居住用財産の3000万円特別控除とは、どのような制度ですか?
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2025/10/29 09:06
男性
60代
自宅を売却した際に「3000万円の特別控除が受けられる」と聞きましたが、具体的にどのような条件で適用される制度なのかよく分かりません。たとえば、住んでいた年数や売却金額によって控除額が変わるのか、また確定申告の手続きが必要なのかなど、仕組みを詳しく知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
「居住用財産の3,000万円特別控除」とは、自分が住んでいたマイホームを売却した際に得た利益から、最大3,000万円までを非課税にできる制度です。
正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と呼ばれ、所得税法上の重要な軽減措置の一つです。所有期間の長短に関わらず、一定の要件を満たせば誰でも利用できます。
対象となるのは、現に住んでいた家屋や、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の年末までに売却した家屋とその敷地です。取り壊した上で土地だけを売る場合も、取り壊しから1年以内に売却契約を結び、かつ駐車場などに転用していない場合に限って適用されます。災害で滅失した家屋の敷地を売る場合も、一定の期間内であれば対象です。
控除が適用された場合、課税所得は「譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)-3,000万円」で計算します。
- 6,000万円で売却
- 取得費が2,000万円
- 譲渡費用が200
以上の条件だと、「6,000万円-(2,000万円+200万円)-3,000万円=800万円」が課税対象の譲渡所得です。残った所得に対し、所有期間5年超なら約20%、5年以下なら約39%の税率がかかります。3,000万円を控除できるため、課税額は大幅に軽減されます。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)との併用はできない点にも注意が必要です。同一年内ではいずれか一方しか使えません。また、居住実態がない場合や、一時的に入居しただけのケースなど、特例の趣旨に反する形での利用は認められません。
また、同じ年やその前年・前々年に、別のマイホーム売却でこの特例や買換え・交換の特例、譲渡損失の損益通算・繰越控除を受けている場合は重複適用ができません。また、配偶者や親子など特別な関係にある人への売却は対象外です。
なお、この特例を使うには確定申告が必要です。確定申告書とともに「譲渡所得の内訳書」や、居住の事実を示す書類(住民票、戸籍の附票など)を添付して提出します。形式上の住所と実際の居住地が異なる場合は、追加の証明が求められることもあります。
この制度はマイホーム売却時の税負担を大きく減らせる強力な特例ですが、期限、居住実態、譲渡相手、過去の利用履歴など多くの条件を満たす必要があります。売却前に条件を確認し、専門家や国税庁の公式情報をもとに慎重に手続きを進めることが大切です。
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関連する専門用語
居住用財産の特例
居住用財産の特例とは、自分が住んでいた家や土地を売却したときに、一定の条件を満たせば税金の負担を軽くできる制度の総称です。代表的なのは「3,000万円の特別控除」で、マイホームを売って利益が出ても、最大3,000万円まで課税対象から差し引くことができます。そのため、実際に支払う税額が大幅に減り、住み替えや老後資金づくりの場面で役立ちます。 この特例にはほかにも、10年以上所有したマイホームを売った場合に税率が軽くなる「軽減税率の特例」、新しい家を買い替えるときに課税を将来まで繰り延べられる「買換え特例」、逆に売却で損失が出たときに給与など他の所得と通算できる「損益通算・繰越控除」といった仕組みがあります。また、相続した空き家を一定条件で売却すると控除が受けられる制度もあります。 ただし、いずれの特例も「実際に住んでいた家であること」「過去2年以内に同じ特例を使っていないこと」「親族など特別な関係者への売却でないこと」など、細かな条件があります。特例を使うには確定申告が必須で、契約書や住民票の附票などの証明書類も必要です。 つまり、居住用財産の特例はマイホーム売却に伴う税負担を大きく減らせる強力な仕組みですが、適用期限や条件を満たさないと使えない場合もあるため、売却を検討する際は早めに制度内容を確認して準備することが重要です。
損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。
住宅ローン控除(住宅ローン減税/住宅借入金等特別控除)
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、個人が住宅ローンを利用して自宅を購入・新築・増改築した際に、一定の条件を満たせば年末時点のローン残高に応じた金額が所得税から控除される制度です。住宅取得を支援する目的で設けられており、最大で13年間にわたり税負担を軽減できます。 控除額は原則として「年末のローン残高×0.7%」を基準に算出され、各住宅区分ごとに定められた借入限度額までが対象となります。控除しきれなかった分は翌年度の住民税からも一定額控除されます。 適用を受けるにはいくつかの条件があります。主な要件は、①自ら居住すること、②取得から6か月以内に入居し年末まで継続居住すること、③床面積が50㎡以上(一定要件を満たせば40㎡以上も可)、④返済期間が10年以上のローンであること、⑤合計所得が2,000万円以下であること、などです。親族間の売買や勤務先からの無利子・超低利ローンは対象外となります。 また、新築住宅は省エネ基準の適合が必須条件とされており、長期優良住宅やZEH水準の住宅は借入限度額が優遇されます。中古住宅では新耐震基準に適合していることが必要で、古い住宅では耐震証明書の提出が求められるケースもあります。増改築やリフォームも一定の工事要件を満たせば対象になります。 手続きは初年度に確定申告が必要で、会社員の場合は2年目以降は年末調整で対応できます。必要書類として、住宅ローンの年末残高証明書、売買契約書や登記事項証明書、省エネ性能に関する証明書などが挙げられます。 住宅ローン控除は、住宅購入時の資金計画や税負担に大きく影響する重要な制度です。適用条件や期限を正しく理解し、事前に必要書類や証明の取得を進めておくことが安心につながります。
譲渡益
譲渡益とは、株式や不動産などの資産を売却した際に得られる利益のことを指します。具体的には、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた金額が譲渡益となります。個人が株式を売却して利益を得た場合、通常は譲渡所得として申告分離課税(税率20.315%)の対象になります。不動産の場合、所有期間が5年以下の短期譲渡は税率39.63%、5年超の長期譲渡は20.315%の税率が適用されます。 また、投資信託の売却益も譲渡所得に分類されますが、分配金の一部は配当所得として課税される場合があります。税制上の優遇措置として、NISA(少額投資非課税制度)や居住用不動産の3000万円特別控除などがあり、適用条件を理解することが重要です。 資産運用においては、売却のタイミングや税制の影響を考慮し、適切な税対策を行うことが求められます。
繰越控除
繰越控除とは、特定の損失や控除額を翌年度以降に持ち越し、将来の所得から控除できる税制上の仕組みを指す。代表的なものとして、青色申告の純損失の繰越控除があり、一定期間内に発生した損失を翌年以降の利益から差し引くことができる。これにより、赤字企業でも将来の黒字化に伴い税負担を軽減できるメリットがある。ただし、適用には一定の要件があり、期限内に申告する必要がある。




