不動産会社がホームインスペクションを嫌がる理由はなんですか?どのように対処するべきでしょうか?
回答受付中
0
2025/08/15 08:42
男性
60代
中古物件の購入を検討しており、購入前にホームインスペクション(住宅診断)を依頼したいと考えています。しかし、仲介する不動産会社からは「不要」や「時間がかかる」といった理由で消極的な反応を示されました。ホームインスペクションを不動産会社が嫌がる理由はどんな物が考えられますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
不動産会社がホームインスペクション(住宅診断)に消極的な理由は、大きく分けて3つあります。第一に、不具合が発覚すると値引きや修繕交渉、場合によっては契約の解約につながるためです。
こうした調整は仲介手数料の減少にも直結し、会社側の経済的インセンティブが働きにくくなります。第二に、調査の実施には鍵の手配や売主・管理会社との立会い、通電・通水の準備など追加の事務作業が発生し、スケジュールが遅延する恐れがあります。第三に、調査報告書が原因で契約不適合責任の追及や補修交渉が複雑化するなど、トラブルが増えるリスクも嫌われます。特に「現況有姿」で早く売却したい売主や、表面改修にとどまる買取再販業者は診断を避ける傾向があります。
しかし、2018年の宅建業法改正により、仲介業者にはインスペクションの制度説明や斡旋可否の明示などが義務づけられています。買主による実施自体を原則として妨げることはできず、建物状況調査は国土交通省が定めた方法基準に基づき、講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が非破壊・目視中心で行います。調査範囲には限界がありますが、屋根や床下など条件付きで確認可能な部分も多く、結果を既存住宅売買瑕疵保険の付保に活用できる場合もあります。
対処法としては、まず契約前にインスペクションを実施する前提を明文化し、買付証明や契約書に期日や特約を設定することが重要です。やむを得ず契約後に行う場合も、結果に応じて解除や価格調整、修繕を認める「インスペクション特約」を必ず入れましょう。また、調査は必ず登録有資格者に依頼し、報告書の範囲や限界を事前に確認します。結果の取り扱いについては、軽微な不具合は情報共有にとどめ、中程度であれば修繕または価格調整、重大であれば解除といったプロトコルを事前に合意しておくとスムーズです。
もし不動産会社から「インスペクションは不可」と言われた場合は、制度説明や斡旋可否の書面を求め、それでも不合理な拒否が続く場合は管理職やコンプライアンス窓口に相談し、必要なら仲介会社の変更も検討します。調査範囲や実施方法が曖昧な場合は、事前に詳細を明確化し、必要に応じて追加調査の合意を取りましょう。こうした準備を行えば、購入後の不測の修繕費やトラブルを回避し、安心して取引を進めることができます。
関連記事
関連する専門用語
ホームインスペクション
ホームインスペクションとは、住宅の購入や売却の際に、専門の建築士などが建物の状態を調査・診断することを指します。主に中古住宅で利用されることが多く、屋根や外壁、基礎、配管、電気設備などが適切に機能しているか、安全性に問題がないかなどをチェックします。これにより、購入後に思わぬ修繕費が発生するリスクを事前に減らすことができます。不動産投資においては、物件の価値や将来の維持コストを判断するうえで、非常に重要な手続きのひとつです。 初心者の方にとっては、物件の見た目だけで判断せず、ホームインスペクションの結果を活用することで、安心して投資判断ができるようになります。
宅建業法改正
宅建業法改正とは、不動産取引に関するルールを定めた法律である「宅地建物取引業法(宅建業法)」に対して行われる法改正のことです。特に資産運用や中古住宅取引の実務に大きな影響を与えたのが、2018年4月に施行された改正で、この改正により中古住宅の売買契約前に「建物状況調査(インスペクション)」を実施するかどうかを重要事項説明で告知することが義務化されました。 これにより、買主は建物の状態についてより正確な情報を得たうえで判断できるようになり、取引の透明性と安心感が向上しました。このような法改正は、不動産投資家にとっても、物件選定やリスク管理の考え方に影響を与える重要な変化です。宅建業法の動向を把握することは、安心・安全な不動産取引を行うために欠かせません。
契約不適合責任
契約不適合責任とは、売買契約や請負契約などで引き渡された物や提供されたサービスが、契約で定めた内容に合っていない場合に、売主や請負人が負う責任のことです。たとえば、住宅の売買で「新築」とされていた物件に雨漏りや構造の欠陥があった場合、それは契約内容と合っていない(=不適合)とされ、買主は修補や代替、損害賠償、あるいは契約解除を求めることができます。 これは2020年の民法改正によって「瑕疵担保責任」に代わり導入された制度で、より明確に買主の保護が図られるようになっています。不動産や金融商品など高額な契約が多い資産運用の場面では、この責任の内容を理解しておくことが、トラブル防止や適切な契約判断に大きく役立ちます。
既存住宅状況調査技術者
既存住宅状況調査技術者とは、中古住宅の状態を調査・診断するための専門資格を持った技術者のことです。建築士の資格を有しており、一定の講習を修了した者がこの資格を取得できます。この技術者は、住宅の劣化や不具合の有無、安全性に問題がないかを客観的に調べる役割を担っています。 国の制度に基づき、特に不動産の売買時に行う「既存住宅状況調査(インスペクション)」を実施できる唯一の資格者であり、買主や投資家が安心して住宅を購入するための判断材料を提供してくれます。資産運用の観点では、物件選びの精度を高め、思わぬ出費や損失のリスクを減らすために重要な存在です。
既存住宅売買瑕疵保険
既存住宅売買瑕疵保険とは、中古住宅の売買において、引き渡し後に発見された構造上の欠陥や雨漏りなどの「隠れた瑕疵(かし)」に対して補償を行う保険制度です。この保険は、国に登録された保険法人が提供しており、対象となる住宅について事前に建物状況調査(インスペクション)を実施し、一定の基準を満たした場合に加入できます。補償内容としては、基礎・柱・屋根などの構造耐力上主要な部分や、雨水の浸入を防ぐ部分に不具合があった場合の修補費用が含まれます。 売主が個人である場合には、契約不適合責任が免責とされるケースも多く、買主にとってはリスク管理の手段としてこの保険が有効です。不動産投資においても、保険付き物件であれば購入後のトラブルリスクを軽減できるため、安心材料のひとつとなります。
インスペクション特約
インスペクション特約とは、不動産の売買契約において、物件の状態を第三者が調査(インスペクション)し、その結果に応じて契約内容を見直したり解除したりできる条件を定めた特約のことです。 主に中古住宅の取引で利用され、構造上の欠陥や設備不良などの有無を事前に確認する目的があります。買主にとっては購入後の予期せぬ修繕費用やトラブルを避ける手段となり、売主にとっても物件状態を明確にすることで後日の紛争リスクを減らせます。 資産運用の観点では、不動産投資におけるリスク管理の一環として、この特約を活用することで長期的な収益性の安定につながります。