投資信託の信託財産留保額とはどのようなものですか?必ず支払う必要がありますか?
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2025/09/09 09:01
男性
60代
投資信託に「信託財産留保額」という費用があると聞きましたが、具体的にはどのような仕組みなのでしょうか?解約や換金のときに必ず支払うものなのか、それとも商品によって違うのか知りたいです。また、支払う場合は投資家にどのようなメリットやデメリットがあるのかも教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
投資信託における「信託財産留保額」は、購入時手数料や信託報酬とはまったく性質の異なる費用です。これは解約や換金に伴ってファンドが資産を売却する際に発生する売買コストやスプレッドを、解約する投資家自身に負担させ、その分をファンドに残す仕組みです。徴収された金額は販売会社や運用会社の収益にはならず、残存投資家の基準価額を不当に目減りさせないために活用されます。
必ず支払うものではなく、設定の有無や料率はファンドごとに異なります。国内株式型では0.3%前後、海外株式型では0.5%程度が目安ですが、ゼロに設定されている商品も増えています。多くは解約時のみ発生しますが、購入時にも課すファンドもあり、目論見書の「費用」欄で確認できます。
投資家目線で整理すると、長期保有者にとっては「他人の大量解約に伴う売買コストを肩代わりせずに済む」ことが大きなメリットです。一方で短期的な解約や頻繁な乗り換えでは、その都度コストを負担するためリターンが削られる点がデメリットとなります。例えば解約額100万円、留保率0.3%なら3,000円が差し引かれ、受取額は99万7,000円となり、この3,000円はファンドに残って残存投資家の利益を守ります。
混同しやすい費用の違いも押さえておくと理解が深まります。
・購入時手数料=販売会社の収益
・信託報酬(運用管理費用)=日々ファンドから控除され、運用会社・受託銀行・販売会社へ分配
・信託財産留保額=解約者(または購入者)が負担し、ファンドに留まる
結論として、信託財産留保額は「金融機関の稼ぎ」ではなく「投資家同士の公平性を確保する装置」です。長期で腰を据えて投資するなら大きな負担にはなりにくく、むしろ安心材料になり得ます。一方、短期売買を重ねるなら留保ゼロの商品を選ぶと効率的です。いずれにせよ、目論見書で①有無、②料率、③課される場面(購入時か換金時か)を確認することが実務的な判断に直結します。
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関連する専門用語
信託財産留保額
信託財産留保額とは、投資信託を解約(売却)する際に、投資家が支払うことになる費用の一つで、解約代金から差し引かれてファンド内に留め置かれるお金のことです。 このお金は、運用している信託財産の中に残され、他の投資家に不利益が出ないようにするための調整の役割を持ちます。たとえば、大量の解約が発生すると、ファンドは保有資産を売却して現金化しなければならず、その際に売却コストが発生します。このコストをすべての投資家に負担させると不公平になるため、解約者に信託財産留保額という形で部分的に負担してもらうのです。つまり、長くファンドを保有する投資家の利益を守る仕組みとして設定されています。
信託財産
信託財産とは、信託契約にもとづき委託者が受託者(信託会社や信託銀行など)に預けた現金・株式・不動産といった資産のことです。受託者はこれらの資産を信託目的に沿って管理・運用しますが、信託財産は受託者自身の資産とは厳格に分別管理され、法律上も独立した財産とみなされます。 たとえば投資信託では、投資家から集めた資金が信託財産となり、株式や債券への投資に充てられます。万が一、受託者や販売会社が経営破綻しても、信託財産は分別管理されているため原則として投資家の資産は保護されます。 このように信託財産は、資産を安全に預けて運用を委ねる仕組みの要となる存在であり、信託商品を選択する際には分別管理の仕組みや信託目的を理解しておくことが大切です。
実質コスト
実質コストとは、投資信託を1年間保有した場合に投資家が実際に負担する全ての費用を合計し、期中の平均純資産総額で割って割合として示したものです。信託報酬のほかに売買委託手数料や監査費用、保管費用など運用に付随する細かな経費も含まれるため、名目の信託報酬より高くなるのが一般的です。多くの場合、決算後に運用報告書で公表されるため事前に完全な数値を知ることはできませんが、同じカテゴリのファンド同士を費用面で比較する際に最も実態に近い指標として役立ちます。