民間の保険会社が販売している介護保険は必要ですか?
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2025/10/17 09:12
女性
30代
民間の保険会社が販売している介護保険について、加入が必要かどうか迷っています。公的介護保険との違いや補えない部分、実際に支払う保険料の負担、将来の介護リスクに対する備えとしてどの程度役立つのかを知りたいです。特に、介護費用がどのくらいかかるのか、どんな人が民間介護保険に入るべきなのかを教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
民間の介護保険は、すべての人に必要というわけではありません。公的介護保険で基本的なサービスは受けられますが、居住費や食費、保険適用外のサービスなど自己負担となる部分が残ります。この「公的に賄えない部分」がどの程度あるかによって、民間保険が必要かどうかが変わります。家族の支援が難しい人や、貯蓄を取り崩さずに介護費用を確保したい人には、有効な選択肢となることがあります。
公的介護保険では、要介護認定を受けると在宅や施設で介護サービスを受けられますが、自己負担は所得に応じて1〜3割です。支給限度を超えたサービスや、施設の生活費などは自己負担になります。介護期間が長くなったり、認知症による見守りが必要になったりすると、負担が大きくなる傾向があります。
民間の介護保険は、こうした費用のギャップを埋めるための現金給付が特徴です。一時金でまとまった金額を受け取るタイプや、要介護状態が続く限り毎月給付されるタイプなどがあります。生活費を補う目的なら、毎月給付型を選ぶのが現実的です。
加入が向いているのは、独居や高齢の夫婦世帯など介護を担う家族が少ない人、年金だけでは十分な資金が確保できない人、認知症の家族歴がある人などです。一方で、十分な金融資産や安定した収入がある人、公的制度や地域サービスを積極的に活用できる人は、保険に頼らず自己資金で備える選択も合理的です。
検討する際は、まず将来の生活スタイルを想定し、介護費用の見込みを立てます。そのうえで、年金や貯蓄でどの程度まかなえるかを試算し、不足する分を民間保険で補うのが基本です。保険は「足りない分だけ」にとどめるのが賢明です。
商品を選ぶ際は、要介護の認定条件、給付金の支払方法、免責期間、保険料の上昇リスク、給付金のインフレ対応などを確認しましょう。また、「要介護いくつから給付されるのか」「在宅介護でも給付対象か」といった条件は、パンフレットで細かく確認することが大切です。
最終的に、民間介護保険は「公的保険を補う現金給付の仕組み」として位置づけるのが現実的です。まずは公的サービスと自分の資産でどこまで対応できるかを整理し、不足する部分を必要最小限の保障でカバーするのが合理的です。ライフプランと介護のシナリオを複数想定し、毎月の不足額を見える化したうえで検討すれば、納得感のある判断ができます。
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関連する専門用語
介護保険
介護保険とは、将来介護が必要になったときに備えるための保険で、民間の保険会社が提供している商品です。公的介護保険制度とは別に、要介護・要支援と認定された場合に、一時金や年金形式で保険金を受け取れるのが特徴です。 この保険の目的は、公的制度だけではまかないきれない介護費用を補い、自分自身や家族の経済的な負担を軽減することにあります。 特に高齢化が進む現代社会において、老後の安心を支える備えとして注目されている保険のひとつです。 なお、保険の保障内容や保険金の受け取り条件は商品ごとに大きく異なります。加入を検討する際には、補償の範囲や条件をしっかり確認することが重要です。
介護認定
介護認定とは、介護保険制度にもとづいて、市区町村が申請者の心身の状態を調査・審査し、その人がどれだけ介護や支援を必要としているかを判断する制度です。正式には「要介護認定」とも呼ばれ、認定結果は「非該当(介護不要)」から「要支援1・2」「要介護1~5」までの段階に分かれます。 この認定を受けることで、介護保険サービスを利用するための資格が得られ、必要な支援の範囲や量も決まります。介護サービスを受けるにはまずこの認定を受けることが前提となるため、高齢者やその家族にとって非常に重要な手続きです。認定は申請制であり、申請後に訪問調査や医師の意見書などをもとに審査されます。介護の必要度に応じた適切なサービス利用のために、正確な認定が行われることが求められます。
医療費の自己負担割合
医療費の自己負担割合とは、病院や薬局でかかった医療費のうち、患者自身が実際に支払う部分の割合のことをいいます。日本では公的医療保険制度によって医療費の多くがカバーされており、残りを患者が負担します。一般的に小学生までの子どもや高齢者は負担割合が低く設定されており、現役世代は3割負担が基本です。 この割合は年齢や所得によって変わる仕組みになっているため、自分がどの区分に当てはまるのかを把握しておくことが大切です。資産運用や家計管理においても、医療費の自己負担割合を知っておくことで、将来の医療費に備えた計画が立てやすくなります。
免責期間
免責期間とは、保険契約が開始してから一定の期間、保険金の支払い対象とならない期間のことを指します。 たとえば生命保険や医療保険では、契約を結んですぐに保障が始まるわけではなく、契約後しばらくの間に起きた死亡や入院に対しては、保険金が支払われなかったり、一部のみの支払いに制限されているケースがあります。 この免責期間は、不正な保険金請求を防ぐことや、加入時の健康状態が不確かな場合のリスクを保険会社が抑えるために設けられています。特に、健康状態の告知が不要な「無告知型保険」や、加入しやすいタイプの保険商品では、免責期間の内容が重要な意味を持つため、加入前にしっかり確認しておくことが大切です。
介護費
介護費とは、高齢者や障がいのある方が日常生活を送るうえで必要となる支援にかかる費用のことで、介護サービスの利用料や福祉用具の購入・レンタル費、施設の入居費、自宅のバリアフリー改修費などが含まれます。日本の介護保険制度では、要介護認定を受けた方は原則1~3割の自己負担でサービスを利用できますが、保険適用外の費用や長期利用により、合計負担は決して小さくありません。 在宅介護では、例えば要介護3の方が週3回の訪問介護と週2回のデイサービスを利用する場合、介護サービスにかかる月額の自己負担は約8.5万円、加えておむつや日用品などで月1.5万円程度が必要です。合計で月約10万円となり、平均介護期間とされる約4年半(55か月)を想定すると総額で約550万円になります。 施設介護では、特別養護老人ホーム(特養)の月額費用は約6〜14万円が一般的で、入居一時金はかかりません。標準的なケースで月10万円、4年間入所すれば約480万円となります。介護老人保健施設(老健)は在宅復帰を前提とした短期利用が多く、月額は約12万円前後です。 一方、民間の有料老人ホームでは、首都圏を中心に入居一時金として数百万円(例:600万円)、月額利用料として25〜35万円がかかるのが一般的です。仮に30万円の月額と入居一時金600万円で4年間過ごした場合、総費用は約2,040万円に達します。 さらに、住宅のバリアフリー改修では平均約70万円(介護保険の支給上限は20万円)、介護ベッドや車いすのレンタルには月1,500〜4,500円程度が必要です。加えて、入院時の差額ベッド代や付き添い費などの一時的出費もあり、平均で約47万円が発生するとされます。 以下に主要なパターン別の費用感をまとめます。 | 介護形態 | 月額自己負担 | 初期費用 | 想定4年半の合計費用 | | --- | --- | --- | --- | | 在宅介護(要介護3相当) | 約10万円 | 0円 | 約550万円 | | 特養(特別養護老人ホーム) | 約10万円 | 0円 | 約480万円 | | 有料老人ホーム(民間施設) | 約30万円 | 約600万円 | 約2,040万円 | 介護にかかる平均的な費用は約500~600万円程度ですが、介護度が重くなったり、施設を選んだり、期間が長期化することで1,000万円を超えることも珍しくありません。月々の負担を抑える公的制度(高額介護サービス費制度など)や、民間の介護保険・就業不能保険といった備えも併用し、資産運用やライフプランに介護費を組み込んでおくことが重要です。