国民年金基金の予定利率はどのように推移していますか?
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2025/08/09 08:19
男性
30代
国民年金基金の加入を検討しています。低金利で予定利率が昔より下がっているということなのですが、現在までどのように推移してきたのでしょうか?具体的な数値とその背景を教えて下さい。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
国民年金基金の予定利率とは、将来の年金給付を賄うために「どのくらい運用で増やせるか」を想定して設定される利回りのことです。この予定利率は、確定給付型の年金制度ではとても重要な役割を持ちます。なぜなら、利率が下がると、その分だけ掛金を多く払うか、将来もらえる年金額を減らす必要があるからです。そのため、予定利率の見直しは慎重に行われてきました。
予定利率の推移を見ると、バブル経済の終焉以降、日本の長期金利が大きく下がったことに合わせて、予定利率も大幅に引き下げられてきました。1990年代前半までは5.5%(一部商品は6.5%)という高い利率が設定されていましたが、1995年以降は段階的に引き下げられ、2004年には1.75%、そして2014年以降は1.5%が新規加入者の予定利率となっています。これは、10年国債利回りなどの実勢金利が大きく下落したことや、安定した年金給付を守るための運用リスク管理が主な理由です。
予定利率は「加入した時点の利率が一生固定される」という仕組みになっています。そのため、同じ掛金を支払っても、例えば1994年に加入した人と2015年以降に加入した人では、将来受け取れる年金額に大きな差が生まれることになります。つまり、いつ加入したかによって、受け取れる金額が2倍以上違うケースもあります。
また、予定利率が下がれば、その分、同じ給付を受けるためには掛金を増やす必要があります。一方で、利率が一度決まると途中で変更されることはありません。現在の予定利率は1.5%で、今後も5年ごとの財政再計算のタイミングや、長期金利の動向によって見直される可能性があります。
今後については、金利が低い状態が続くと現行の1.5%が維持される見込みですが、仮に長期金利が上昇すれば小幅な利上げが行われる可能性もあります。逆に、再び金利が低下したり加入者が減少すれば、更なる利率引き下げも検討されることになるでしょう。
最後に、国民年金基金は「節税メリット」と「終身年金」という保険的役割を持つ商品です。予定利率が低水準になっている現状では、リターンだけを期待するのではなく、老後資金の「最低保証部分」を確保する役割として活用し、iDeCoや投資信託など他の運用商品との組み合わせを考えることが合理的です。
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国民年金基金
国民年金基金とは、自営業者やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者が、将来の年金額を上乗せするために任意で加入できる制度です。これは、国民年金(基礎年金)だけでは老後の生活費として不十分な場合に備えて、公的に用意された追加の年金制度です。加入者は自分の希望に合わせて受け取る年金の型や金額を選ぶことができ、掛金もそれに応じて決まります。終身で年金を受け取れる選択肢もあるため、長生きリスクへの備えとして有効です。また、支払った掛金は全額が所得控除の対象となるため、節税効果も得られます。資産運用の視点では、自分で備える年金制度の一つとして、iDeCoなどと並んで重要な選択肢となります。
予定利率
予定利率は、生命保険会社が保険契約者に対してあらかじめ約束する運用利回りのことです。これは保険会社が保険料を計算する際に用いる重要な指標の一つで、契約者から払い込まれた保険料を運用して得られると予想される運用利回りを表します。 予定利率は保険料の設定に大きな影響を与えます。予定利率が高い場合は保険料が安くなり、低い場合は高くなります。これは、高い予定利率では将来の運用によるリターンを多く見込めるため、保険料を低く抑えることができるからです。 予定利率の決定方法は、まず金融庁が国債の利回りなどを参考に「標準利率」を設定し、その後各保険会社が標準利率を基準に自社の状況を反映して決定します。 予定利率には特徴があり、契約時点の率が適用され、基本的には支払い終了時や更新時まで同率で変わりません。バブル経済期には高い予定利率の保険が多く販売され、これらは「お宝保険」と呼ばれています。近年は低金利環境により、予定利率は低下傾向にあります。 保険料の計算には予定利率以外にも、予定死亡率(性別、年齢別に想定される死亡率)や予定事業費率(保険会社の運営に必要な経費の割合)も影響します。これら3つの要因を合わせて「予定基礎率」と呼びます。
長期金利
長期金利とは、返済までの期間が10年以上にわたる金融商品(たとえば10年国債など)に適用される金利のことです。これは、将来の経済成長率や物価(インフレ)などの見通しを反映して決まるため、景気の動向や中央銀行の政策、世界的な資金の流れなどが影響します。 長期金利が上がると、住宅ローンや企業の設備投資にかかる資金調達コストが増えるため、景気を冷やす効果があります。逆に、長期金利が下がるとお金を借りやすくなるため、経済が活性化しやすくなります。資産運用においては、債券の価格や株式市場にも影響を与えるため、非常に重要な指標のひとつです。特に債券投資を考える際には、長期金利の動きが利回りや価格に直結するため、注視する必要があります。
確定拠出年金
確定拠出年金は、毎月いくら掛金を拠出するかをあらかじめ決め、その掛金を自分で運用して増やし、将来の受取額が運用成績によって変わる年金制度です。会社が導入する企業型と、自分で加入する個人型(iDeCo)の二つがあり、掛金は所得控除の対象になるため節税効果があります。 運用対象は投資信託や定期預金などから選べ、運用益も非課税で再投資される仕組みです。60歳以降に年金や一時金として受け取れますが、途中で自由に引き出せない点に注意が必要です。老後資金を自ら準備し、運用の成果を自分の年金額として受け取る「自助努力型」の代表的な制度となっています。
掛金
掛金とは、保険や年金、共済制度などにおいて、契約者が定期的に支払う金額のことを指します。例えば、国民年金や厚生年金の掛金(保険料)は、将来の年金給付のために積み立てられます。また、企業型確定拠出年金(DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)では、加入者が掛金を拠出し、その運用結果に応じた給付を受け取ります。掛金の金額や支払方法は制度ごとに異なり、法律や契約内容によって定められています。
財政再計算
財政再計算とは、年金制度などの長期的な財政運営が将来にわたって安定して続けられるかを確認するために、定期的に収支や制度設計を見直し、必要に応じて給付や保険料の調整を検討する作業のことです。経済成長率、賃金水準、物価上昇率、寿命の延びなどの将来予測をもとに、今後の財政バランスを試算します。 日本の公的年金制度ではおおむね5年ごとに財政再計算が行われ、制度の持続可能性を確保するための重要な判断材料となります。この作業は、資産運用における長期的な資金計画やリスク管理の発想にも通じており、将来を見据えた継続的な見直しの重要性を示しています。