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損切りできない心理を説明したプロスペクト理論とはなんですか?

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2025/08/14 08:33


男性

30代

question

資産運用を始めたばかりですが、株式や投資信託で損失が出てもなかなか売却できず、結果的に損失が拡大してしまうことがあります。この「損切りできない心理」には、行動経済学でいうプロスペクト理論が関係していると聞きました。具体的にプロスペクト理論とはどのような考え方で、なぜ人は損失を避けられないのか、また資産運用においてこの心理的傾向にどう向き合えばよいのかを、教えてください。


回答

佐々木 辰

株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長

プロスペクト理論とは、人が利益や損失をどう評価し、意思決定するのかを示した、行動経済学の理論の1つです。特に資産運用の場面で、理論と現実の行動が一致する例が多く見られます。

プロスペクト理論の特徴の一つが「参照点」です。人は現在の状態や購入価格などを基準として価値を判断します。評価は資産の総額ではなく、その基準点からの増減に基づいて行われます。もう一つの特徴は「価値関数」で、利益に対する喜びは損失に対する苦痛よりも小さいという非対称な性質を持ちます。研究では、同じ金額でも損失の心理的インパクトは利益の約2倍とされます。これに関連して「損失回避」という傾向があり、損を確定させる行動に強い抵抗を感じるため、合理的な判断よりも損失を先延ばしにしてしまうことが多くなります。

こうした心理的特性により、資産運用では損切りが難しくなります。具体的には、損失回避の心理から損を「確定」させることを避けたり、一度所有した資産を実際以上に高く評価してしまう「保有効果」が働きます。また、低い確率でも「いつか値が戻るはず」という期待を過大に見積もる「確率加重」も損切りの先延ばしを後押しします。

結果として、この行動パターンは損失の拡大や機会損失につながります。下落している株を長期間保有し続けることで、他の有望な投資機会に資金を回せなくなることもあります。

この心理に打ち勝つためには、感情ではなくルールに基づく意思決定が有効です。たとえば、購入時に損切りラインを事前に設定しておく、売買の判断理由を記録して振り返る、分散投資によって特定銘柄への感情的依存を減らす、自動売買機能や指値注文を活用して感情を排除するといった方法があります。

つまり、プロスペクト理論は「損切りできない」という行動を科学的に説明する枠組みです。この理論を理解することで、自分の投資判断を客観的に見直しやすくなります。心理的バイアスを意識し、ルールベースの行動を徹底することが、長期的な資産形成の安定につながります。

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損切り(ロスカット)

損切り(ロスカット)とは、投資で保有している資産の価格が下がり、これ以上損失を広げないために、その資産をあえて売却して損失を確定させる行為のことをいいます。多くの投資家は、含み損の状態で損を確定させることに心理的な抵抗を感じますが、損切りをしないまま価格がさらに下がると、より大きな損失につながる可能性があります。そのため、あらかじめ損失の許容範囲を決めておき、一定の価格に達したら機械的に売る「ルールとしての損切り」が資産を守る手段として重要です。また、FXや信用取引では、証拠金維持のために強制的にロスカットが行われることもあります。損切りは投資のリスク管理の基本のひとつです。

プロスペクト理論

プロスペクト理論とは、人が不確実な状況で意思決定を行うときの心理的な傾向を説明する理論です。伝統的な経済学が前提とする「人は常に合理的に判断する」という考え方とは異なり、この理論では人は利益と損失を同じように評価せず、特に損失に対して強い回避傾向を持つと説明されます。また、確率を評価する際にも実際の数値どおりではなく、小さな確率を過大評価し、大きな確率を過小評価する傾向があります。例えば、宝くじを買ったり、保険に加入したりする行動は、この理論で説明できます。資産運用では、投資家の行動を現実的に理解し、リスク管理や商品の設計に応用されます。

参照点

参照点とは、人が利益や損失を評価するときの基準となる値や状態のことです。資産運用では、購入価格や直近の評価額、あるいは目標金額などが参照点になりやすく、投資家はこの基準と比べて「得をしているか、損をしているか」を判断します。行動経済学では、参照点はプロスペクト理論や損失回避の重要な要素であり、この基準が変わることで同じ状況でも判断や感情が大きく変化します。例えば、株価が購入価格より少し上がったときには利益と感じても、もっと高くなった過去の水準と比べると損失のように感じることがあります。参照点を意識することは、感情に左右されない合理的な投資判断を行ううえで役立ちます。

価値関数

価値関数とは、将来にわたって得られると期待される利益や効用を数値として表したものです。資産運用では、投資判断を行う際に「今の選択がどれだけの価値を生むのか」を評価するために使われます。例えば、ある投資商品を購入した場合、その商品が時間の経過とともにどの程度利益をもたらすかを予測し、その合計を現在の価値に換算して評価します。価値関数を理解することで、目先の利益だけでなく、将来のリターンを含めた長期的な視点で判断できるようになります。

保有効果

保有効果とは、人が自分の持っているものを、実際の市場価値よりも高く評価してしまう心理的傾向のことです。資産運用では、保有している株式や不動産を「手放したくない」という気持ちから、売却をためらったり、売る場合に相場以上の価格を求めたりする行動として現れます。この効果は、所有していることで愛着や価値の感じ方が変わるために生じ、結果として合理的な取引判断を妨げることがあります。保有効果を理解することで、感情に左右されず、市場価格や将来の見通しに基づいた冷静な意思決定がしやすくなります。

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