ゼロクーポン債を途中売却することはできますか?可能な場合税金はどうなりますか?
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2025/08/09 08:19
男性
30代
ゼロクーポン債は利息の支払いがなく、満期まで保有する前提の商品と聞きましたが、もし途中で売却したい場合はどうすればよいのでしょうか?途中売却は本当に可能なのか、また売却益が出たときにはどのような税金がかかるのかについて教えて下さい。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
ゼロクーポン債は、通常の利付債と同様に、途中で売却することが可能です。証券会社を通じて店頭または取引所で取引されているセカンダリー市場で、保有中の債券を売却できます。ただし、売却時の価格は市場金利の水準や銘柄の流動性によって変動します。そのため、購入時よりも高く売れて利益が出る場合もあれば、逆に損失が出る場合もあります。ゼロクーポン債は利息がないため、元本と利子が一体化しており、一般的な債券よりも金利変動に対する価格の変動幅が大きい点に注意が必要です。
ゼロクーポン債を途中で売却して利益が出た場合、その売却益には税金がかかります。税率は一律で20.315%(所得税15.315%+住民税5%)で、申告分離課税の対象となります。この「公社債等の譲渡益等」は、株式や投資信託などの譲渡損益・配当と損益通算することができます。また、特定口座(源泉徴収あり)を利用していれば確定申告の必要はありません。
逆に、売却損が出た場合も、同じく株式や投信の譲渡益と通算でき、損失が残った場合には翌年以降3年間の繰越控除も可能です。これにより、他の利益と相殺して税負担を軽減することができます。
ゼロクーポン債を満期まで保有した場合は、購入時の割引価格と額面との差額が「償還差益」として同じく20.315%で課税されます。一方、途中で売却した場合には、売却時の価格と取得額の差額が課税対象となります。どちらも税率は同じですが、課税されるタイミングが異なるため、資金繰りや税負担の時期に影響が出る可能性があります。
外貨建てのゼロクーポン債の場合は、為替の影響も加味されます。円安時には為替差益が出て課税額が増える一方、円高時には差益が相殺されることもあります。為替差も譲渡益に含まれるため、売却や償還時の為替水準は大きな影響を与えます。
NISAやiDeCoといった非課税制度については、ゼロクーポン債のような個別の外国債券は対象外となっていることが多いため、非課税の恩恵は受けにくいのが実情です。NISAでは主にETFや公募投資信託などが対象となるため、ゼロクーポン債を非課税で運用する方法は限られています。
実際にゼロクーポン債を途中売却する場合には、いくつかの注意点があります。まず、市場での流動性が低い銘柄では、思った価格で売却できないことがある点です。また、金利が上昇局面にあるときには価格が大きく下落しやすいため、保有タイミングや売却時期を慎重に見極める必要があります。
さらに、為替リスクにも注意が必要です。特に外貨建て債券は為替変動によって利益が吹き飛ぶこともありますので、必要に応じて為替ヘッジを検討するなどの対策が求められます。最後に、損益通算や確定申告を適切に行うためにも、特定口座の利用や年間取引報告書の管理を怠らないようにしましょう。
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関連する専門用語
ゼロクーポン債
ゼロクーポン債とは、利息の支払いが一切なく、額面よりも安い価格で購入し、満期時に額面金額を受け取るタイプの債券です。「ゼロクーポン」という名前のとおり、通常の債券のように定期的に利息(クーポン)を受け取ることはありません。その代わりに、割引された価格で買い、満期まで保有することで、その差額が実質的な利益となります。たとえば、額面が100万円のゼロクーポン債を90万円で購入し、満期に100万円を受け取れば、10万円が利回りとなります。利息の再投資を考える必要がなく、運用がシンプルであることから、将来の資金用途が明確な場合や、確定した金額を一定期間後に受け取りたい場合に適しています。ただし、金利の変動による価格の変化が大きいため、途中で売却する場合にはリスクがあることも理解しておくことが大切です。
申告分離課税
申告分離課税とは、特定の所得について他の所得と分離して税額を計算し、確定申告を通じて納税する方式です。 主な対象となる所得は以下の通りです: - 譲渡所得: 土地や建物、株式などの譲渡による所得。 - 山林所得: 山林の伐採や譲渡による所得。 - 先物取引による所得: FXや商品先物取引による所得。 例えば、株式の譲渡所得については、他の所得と合算せずに分離して課税されます。また、上場株式等の配当所得についても、申告分離課税を選択することができます。
特定口座
特定口座とは、投資家の税金計算を簡便にするための口座形式です。証券会社が運用益や損益を自動計算し、年間取引報告書を発行します。特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があり、「源泉徴収あり」を選択すれば、税金が取引時点で自動的に納付されます。これにより、確定申告が不要になるため、多くの投資家に利用されています。ただし、損益通算や損失の繰越控除を行う場合は確定申告が必要です。
償還
償還とは、債券の満期到来時に発行体が投資家に対して元本を返済することを指します。例えば、10年満期の債券であれば、10年後に元本が返金されます。債券の発行元が満期までの間に利息を支払い、償還時に元本を返済することで投資家は利息収益と元本の返金を得ます。ただし、償還には発行体の信用力が影響し、デフォルトリスクが存在する場合があります。
損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。
為替差損益
為替差損益とは、外貨建ての資産を日本円に換算する際に生じる為替レートの変動による損益を指します。たとえば、1ドル=130円のときに米ドルで資産を購入し、売却時に1ドル=140円で円に戻した場合、為替差によって10円分の為替差益が発生します。逆に、売却時に円高が進行し1ドル=120円になっていれば、10円分の差損が発生することになります。この為替差損益は、外国株式、外貨建て投資信託、外債、外貨預金など、外貨を用いた資産運用において常に発生し得る重要なリスク要因です。 資産の値動きが堅調であっても、為替相場の変動によって最終的な円ベースのリターンが目減りすることがあるため、投資判断の際には為替リスクも含めて総合的に考慮する必要があります。たとえば、円安が進行すれば円換算での評価額は増えますが、円高になれば逆に資産価値は減少します。為替差損益は、こうした為替変動を通じて投資成果に直接的な影響を与える存在であり、為替動向の把握や資産配分の調整、ヘッジ戦略の活用などが求められます。 NISA口座での運用においても為替差損益は無視できません。NISAでは、外国株式や外貨建て投資信託の売却益が非課税となるため、為替差益も含めた全体の売却益が非課税対象となります。つまり、為替差によるプラスのリターンも税金がかからずそのまま受け取れるというメリットがあります。ただし、逆に為替差損が発生しても、それを他の利益と損益通算したり、繰り越して控除することはできません。NISAでは損失の税務活用ができないため、為替リスクを取る際は慎重な判断が必要です。 税務や会計上では、為替差損益には「実現損益」と「評価損益」があります。実現損益とは、外貨建て資産を実際に売却し円に換えた際に確定する損益であり、通常の課税対象となります。一方、評価損益とは、保有中の外貨建て資産を期末などに円換算した際に一時的に生じる為替差損益であり、個人投資家の場合、課税対象にはなりません。法人ではこの評価損益を会計上反映させるケースもありますが、個人の確定申告ではあくまで実現ベースでの損益が対象です。 このように、為替差損益は資産運用における見落としがちなリスク要素でありながら、運用成果に与えるインパクトは決して小さくありません。為替相場の予測は困難であるため、為替ヘッジ付き商品の活用や、複数通貨への分散投資、円建て資産とのバランス調整などを通じて、想定外の為替変動にも対応できる設計が望まれます。投資判断を行う際には、表面的なリターンだけでなく、その背後にある通貨変動の影響にも目を向けることが重要です。