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投資信託の交付目論見書の読み方とは?請求目論見書との違いや活用法を徹底解説

投資信託の交付目論見書の読み方とは?請求目論見書との違いや活用法を徹底解説

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執筆者:

公開:

2025.06.20

更新:

2025.06.20

投資信託を購入する際、必ず目にする「目論見書」は、商品の内容やリスク、費用などがまとめられた重要な書類です。しかし、情報量の多さから敬遠されがちで、最低限どこを押さえるべきか分からない初心者も少なくありません。本記事では、交付目論見書と請求目論見書の違いや活用法、読み解くべき基本ポイントを整理し、投資判断に役立てる実践的な読み方と比較方法まで詳しく解説します。

サクッとわかる!簡単要約

「目論見書は分厚くて難しいもの」という先入観が払拭されます。投資信託の購入前に確認すべき「交付目論見書」と、追加情報を深掘りできる「請求目論見書」の違いと活用法、さらに初心者が見るべき「目的・リスク・費用」のチェックポイントが明確になります。読み方のステップを実践すれば、ファンド選びの自信と判断力が身につき、複数商品の比較や購入後の点検にも役立つ視点が手に入ります。

目次

そもそも投資信託の「目論見書」とは?初心者が知るべき3つの基本

1.役割:目論見書は投資判断に必要な情報が詰まった「公式な取扱説明書」

2.法的根拠:金融商品取引法で交付が義務付けられた重要書類

3.活用方法:初心者はまず「目的・リスク・費用」の3点を確認

交付目論見書と請求目論見書の違いは?2種類の役割と使い分け方

交付目論見書は購入前に確認必須:投資の最終判断に使うチェックリスト

請求目論見書は必要に応じて購入後に活用:より詳細な情報を知りたい時の深掘り資料

使い分け方:まず交付目論見書を熟読し、疑問があれば請求目論見書で補完する

交付目論見書の読み方|初心者が押さえるべき4つのステップ

Step1. ファンドの目的・特色:「どんな方針で、何に投資するのか」を把握する

Step2. 投資リスク:「どんな危険性があり、最大どのくらい損をするか」を想像する

Step3. 運用実績:「過去の値動きと人気度」をグラフで確認する

Step4. ファンドの費用:「結局いくらかかるのか」を数字で正確に把握する

買ったら終わりじゃない!購入後の点検に役立つ2つのレポート活用術

運用報告書:半年に一度、ファンドの健康診断を行う

マンスリーレポート:月1分でOK!最新の運用状況をサクッと把握

目論見書を活用した投資信託の比較・選定フレームワーク

比較は「チェックシート」で|目的・対象・リスク・コストなどを横並びに

特に重視すべきは「コスト」と「リスク」

過去の実績も参考に。ただし「参考」にとどめること

選ぶ基準は「総合点」ではなく「自分との相性」

ETFの比較にも同じチェック手法が使える

そもそも投資信託の「目論見書」とは?初心者が知るべき3つの基本

投資信託の「目論見書」は、商品の内容やリスク、費用が書かれた公式な取扱説明書です。法律で投資家への交付が義務付けられており、投資判断に欠かせません。分厚い書類ですが、初心者はまず「目的・リスク・費用」の3つのポイントに絞って確認することで、ファンドの全体像を効率よく理解することができます。

1.役割:目論見書は投資判断に必要な情報が詰まった「公式な取扱説明書」

投資信託を購入する際に必ず目にする「目論見書(もくろみしょ)」とは何でしょうか。その名の通り、投資信託の商品内容やリスク、費用など投資判断に必要な重要事項が記載された説明書です。株式や社債など有価証券の発行者には、この目論見書の作成が金融商品取引法によって義務付けられており、投資信託の場合も販売会社を通じて購入前に必ず交付されるか、あらかじめ同意すれば電子交付で受け取ることができます。

いわば投資対象の「取扱説明書」であり、投資初心者にとっても資金を預けるファンドを理解するために欠かせない資料です。

目論見書のポイントについてはこちらのFAQもご参照ください。

2.法的根拠:金融商品取引法で交付が義務付けられた重要書類

投資家保護のため、購入前に交付される「法定書面」

交付目論見書は、金融商品取引法により交付が義務付けられた法定書類です。投資信託をはじめとする有価証券の募集・売出しを行う際には、販売会社は勧誘の前または同時に、投資家に対して目論見書を交付しなければなりません。これは、契約締結前に重要情報を確認できるようにすることで、投資家を保護することが目的です。

現在は電子交付が主流、6か月ごとの更新が義務

目論見書は、投資信託の購入手続きに先立って交付されることが義務付けられており、近年はPDF形式などによる電子交付が主流です。多くのネット証券では、紙の書面ではなく、オンライン上での閲覧・保存が可能となっており、交付後は原則5年間にわたって閲覧できる仕組みになっています。証券会社によっては、残高がゼロになったあともさらに5年間保存されるケースもあり、過去分と最新の目論見書を自由に確認できる点も利便性のひとつです。

また、交付目論見書は使用開始日を含めて6か月以内に更新されることが制度上の原則とされています。ファンドの運用方針や組入資産、手数料体系に変更が生じることもあるため、定期的に最新版を確認する習慣が重要です。情報の変化を見落とさず、常に最新の内容に基づいて判断することが、投資家のリスク管理にもつながります。

虚偽記載は禁止、記載内容は正確かつ明確に

目論見書には、虚偽の記載や重要事項の欠落が法律で明確に禁止されています。運用方針、リスク、コストなどの情報は、投資家が正しく判断できるよう、正確かつ分かりやすく記載することが求められています。そのため、交付目論見書は「省略できない必須書類」として、購入前に必ず目を通すべき基本資料となっています。

3.活用方法:初心者はまず「目的・リスク・費用」の3点を確認

目論見書にはファンドのあらゆる情報が網羅されていますが、初心者の方は特に「目的」「リスク」「費用」の3つを重点的にチェックするとよいでしょう。

①ファンドの目的:自分の投資方針に合っているか

まずファンドの目的とは、運用方針や目指す投資成果のことで、そのファンドがどんな資産に投資し、どのようなリターンを目指すのかを示しています。自分の投資目的(安定収益を狙うのか、大きなリターンを狙うのか等)に合致するファンドかどうか、ここで確認できます。

②投資リスク:どのような危険性があるか

次に主なリスクです。投資信託には価格変動リスクや為替変動リスクなど様々なリスク要因が付きものですので、目論見書の「投資リスク」欄でどのようなリスクにさらされるかを理解しましょう。後述するように、リスク要因を読むことで最悪どの程度の損失が起こり得るかシミュレーションしてみることが大切です。

③費用(コスト):将来のリターンに直接影響する

最後に費用(コスト)です。投資信託には購入時手数料、信託報酬(運用管理費用)、信託財産留保額といった各種コストがかかります。目論見書にはこうした費用の料率や上限が明記されています。これらの費用は投資リターンに直接影響を与える重要な要素です。コストが高ければその分利回りが目減りしますから、必ず確認しておきましょう。

以上の3点、「目的・リスク・費用」をまず押さえた上で、余力があればその他の情報(運用実績や税金、解約条件など)も目を通すとベターです。目論見書は分量が多いですが、自身の大切な資金を預けるファンドの内容を理解するためのものです。ポイントを絞って読み解けば、投資初心者の方でも十分に役立てることができます。

交付目論見書と請求目論見書の違いは?2種類の役割と使い分け方

投資信託の目論見書には実は2種類あります。ひとつは購入時に必ず提供される「交付目論見書」、もうひとつは必要に応じて入手できる「請求目論見書」です。両者は目的や内容に違いがあります。それぞれの役割と使い分け方を見てみましょう。

交付目論見書は購入前に確認必須:投資の最終判断に使うチェックリスト

交付目論見書は、投資信託の購入前に必ず渡される書類です。ファンドの目的やリスク、手数料といった、投資判断に必要な基本情報がすべて網羅されています。いわば商品の「取扱説明書」であり、自分の投資方針に合うか、許容できないリスクはないかなどを最終チェックするために使います。投資家は、この書面に目を通さずに購入することはできません。

ファンドの基本情報が網羅された「投資信託説明書」

交付目論見書とは、投資信託を販売する際に投資家に交付することが法律で義務付けられている書類です。販売会社(銀行や証券会社)は、投資家がファンドを購入する前にこの交付目論見書を必ず渡さなければなりません。

内容はファンドの基本情報を網羅しており、目的や特色、投資方針、リスク、運用実績、手数料といった投資判断に必要な重要事項がすべて記載されています。そのため別名「投資信託説明書」とも呼ばれ、ファンドを選ぶ際の事前チェックリストとして機能します。

購入前に必ず目を通し、最低限のポイントを確認する

交付目論見書は購入検討時に真っ先に読むべき資料です。例えばファンドの目的が自分の意向に合っているか、許容できないリスクはないか、コストは適正か。

これらを購入前にチェックするための必須情報がまとめられています。言い換えれば、交付目論見書に目を通さずに投資信託を買うことは許されていないとも言えます。「内容が難しそう…」と敬遠せず、最低限のポイントだけでも交付目論見書で確認するようにしましょう。

請求目論見書は必要に応じて購入後に活用:より詳細な情報を知りたい時の深掘り資料

請求目論見書は、投資家から請求があった場合にのみ渡される、より専門的な詳細資料です。交付目論見書には載っていないファンドの歴史や詳細な経理状況、運用会社の経営情報まで含まれています。全員が読む必要はありませんが、購入後にファンドをより深く分析したい場合や、長期保有する上で健全性を確認したいときに役立つ、深掘り用の資料です。

ファンドの沿革や経理状況など、専門的な情報も掲載

一方の請求目論見書は、名前の通り投資家からの請求があった場合に交付義務が生じる目論見書です。交付目論見書には載っていない詳細情報まで掲載されているのが特徴で、たとえばファンドの沿革(歴史)や経理状況、運用会社(委託会社)の経営情報などが含まれます。言わば交付目論見書の拡張版・詳細版です。

長期保有するファンドの健全性を確認する際にも役立つ

請求目論見書は原則として投資家から要求があれば提供しなければならない開示資料で、実際には販売会社に申し込んで受け取るか、運用会社のウェブサイト等で閲覧できます。内容が専門的でボリュームも多いため必ずしも全員が読む必要はありませんが、購入後に気になる点が出てきた際の「調べもの」に使える資料です。

たとえば「このファンドはいつ設定されたの?」「運用会社の財務状況は大丈夫?」といった疑問が生じた場合、請求目論見書で詳しく確認できます。特に長期で保有するファンドでは、運用状況だけでなく運用会社の健全性やファンドの歴史も気になります。請求目論見書はそうした購入後のフォローアップに活用できる存在と言えるでしょう。

使い分け方:まず交付目論見書を熟読し、疑問があれば請求目論見書で補完する

交付目論見書と請求目論見書をどう使い分ければよいのでしょうか?

基本的な考え方は「まず交付目論見書をチェックし、それで不明点があれば請求目論見書も確認する」という流れです。購入前には交付目論見書に重要事項がすべて凝縮されていますから、まずは交付目論見書だけで十分です。それでも解決しない疑問や、もっと詳しいデータを知りたい場合に、請求目論見書を取り寄せて調べるのが効率的です。

初心者は交付目論見書の概要把握で十分

初心者のうちは交付目論見書でファンドの概要とリスク・費用を把握できれば問題ないでしょう。一方、経験を積んできて「運用会社の方針やファンドの詳しい組成も理解したい」と思うようになったら、請求目論見書に目を通してみる価値があります。また、長期間運用されているファンドの場合、その過去の変遷や実績の詳細が請求目論見書で確認できますので、購入後の定期チェックに用いることもできます。

要するに、「交付目論見書=購入判断のための必須情報まとめ」「請求目論見書=追加で知りたい情報のリファレンス」という位置付けです。両者の違いを知った上で、「まず交付、必要なら請求」という順序で情報収集すれば、ファンド選びや購入後の監視に万全を期すことができるでしょう。

交付目論見書の読み方|初心者が押さえるべき4つのステップ

ここからは、交付目論見書の読み方を4つのステップで具体的に解説します。分厚い書類ですが、これからお伝えするポイントに絞って読めば、初心者の方でも簡単に理解できます。

Step1. ファンドの目的・特色:「どんな方針で、何に投資するのか」を把握する

最初のステップは、そのファンドが「何を目的とし、何に投資するのか」を確認することです。目論見書の冒頭にある「ファンドの目的・特色」欄には、「○○指数に連動する成果を目指す」「△△分野の成長企業に投資する」といった運用方針が書かれています。自分の投資スタイルと合っているか、ここで見極めましょう。

「投資対象資産・地域」の図表で、投資先が一目でわかる

目論見書の表紙付近には、多くの場合、投資対象が一目でわかる図や表が載っています。ここで「地域(国内か海外か)」「資産の種類(株式、債券、REITなど)」といった基本情報をすぐに確認できます。

まず、このファンドがどの市場の何に投資して利益を上げようとしているのかを明確にしましょう。例えば「日本株に集中投資するのか、世界の株に分散するのか」「債券や不動産は含まれるのか」といった投資対象の範囲を把握することは、リスクを考える上で非常に重要です。文章だけでなく、図やグラフも活用して全体像をイメージしましょう。

「ベンチマーク」の記載で運用スタイルを見極める

ファンドの運用スタイルは、目論見書に記載された「ベンチマーク」や「参考指標」の文言から読み取ることが可能です。以下のような表現の違いに注目すると、インデックス型かアクティブ型かの見分けに役立ちます。

目論見書の表現見分け方の目安解説
「〇〇指数に連動する投資成果を目指す」インデックス型指数との連動を明示しており、連動運用を前提としている
「〇〇指数をベンチマークとして運用する」インデックス型の可能性大ベンチマークに近い運用を志向。ただし若干の乖離もある
「〇〇指数を参考指標とする」アクティブ型の可能性大指数はあくまで比較対象で、運用は裁量的に行われる
「独自の調査に基づき銘柄を選定」アクティブ型ファンドマネージャーが判断し、指数に依存しない運用

ベンチマークという言葉があっても、単なる参考にすぎないケースもあるため、「指数に連動する」「上回ることを目指す」などの表現に注目することが大切です。判断がつきにくい場合は、交付目論見書の「運用方針」や「費用・リスク」セクションもあわせて確認するとより明確になります。

インデックス型とアクティブ型の基本的な違いについてはこちらの記事をご参照ください。

インデックス投資の仕組みは以下の記事で詳しく解説しています

トラッキングエラーの基本的な説明についてはこちらのFAQもご参照ください。

Step2. 投資リスク:「どんな危険性があり、最大どのくらい損をするか」を想像する

ファンドの目的を理解したら、次に確認すべきは「投資リスク」の項目です。難しそうに感じるかもしれませんが、自分の資産がどのようなリスクにさらされ、どれだけ損をする可能性があるのかを想像することは、投資判断の土台になります。

目論見書には、ファンドに影響を与えるさまざまなリスクが記載されています。その中でも特に重要なのが「価格変動リスク」「為替変動リスク」「信用リスク」の3つです。これらは、ファンドの基準価額に影響を与える主な要因であり、最終的に自分の投資成果を左右します。

  • 価格変動リスク

    株式や債券、不動産などの投資対象そのものの価格が上下することによるリスクです。たとえば株価が下がれば、その株を組み入れたファンドの価値(=基準価額)も下がる可能性があります。

  • 為替変動リスク

    外国資産に投資している場合は、為替レート(円とドル、ユーロなど)の変動によって、円ベースの基準価額が増減するリスクがあります。円高になると外国資産の価値は目減りし、円安になると価値が増す傾向があります。

  • 信用リスク

    主に債券に関わるリスクで、発行体が財務悪化や倒産などで利息や元本を支払えなくなる可能性です。回収不能な資産が増えると、ファンド全体の価値に影響します。

これらのリスクをただ眺めるだけでは不十分です。大切なのは、「株価が30%下落したら?」「急激な円高になったら?」「債券がデフォルトしたら?」といった具体的なシナリオを、自分の投資額に当てはめて想像することです。

投資信託は元本が保証されていないため、リスクは避けられません。だからこそ、自分がどこまでリスクを許容できるかを見極め、リスクを「受け入れる判断」ができるかどうかを意識しておくことが重要です。

Step3. 運用実績:「過去の値動きと人気度」をグラフで確認する

次に、ファンドの過去の実績を数字で客観的に評価します。目論見書には、過去の運用成績を示すグラフが掲載されており、これを見ることでファンドのこれまでの歩みが一目でわかります。

基準価額の推移で「値動きの大きさ(ボラティリティ)」を読む

グラフに描かれた「基準価額」の線は、ファンドの価格の推移を示します。この線の動きが激しければ価格変動が大きい(ハイリスク・ハイリターン傾向)、緩やかであれば比較的安定している(ローリスク・ローリターン傾向)と読み取れます。

純資産総額の増減で「ファンドの人気度(資金の流出入)」を読む

「純資産総額」は、そのファンドにどれだけのお金が集まっているかを示す規模の指標です。純資産総額が右肩上がりに増えていれば、多くの投資家から支持され資金が流入している人気のファンド、逆に減少傾向にあれば資金が流出していると推測できます。

これらのグラフから、ファンドの過去の値動きと規模の変化を読み取り、自分のリスク許容度に合っているかを判断しましょう。

Step4. ファンドの費用:「結局いくらかかるのか」を数字で正確に把握する

最後に、投資リターンに直接影響する最も重要な要素の一つ、費用(コスト)をチェックします。

「信託報酬」は類似ファンドと比較する

コストの中で特に重要なのが「信託報酬(運用管理費用)」です。これはファンドを保有している間、毎日かかり続ける管理料のようなものです。年率で表示され、長期で運用するほどリターンへの影響が大きくなります。同じような投資対象のファンドであれば、信託報酬は低いものを選ぶのが鉄則です。

信託報酬についてはこちらのFAQもご参照ください。

「総経費率」で、信託報酬以外の“隠れコスト”も確認する

ただし、信託報酬だけがコストのすべてではありません。2024年4月からは目論見書にも「総経費率」の記載が義務化され、信託報酬に加え売買手数料、監査費用などを含む実質的なトータルコストが明示されるようになりました。信託報酬が低く見えても、総経費率を比較すれば隠れコストの有無が判別できます。信託報酬が安く見えても、隠れコストが高くては意味がありません。

購入時手数料がかからない「ノーロード」のファンドを選ぶことも含め、コストは利益を削る重要な要因です。数字が多くて敬遠しがちですが、必ず目を通して、納得できるコストのファンドを選びましょう。

買ったら終わりじゃない!購入後の点検に役立つ2つのレポート活用術

ファンドを購入した後も、定期的なチェックは欠かせません。運用報告書やマンスリーレポートといった資料を活用すれば、ファンドの運用状況をフォローできます。ここではそれぞれの特徴と、購入後の点検方法について解説します。

運用報告書:半年に一度、ファンドの健康診断を行う

運用報告書は、ファンドの運用実績やコスト、方針の変化などを投資家に報告する公式資料で、通常は決算ごとに年1回または年2回作成されます。ファンド保有者には、運用会社から販売会社を通じて交付される仕組みです。

たとえば、年2回決算のファンドであれば半年ごと、年1回決算なら年1回のペースで運用報告書が届くイメージです。これはいわばファンドの健康診断レポートであり、投資家としての定期チェックに欠かせません。

なかでも注目すべきは次の3つのポイントです。

①騰落率(リターン)|期間中の成果を確認する

まず注目すべきは、その期間にファンドがどれくらい値上がり・値下がりしたかを示す「騰落率」です。基準価額が何%上昇または下落したかが明記されており、自分の保有資産がどのように動いたかを振り返ることができます。

たとえば「+3.2%」とあれば、その半年間または1年間でファンドの基準価額が3.2%上昇したということです。マイナスであれば損失が出ていることになります。

②ベンチマーク比較|市場平均と比べてどうだったか

多くの運用報告書には、ファンドの騰落率と同じ期間のベンチマーク(指標)や参考指数の騰落率も掲載されています。これによって、自分が投資しているファンドが市場平均に対してどの程度の成果を出したかがひと目でわかります。

たとえば、

  • ファンド:+5.0%
  • ベンチマーク:+6.0%

であれば、ファンドは市場平均にやや劣後しているという評価になります。

この比較は、インデックスファンドであれば「指数にどれだけ正確に連動できたか」を、アクティブファンドであれば「運用者の判断が市場を上回れたかどうか」を測る材料になります。

③ 費用明細|「隠れコスト」まで含めた実質負担を確認

最後に必ずチェックしたいのが、その期間に実際にかかった運用コストの明細です。運用報告書には、「1万口あたり◯円」という形式で、以下のような費用が具体的に記載されています。

  • 信託報酬
  • 売買委託手数料
  • 保管費用 など

これらを合計して算出される「総経費率」は、目論見書に記載されていた信託報酬より高くなることもあります。たとえば、信託報酬は年0.5%と書かれていたのに、実際は総経費率が0.7%だった、というケースも少なくありません。

こうした「隠れコスト」は長期運用では大きな差になります。実質的なコスト負担を把握するためにも、費用の欄にはしっかり目を通しておきましょう。

さらに時間があれば、運用報告書には以下の情報も含まれていますので、より深く読み解くことができます。

  • 期間中の市場環境とその解説
  • ファンドマネージャーの運用判断や変更点
  • 保有資産の明細と構成比の推移

これらを確認することで、単なる数値だけでなく、「どんな環境で」「どんな判断をして」「どのような結果になったか」というファンドの運用ストーリーまで把握でき、より納得感を持って保有し続ける判断ができるようになります。

マンスリーレポート:月1分でOK!最新の運用状況をサクッと把握

マンスリーレポート(月次レポート)とは、多くの運用会社が自主的に毎月作成する運用状況のサマリー報告です。運用報告書が公式な詳細版とすれば、マンスリーレポートはタイムリーな速報版と言えます。

内容は1ヶ月間のファンドの騰落率や基準価額の推移、組入上位銘柄や資産配分の変化、その月の市場動向とファンドの運用概況などがコンパクトにまとめられています。このマンスリーレポート、全部細かく読む必要はありませんが、月に1度わずか1分程度でざっと目を通す習慣をつけると良いでしょう。

チェックポイント①:直近1ヶ月のリターンと市場の動き

見るべきポイントは、まず直近1ヶ月のファンドのリターンです。プラスかマイナスか、また同期間の市場全体の動き(例えば日経平均や主要株価指数の動き)と照らし合わせて、大きく乖離していないか確認します。

チェックポイント②:組入上位銘柄や資産配分の変化

次に組入上位銘柄や国別構成比の変化です。毎月のレポートを追っていると、「今月は特定銘柄の比率が上がった」「〇〇国への投資比率を減らした」など運用上の調整が見えてきます。大きな比率変動があれば、その理由をレポートのコメントから探ってみましょう(例:「△△株の急騰で利益確定売りを実施」など)。

チェックポイント③:運用者のコメントから現状認識を知る

また運用者のコメント欄も1分あれば読めます。そこには「今月の市場は○○だったが、当ファンドは××な運用を行った」といった総括が書かれています。これを読むことでファンドマネージャーの現状認識を知ることができます。特に相場が荒れた月などは、どのように対応したか知っておくと安心材料になるでしょう。

以上をさっとチェックすれば、毎月のファンド状況を見える化することができます。マンスリーレポートは各運用会社のサイトや販売会社のファンドページからPDFで入手できますので、月1回ポートフォリオ点検の際に活用するのがおすすめです。

目論見書を活用した投資信託の比較・選定フレームワーク

投資信託を選ぶ際、数ある商品の中から自分に合ったファンドを選び抜くには、複数の候補を目論見書ベースで比較することが有効です。定量・定性の情報を整理し、比較チェックシートを作ることで、ファンド間の違いが一目で分かるようになります。

比較は「チェックシート」で|目的・対象・リスク・コストなどを横並びに

まずは比較する項目を決めましょう。基本的には以下のような観点が重要です。

  • ファンドの目的・運用方針
  • 投資対象(地域、資産クラス)
  • 主なリスク要因(価格変動・為替・信用など)
  • 信託報酬などのコスト
  • 過去の運用実績(騰落率・シャープレシオなど)

たとえば、AファンドとBファンドの目論見書からこれらの情報を一覧表に整理すると、以下のような違いが浮かび上がります。

  • Aは先進国株、Bは新興国株
  • Aはインデックス型、Bはアクティブ型
  • 信託報酬はAが年0.2%、Bは0.8%
  • Aは為替ヘッジあり、Bはヘッジなし

このように「似ているようで中身は異なる」ファンド同士でも、比較項目を横並びにするだけで、判断材料が明確になります。

特に重視すべきは「コスト」と「リスク」

信託報酬や実質コスト(総経費率)は、長期投資でじわじわとリターンに影響するため、見落とせません。数値が並ぶだけでも「どちらが低コストか」は明確になります。

リスクに関しても、目論見書には具体的なリスク要因が記載されており、たとえば「為替変動の影響を受けるか」「株式比率が高く値動きが大きいか」など、自分が許容できる水準かを見極める材料になります。

過去の実績も参考に。ただし「参考」にとどめること

運用実績(直近1年・3年・5年のリターンやシャープレシオなど)も目論見書や交付資料で確認できます。ただし、これらはあくまで過去のデータであり、将来の成績を保証するものではない点には注意が必要です。

選ぶ基準は「総合点」ではなく「自分との相性」

チェックシートを作る際には、自分の投資方針や重視する軸に沿って評価しましょう。たとえば、

  • 長期・積立重視→信託報酬を最重視
  • 安定性重視→為替ヘッジや株式比率の低さを重視
  • 高成長期待→新興国比率やアクティブ運用の戦略をチェック

最終的な判断基準は「総合得点」ではなく、自分の目的にどれだけフィットするかです。

比較を繰り返すうちに、目論見書の読み方そのものが深まり、「なぜこのファンドは手数料が高いのか」「この指数を選んでいる理由は何か」といった視点が養われ、ファンド分析力が自然と高まっていきます。

ETFの比較にも同じチェック手法が使える

目論見書を使った比較・選定の考え方は、ETF(上場投資信託)にもそのまま応用可能です。ETFも法律上は投資信託の一種であり、基本的な比較項目─(目的、投資対象、コスト、リスクなど)は変わりません。

たとえば、「日経平均に連動するインデックスファンド」と「日経平均連動のETF」を比較する場合も、目論見書に記載された信託報酬や指数との連動精度、リスク要因を同じ軸で整理できます。

ETFの目論見書(正式には有価証券届出書および交付目論見書)にも、非上場の投資信託と同じ形式で情報がまとめられており、読み方に特別なルールはありません。これまで説明してきたチェックポイントをそのまま当てはめればOKです。

ただし、ETFは市場で株式のように売買されるため、追加で次のような視点も加えるとよいでしょう。

  • 売買手数料(証券会社によって異なる)
  • スプレッド(買値と売値の差)の大きさ
  • 流動性(出来高や板の厚さ)

これらはETF特有の取引上の特徴ですが、ファンドの中身そのものは目論見書に集約されています。したがって、投資信託かETFかを問わず、まずは目論見書を通じて「どんな商品か」「自分の投資目的に合っているか」を見極めることが重要です。

最近では、ETFの新規上場時に目論見書をもとに比較検討する個人投資家も増えており、目論見書の読み取り力はETF選びでも大きな武器になります。

証券コードや市場価格ばかりに注目が集まりがちですが、運用会社の公式サイトで取得できる交付目論見書や月次レポートにも必ず目を通しておきましょう。ETFだからといって特別なアプローチは不要です。これまで紹介してきたチェックシートや比較軸を、そのまま適用するだけで十分に対応できます。

よくある質問(FAQ)

この記事のまとめ

目論見書は、投資信託の内容とリスクを理解するための「公式な取扱説明書」です。初心者はまず交付目論見書で「目的・リスク・費用」を確認し、必要があれば請求目論見書で詳細を補うことで、納得のいく投資判断が可能になります。加えて、運用報告書やマンスリーレポートを活用することで、購入後もファンドの健全性を定期的にチェックできます。情報を正しく読み解くことが、資産形成の第一歩です。不安がある場合は、専門家に相談しながら進めるのも一つの選択肢です。

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交付目論見書

交付目論見書は、投資信託を購入する前に販売会社が投資家へ必ず渡す公式な説明資料です。ファンドの目的や運用方針、主な投資対象、リスク要因、手数料、分配方針などの重要情報が網羅されており、金融商品取引法によって内容と形式が細かく定められています。投資家は購入前にこれを読むことで商品の特徴や費用、リスクを十分に理解し、適切な判断ができるようになります。

請求目論見書

請求目論見書は、投資信託を購入する前に投資家がさらに詳しい情報を求めて販売会社へ請求した際に提供される、いわば詳細版の目論見書です。交付目論見書よりもページ数が多く、投資対象の内訳や運用実績の詳しい推移、リスクシナリオの分析、会計方針など専門的な項目まで網羅されています。金融商品取引法上、販売会社は投資家からの請求があれば速やかに無料で交付する義務があるため、購入前により踏み込んだ判断材料を得たいときに活用できます。

目論見書(プロスペクタス)

目論見書(プロスペクタス)とは、株式や債券などの金融商品を発行する際に、その内容やリスク、資金の使い道などを詳しく説明するための書類のことをいいます。これは、投資家が商品について正しく理解し、投資判断を行うための重要な資料です。目論見書には、発行体の財務情報、事業内容、募集する金額、利回りや償還期間などが記載されており、金融商品取引法に基づいて作成されます。投資初心者にとっては、少し専門的で読みづらく感じるかもしれませんが、購入する前にリスクや条件を確認するためにとても大切な情報源となります。

金融商品取引法

金融商品取引法(FIEA:Financial Instruments and Exchange Act)は、日本の証券市場や金融商品の取引を規制し、投資家を保護するための法律です。2007年に「証券取引法」から改正・統合され、金融市場全体の健全性を確保する役割を担っています。 この法律は、株式、債券、投資信託、デリバティブ(先物・オプション取引)、暗号資産関連商品など、幅広い金融商品を対象としています。投資家保護の観点から、虚偽表示や詐欺的な勧誘を禁止し、投資家の知識や経験に応じた適切な商品を提供することが義務付けられています。また、市場の透明性を確保するため、金融機関や証券会社に対して取引情報の適切な開示を求め、公正な市場運営を実現しています。さらに、未公開の重要情報を利用したインサイダー取引や市場操作を禁止し、市場の公平性を維持することも重要な目的の一つです。 この法律によって、投資家が安心して金融市場に参加できる環境が整備されています。しかし、投資を行う際には規制の内容を理解し、適切な取引を行うことが求められます。

基準価額

基準価額とは、主に投資信託の商品価格を表すもので、投資信託1口あたりの価値を示しています。毎営業日に一度計算され、投資信託が保有している株式や債券などの資産の時価総額から、運用にかかる費用を差し引いた金額を、発行済みの総口数で割って算出されます。 投資信託の購入や売却の際には、この基準価額が参考になりますので、価格の動きに注目することが大切です。ただし、基準価額は市場価格とは異なり、リアルタイムで変動するわけではないため、翌営業日の価格になることが多い点にもご注意ください。

純資産総額(Net Asset Value, NAV)

純資産総額とは、投資信託(ファンド)が保有しているすべての資産から、負債を差し引いた実質的な価値の合計を指します。これは、そのファンド全体の規模や健全性、人気度を測る指標としてよく使われます。一般的に、投資家がファンドに多くのお金を預ければ預けるほど、この純資産総額は大きくなります。また、運用成績が良くて利益が出ているファンドほど、純資産総額が増加する傾向にあります。資産運用の観点では、ファンド選びの際にこの数字を確認することで、流動性の高さや安定した運用体制があるかどうかの目安になります。ただし、金額が大きいからといって必ずしも運用成績が良いとは限らないため、他の指標と合わせて判断することが大切です。

ベンチマーク

ベンチマークとは、特定の目標や標準として用いる指標のことを指し、ビジネス、金融、技術など様々な分野で利用されます。この指標を用いて、パフォーマンスの測定や戦略の効果を評価し、改善点を見つけることができます。特に投資分野においては、ベンチマークはポートフォリオのパフォーマンスを評価するための基準点として活用され、特定の市場指数や同業他社の成績などが用いられます。 たとえば、投資ファンドの管理者は、自身のファンドのパフォーマンスをS&P 500やナスダックなどの市場指数と比較して評価することが多いです。この比較によって、ファンドの戦略が市場全体と比べてどの程度効果的であるか、またはリスクが適切に管理されているかを判断します。 ベンチマークは、透明性と目標設定を促進し、継続的な改善を目指すための重要なツールです。しかし、ベンチマークを選定する際には、その適切性や関連性を慎重に評価する必要があります。適切でないベンチマークを選ぶと、誤った方向性を示すことがあり、結果的にパフォーマンスの誤解を招くことになるためです。したがって、目標とする成果と密接に関連する、かつ実現可能なベンチマークを設定することが極めて重要です。

インデックスファンド

インデックスファンドとは、特定の株価指数(インデックス)と同じ動きを目指して運用される投資信託のことです。たとえば「日経平均株価」や「TOPIX(東証株価指数)」などの市場全体の動きを示す指数に連動するように設計されています。この仕組みにより、個別の銘柄を選ぶ手間がなく、市場全体に分散投資ができるのが特徴です。また、運用の手間が少ないため、手数料が比較的安いことも魅力の一つです。投資初心者にとっては、安定した長期運用の第一歩として選びやすいファンドの一つです。

アクティブファンド

アクティブファンドとは、運用のプロであるファンドマネージャーが、市場の平均を上回るリターンを目指して積極的に銘柄を選んで運用するタイプの投資信託のことです。 具体的には、独自の分析や調査にもとづいて、将来性があると見込まれる企業や、割安と判断される株式などに投資を行います。こうした運用には高度な専門知識と時間が必要となるため、同じ投資信託でも市場平均への連動を目指す「パッシブファンド」より運用コスト(信託報酬など)が高めになる傾向があります。しかし、その分大きなリターンを狙える可能性もある点が魅力です。 ただし、アクティブファンドだからといって必ずしも市場平均を上回るとは限らないことに注意が必要です。投資判断がうまくいかなかった場合は、損失が出たり、パッシブファンドに劣る成績となったりすることもあります。 投資初心者の方は、ファンドマネージャーの運用実績やファンドの方針、運用コストなどをよく調べたうえで、自分の投資目的やリスク許容度に合った商品を選ぶことが大切です。購入前に「過去の運用成績」や「運用レポート」を確認し、アクティブファンドの特徴を理解してから投資を始めましょう。

投資リスク

投資リスクとは、投資した元本や期待したリターンが不確実であり、損失を被る可能性があることを指します。価格変動や金利変動、発行体の信用力低下、為替の変動といった要因により、投資価値が上がることもあれば下がることもあるため、結果が予想どおりにならないかもしれないという不確実性をまとめて表す言葉です。リターンを追求するには必ずリスクが伴うため、どの程度の変動や損失を許容できるかを事前に見極め、自分の目的や期間に応じた商品選びと分散投資を行うことが重要です。

価格変動リスク

価格変動リスクとは、株式や債券などの金融商品の価格が、経済状況や金利動向、企業業績などの影響で上下する可能性のことです。株式は企業業績の悪化や市場不安で急落するリスクがあります。 一方、債券の場合、発行時の固定利率と市場金利との差が変動するため、市場金利が上昇すると既発債の魅力が薄れ、途中売却時に購入時より低い価格で取引されるリスクが生じます。ただし、満期まで保有すれば額面通りに償還されるため、長期保有によってこのリスクを回避できます。

為替リスク

為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。

信用リスク(クレジットリスク)

信用リスクとは、貸し付けた資金や投資した債券について、契約どおりに元本や利息の支払いを受けられなくなる可能性を指します。具体的には、(1)企業の倒産や国家の債務不履行(いわゆるデフォルト)、(2)利払いや元本返済の遅延、(3)返済条件の不利な変更(債務再編=デット・リストラクチャリング)などが該当します。これらはいずれも投資元本の毀損や収益の減少につながるため、信用リスクの管理は債券投資の基礎として非常に重要です。 この信用リスクを定量的に評価する手段のひとつが、格付会社による信用格付けです。格付は通常、AAA(最上位)からD(デフォルト)までの等級で示され、投資家にとってのリスク水準をわかりやすく表します。たとえば、BBB格付けの5年債であれば、過去の統計に基づく累積デフォルト率はおおよそ1.5%前後とされています(S&Pグローバルのデータより)。ただし、格付はあくまで過去の情報に基づいた「静的な指標」であり、市場環境の急変に即応しにくい側面があります。 そのため、市場ではよりリアルタイムなリスク指標として、同年限の国債利回りとの差であるクレジットスプレッドが重視されます。これは「市場に織り込まれた信用リスク」として機能し、スプレッドが拡大している局面では、投資家がより高いリスクプレミアムを求めていることを意味します。さらに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料率は、債務不履行リスクに加え、流動性やマクロ経済環境を反映した即時性の高い指標として、機関投資家の間で広く活用されています。 こうしたリスクに備えるうえでの基本は、ポートフォリオ全体の分散です。業種や地域、格付けの異なる債券を組み合わせることで、特定の発行体の信用悪化がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。なかでも、ハイイールド債や新興国債は高利回りで魅力的に見える一方で、信用力が低いため、景気後退時などには価格が大きく下落するリスクを抱えています。リスクを抑えたい局面では、投資適格債へのシフトやデュレーションの短縮、さらにCDSなどを活用した部分的なヘッジといった対策が有効です。 投資判断においては、「高い利回りは信用リスクの対価である」という原則を常に意識する必要があります。期待されるリターンが、想定される損失(デフォルト確率×損失率)や価格変動リスクに見合っているかどうか。こうした視点で冷静に比較検討を行うことが、長期的に安定した債券運用につながる第一歩となります。

信託報酬

信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。

経費率

経費率(Expense Ratio)は、投資信託やETF(上場投資信託)などの運用にかかる年間コストを、運用資産総額に対する割合で示した指標です。投資家はこの経費率を負担するため、経費率が低いほど投資のコストが抑えられ、リターンが高まりやすくなります。 例えば、あるETFの経費率が0.2%の場合、年間で運用資産の0.2%が管理費用などに充てられます。経費率には、ファンドの管理費用、売買手数料、監査費用などが含まれます。 一般的に、インデックス型ETFは経費率が低く(0.1%~0.5%程度)、アクティブ運用のファンドは高くなる(1%~2%程度)傾向があります。経費率が高すぎると、長期的に資産が目減りする可能性があるため、投資先を選ぶ際は経費率の低い商品を選ぶことが重要です。

ノーロード

ノーロードとは、投資信託などの金融商品を購入する際に「購入手数料がかからない」という特徴を表す言葉です。通常、投資信託を買うときには購入金額の一定割合が手数料として差し引かれることがありますが、ノーロード型の投資信託ではその手数料がゼロになっています。そのため、投資した金額のすべてを運用に回すことができ、コスト面で有利になります。特に長期投資を考える初心者にとっては、手数料の負担が少ないことは大きなメリットといえます。ただし、ノーロードでも信託報酬などの運用中にかかる費用はあるため、商品の内容をしっかり確認することが大切です。

信託財産

信託財産とは、信託契約にもとづき委託者が受託者(信託会社や信託銀行など)に預けた現金・株式・不動産といった資産のことです。受託者はこれらの資産を信託目的に沿って管理・運用しますが、信託財産は受託者自身の資産とは厳格に分別管理され、法律上も独立した財産とみなされます。 たとえば投資信託では、投資家から集めた資金が信託財産となり、株式や債券への投資に充てられます。万が一、受託者や販売会社が経営破綻しても、信託財産は分別管理されているため原則として投資家の資産は保護されます。 このように信託財産は、資産を安全に預けて運用を委ねる仕組みの要となる存在であり、信託商品を選択する際には分別管理の仕組みや信託目的を理解しておくことが大切です。

運用報告書

運用報告書とは、投資信託などの金融商品について、一定期間ごとの運用状況や成果、保有資産の内容、運用方針の変更点などをまとめて投資家に知らせるための書類です。投資信託を管理・運用している運用会社が作成し、通常は半年または1年ごとに発行されます。報告書には、基準価額の推移や分配金の実績、市場環境の変化なども記載されており、投資家が自分の資産がどのように運用され、どのような成果が出ているのかを確認する手助けになります。初心者にとっても、自分の資産がどこに投資され、どのような結果を生んでいるのかを理解するうえで、非常に役立つ資料です。

シャープレシオ

金融商品の運用成績を測るための指標のひとつで、単純なリターンではなく、そのリターンを得るためにどのくらいのリスクを取っているかを計測したもの。 月次リターンのバラつきを示す標準偏差をリスク尺度として、負担したリスク1単位あたりの収益効率性をみるための指標。 数値の大きい方が効率よく運用されていることを示す。 ポートフォリオのリターン、標準偏差、無リスク資産の収益率で計算、具体的に以下の計算式で求められる。 (ファンドの平均リターン-安全資産利子率)÷標準偏差

為替ヘッジ

為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。

ETF(上場投資信託)

ETF(上場投資信託)とは、証券取引所で株式のように売買できる投資信託のことです。日経平均やS&P500といった株価指数、コモディティ(原油や金など)に連動するものが多く、1つのETFを買うだけで幅広い銘柄に分散投資できるのが特徴です。通常の投資信託に比べて手数料が低く、価格がリアルタイムで変動するため、売買のタイミングを柔軟に選べます。コストを抑えながら分散投資をしたい人や、長期運用を考えている投資家にとって便利な選択肢です。

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