個人事業主が納めた年金保険料は、経費になりますか?
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2025/10/07 09:09
男性
個人事業主として確定申告を行う際、国民年金や国民年金基金などに支払った保険料を経費として計上できるのか疑問に思っています。実際に経費に入れる場合の条件や、どのように申告すればよいのかも知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
個人事業主が自分のために支払う年金保険料は経費にはなりません。事業の運営に直接関係する支出ではなく、個人的な社会保険料とみなされるためです。確定申告では「必要経費」ではなく「所得控除」として扱い、課税所得の計算前に差し引く形で税負担を軽減します。
国民年金や付加年金、国民健康保険、介護保険などは「社会保険料控除」の対象です。これらの支払額は全額が控除され、確定申告書の該当欄に記入します。国民年金基金の掛金も同様に社会保険料控除に含まれます。これらを申告する際は、毎年送付される控除証明書を確認して金額を記載します。
一方、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額控除されます。控除区分が国民年金や国民年金基金とは異なるため、申告時には証明書の名称を確認し、正しい欄に記入することが大切です。
民間の個人年金保険や生命保険に支払った保険料は経費ではなく、「生命保険料控除」の対象となります。こちらは控除額に上限があり、計算式に基づいて控除額が決まります。社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除とは別枠で扱われます。
なお、従業員を雇っている場合に事業主が負担する厚生年金や健康保険の会社負担分は、事業のための支出として「法定福利費」として経費計上が可能です。しかしこれは自分自身の年金保険料とは別の取り扱いです。
確定申告時には、各控除に応じた証明書の添付が必要です。国民年金の控除証明書は毎年秋から年明けにかけて送付され、紛失した場合は「ねんきんネット」から再発行できます。iDeCoの場合は国民年金基金連合会が発行する「小規模企業共済等掛金払込証明書」を使用します。
また、同一生計の配偶者や親族の社会保険料を本人が支払った場合、その分も自分の社会保険料控除として申告できます。誤って経費に入れず、正しい控除区分で処理することが、正確な節税につながります。
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所得控除とは、個人の所得にかかる税金を計算する際に、特定の支出や条件に基づいて課税対象となる所得額を減らす仕組みである。日本では、医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などがあり、納税者の生活状況に応じて税負担を軽減する役割を果たす。これにより、所得が同じでも控除を活用することで実際の税額が変わることがある。控除額が大きいほど課税所得が減少し、納税者の手取り額が増えるため、適切な活用が重要である。
社会保険料控除
社会保険料控除とは、健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険などの社会保険料を支払った場合に、その金額を所得から差し引くことができる所得控除の一種です。これは、納税者の生活を守る公的制度に協力しているという前提で、税負担を軽くするための仕組みです。 本人が支払った分だけでなく、配偶者や親族の保険料を本人が負担している場合にも控除の対象になります。会社員であれば給与から自動的に天引きされた社会保険料も対象となっており、年末調整や確定申告の際に自動的に反映されるケースが多いです。税額を計算する際の重要な調整要素となるため、税制の基本知識として知っておくと役立ちます。
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生命保険料控除
生命保険料控除とは、個人が支払った生命保険料に応じて、所得税や住民税の課税所得額を一定金額まで減らすことができる税制上の優遇制度です。この控除によって、納める税金が軽減されるため、実質的に保険料の一部が戻ってくる効果があります。 対象となる保険は、「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」の3つの区分に分かれており、それぞれに控除限度額が設けられています。控除を受けるには、保険会社から発行される控除証明書を年末調整や確定申告の際に提出する必要があります。保険による万一への備えと、節税効果の両方を得られる制度として、多くの人に活用されています。初心者にとっても、生命保険を契約する際にはこの控除制度の存在を知っておくことで、より効果的な保険選びや家計管理につなげることができます。
法定福利費
法定福利費とは、法律によって企業に支払いが義務付けられている従業員の福利厚生に関する費用のことを指します。これは企業が従業員を雇用する際に発生する「社会保険料の会社負担分」にあたります。具体的には、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などが含まれます。これらの費用は従業員の給与とは別に企業が負担するもので、企業の人件費の一部として重要な位置を占めています。法定福利費は、企業の規模や従業員数によって金額が大きく変わり、経営のコスト管理にも大きな影響を与えます。また、福利厚生制度を整えることで従業員の安心や満足度を高める役割もあります。



