インサイダー取引とはなんですか?個人が気をつけるべきことはありますか?
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2025/05/28 17:05
男性
60代
勤務先の上場企業で決算数値を事前に扱う業務に就きました。自分や家族が保有する株を売買する際、どの行為がインサイダー取引に該当し刑事罰や課徴金の対象になるのでしょうか。また未公表情報をうっかりSNSで発信した場合も違反となるのか、具体的な回避策とともに教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
上場企業で決算情報を扱う立場に就いた場合、自社株の売買には特に注意が必要です。金融商品取引法では、まだ公表されていない重要な情報(たとえば決算数値やM&Aの進展など)を知ったうえで株式の売買を行うと、インサイダー取引とされ、刑事罰や課徴金の対象となります。
また、自分で売買をしなくても、家族や知人にその情報を伝えて取引させた場合も違反に問われる可能性があります。SNSへの投稿も例外ではありません。たとえば「業績がよさそう」などの一言でも、未公表の情報に基づく内容であれば、情報伝達と見なされ、違反とされることがあります。SNSでの発信は法令上の「公表」とは認められておらず、投稿を見た第三者の取引にも波及するリスクがあります。
インサイダー取引と判断されるかどうかは、「どのような情報を、いつ知り、誰が取引したか」によって決まります。典型的な違反は、未開示の決算情報を知ったあとに、自分や家族名義の口座で売買を行うケースです。情報を他人に伝え、その人が取引した場合も、発信者として処分の対象になる可能性があります。
リスクを避けるためには、社内のコンプライアンス部門へ事前に取引の相談・承認を得ることが基本です。特に決算発表の前後は「ブラックアウト期間」として、取引を控えるのが一般的です。さらに踏み込んだ対応としては、「知る前」に売却スケジュールを固定する契約(いわゆる10b5-1プラン)を使えば、あらかじめ定めた条件に従って機械的に売却できる仕組みが整います。
その他にも、株式を信託に預けて自分が売買判断を行わないブラインド・トラストの活用、業務端末のアクセス履歴管理、社内研修の実施など、会社側としての仕組みづくりも重要です。
重要情報を扱う立場にある以上、「取引には第三者の確認を入れる」「社外への発信は慎重に行う」という基本を徹底することが、自分自身と会社を守る最良の対応です。少しでも不安がある場合は、ためらわずに法務やコンプライアンス部門に相談するようにしてください。
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未公表重要事実
未公表重要事実とは、上場企業に関する情報のうち、まだ一般に公表されていないが、その内容が株価に大きな影響を与える可能性が高い重要な事実のことをいいます。たとえば、業績の大幅な上方修正や下方修正、大型の合併・買収(M&A)、新製品の発表、重大な不祥事などが該当します。 このような情報は、正式に公表されるまでは限られた関係者しか知り得ないため、その情報を使って株式の売買を行うと、「インサイダー取引」として金融商品取引法に違反する可能性があります。インサイダー取引は市場の公正性を損なう行為とされ、違反者には厳しい罰則が科されます。 初心者にとっては、「知っている人だけが有利になる情報を使って取引してはいけない」というルールの根拠となる考え方として、この用語を理解しておくことが重要です。公平で信頼できる市場を守るための大切な概念です。
情報伝達罪
情報伝達罪とは、未公表の重要事実(インサイダー情報)を知る立場にある者が、その情報を利用して株式などの売買を行う目的で、他人にその事実を伝える行為を禁止する法律違反のことをいいます。たとえば、上場企業の役員や社員が、会社の未発表の業績情報やM&A情報を家族や友人などに話し、それを受け取った人が株取引を行った場合、その情報を伝えた側に「情報伝達罪」が適用される可能性があります。 この行為は、金融商品取引法におけるインサイダー取引規制の一環として位置づけられており、市場の公正性を損なう行為として重い処罰の対象となります。直接自分が取引を行わなくても、第三者に情報を渡しただけで違法となる点が大きな特徴です。 初心者にとっては、軽い気持ちで話したことが違法行為となり得るリスクを理解しておくことが重要です。金融市場に関わる者として、情報の取り扱いには慎重な態度が求められるという認識を持つことが、信頼される投資行動の第一歩です。
ブラックアウト期間
ブラックアウト期間とは、上場企業の役員や社員が、会社の未公表の重要事実(たとえば決算情報)にアクセスできる立場にあることを踏まえ、その情報が正式に開示されるまでの一定期間、自社株の売買などを禁止または制限される期間のことをいいます。主にインサイダー取引を未然に防ぐための内部統制措置として設定され、法律で義務づけられているわけではありませんが、多くの企業が自主的に設けています。 たとえば、決算発表の数週間前から発表日までをブラックアウト期間とし、その間に会社関係者が株取引を行うことを禁止することで、公平な市場の維持と企業の信頼性確保を図ります。対象となるのは経営陣やIR担当者に限らず、内部で業績情報にアクセスできるすべての社員が含まれることもあります。 初心者にとっても、「会社の中の人はいつでも株を自由に売買できるわけではない」という基本的な市場ルールとして、ブラックアウト期間の存在を理解しておくことが重要です。
課徴金
課徴金とは、法律に違反した企業や個人に対して、公的機関が科す金銭的な制裁のことを指します。資産運用の分野では、特に金融商品取引法に違反した場合に、金融庁などの監督機関から課徴金が命じられることがあります。たとえば、インサイダー取引や虚偽の情報開示、不正な株価操作などがあった場合、それによって得た利益や回避した損失に応じて課徴金が算出され、支払いが命じられます。 この制度は、違反行為に対して経済的な不利益を与えることで、不正の抑止力とし、公正で透明な金融市場を維持するために重要な役割を果たしています。罰金とは異なり、刑事罰ではなく行政上の措置ですが、その金額は非常に大きくなることもあります。
EDINET
EDINET(Electronic Disclosure for Investors’ Network)とは、「金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム」のことで、有価証券報告書、有価証券届出書、大量保有報告書等の開示書類をいつでもだれでもWEB上で見れるようにする、金融庁が運営するシステム。投資家が企業の情報を分析したいときに用いられている。
ディスクロージャーポリシー
ディスクロージャーポリシーとは、企業や投資信託などが、自社の経営状況や財務情報、運用状況などの重要な情報を、どのような方針で外部に公開するかを定めたルールや方針のことです。これは、投資家に対して公平で透明性の高い情報提供を行うために設けられており、情報を「いつ」「何を」「どのように」開示するかを明確にします。 たとえば、運用報告書の定期的な発行や、重要な意思決定があった際の速やかな公表などが含まれます。投資家はこのポリシーを通じて、情報の信頼性や企業の誠実さを判断する材料とすることができます。特に資産運用においては、透明性のある情報開示が信頼につながるため、非常に重要な考え方とされています。