実質リターンやリスクはなぜ資産運用で重要なのでしょうか
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2025/07/17 10:02
男性
40代
資産運用をするうえで「手数料を差し引いた後のリターン」や「リスクの大きさ」をきちんと理解することが大事だと聞きました。でも、正直どれくらい重要なのかよくわかりません。手数料が少し高くても成績が良ければ問題ないのでは?と思ってしまいます。運用成果を評価するうえで、コストを引いた後のリターンやリスクをどう考えるべきか、わかりやすく教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
資産運用で本当に大切なのは、「どれくらいリターンが得られるか」ではなく、「最終的に自分の手元にいくら残るか」です。なぜなら、運用によるリターンからは毎年の手数料、たとえば信託報酬などが引かれていくため、見た目の数字どおりには増えないからです。表面上のリターンが高く見える商品でも、コストを差し引いたあとの実質リターンが低ければ、長期的に見て得られる利益は小さくなってしまいます。
たとえば、ある投資信託Aは年5%のリターンで手数料が1.5%、もう一つの投資信託Bは年4%のリターンで手数料が0.2%だとします。一見するとAのほうがリターンが高く見えますが、実質リターンで比べるとAは3.5%、Bは3.8%となり、逆転します。この2つに1000万円を20年間投資した場合、Aでは約1992万円に、Bでは約2118万円に増えます。つまり、実質リターンの差がわずか0.3%でも、20年後には手元に126万円の差が出るということです。
また、もう一つ見落とされがちな点がリスク、つまり価格の変動の大きさです。リターンが高く見える商品でも、価格の上下が激しければ、一時的に大きく値下がりすることもあります。その結果、不安になって途中で売却してしまい、本来得られるはずだったリターンを逃してしまう人も少なくありません。
だからこそ、運用成果を正しく判断するためには、「コストを引いた後の実質リターン」と「どれくらい価格が上下するかというリスク」の両方を見ることが大切です。表面上の数字に惑わされず、手元にどれだけお金が残るのか、そして長く安心して持ち続けられるかを意識することが、後悔しない資産運用への第一歩です。
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関連する専門用語
実質リターン
実質リターンとは、投資によって得られた収益からインフレの影響を差し引いた後の「実際の利益」のことです。表面的な収益、つまり名目リターンがたとえ高くても、物価が上昇して生活にかかるコストが増えていれば、手元に残る「価値ある利益」は目減りしている可能性があります。 そのため、資産運用においては名目の数字だけを見るのではなく、物価変動を考慮に入れた実質リターンを見ることが非常に重要です。たとえば年率5%の利益があっても、インフレ率が3%であれば、実質的なリターンは2%に過ぎません。特に長期の資産形成を考える際には、この視点を持つことが資産の「目減り」を防ぐカギとなります。
リスク
リスクとは、資産運用において、期待している結果とは異なる結果が生じる可能性のことを指します。具体的には、投資による損失が発生するかもしれない不確実性を意味しますが、必ずしも悪い結果だけを指すわけではなく、期待以上の利益が出る可能性もリスクの一部とされます。リスクには、株価の変動、金利の変動、為替レートの変動などさまざまな種類があり、それぞれに応じた対策が求められます。資産運用を行う上では、自分がどの程度のリスクを受け入れられるかを理解し、それに応じた投資戦略を立てることが非常に重要です。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。
表面利回り
表面利回りとは、資産運用において投資対象の収益性を簡単に把握するための指標で、年間収益を投資額で割って算出されます。不動産投資では、年間の賃料収入を物件の購入価格で割った数値が表面利回りとなり、金融商品では配当や利息収入を元本に対する割合で示します。 例えば、2,000万円の不動産を購入し、年間家賃収入が120万円の場合、表面利回りは6%(120万円 ÷ 2,000万円 × 100)となります。ただし、これは管理費や修繕費、税金などの運用コストを考慮していないため、実際の収益性とは異なります。そのため、投資判断をする際は、表面利回りだけでなく、運用コストを差し引いた実質利回りを確認することが重要です。 表面利回りは、異なる投資対象を比較する際に便利な指標ですが、単独で投資判断をするのではなく、リスクやコストを含めた総合的な分析が必要となります。
長期運用
長期運用とは、資産を数年から数十年という長い期間にわたって投資し、じっくりと資産を育てていく運用方法のことをいいます。株式や投資信託、債券などを短期的な値動きに左右されずに保有し続けることで、複利の効果や経済成長の恩恵を受けることが期待されます。 短期間での利益を狙う「短期売買」とは異なり、長期運用では市場の一時的な上下にあまり振り回されず、安定したリターンを目指すのが特徴です。初心者にとっても取り組みやすく、時間を味方につけて資産形成をするための有効な手段とされています。特に、老後資金や教育資金など将来必要になるお金を準備する目的で利用されることが多い運用スタイルです。