
投資信託とは?仕組みやメリット・デメリットを初心者向けに徹底解説
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公開:
2023.04.02
更新:
2025.07.10
投資信託とは、投資家から集めた資金をプロがまとめて運用し、その運用成果を投資額に応じて還元する金融商品です。少額(100円)から気軽に始められ、株式や債券など複数の資産に分散投資が可能なため、初心者でも取り組みやすいのが魅力です。ただし、元本保証がないことや信託報酬などのコストがあるため注意が必要です。本記事では仕組みやメリット・デメリットを整理し、失敗しない選び方をわかりやすく解説します。
サクッとわかる!簡単要約
投資信託の基本的な仕組みから活用のコツまでを初心者でもわかるよう体系的に整理しました。基準価額や純資産総額の意味、投資成績を正確に測るトータルリターンの考え方、さらに信託報酬をわずか0.1%抑えることで将来的な手取りが大きく変わるなど、知らずに損しやすいポイントを具体的に示しています。また、NISAやiDeCoなど税制優遇制度を上手に活用し、自分の目的やリスク許容度にあった商品を選べるようになります。
投資信託とは?運用のプロに「おまかせ」できる金融商品
投資信託(ファンド)とは、たくさんの投資家から集めたお金をひとつにまとめ、ファンドマネージャーと呼ばれる運用の専門家が株式や債券、不動産(REIT)など国内外の様々な資産に投資・運用する金融商品です。
投資家はファンドを購入するだけで、専門知識がなくてもプロに運用を任せられ、その成果を基準価額の上昇や分配金として受け取ることができます。少額から幅広い資産への分散投資が自動的にできるため、リスクを抑えやすく、初心者でも取り組みやすいのが大きな特徴です。
ただし、投資信託は預貯金とは異なり元本保証がない点に注意が必要です。市場環境や運用成績によっては基準価額が下落し、元本割れ(損失)が生じる可能性があります。しかし、長期的に運用を続けることでリスクを平均化し、利益を安定させる効果が期待できます。また、投資信託には所定の手数料がかかりますが、商品選びや制度の活用によってコストを抑えることも可能です。
3つの専門機関が連携する「安全な仕組み」が特徴
投資信託の大きな特徴は、投資家から集めた大切なお金が「安全な仕組み」で管理されている点です。これは、販売会社・運用会社・信託銀行という、それぞれ役割の異なる3つの専門機関が連携し、互いにチェック機能を果たしているためです。
販売会社:投資家との「窓口」役
投資家が投資信託と出会う最初の接点が販売会社です。証券会社や銀行がこの役割を担い、口座開設や商品の購入・換金といった「窓口」として機能します。投資家からの購入代金を受け取ったり、分配金を支払ったりするのも販売会社の役目です。
運用会社:投資戦略を決める「司令塔」
集まった資金をどのように運用するか、その戦略を立てて指示を出すのが運用会社(委託会社)です。まさにファンドの「司令tong」と言える存在で、経済や企業を分析し、最適な投資先を決定します。この専門的な判断のおかげで、投資家は詳しい知識がなくても運用の恩恵を受けられるのです。
信託銀行:資産を保管・管理する「金庫番」
投資家から集めた大切な資産を、運用会社の指示とは独立して安全に保管・管理するのが信託銀行(受託会社)です。ファンドの財産を守る「金庫番」としての役割を担い、運用会社からの指示に基づき、株や債券の売買を正確に実行します。
このように、資金の販売・運用・保管をそれぞれ別の専門機関が担うことで、仕組みの透明性と安全性が確保されており、投資家は安心して資産を預けることができます。
「基準価額」で日々の成績を、「純資産総額」でファンドの人気度がわかる
投資信託の状況を把握するには、2つの重要な数字、「基準価額」と「純資産総額」を理解することが大切です。
基準価額:投資信託の「値段」そのもの
投資信託の「値段」にあたるのが基準価額です。一般的に1万口あたりの価格で表示され、原則として1日に1回更新されます。市場の値動きや運用状況によって変動し、投資家が投資信託を売買する際は、この基準価額に基づいて取引が行われます。
基準価額についてより詳しくは以下の記事で解説しています。
純資産総額:ファンドの「規模や人気」を示す指標
ファンドの「規模や人気」を測る重要な指標が純資産総額です。これは、ファンドが保有する全資産から負債やコストを差し引いた、純粋な資産の合計額を指します。純資産総額が大きいファンドは、それだけ多くの投資家から支持されている証であり、運用が安定しやすい傾向にあります。
トータルリターン:本当の運用成績を評価するカギ
基準価額の動きだけを見ていては、ファンドの本当の運用成績を見誤ることがあります。なぜなら、分配金を出すと、その分だけ基準価額は下がるからです。
そこで重要になるのが、トータルリターンという考え方です。これは、基準価額の値動きに加えて、受け取った分配金も利益として合算した、総合的な収益率を示します。分配金が出るタイプの投資信託を評価する際は、必ずこのトータルリターンで判断するようにしましょう。
投資信託のメリット・デメリット|どんな人におすすめ?
投資信託には多くのメリットがある一方、注意すべきデメリットも存在します。ここでは双方のポイントを比較し、どのような方に投資信託が向いているのかを解説します。
メリット:少額からプロに「分散投資」を任せられるのが最大の魅力
投資信託のメリットは、簡単に分散投資ができる、という点です。
1.100円からでも始められる手軽さ
ネット証券などでは100円や1,000円といった少額から購入でき、まとまった資金がなくても気軽に始められます。この手軽さから、若いうちから資産形成を習慣化しやすいのが大きなメリットです。
2. 自動的に「分散投資」となりリスクを抑えられる
1つの商品で国内外の数十〜数百の株式や債券などに投資するため、自然と分散投資が実現します。投資先の一つの業績が悪化しても、他の投資先がカバーすることで価格変動が緩やかになり、リスクを軽減する効果が期待できます。
3. 投資の専門家(プロ)に運用を任せられる
投資の知識や時間がない初心者でも、プロのファンドマネージャーが経済や企業を分析し、最適な投資判断を下してくれます。個人では難しい海外の有望企業などにも、専門家を通じて手軽に投資できるのが魅力です。
4. 「複利効果」で雪だるま式に資産を増やせる
運用で得た利益を再投資することで、利益が利益を生む「複利効果」が期待できます。特に分配金を出さないタイプの投資信託を長期保有すると、複利効果で効率的にリターンを大きくしやすいと言われています。
5. 情報開示の義務があり、透明性が高い
金融庁の規制により、商品の目的やリスク、手数料などを記載した「目論見書」や、運用状況を報告する「運用報告書」の開示が義務付けられています。これにより、投資家は納得して商品を選べ、自分の資産状況も明確に把握できます。
投資信託の目論見書・運用報告書については以下の記事で詳しく解説しています。
デメリット:元本保証はなく、手数料などのコストがかかる
便利な投資信託ですが、もちろん弱点もあります。以下のポイントを理解し、適切なリスク管理を行うことが重要です。
1. 元本保証がなく、価格変動で損をする可能性
預金と違い元本保証はありません。市場の状況次第で基準価額が下落し、投資した金額を下回る(元本割れ)リスクがあります。特に株式を多く含むファンドは値動きが大きくなる傾向があります。
2. 保有しているだけで「手数料」がかかり続ける
購入時の「販売手数料」のほか、保有期間中は「信託報酬」という運用管理費用が毎日かかります。この信託報酬は長期的なリターンに大きく影響するため、なるべく低コストの商品を選ぶのが鉄則です。
3. すぐに現金化できない「流動性の制約」
株式のようにリアルタイムで売買できず、換金(現金化)を申し込んでも、実際に代金を受け取るまでに数日かかります。緊急時にすぐ使うお金ではなく、当面使う予定のない「余裕資金」で投資するのが基本です。
4. プロに任せても「運用が失敗」する可能性
プロが運用するといっても、必ず利益が出る保証はありません。市場環境によっては、市場平均を下回る成績に終わることもあります。特に、市場平均超えを目指すアクティブファンドはこの傾向がみられます。
5. 「インフレ」や「金利変動」に弱い場合がある
インフレ(物価上昇)が続くと、お金の価値が実質的に目減りしてしまいます。また、金利が上昇する局面では債券価格が下落しやすいため、債券を中心に運用する投資信託は基準価額が下がる可能性があります。
投資信託の手数料と税金|コストを抑える知識は必須
投資信託を利用する際には各種手数料と税金について理解しておく必要があります。ここでは代表的な費用と税制のポイントを整理します。手数料を抑えるコツや税制優遇の活用も交え、賢い運用につなげましょう。
購入時手数料は「ノーロード(無料)」の投資信託を選ぶのが基本
投資信託の購入時にかかる初期コストが「購入時手数料」です。近年は手数料が無料の「ノーロード」が主流で、特にネット証券では基本の選択肢となっています。コストを抑える第一歩として理解しましょう。
ノーロードファンドについては以下記事でも詳しく解説しています。
購入時手数料とは?最初に引かれるコスト
投資信託の購入時に、販売会社へ支払う初期コストです。購入額の0〜3%程度が一般的で、例えば手数料3%なら100万円購入時に3万円が差し引かれ、97万円分から運用が始まります。
ネット証券なら「ノーロード」が基本
近年、ネット証券では購入時手数料が無料の「ノーロードファンド」が主流です。対面窓口では相談サービス料として手数料がかかる場合があるため、コストを最優先するならネット証券が基本の選択肢となります。
保有中に毎日かかる「信託報酬」こそ、最も重視すべきコスト
投資信託の保有中、資産から毎日差し引かれる費用が「信託報酬」です。長期的なリターンに最も影響する重要なコストであり、信託報酬以外の「隠れコスト」の存在も知っておくことが大切です。
信託報酬:保有期間中ずっとかかる最重要コスト
投資信託の保有中、資産から毎日自動で差し引かれる運用管理費用です。直接支払う感覚はありませんが、長期的なリターンに最も大きく影響するため、投資信託選びで一番重視すべきコストです。
インデックス型かアクティブ型かで報酬は大きく変わる
市場平均に連動するインデックスファンドは運用がシンプルなため低コストです。一方、市場平均超えを目指すアクティブファンドは調査に手間がかかるため高コストな傾向があります。長期投資ではこの差が響きます。
投資信託の運用方式、アクティブ運用とパッシブ運用については以下の記事で詳しく解説しています。
「隠れコスト」にも要注意
信託報酬の他に、解約時にかかる場合がある「信託財産留保額」や、ファンド内部での売買手数料なども存在します。これらもリターンに影響するため、信託報酬がコストの全てではないと覚えておきましょう。
税金は「NISA」や「iDeCo」の活用で非課税にできる
投資信託の利益には通常約20%の税金がかかりますが、国の税制優遇制度「NISA」や「iDeCo」を使えば、この税金をゼロにすることが可能です。制度を理解し、手取りを最大化する知識を身につけましょう。
原則、利益に約20%の税金がかかる
投資信託の売却益や分配金といった利益には、原則20.315%の税金がかかります。通常は「特定口座」で自動的に源泉徴収されるため、確定申告の手間はかかりません。
NISA・iDeCoを使えば運用益が非課税に
国が用意した税制優遇制度を活用すれば、税金の負担を大幅に軽減できます。
- NISA(少額投資非課税制度):運用益が非課税になるシンプルな制度。いつでも引き出せるため、住宅購入や教育資金など、柔軟な資産形成に向いています。
- iDeCo(個人型確定拠出年金):運用益非課税に加え、掛け金が全額「所得控除」の対象となり、所得税・住民税も軽くなる強力な制度。原則60歳まで引き出せないため、老後資金の準備に特化しています。
投資信託基本の3種類:インデックス・アクティブ・バランスファンドとは?
投資信託には実に様々な種類がありますが、運用方針によって大きく3つに分けられます。それぞれの特徴を知ることが、自分の目的やリスク許容度に合った商品を選ぶための第一歩です。ここでは、基本となる3種類を分かりやすく解説します。
インデックスファンド:市場平均を目指す「安定・低コスト」運用
日経平均株価や米国のS&P500といった「指数(インデックス)」に連動するシンプルな運用を目指す投資信託です。最大のメリットは運用コスト(信託報酬)が非常に安いことで、大きな失敗が起こりにくいのが特徴です。その反面、市場平均を上回るリターンは期待できません。とにかくコストを抑え、市場全体の成長をコツコツと享受したいと考える、投資初心者の王道と言える選択肢です。
インデックスファンドについては以下の記事で詳しく解説しています。
アクティブファンド:市場平均以上を狙う「積極・高コスト」運用
運用の専門家が独自の分析に基づき、指数を上回るリターンを目指す積極的な運用を行う投資信託です。運用がうまくいけば市場平均を大きく超える利益が期待できる一方、調査費用がかさむため信託報酬は高めに設定されています。専門家の予測が外れ、高いコストを払ったにもかかわらず市場平均に負けてしまう可能性も十分あります。特定のテーマや企業に期待し、コストを払ってでも高いリターンを狙いたい上級者向けの選択肢です。
アクティブファンドについては以下の記事で解説しています。
バランスファンド:自動で資産配分してくれる「おまかせ」運用
国内外の株式や債券、REIT(不動産)といった複数の資産を、あらかじめ決められた比率で詰め合わせた投資信託です。この商品を1本買うだけで、自動的に世界中の様々な資産へ分散投資が完了するのが最大の利点です。便利な分、信託報酬はやや割高な傾向にあります。「何にどれくらい投資すれば良いか分からない」という初心者の方が、最初の一本として選ぶのに最適な「おまかせファンド」と言えるでしょう。
バランスファンドについては以下の記事で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
この記事のまとめ
投資信託は、初心者でも少額から分散投資が可能で、プロによる運用という安心感がある一方、元本割れや信託報酬などのコストにも注意が必要です。購入時には基準価額や純資産総額を確認し、トータルリターンで本当の運用成果を把握することが重要になります。また、NISAやiDeCoといった非課税制度を活用すると、効率よく資産を増やすことができます。初めての投資信託選びで迷ったら、専門家に相談しながら自分に最適な商品を選びましょう。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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関連質問
関連する専門用語
繰上償還(投資信託)
繰上償還とは、投資信託や債権などにおいて、運用資産が少なくなり一定規模を下回った場合に運用会社が効率的な運用をすることが難しくなったと判断して、償還期日(あらかじめ設定されていた期限)を繰り上げて、償還期日よりも前に償還することをいう。投資目的を早期に達成した場合にも行われることがある。
証券化
証券化とは、もともと流動性の低い資産(すぐに現金化しにくい資産)をもとに、将来得られる収益を裏付けとして、投資家向けに売買可能な証券を発行する仕組みのことです。わかりやすく言えば、「資産を金融商品に変える」手法です。 たとえば、住宅ローンやオートローン、売掛金、不動産などから将来得られる返済や収入をまとめて、それを担保とした「資産担保証券(ABS)」を発行し、投資家に販売します。これによって、企業は本来すぐに現金化できない資産を活用して資金を調達できるようになります。 証券化された商品は、複数の資産をまとめて分散効果を持たせたり、信用リスクを分割・構造化することもできるため、機関投資家向けの高度な金融商品として発展してきました。一方で、2008年のリーマン・ショック時には、住宅ローン担保証券(MBS)の過剰な証券化が信用不安を拡大させた側面もあり、リスク管理の重要性も同時に認識されています。 証券化は、資産の有効活用・流動性向上・資金調達の多様化といった観点で、現代の金融市場における重要な金融技術のひとつです。
増配
増配とは、企業が前期より一株当たりの年間配当金を増額することであり、利益成長や手元資金の潤沢さを背景に株主還元を強化する意思表示として行われます。配当金が増えると、株価が一定でも年間配当金を株価で割った配当利回りが上昇するため、インカムゲインを重視する投資家にとっては大きな魅力となります。特に連続増配年数が長い企業は、景気変動下でも安定したキャッシュフローを維持できる経営体質だと評価されやすく、株式の長期保有を促す材料にもなります。 もっとも、増配は企業の資本政策の一手段であり、好業績時でも将来の成長投資を優先する局面では実施されない場合があります。反対に、業績悪化が続けば配当を前年と同額に据え置く、あるいは前期より減額する減配に転じるリスクもあります。投資家は配当の持続可能性を測る指標として、配当総額を当期純利益で割った配当性向や、営業キャッシュフローとのバランスを確認し、企業に増配余力があるかどうかを見極めます。 このように増配は、企業の収益力と株主還元姿勢を映し出すシグナルであり、配当利回りや配当性向、減配・据え置きの動向と合わせて分析することで、株式投資の判断材料として活用できます。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。
有価証券
有価証券とは、財産的価値を裏づける権利が紙や電子データそのものに具体化された証券類を指します。金融商品取引法第2条では「第一項有価証券(株式・社債など)」「第二項有価証券(投資信託受益証券など)」に分類され、さらに商法や手形法でも定義が設けられています。現在は株券不発行制度や「ほふり(証券保管振替機構)」による電子化が進み、一般の投資家が実物の証券を受け取る場面はほとんどありません。 有価証券は、大きく ①資金調達・投資対象としての証券 と ②決済・信用補完を目的とする証券 に分けられます。前者には株式、社債、国債、投資信託受益証券、ETF(Exchange Traded Fund〈上場投資信託〉)などが含まれ、保有者は配当金や利息、値上がり益を得る可能性があります。後者には約束手形や小切手が該当し、主に企業間の支払い手段として流通しますが、一般的な投資対象にはなりにくい点が前者と大きく異なります。 企業や政府は有価証券を発行して広く資金を集め、投資家は将来得られるリターンを期待して取得します。その価格は市場の需給、金利水準、発行体の信用力などで日々変動するため、価格変動リスクと引き換えに収益機会を得られることが資産運用上の魅力です。ただし、譲渡益や配当・利息には原則として20.315%の申告分離課税がかかり、上場株式や公募投信は時価評価が会計基準でも義務づけられるなど、税務・会計・金融規制の面でも厳格なルールが設定されています。 このように有価証券は、金融市場を通じて資金を循環させる中心的なインフラであり、個人投資家にとっては資産形成の主軸となる一方で、法律・税務・会計の枠組みによって権利が保護され、リスク管理が図られている点が大きな特徴です。
分配金
分配金とは、投資信託やREIT(不動産投資信託)などが運用によって得た収益の一部を、投資家に還元するお金のことです。これは株式でいう「配当金」に似ていますが、分配金には運用益だけでなく、元本の一部が含まれることもあります。そのため、分配金を受け取るたびに自分の投資元本が少しずつ減っている可能性もあるという点に注意が必要です。分配金の有無や頻度は投資信託の商品ごとに異なり、毎月、半年ごと、年に一度などさまざまです。投資初心者にとっては、「お金が戻ってくる」という安心感がありますが、長期的な資産形成を考えるうえでは、分配金の出し方やその内容をしっかり理解することが大切です。
オープンエンド型投資信託
オープンエンド型投資とは、会社が運用期間中に払い戻しに応じ、いつでも換金可能な投資信託のこと(対義語:クローズドエンド型投資信託)。投資家が換金を希望する場合は、いつでも会社は基準価格で株式を買い戻す契約となっている。オープンエンド型投資のメリットとしては、投資家側はいつでも換金の保障があるという安心感を感じられることが挙げられるが、いつ買戻し請求があってもいいようにするために会社側にコストがかかり、結果として利回りが低くなるというデメリットがある。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。
基準価額
基準価額とは、主に投資信託の商品価格を表すもので、投資信託1口あたりの価値を示しています。毎営業日に一度計算され、投資信託が保有している株式や債券などの資産の時価総額から、運用にかかる費用を差し引いた金額を、発行済みの総口数で割って算出されます。 投資信託の購入や売却の際には、この基準価額が参考になりますので、価格の動きに注目することが大切です。ただし、基準価額は市場価格とは異なり、リアルタイムで変動するわけではないため、翌営業日の価格になることが多い点にもご注意ください。
利回り
利回りとは、投資で得られた収益を投下元本に対する割合で示し、異なる商品や期間を比較するときの共通尺度になります。 計算式は「(期末評価額+分配金等-期首元本)÷期首元本」で、原則として年率に換算して示します。この“年率”をどの期間で切り取るかによって、利回りは年間リターンとトータルリターンの二つに大別されます。 年間リターンは「ある1年間だけの利回り」を示す瞬間値で、直近の運用成績や市場の勢いを把握するのに適しています。トータルリターンは「保有開始から売却・償還までの累積リターン」を示し、長期投資の成果を測る指標です。保有期間が異なる商品どうしを比べるときは、トータルリターンを年平均成長率(CAGR)に換算して年率をそろすことで、複利効果を含めた公平な比較ができます。 債券なら市場価格を反映した現在利回りや償還までの総収益を年率化した最終利回り(YTM)、株式なら株価に対する年間配当の割合である配当利回り、不動産投資なら純賃料収入を物件価格で割ったネット利回りと、対象資産ごとに計算対象は変わります。 また、名目利回りだけでは購買力の変化や税・手数料の影響を見落としやすいため、インフレ調整後や税控除後のネット利回りも確認することが重要です。複利運用では得た収益を再投資することでリターンが雪だるま式に増えますから、年間リターンとトータルリターンを意識しながら、複利効果・インフレ・コストを総合的に考慮すると、より適切なリスクとリターンのバランスを見極められます。