
資産運用はしないほうがいい?初心者にありがちな失敗例とリスクを解説
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公開:
2025.01.31
更新:
2025.01.31
「資産運用は危険だからやめたほうがいい」「失敗して資産を減らしたらどうしよう」と感じている方は多いのではないでしょうか?
たしかに、資産運用で失敗するケースはあります。しかし、それらの多くは失敗の原因を知り、事前にリスク管理をすることで避けられるものです。
この記事では、投資初心者が陥りがちなよくある失敗例を分かりやすく解説するとともに、失敗を防ぐ具体的な対策と初心者におすすめの資産運用方法を紹介します。
資産運用をやめとけと言われる理由!典型的な失敗例
退職金などの資産は、あなたの老後の生活を左右する重要なお金です。そのため、資産運用は慎重に行う必要があります。資産運用を始める前に、よくある失敗例を理解しておけば、典型的な罠を避けることができます。
ここでは、典型的な失敗パターンについて解説します。
失敗例1:一発を狙った、過度なリスクの投資
高いリターンを期待するあまり、リスクを過大に取ることは、資産運用でよくある失敗の一つです。ハイリターンな投資先は同様にハイリスクとなり、運用成果が不安定です。
例えば、急成長中の企業の株に資産のほとんどを一点集中するような行動がこれに当たります。こうした行動は、資産運用や投資というよりも、運任せの投機やギャンブルに近いものです。
たしかに、この企業が大きく成長すれば、資産が数年で倍増する可能性はあります。しかし、その確率は高くありません。急成長したベンチャー企業の株価が一時的に上昇しても、その後成長が止まり、株価が急落してしまうケースはよく見られます。
大きなリターンの裏には大きなリスクが発生します。リターンに目がくらんだ、過度なリスク取りは、市場の変動によって大きな損失を招く可能性があります。資産運用においてリスクとリターンのバランスを適切に取ることは非常に重要です。自分の考えがバランスの取れているものなのか、資産運用を本格化する前に専門家のアドバイスを求めることはリスク管理において有効な手段となるでしょう。
失敗例2:レバレッジを使った無理な運用
レバレッジとは、少ない手持ち資金(証拠金)を担保に、実際の資金の何倍もの金額で取引できる仕組みです。多くの人はレバレッジというとFXを思い浮かべるかもしれませんが、株式や投資信託でもレバレッジを使うことができます。
例えば、100万円の証拠金を使って、300万円分の株を取引する場合、これが「3倍のレバレッジを掛けた状態」です。この場合、株価が1割上昇すると、レバレッジなしでは100万円が110万円(利益10万円)になりますが、3倍のレバレッジを掛けていると300万円の1割、つまり30万円の利益を得られます。
しかし、逆に株価が1割下落すると、レバレッジなしでは100万円が90万円(損失10万円)で済みますが、3倍のレバレッジでは300万円が270万円に減少し、損失は30万円に拡大します。この損失は証拠金から差し引かれるため、証拠金が70万円に減ってしまいます。
このように、レバレッジは少ない資金で大きな利益を狙える一方、損失もその分大きくなるという特徴があります。
失敗例3:誤った情報に基づく投資
誤った情報をもとにした投資は、資産運用でよくある失敗の一つです。不確かな情報や誤解を招く宣伝に惑わされることで、不適切な判断をしてしまうケースがあります。
例えば、証券会社の言われるままに投資を始める、友人や知人の口コミだけで投資先を決める、あるいは「絶対に儲かる」「このチャンスを逃したら損」といった誇大広告に引き込まれることが挙げられます。こうした言葉は、あなたの資産を引き出すことが目的で、あなたの資産を増やすことを保証するものではありません。そのため、リスクを小さく説明し、あたかも成功が確実であるかのように見せかける場合が多いのです。
また、知識が浅い友人や知人から、「この方法で儲かった」と勧められることもあります。しかし、なぜその方法で成功したのかを正確に説明できる人は少なく、その成功が偶然によるものだった場合、あなたが同じように成功する保証はありません。
資産運用を成功させるには、信頼できる情報源から正確な情報を集め、冷静に判断することが重要です。また、投資を始める前に、自分の目的やリスク許容度を明確にし、それに合った投資先を選ぶ必要があります。焦って情報に振り回されると、本来の目的を見失い、不要なリスクを背負う原因になりかねません。
信頼できる専門家に相談しつつ、自分自身でも情報を集め、冷静に判断しながら進めることが、安心して資産運用を行うための鍵となります。
資産運用におけるリスクとは?
通常、「リスク」とは将来的に損をする可能性や危険性のことを指します。しかし、資産運用における「リスク」とは、投資資産の価格が変動する大きさのことを意味します。
例えば、価格変動が大きい「ハイリスク」の資産は、価格が上がれば大きな利益を得られる反面、価格が下がったときの損失も大きくなります。一方、「ローリスク」の資産は、価格の変動が小さいため、利益も損失も少額で安定しています。
資産運用では、この価格変動の要因(リスク要因)を理解することが大切です。投資初心者の方に認識いただきたい主なリスクは以下の5つです。
名称 | 説明 |
---|---|
価格変動リスク | 投資対象の資産(株式や債券など)の価格が市場の需給や経済状況によって上下するリスクです。価格が下落すれば損失を被る可能性があります。 |
金利変動リスク | 金利が変動することで資産の価値や収益に影響を与えるリスクです。例えば、金利が上がると債券の価格が下がることがあります。 |
信用リスク | 投資対象の企業や国が財務的な問題に陥り、借金を返せなくなるリスクです。この場合、投資した資産の価値が大きく減少する可能性があります。 |
為替変動リスク | 外国通貨建ての資産を持っている場合、通貨の価値が変動することで資産価値が上下するリスクです。例えば、外貨の価値が下がると、その分資産価値も減少します。 |
カントリーリスク | 投資対象国の政治・経済・社会状況が不安定になることで、資産の価値に影響を与えるリスクです。政策変更や経済危機などが原因で、企業や通貨の価値が変動することがあります。 |
このように、資産運用にはさまざまなリスクが伴います。そのリスクの要因は、国際情勢、各国の政治や経済、企業の経営状況など、複雑に影響し合っています。そのため、安定した資産運用を行うためには、リスクを1つに集中して影響度を大きくしすぎないように分散することが重要なのです。
安定志向の方でも資産運用をした方がいい理由と運用例
「できるだけ資産を減らしたくない」という安定志向の方でも、資産運用を検討する価値があります。特にインフレが進むと、預貯金だけでは物価上昇に資産の価値が追いつかず、実質的な資産の目減りを招く可能性があるためです。
資産運用でインフレに対抗し将来に備える
資産運用は、インフレ対策や急な出費への備え、さらには豊かな生活を楽しむための手段です。複数の投資手段を組み合わせれば、預貯金だけに依存するよりもリスクを抑えながら資産の成長を目指せます。
預貯金も一つの金融商品に過ぎません。預貯金だけでは常にインフレリスクにさらされるため、「安定している」とは言い切れません。リスクを分散させることは、市場の変動にも耐えられる運用を可能にし、資産全体を守るための基本的な戦略です
資産運用のリスク分散にはグローバル分散投資が初心者におすすめ
「卵を一つのかごに入れない」という言葉の通り、リスク分散は資産運用の基本です。異なる種類の資産や地域に投資を分けることで、特定のリスクに依存せず、資産全体の安定性を高められます。
中でも「グローバル分散投資」は、株式、債券、不動産など複数の資産と、国・地域・通貨の分散を組み合わせることで、リスクを抑えつつ安定した成長を追求できる方法です。これは特に、投資初心者や退職金の運用を検討している方に向いています。
まとめ:資産運用はしない方がいい?失敗例から学ぶなら資産運用したほうが断然いい!
「資産運用はしない方がいい?」「資産運用はリスクがあるから、貯金のほうが安心なのでは?」という質問がよくあります。
何も考えずにやる、ギャンブルや投機のようにやってしまうなら、その通りやらないほうがいいです。しかし、資産運用でよくある失敗例を踏まえた上で、リスクとリターンのバランスを考えながら資産運用を行えば、むしろ預貯金だけでお金を管理するよりも大きなメリットと安定性が得られます。
たとえば貯金だけだと、銀行の破綻やインフレのリスクに対応できません。そういった意味でも単体で完全に安全な資産管理方法は存在しません。
資産運用は、よくある失敗例を踏まえれば、安心して資産を増やし、生活を安定させられる有望な手段です。そのためにも、どのような失敗例があり、小さい成功を積み上げるためにどのようなことを考えればいいのか、ということをデータに基づき親身に相談してくれる専門家に相談してみることがおすすめです。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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関連する専門用語
リスク
価格の振れ幅のこと、一般に「標準偏差」という数値で表す。 数値が大きければ振れ幅が大きく、小さければ振れ幅も小さい。投資資産の価格変動の大きさの目安。
リターン
運用の結果得られる収益率(または損失率)のこと
分散投資
リスク低減のため、資金を複数の銘柄や資産クラス、地域、業種に分配して投資する方法。特定の投資対象が値下がりしても、他の資産の上昇で損失を緩和できる可能性があります。安定したリターンを長期的に目指す基本戦略です。
インデックス
インデックス(Index)は、市場の動きを把握するための重要な指標です。複数の銘柄を一定の基準で組み合わせることで、市場全体や特定分野の値動きを分かりやすく数値化しています。 代表的なものには、日本の株式市場を代表する日経平均株価やTOPIX、米国市場の代表格であるS&P500などがあります。これらのインデックスは、投資信託などの運用成果を評価する際の基準として広く活用されており、特にパッシブ運用(インデックス運用)では、この指標と同じような値動きを実現することを目標としています。
レバレッジ
借入金などの外部資金を利用して投資規模を拡大する手法。自己資本に対して大きな投資を行うことで、リターンを増大させる可能性がありますが、同時にリスクも高まります。レバレッジを活用することで、資産運用の効率を高める一方、借入金利の変動や市場の下落時には損失が拡大するリスクがあります。適切な管理が重要です。
ドルコスト平均法
ドルコスト平均法とは、一定の金額を定期的に投資する方法です。価格が高いときは少なく、価格が低いときは多く買えるため、購入価格が平均化され、リスクを分散できます。市場のタイミングを読む必要がないため、初心者に最適な方法とされています。長期投資で効果を発揮し、特に投資信託やETFで利用されることが多い手法です。
NISA
「Nippon Individual Saving Account」の略(少額投資非課税制度)。 日本における株式や投資信託の投資金における売却益と配当への税率を一定の制限の元で非課税とする制度。 金融機関において、この制度が適用される非課税口座を、通常の取引口座とは別に開設する必要がある。
ETF(上場投資信託)
ETF(Exchange Traded Funds)は、証券取引所に上場している投資信託で、株式のようにリアルタイムで売買が可能です。 一般的に、特定の指標(例:日経平均株価やS&P500など)に連動する「インデックスETF」が主流ですが、運用チームが独自の投資戦略で運用する「アクティブETF」もあります。アクティブETFは、特定の市場平均を上回るリターンを目指しており、インデックスETFよりも手数料が高い傾向にありますが、差別化された運用成果が期待されます。 また、ETFは分配金の再投資が自動化されていない場合が多い一方で、低コストで幅広い資産に分散投資できるのが魅力です。目的に応じて、インデックスETFとアクティブETFを組み合わせて活用することで、効率的なポートフォリオ構築が可能です。
信用リスク
有価証券の発行体(国や企業など)が財政難、経営不振などの理由により、債務不履行(利息や元本などをあらかじめ決められた条件で支払うことができなくなること)が起こる可能性。 そういう事態が起こった場合やそれが予想される場合には、発行体の有価証券の価格は下落する。
カントリーリスク
投資対象こ国の経済や政治等の不安定性が値動きに与える影響を指す。一般に先進国は低く、発展途上国は高いとみなされている。