相続放棄が認められない事例にはどのようなものがありますか?
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2025/07/31 08:17
男性
50代
相続放棄をすれば親の借金の返済義務を免れると聞きましたが、放棄が認められないケースもあると聞き、不安に感じています。相続放棄が認められない状況とはどんなときでしょうか?具体例や注意点を教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
相続放棄は、原則として「相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する」という手続きを経ることで認められます。しかし、実際にはその申述が認められなかったり、無効とされるケースもあります。以下では、相続放棄が認められない典型的な事例について解説します。
まず注意すべきなのは、被相続人の財産を処分した場合です。たとえば、故人名義の預金を引き出して生活費に充てたり、不動産を売却してその代金を受け取ったりすると、「相続財産を処分した」と見なされてしまいます。これは民法上の「単純承認」に該当し、放棄の意思に反して相続を承認したものとされるため、相続放棄の申述が認められなくなります。なお、葬儀費用の支払いは原則として許容されますが、香典返しや法要などの費用に使うと処分と判断されるリスクがあります。
次に、法定の申述期間である3か月を過ぎてしまった場合も、相続放棄は原則認められません。被相続人の財産関係が複雑で調査に時間がかかる場合でも、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長申立て」を行わない限り、3か月経過後は放棄できないのが一般的です。
また、相続財産の一部だけを放棄するという考え方は、民法の原則に反します。相続はプラスの財産もマイナスの財産も一括で承継する「包括承継」とされているため、特定の負債だけを放棄するといった一部分の放棄は制度上認められていません。
さらに、他の相続人に自分の相続分を譲渡した後に相続放棄を申し立てることもできません。相続分の譲渡を行った時点で相続を承認したと見なされるため、その後に放棄しても無効と判断されるのが通例です。
保証債務にも注意が必要です。被相続人と生前に連帯保証契約を結んでいた場合、その債務は相続放棄をしても消えません。放棄で免れるのは、あくまで相続によって承継される債務だけであり、自ら契約当事者として負っている債務は引き続き負担する必要があります。
相続放棄の申述書に不備がある場合や、虚偽の内容が含まれている場合も、家庭裁判所から却下されることがあります。特に未成年者や成年後見人が関わる場合は、法定代理人の同意書や追加書類の提出が必要となるため、手続きには慎重さが求められます。
最後に、債権者から逃れる目的で相続放棄を行った場合は、「詐害行為」として取消しの対象になることがあります。民法には詐害行為取消権が定められており、債権者が裁判所に申し立てを行えば、放棄の効果を無効にされてしまう可能性があります。
以上のように、相続放棄が認められないリスクは多岐にわたります。財産の内容を正確に把握し、放棄の時期と方法を誤らないことが重要です。不安な場合は、相続に詳しい弁護士や司法書士などの専門家に早めに相談し、適切な判断を下すようにしましょう。場合によっては、放棄ではなく「限定承認」という選択肢も検討すべきです。
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関連する専門用語
相続放棄
相続放棄とは、亡くなった人の財産を一切受け取らないという意思を家庭裁判所に申し立てて、正式に相続人の立場を放棄する手続きのことです。相続には、プラスの財産(預貯金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金や未払い金など)も含まれるため、全体を見て相続すると損になると判断した場合に選ばれることがあります。 相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされるため、借金の返済義務も一切負わなくて済みます。ただし、相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、その期限を過ぎると原則として相続を受け入れたとみなされてしまいます。したがって、放棄を検討する場合は早めの判断と手続きが重要です。
単純承認
単純承認とは、相続が発生した際に、被相続人(亡くなった方)の財産をそのまま全て受け継ぐと決める手続きのことをいいます。この場合、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もすべて引き継ぐことになります。単純承認は特別な手続きをしなくても、相続人が財産を使ったり処分したりすると自動的に成立することが多いため、慎重な判断が必要です。 たとえば、被相続人に多額の借金があった場合、それも自分が返済する責任を負うことになりますので、相続を受ける前には、財産の内容をよく調べることが大切です。
包括承継
包括承継とは、ある人の財産や義務を、全体として一括して受け継ぐことを意味します。相続においては、被相続人が亡くなったときに、その人の持っていた財産、借金、契約上の地位などを相続人が一体的に引き継ぐことが包括承継です。個別に選んで受け取るわけではなく、「プラスの財産」だけでなく「マイナスの財産(借金など)」も含めて引き継ぐのが特徴です。 この仕組みにより、相続人は被相続人の法的地位を引き継ぎ、原則として自動的にその一切の権利義務を継承することになります。ただし、相続放棄や限定承認をすることで、マイナスの財産を引き継がない選択肢もあります。資産承継の計画や相続対策を考えるうえで、包括承継の意味を正しく理解しておくことは非常に重要です。
熟慮期間
熟慮期間とは、相続人が相続を「する」「しない」を決めるために与えられている法的な猶予期間のことです。具体的には、相続が開始されたことを知った日から3か月以内に、相続するかどうかを決めて家庭裁判所に申し出る必要があります。 この3か月の間に、亡くなった方の財産や借金の状況を確認し、自分にとって相続が得か損かを見極めることが求められます。もし期間内に何も手続きをしなければ、法律上は「相続する」と判断され、自動的にすべての財産と負債を引き継ぐことになります。資産運用の観点からは、負の遺産を回避するための重要な判断期間であり、財産の内容を冷静に分析する時間でもあります。
詐害行為取消権
詐害行為取消権とは、債務者が自分の財産をわざと第三者に譲渡したり減らしたりして、債権者からの取り立てを免れようとする行為(詐害行為)に対して、債権者がその行為を取り消すことができる権利のことをいいます。たとえば、借金を抱えた人が、返済を免れるために自宅を家族名義に無償で移してしまうようなケースが該当します。 このような行為が認められてしまうと、債権者が正当に回収できるはずの財産がなくなってしまうため、法律では不公平を防ぐために「詐害行為取消権」という救済措置が用意されています。取消しが認められると、その財産は「なかったこと」として扱われ、債権者が回収できる状態に戻されます。これは債権者が自分の権利を守るための強力な法的手段であり、資産の不正な移転や隠匿を防ぐために重要な役割を果たします。初心者にとっても、債務や相続などで財産の移転が関係する場面では、知っておくと役立つ法律上の概念です。
連帯保証
連帯保証とは、借金などの債務を負っている人が返済できない場合に、代わりに支払う責任を負う保証の形の一つです。通常の保証と違い、連帯保証人は本人とまったく同じ立場で責任を負うため、本人に請求する前にいきなり連帯保証人に全額請求されることもあります。 そのため、連帯保証になるということは、実質的に自分の借金のようなリスクを負うことになります。親族や知人の頼みで安易に引き受けてしまうと、思わぬ経済的な負担を抱える可能性があるため、慎重な判断が必要です。