投資信託の為替ヘッジなしとはどういうことですか?
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2025/08/02 08:50
男性
40代
海外資産に投資する投資信託を検討していますが、「為替ヘッジなし」と書かれている商品の意味がよく分かりません。為替ヘッジがない場合はなにがどうかわるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
投資信託に「為替ヘッジなし」と書かれている場合、それはファンドが外国株や外国債券などの外貨建て資産に投資している際に、為替変動によるリスクを回避せず、そのまま受け入れる運用方針をとっていることを意味します。つまり、ファンドの価格は投資対象の値動きだけでなく、円と外国通貨の為替レートの変動によっても影響を受けます。
為替ヘッジを行わない最大のメリットは、ヘッジにかかる追加コストを負担しなくて済む点です。為替ヘッジでは通常、金利差に基づくコスト(スワップポイントなど)が発生し、特に金利の高い通貨をヘッジする場合には年率で0.5〜2%程度のコストが生じることがあります。ヘッジなしの場合はこのコストを回避できるうえ、円安が進めば外貨建て資産の円換算価値が上昇し、リターンを押し上げる効果も期待できます。
一方、デメリットとしては、為替の変動によってファンドの基準価額が大きく振れる点が挙げられます。たとえば、米国株が10%上昇したとしても、同時に円高ドル安が10%進めば、円建ての評価では利益が相殺され、実質的なリターンがゼロになる可能性もあります。特に世界的にリスク回避の動きが強まる局面では円高になりやすく、損失が拡大するリスクがあります。
初心者が「ヘッジあり」と「ヘッジなし」のどちらを選ぶべきか迷う場合には、まず①運用期間がどれくらいか、②為替の変動リスクをどの程度許容できるか、③自分の資産全体での通貨バランスをどう考えているか、という三点を整理することが有効です。一般的には、2〜3年以内に使う予定の資金や、円ベースで安定した収益を重視する場合にはヘッジありが適しています。反対に、5〜10年以上の長期保有で、為替変動によるリターンの増加も期待したい場合には、ヘッジなしが選ばれることがあります。
ただし、為替の予測はプロでも難しいため、「長期保有を前提にし、途中の為替変動には一喜一憂しない」という姿勢が重要です。投資信託を選ぶ際には、目論見書や運用報告書で為替ヘッジの方針やコストの有無を確認することが大切です。なお、「ヘッジあり」と表記されていても、ヘッジの比率が100%か部分的かによってリスクと効果が変わる点にも注意が必要です。
さらに、為替の影響は投資だけでなく、将来の支出(海外旅行や留学、外貨建て支払いなど)にも関係します。そうしたライフプランも踏まえた上で、自分に合った為替ヘッジの方針を選ぶと、納得のいく運用につながるでしょう。
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為替リスク
為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。
為替ヘッジ
為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。
通貨分散
通貨分散とは、資産を複数の異なる通貨で保有することで、特定の通貨に偏ったリスクを抑える投資手法のことです。たとえば、すべての資産を日本円で持っていると、円の価値が下がったときに資産全体の価値も目減りしてしまいますが、米ドルやユーロなど他の通貨で一部を保有していれば、その影響をやわらげることができます。通貨分散を行うことで、為替変動による影響を平均化し、より安定した資産運用を目指すことができます。 特に外貨建ての債券や投資信託などを活用することで、自然と通貨分散が実現できます。長期的な資産形成を考えるうえで、重要なリスク管理の一つです。
基準価額
基準価額とは、主に投資信託の商品価格を表すもので、投資信託1口あたりの価値を示しています。毎営業日に一度計算され、投資信託が保有している株式や債券などの資産の時価総額から、運用にかかる費用を差し引いた金額を、発行済みの総口数で割って算出されます。 投資信託の購入や売却の際には、この基準価額が参考になりますので、価格の動きに注目することが大切です。ただし、基準価額は市場価格とは異なり、リアルタイムで変動するわけではないため、翌営業日の価格になることが多い点にもご注意ください。
ヘッジコスト
ヘッジコストとは、為替や金利などの市場変動リスクを抑えるために先物取引やスワップ取引などでポジションを置き換える際に発生する費用の総称です。たとえば外貨建て資産を円で評価する投資家が為替リスクを避けるために為替ヘッジをかける場合、将来の円・外貨交換レートを予約する代わりに金利差や手数料に基づくコストが発生します。 このコストは通貨間の金利差が大きいほど高くなり、投資収益の差し引き後リターンに直接影響します。資産運用の成果を正しく評価するには、表面的な収益だけでなくヘッジコストを加味してネットリターンを把握することが大切です。
金利差
金利差とは、異なる国や通貨、あるいは異なる金融商品の間で適用される金利の違いを指す言葉です。たとえば、日本の金利が0.1%でアメリカの金利が5.0%であれば、その差である4.9%が金利差になります。この金利差は、為替相場や資産運用の判断に大きな影響を与えます。 たとえば、金利の高い国に投資すればより多くの利息が得られるため、資金がその国に集まりやすくなり、通貨が高くなる傾向があります。一方で、為替リスクや経済状況の違いにも注意が必要です。個人投資家にとっては、外貨建て預金や外国債券などの運用で金利差が収益に直結するため、しっかり理解しておくことが重要です。