する際は、投資の目的や期間、リスク許容度を考慮したポートフォリオの設計が重要となる。
安全資産
安全資産とは、価格変動が少なく、元本の減少リスクが低い資産のことを指す。代表的なものとして、銀行預金、国債、定期預金、MMF(マネーマーケットファンド)などがある。 これらの資産はリスクが低いため、資産の一部を安全資産に振り分けることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑える役割を果たす。特に、短期間で使用する予定の資金や、生活費の予備資金として適している。 インフレの影響を受けるため、長期的に資産を増やす目的ではリスク資産と併用することが一般的である。
アセットアロケーション(資産配分)
アセットアロケーション(Asset allocation)とは、資産配分という意味で、資金を複数のアセットクラス(資産グループ)に投資することで、投資リスクを分散しながらリターンを獲得するための資産運用方法。アセットアロケーションは戦略的アセットアロケーションと戦術的アセットアロケーションの2つを組み合わせることで行われ、前者は中長期的に投資目的・リスク許容度・投資機関に基づいて資産配分を決定し、後者は短期的に投資対象の資産特性に基づいて資産配分を決定する。
積立投資
積立投資とは、一定のサイクル(例:毎月や毎週など)で、あらかじめ決めた金額ずつ同じ銘柄や投資信託などを購入していく投資手法です。 この方法は、一度にまとまった資金を投じる「一括投資」とは異なり、少額から始められるのが特徴です。また、購入時期を複数回に分散できるため、相場が高いタイミングで一度に大量購入してしまうリスク(いわゆる高値づかみ)を抑えられると期待されています。 具体的には、「相場が下がったときはより多くの口数や株数を買える」「相場が高いときは割高な投資を抑えられる」という形で、平均取得単価が平準化される効果があります。この仕組みは英語で「ドルコスト平均法(Dollar Cost Averaging)」とも呼ばれ、特に長期運用を考えている初心者からベテランまで、多くの投資家が活用している戦略です。 ただし、積立投資を行ったからといって必ずリスクが軽減されるわけではなく、投資対象自体の価格が大きく下落した場合には損失が出る可能性もあります。したがって、積立する商品や期間、目標リスクなどをしっかり考えたうえで、自分の資産配分に合った方法を選ぶことが大切です。
ポートフォリオ
ポートフォリオとは、資産運用における投資対象の組み合わせを指します。分散投資を目的として、株式、債券、不動産、オルタナティブ資産などの異なる資産クラスを適切な比率で構成します。投資家のリスク許容度や目標に応じてポートフォリオを設計し、リスクとリターンのバランスを最適化します。また、運用期間中に市場状況が変化した場合には、リバランスを通じて当初の配分比率を維持します。ポートフォリオ管理は、リスク管理の重要な手法です。






