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事業継承税制とは? 2

事業承継税制とは?一般・特別措置の要件や違い、メリット・デメリットと活用法をわかりやすく解説

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執筆者:

公開:

2025.09.17

更新:

2025.09.17

中小企業の多くが直面する事業承継では、莫大な贈与税や相続税が大きな負担となり、後継者の経営継続を阻む要因になります。これを軽減する仕組みが「事業承継税制」です。特に2018年改正で創設された特例措置は、贈与税・相続税の納税猶予割合が100%となるなど大幅に拡充されました。

ただし、特例承継計画の提出期限は2026年3月31日、承継完了は2027年12月31日までと期限付きです。本記事では、制度の概要から一般措置との違い、活用時のリスクや注意点まで、今押さえるべきポイントを整理して解説します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むと、事業承継税制の一般措置と特例措置の違いを整理しながら、贈与税・相続税の猶予割合や後継者の人数要件、雇用確保要件などの重要ポイントを一目で理解できます。特に特例措置は「計画提出は2026年3月31日まで」「承継完了は2027年12月31日まで」と期限が迫っているため、早めに準備する必要性が明確になります。さらに担保提供や年次報告、取り消し時の利子税といったリスクまで把握でき、承継を贈与で進めるか相続で進めるか、自社に適した判断基準を得ることができます。

目次

事業承継税制とは?後継者の税負担を猶予や免除する制度

目的は中小企業の円滑な事業承継と廃業防止

仕組みは贈与税・相続税の「納税猶予」と最終的な「免除」

法人版と個人版の違いは対象資産(非上場株式か事業用資産か)

事業承継税制の一般措置と特例措置、今から使うならどちらが有利?

一般措置と特例措置の主な違いを一覧比較

今からなら柔軟で有利な「特例措置」の活用が基本

最重要注意点:特例措置の利用には2026年3月31日までの「特例承継計画」提出が必須

事業承継税制の適用要件|会社・先代・後継者の誰が何を満たすべき?

STEP1. 会社の要件:あなたの会社は非上場の中小企業ですか?

STEP2. 先代経営者の要件:あなたは代表権を持ち、筆頭株主でしたか?

STEP3. 後継者の要件:後継者は会社の代表になる準備ができていますか?

STEP4. その他の要件:適用後も担保提供と継続的な報告が必要です

事業承継税制の手続きと期限|申請から納税免除までの全スケジュール

STEP1:【最重要】特例承継計画の策定・提出(期限:2026年3月31日)

STEP2:株式等の承継を実行(贈与または相続)(期限:2027年12月31日)

STEP3:税務署へ贈与税・相続税の申告と納税猶予の申請

STEP4:承継後の年次報告と継続届出(5年間は毎年、6年目以降は3年ごと)

STEP5:納税免除または猶予の終了

事業承継税制のメリット・デメリット|税効果と費用対効果を徹底検証

事業承継税制を活用する3つのメリット

税額シミュレーション:制度利用でキャッシュフローはどう変わる?

知っておくべき3つのデメリット・注意点

事業承継税制の取消・打ち切りを回避するための7つの注意点

注意点1:「免除」ではなく、あくまで条件付きの「納税猶予」と理解する

注意点2:特例措置の生命線である「特例承継計画」の提出を忘れない

注意点3:適用後の継続的な報告義務を怠り、猶予を取り消される

注意点4:安易な人員削減で雇用維持要件(一般措置)を満たせなくなる

注意点5:後継者が代表取締役を退任し、猶予が打ち切りになる

注意点6:承継後の増資や株式譲渡で、持株比率の要件外になる

注意点7:事業継続が前提の制度のため、将来の廃業や売却で裏目に出る

生前贈与と相続、どちらで承継すべき?自社株対策のポイント

生前贈与で承継するケース:計画的に経営を譲り、株価上昇前に対策できる

相続で承継するケース:突然の相続でも一般措置は適用可能

事業承継税制の活用を相談するなら誰?

1.税理士:相談のハブとなる税務の専門家

2.取引金融機関:会社の状況を熟知する経営のパートナー

3.弁護士:相続トラブルを防ぐ法律の専門家

4.公的機関:中立な立場で初回相談に応じる

失敗しない相談相手の選び方と比較ポイント

事業承継税制とは?後継者の税負担を猶予や免除する制度

事業承継税制は、後継者が中小企業の株式や事業用資産を引き継ぐ際の贈与税・相続税の納税を猶予し、将来的に免除する制度です。事業承継時の多額の税負担は、経営の大きな障壁となります。

この制度を活用すれば、承継時の納税を先送りできるため、後継者は資金繰りを心配せず事業に集中できます。一定の要件を満たし事業を継続すれば、最終的に納税義務がなくなる可能性もあります。

目的は中小企業の円滑な事業承継と廃業防止

日本では経営者の高齢化や後継者不足が深刻化し、税負担の重さも相まって廃業を選ぶ企業が増えています。これは地域の雇用や経済にも大きな影響を与えます。

こうした課題を解決するため、2009年に事業承継税制は創設されました。税制面から円滑な世代交代を支援し、中小企業の持続的な成長を支えることがこの制度の目的です。

仕組みは贈与税・相続税の「納税猶予」と最終的な「免除」

この制度の仕組みは、承継時に発生する税金の支払いを一旦「猶予」し、後継者が代表として事業を継続するなどの要件を満たし続ければ、最終的にその納税が「免除」されるという二段階構造です。

ただし、猶予を受けるには担保の提供が必要で、適用後も定期的に事業状況を報告する義務が課せられます。

後継者が死亡した場合、猶予されていた税金は免除される

贈与税の猶予を受けていた先代経営者が亡くなった場合、猶予されていた贈与税は全額免除されます。

同様に、相続税の猶予を受けていた後継者が亡くなった場合も、その相続税は免除されます。この場合、次の後継者も事業承継税制を適用する場合、「免除対象贈与」に該当する一定部分のみ免除され、納税負担が軽減された状態で事業を引き継ぐことが可能です。

法人版と個人版の違いは対象資産(非上場株式か事業用資産か)

事業承継税制には、会社の株式を対象とする「法人版」と、個人事業主の事業用資産を対象とする「個人版」の2種類があります。一般的に事業承継税制という場合は、非上場企業のオーナー経営者が利用する法人版を指すことが多いです。ご自身の事業形態に合わせて、どちらの制度が適用されるかを確認しましょう。

個人事業主の場合は「個人版事業承継税制」の対象に

個人版事業承継税制は、個人事業主が所有する土地・建物・設備といった事業用資産の贈与・相続に係る税金を猶予する制度です。法人版とは対象となる資産や細かな要件が異なります。利用するには、法人版と同様に「個人事業承継計画」を作成し、都道府県の認定を受ける必要があります。

事業承継税制の一般措置と特例措置、今から使うならどちらが有利?

事業承継税制には、制度創設時からある「一般措置」と、2018年の税制改正で期間限定で設けられた「特例措置」の2種類があります。特例措置は一般措置に比べて適用要件が緩和されており、税の優遇範囲も広くなっています。現在、事業承継税制の活用を検討する場合、どちらの制度が自社にとって有利かしっかり比較することが重要です。

一般措置と特例措置の主な違いを一覧比較

一般措置と特例措置のどちらを利用するかで、納税猶予の対象範囲や承継後の経営の自由度が大きく変わります。ここでは、後継者の人数、雇用維持要件、適用期限など、特に重要な7つの項目について、両者の違いをまとめました。

項目一般措置特例措置
事前計画の提出不要必要(特例承継計画を2026年3月31日までに提出)
適用期限なし(恒久措置)あり(承継は2027年12月31日まで)
対象株式数総株式数の3分の2まで全株式が対象
納税猶予割合贈与税100%、相続税80%贈与税・相続税とも100%
後継者人数1人最大3人
親族外承継対象(2015年改正で親族要件は撤廃)対象
雇用維持要件5年間で平均80%の維持が必要実質的に撤廃(要件未達でも報告すれば猶予継続可)
承継失敗時の救済なしあり(事業継続困難時の税負担減免措置)
事前計画の提出不要必要(特例承継計画を2026/3/31まで)
適用期限なし承継は2027/12/31まで
雇用要件承継後5年間平均8割の維持が必要承継後5年間平均8割の維持が必要。ただし、未達でも理由報告で継続可

今からなら柔軟で有利な「特例措置」の活用が基本

比較表の通り、特例措置は一般措置に比べて多くの点で優遇されています。納税猶予の割合が100%である点や、複数の後継者への承継が可能な点、経営環境の変化に対応しやすい柔軟な雇用要件など、経営者にとってのメリットは大きいです。これから制度利用を考えるなら、特例措置を軸に検討するのが基本となるでしょう。

例えば、相続時の納税猶予割合は、一般措置が80%であるのに対し、特例措置なら100%です。また、後継者も一般措置では1人に限定されますが、特例措置では最大3人まで対象にできます。

なお、承継後5年間の雇用維持要件は実務上の弾力化であり、未達時は理由報告等の手続が必要です。

最重要注意点:特例措置の利用には2026年3月31日までの「特例承継計画」提出が必須

メリットの大きい特例措置ですが、利用するには厳格な期限が定められています。特に「特例承継計画」の提出期限は重要な節目です。この期限を逃すと特例措置は利用できなくなるため、活用を考えている経営者は、計画的に準備を進める必要があります。時限的な制度であることを常に意識しておきましょう。

計画提出後、実際の株式承継(贈与または相続)も2027年12月31日までに行わなければ、特例措置は適用されません。その場合は一般措置の適用を検討することになりますが、優遇内容が大きく異なるため、早めの行動が肝心です。

事業承継税制の適用要件|会社・先代・後継者の誰が何を満たすべき?

事業承継税制を適用するには、あらかじめ「経営承継円滑化法」に基づく認定を受ける必要があります。この認定を受けるために満たすべき主な要件を「会社」「先代経営者」「後継者」の3つの区分に分けて整理します。

STEP1. 会社の要件:あなたの会社は非上場の中小企業ですか?

制度を利用できるのは、一定の条件を満たす中小企業に限られます。自社が資本金や従業員数の規模の要件を満たしているか、また、対象外となる業種や資産管理会社に該当しないか、最初に確認しましょう。

  • 会社の規模: 資本金や従業員数が中小企業基本法などで定める範囲内の非上場企業であり、常時使用従業員が1名以上(特定の場合は5名以上)いる必要があります。
  • 業種など: 上場会社や風俗営業会社は対象外です。また、不動産賃貸業など資産の管理・運用が事業の中心である「資産管理会社」は原則として対象外ですが、一定の要件を満たせば適用が認められる場合があります。

資産管理会社については以下記事で詳しく解説しています。

STEP2. 先代経営者の要件:あなたは代表権を持ち、筆頭株主でしたか?

株式などを譲る先代経営者にも、会社の経営に主体的に関わってきたことを示す要件が課せられます。代表者であったことや、一族の中で最も多くの株式を持っていたことなどが問われます。生前贈与の場合は退任のタイミングも重要です。

  • 代表者であったこと: 承継の直前まで、会社の代表権を持っていたことが必要です。
  • 株式の保有状況: 承継時に、親族などと合わせて会社の株式の過半数を保有し、かつその中で筆頭株主であったことが求められます。
  • 代表者の退任(贈与の場合): 生前贈与で事業承継税制を利用する場合、株式を贈与する時点で代表者を退任している必要があります。

STEP3. 後継者の要件:後継者は会社の代表になる準備ができていますか?

事業を引き継ぐ後継者には、会社の経営を引き継ぐ意思と体制があることを示す要件が定められています。承継後に会社の代表に就任することや、一定の株式を保有して経営権を安定させることが求められます。

  • 株式の保有状況: 承継時に、親族などと合わせて株式の過半数を保有し、かつ後継者自身が筆頭株主になる必要があります。
  • 代表者への就任: 承継後に会社の代表者に就任することが必須です。相続の場合は相続開始から5ヶ月以内、贈与の場合は贈与時にすでに代表者であることが条件です。
  • 年齢・役員歴: 承継時点で18歳以上である必要があります。また、贈与の場合は贈与の直前に役員でなければなりません(※2025年の税制改正で役員在任3年要件は撤廃されました)。

後継者が複数(兄弟など)いる場合も特例措置なら対象に

特例措置を利用すれば、最大3人までの後継者が同時に事業承継税制の適用を受けることができます。各後継者が一定数以上の株式を取得し、それぞれが筆頭株主の地位を確保するなどの条件はありますが、兄弟姉妹で事業を継承することも可能です。一方、一般措置では後継者は1人のみです。

STEP4. その他の要件:適用後も担保提供と継続的な報告が必要です

ここまでの要件を満たして制度の適用が始まっても、それで終わりではありません。納税猶予を継続するためには、猶予税額に見合う担保の提供と、事業を続けていることを証明するための定期的な報告義務が課せられます。

まず、猶予される贈与税・相続税の税額と利子税に見合うだけの担保を税務署に提供します。通常は、承継した自社の株式そのものを担保とします。

次に、適用後も長期間にわたる報告義務があります。

  • 承継後5年間: 毎年1回、都道府県庁へ「年次報告書」を、税務署へ「継続届出書」を提出します。
  • 6年目以降: 都道府県庁への報告は不要になりますが、3年に1回、税務署への「継続届出書」の提出が必要です。

これらの義務を怠ると、納税猶予が取り消される可能性があるため注意が必要です。また、特例措置では雇用維持要件が実質的に緩和されていますが、従業員数が大幅に減少した場合は、その理由を記載した報告書を提出する必要があります。

事業承継税制の手続きと期限|申請から納税免除までの全スケジュール

ここでは、事業承継税制を適用するための一連の手続きと主な期限について、時系列に沿って説明します。特にメリットの大きい特例措置を利用する場合には、準備のスケジュールが厳密に定められているため注意しましょう。

STEP1:【最重要】特例承継計画の策定・提出(期限:2026年3月31日)

特例措置を利用するための最初の関門が、事業承継に関する具体的な計画書「特例承継計画」の作成と提出です。ここには後継者や事業の将来像を記し、認定支援機関の助言も必要となります。提出期限が厳格に決まっているため、早めの準備が成功の鍵です。

計画書作成には時間を要するため、余裕を持った着手が推奨されます。

STEP2:株式等の承継を実行(贈与または相続)(期限:2027年12月31日)

計画が認定されたら、次はいよいよ後継者へ株式などを引き継ぎます。生前の贈与か、相続による承継かによって手続きは異なりますが、いずれも特例措置の適用を受けるためには期限内に実行する必要があります。会社の状況に合わせて最適なタイミングを見極めましょう。

この期間内に贈与・相続が行われなければ特例措置は適用できず、その場合は一般措置での対応となります。

株式の相続については以下Q&Aでも説明しています。

STEP3:税務署へ贈与税・相続税の申告と納税猶予の申請

株式承継後は、税務署への申告手続きが必要です。通常の贈与税・相続税申告と併せて、事業承継税制の適用を受けたい旨を申請します。この際、都道府県から交付された認定書などの書類添付が必須です。また、納税猶予を受けるための担保も提供します。

贈与税の申告期限は贈与があった年の翌年3月15日、相続税は相続開始から10ヶ月以内です。担保の提供期限も原則として申告期限と同じです。

STEP4:承継後の年次報告と継続届出(5年間は毎年、6年目以降は3年ごと)

納税猶予が始まった後も、事業を継続していることを定期的に報告する義務があります。承継後の5年間は毎年、それ以降も3年ごとに届出が必要です。この報告を怠ると、猶予が取り消される可能性もあるため、継続的な管理が求められます。

具体的には、承継後5年間は毎年1回、都道府県に「年次報告書」を、税務署へ「継続届出書」を提出します。6年目以降は、3年に1度、税務署への継続届出書提出のみとなります。

STEP5:納税免除または猶予の終了

すべての手続きを終え、事業を継続していくと、最終的に納税が免除されるゴールが待っています。一方で、途中で株式を売却するなど要件を満たさなくなった場合は、猶予が打ち切られ納税が必要になります。制度の出口まで理解しておくことが重要です。

例えば、先代経営者が贈与後に亡くなった場合や、後継者が亡くなった場合には、猶予されていた税金の納付が免除されます。しかし、猶予取消事由に該当した場合は、その時点で猶予されていた税額と利子税を納付しなければなりません。

事業承継税制のメリット・デメリット|税効果と費用対効果を徹底検証

事業承継税制は、後継者の税負担を大きく軽減できる強力な制度ですが、安易な利用は将来の経営を縛るリスクも伴います。この制度が「納税を先送りし、条件付きで免除する制度」であることを理解した上で、自社にとって本当にメリットがあるのか、恩恵とリスクのバランスを慎重に評価することが大切です。

事業承継税制を活用する3つのメリット

事業承継税制のメリットは、単に税金の支払いを先送りできるだけではありません。承継時の資金繰りを安定させ、事業を継続すれば最終的に納税が免除される可能性があります。さらに、特例措置を利用することで、より柔軟で安心な制度活用ができるようになります。後継者が経営に専念できる環境を整える強力な制度です。

メリット1:承継時の納税が猶予され、事業資金が枯渇しない

最大のメリットは、事業承継の際に発生する多額の贈与税・相続税の支払いを猶予できる点です。中小企業でも承継時には数千万円から億単位の税負担が生じることがありますが、特例措置を適用すればその100%の納税が猶予されます。これにより後継者は納税資金の準備に追われることなく、会社の運転資金や成長投資に資金を充てることが可能になります。

メリット2:事業を継続すれば、最終的に納税が「免除」される

この制度は単なる「猶予」だけでなく、一定の条件を満たせば納税義務そのものが消滅する「免除」の可能性がある点が大きな魅力です。例えば、贈与で猶予を受けていた先代経営者が亡くなった場合や、相続で猶予を受けていた後継者が亡くなった場合、猶予されていた税金は全額免除されます。つまり、事業が次の世代へ無事に引き継がれれば、一世代分の承継税が実質ゼロになるということです。

メリット3:特例措置なら、さらに柔軟な制度活用が可能になる

特例措置を利用すれば、一般措置にはない追加の恩恵を受けられます。例えば、承継後の雇用維持要件が実質的に緩和されるため、経営環境の変化に応じて人員計画を柔軟に見直せます。また、将来的に事業の継続が困難になった場合でも、株価下落時の納税額を減免する救済措置が用意されており、安心して制度を活用できます。

税額シミュレーション:制度利用でキャッシュフローはどう変わる?

ここで簡単なシミュレーション例を示します。評価額1億円の自社株式を後継者へ承継する場合、通常は約4,000万円前後の税負担が発生し得ます。しかし事業承継税制の特例措置を適用すれば、この4,000万円の納税が全額猶予され、直ちに現金を支払う必要はなくなります。

一方で、もし承継から3年後に事業を売却するなどの理由で猶予が取り消されると、猶予されていた4,000万円に加え、3年分の利子税(約400万円以上)を上乗せして一括で納付する必要があります。このように、将来の計画によって損得が大きく変わるため注意が必要です。

知っておくべき3つのデメリット・注意点

事業承継税制は強力な節税策ですが、すべての会社にとって最適解とは限りません。将来的に事業を売却する可能性が高い場合や、後継者が長期間経営を続けられるか不透明な場合は、制度利用が裏目に出る可能性も考慮すべきです。

デメリット1:猶予が打ち切りになると、利子税を含めた納税義務が発生する

制度適用後も、長期間にわたり様々な要件を守り続ける必要があります。もし重大な要件違反などで猶予が取り消されると、猶予されていた税額の全額または一部を、利子税と共に一括で納付しなければなりません。猶予期間が長引くほど利子税の負担は増え、結果的に当初より多くの税金を支払うことになる可能性もあります。

デメリット2:経営の自由度が制限され、M&Aや上場が困難になる

納税猶予を受けている間、承継した株式は税務署の担保となっているため、自由に売却できません。これは事実上、M&Aによる株式売却や事業譲渡が困難になることを意味します。また、外部から新たに出資を受け入れる際も、後継者一族の持株比率が50%を下回ると猶予が取り消されるため、資本政策の自由度が大きく制限されます。

デメリット3:税理士報酬など、制度の維持にコストと手間がかかる

制度の適用を受けるには、計画策定や税務申告などで専門家のサポートが不可欠です。また、適用後も毎年または3年ごとの継続的な報告義務があり、その管理にも手間とコストがかかります。こうした維持コストと、得られる節税メリットを天秤にかけ、総合的に費用対効果を判断することが重要です。

事業承継税制の取消・打ち切りを回避するための7つの注意点

事業承継税制はメリットの大きい制度ですが、適用後の要件も多く、安易に利用するとかえってリスクを負うことがあります。ここでは、経営者が陥りがちな誤解や実際に起こり得る失敗事例を7つの注意点として整理します。制度の正しい理解と適切な活用にお役立てください。

注意点1:「免除」ではなく、あくまで条件付きの「納税猶予」と理解する

事業承継税制は、あくまで納税の「猶予」から始まる制度であり、適用すれば直ちに税額がゼロになるわけではありません。様々な条件を満たし続けて初めて「免除」の可能性が生まれます。「適用すれば税金を払わなくていい」と安易に考えていると、後で要件を満たせなくなった場合に、猶予されていた税額と利子税の納付に慌てることになります。

注意点2:特例措置の生命線である「特例承継計画」の提出を忘れない

メリットの大きい特例措置を利用するには、事前の「特例承継計画」の提出が必須です。これを失念したり、内容の不備で認定が下りなかったりすると、特例措置は受けられません。「そのうち出そう」と先延ばしにしているうちに提出期限(2026年3月31日)を過ぎてしまった、という失敗例もあるため、計画的な準備が不可欠です。

注意点3:適用後の継続的な報告義務を怠り、猶予を取り消される

納税猶予が始まった後も、5年間の毎年報告や、それ以降の3年ごとの継続届出を怠ると、猶予が取り消されることがあります。例えば、多忙で年次報告書の提出をうっかり忘れてしまい、都道府県からの指摘で猶予打ち切りが発覚する、といった事例が報告されています。煩雑な手続きですが、確実に履行する管理体制が必要です。

注意点4:安易な人員削減で雇用維持要件(一般措置)を満たせなくなる

特例措置では雇用維持要件が実質的に緩和されていますが、一般措置で適用を受けている場合、承継後5年間の平均で従業員数を80%以上維持することが必須です。業績悪化などを理由に人員削減を行った結果、この要件を満たせなくなり、猶予が取り消しになったという失敗談もあります。一般措置を利用する際は、中長期的な雇用計画も重要になります。

注意点5:後継者が代表取締役を退任し、猶予が打ち切りになる

承継後、たとえ一時的であっても後継者が代表取締役を退任すると、原則として納税猶予は打ち切りとなります。事業承継税制は「後継者が経営を続ける」ことが大前提の制度です。後継者自身の意思や健康上の理由など、やむを得ない事情で退任するケースもあるため、承継前に後継者の覚悟やサポート体制を十分に固めておくことが重要です。

注意点6:承継後の増資や株式譲渡で、持株比率の要件外になる

納税猶予中は、後継者が筆頭株主であり続けることや、後継者とその親族で議決権の過半数を維持することが求められます。承継後に外部から出資を受け入れるための増資や、親族への安易な株式譲渡を行った結果、これらの持株比率の要件を満たさなくなり、猶予が取り消される事例もあるため、資本政策には細心の注意が必要です。

注意点7:事業継続が前提の制度のため、将来の廃業や売却で裏目に出る

この制度は、あくまで事業を「継続」する意思と計画がある場合に最大の効果を発揮します。もし承継後、早期に事業が立ち行かなくなり廃業したり、M&Aで売却したりすると、結局は猶予されていた税金を納付することになります。その場合、最初からM&Aなど別の選択肢を検討した方が有利だった、というケースも起こり得ます。

生前贈与と相続、どちらで承継すべき?自社株対策のポイント

事業承継税制は、生前贈与と相続のどちらのケースでも利用できます。しかし、どちらを選ぶかによって、承継の進め方や税制上のメリット、注意すべき点が大きく異なります。それぞれの特徴を理解し、自社にとって最適な方法を選択することが重要です。

生前贈与で承継するケース:計画的に経営を譲り、株価上昇前に対策できる

先代経営者が存命のうちに、計画的に事業を引き継ぐのが生前贈与です。経営のバトンタッチをスムーズに進められるだけでなく、将来の株価上昇を見越した対策が取れる点や、税制上の優遇が大きい点が魅力です。ただし、先代の引退後の生活設計も併せて考える必要があります。

ポイント1:計画的な経営移譲が可能

先代経営者の存命中に株式を贈与するため、後継者への経営指導などを時間をかけて行うことができ、スムーズな世代交代を実現できます。

ポイント2:贈与税100%猶予という税制上のメリット

贈与税については、一般措置・特例措置ともに100%の納税猶予が認められます。一般措置の場合、相続税の猶予は80%に留まるため、生前贈与の方が税負担を完全に先送りできるメリットがあります。

ポイント3:株価が低いタイミングでの承継が可能

会社の業績が良く、将来的に株価の上昇が見込まれる場合、株価が低いうちに贈与を実行することで、承継コストを抑えられる可能性があります。

注意点:先代の引退後の生活設計への配慮

株式の大半を後継者に渡すことになるため、先代経営者の配当収入が減少する可能性があります。引退後の生活設計も事前に考慮しておくことが大切です。

補足:「相続時精算課税制度」との関係

生前贈与では「相続時精算課税制度」も選択肢になりますが、事業承継税制の納税猶予とは仕組みが異なります。事業承継税制は、税額そのものを将来的に免除し得る、より強力な制度です。そのため、事業承継税制を適用する株式については、通常、相続時精算課税制度を併用するメリットはありません。

相続で承継するケース:突然の相続でも一般措置は適用可能

先代経営者の逝去に伴って事業を引き継ぐのが相続です。生前の準備がなくても、要件さえ満たせば一般措置の適用は可能です。しかし、突然発生するため、株式を誰が相続するかという遺産分割の問題や、他の相続人との遺留分トラブルに発展しないよう、事前の対策が極めて重要になります。

ポイント1:事前の計画がなくても一般措置なら適用可能

もし特例承継計画を提出しないまま相続が発生しても、会社や後継者が要件を満たしていれば、一般措置による納税猶予(相続税の80%)を申請できます。

ポイント2:一般措置では納税資金の準備が一部必要

一般措置の場合、相続税額の20%は承継時に納付する必要があります。例えば相続税額が1億円なら、2,000万円の納税資金が別途必要になる計算です。

ポイント3:相続人間の合意形成が必須

制度を利用するには、後継者が株式を集中して相続することが大前提です。相続開始後10ヶ月の申告期限内に、他の相続人との間で遺産分割協議をまとめる必要があります。

遺産分割協議については以下記事で詳しく解説しています。

注意点:円満な承継の鍵は「遺産分割」と「遺留分対策」

相続で事業承継を行う場合、最大の課題は他の相続人との調整です。後継者が株式を確実に相続できるよう、遺言書を作成しておくことが有効です。また、他の相続人の「遺留分(最低限の遺産を受け取る権利)」を侵害しないよう配慮も必要です。経営承継円滑化法には、遺留分の計算から自社株を除外できる特例もあるため、専門家と相談し、事前に対策を講じておきましょう。

相続の遺留分については以下記事で詳しく解説しています。

事業承継税制の活用を相談するなら誰?

事業承継税制は手続きが複雑で、税務・法務・財務など多岐にわたる専門知識が必要です。どの専門家に何を相談すれば良いのかを理解し、自社に最適なパートナーを見つけることが成功の鍵となります。ここでは主な相談先とその役割、選び方のポイントを解説します。

相続の相談をするべき専門家の選び方については以下記事で詳しく解説しています。

1.税理士:相談のハブとなる税務の専門家

事業承継税制の利用において、税務申告や納税猶予計画の作成は税理士が中心的な役割を担います。特に、事業承継に詳しい税理士は、自社株評価の引き下げ対策や特例承継計画の策定支援など、制度を最大限に活用するための具体的なアドバイスが期待できます。まずは顧問税理士に相談し、必要に応じて専門性の高い税理士の紹介を受けるのが一般的です。

2.取引金融機関:会社の状況を熟知する経営のパートナー

長年の付き合いがあるメインバンクなどの金融機関も、重要な相談相手です。会社の財務状況や経営課題を深く理解しているため、資金調達の観点や後継者の経営能力評価など、現実的な視点からのアドバイスがもらえます。また、金融機関が持つ専門家ネットワークを通じて、税理士や弁護士などを紹介してもらえるケースも多くあります。

3.弁護士:相続トラブルを防ぐ法律の専門家

事業承継は、遺産分割や遺留分など、相続に関する法的な問題と密接に関わります。後継者に確実に株式を集中させるための遺言書の作成や、他の相続人とのトラブルを未然に防ぐための法的アドバイスは、弁護士の専門分野です。特に親族内に複数の相続人がいる場合は、早期の相談が円満な承継の鍵となります。

4.公的機関:中立な立場で初回相談に応じる

「どこに相談すればいいか分からない」という場合、国が設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」が最初の窓口として有効です。中小企業の事業承継を支援する公的な専門機関であり、中立な立場で無料で相談に応じてくれます。自社の状況を整理し、どのような専門家が必要かを判断するためのアドバイスを受けることができます。

失敗しない相談相手の選び方と比較ポイント

事業承継税制は非常に複雑な制度のため、相談相手の専門性によって結果が大きく変わる可能性があります。複数の専門家と面談し、自社に最も合うパートナーを見つけることが重要です。

ポイント1:事業承継税制に関する実績や経験は豊富か

全ての税理士や弁護士が事業承継税制に精通しているわけではありません。過去に手がけた案件数や、最新の税制改正に関する知識などを具体的に質問し、その分野における実績を確認しましょう。

ポイント2:自社の業種や事業規模への理解があるか

会社の価値評価や事業計画の策定には、その業種特有の事情を理解していることが不可欠です。自社と同じような業種や規模の会社の支援実績があるかどうかも、重要な判断基準となります。

ポイント3:複数の専門家と連携できる体制があるか

事業承継は、税務、法務、財務など多角的な視点が必要です。一人の専門家が全てをカバーするのではなく、弁護士や金融機関など、他の専門家とスムーズに連携できるネットワークを持っているかを確認しましょう。

この記事のまとめ

事業承継税制は、贈与税や相続税の納税を猶予し、一定の条件を満たすことで最終的に免除され得る制度です。特例措置を活用するには、2026年3月31日までの計画提出と2027年12月31日までの承継完了という期限を踏まえ、持株要件や代表者要件を満たす計画を早めに立てることが不可欠です。担保や年次報告といった運用上の義務もあるため、専門家と相談しながら最適な承継方法を検討し、今から逆算して具体的な準備を始めることが重要です。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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事業承継税制

事業承継税制とは、中小企業の経営者が後継者に自社株式などの事業用資産を引き継ぐ際にかかる相続税や贈与税の負担を、大幅に軽減するための特例制度です。通常、自社株式の相続や贈与には高額な課税が伴いますが、本制度を活用すれば、一定の条件下でこれらの税金の納税が猶予され、最終的に免除される可能性もあります。 この制度の目的は、経営者の高齢化が進む中で、後継者への円滑な事業承継を支援し、中小企業の継続的な成長や地域経済の安定を確保することにあります。特に、長年にわたり地域や雇用を支えてきた企業にとっては、承継時の税負担が事業継続の大きな壁となるケースもあり、本制度はその打開策として注目されています。 制度の適用には、事業承継計画の策定や、都道府県への認定申請など、事前の準備と継続的な要件の遵守が求められます。適用条件も多岐にわたるため、税理士や行政書士などの専門家の支援を受けながら、計画的に取り組むことが重要です。 資産運用の一環として事業を所有している方や、将来的に経営権を譲渡する予定がある方にとって、本制度は事業と資産の両面を守るための有力な選択肢といえるでしょう。

納税猶予

納税猶予とは、一定の条件を満たすことで、すぐに税金を支払わずに済み、将来にわたって支払いを延期できる制度のことを指します。たとえば、相続税や贈与税において、事業を継続する後継者が自社株式などを引き継いだ場合、その税金の支払いを一定期間猶予してもらえる制度があります。これは、事業の資金繰りを圧迫しないように配慮した措置であり、猶予中は原則として利子税がかかりますが、条件を守り続ければ最終的に免除されることもあります。納税猶予を受けるには、事前の申請や継続的な報告義務などがあり、要件を満たさないと猶予が打ち切られて一括納税が求められることもあるため、制度の正確な理解と計画的な対応が重要です。資産承継や中小企業の経営において、事業の継続性を保つ手段として活用されています。

法人版事業承継税制

法人版事業承継税制とは、中小企業の経営者が、自社株式を後継者に引き継ぐ際に発生する贈与税や相続税の負担を軽くするための特例制度です。一定の条件を満たすことで、贈与や相続によって引き継がれた自社株にかかる税金が全額猶予され、事業の円滑な承継を支援する仕組みとなっています。 たとえば、経営者が引退して子どもや役員などに株式を渡すとき、そのままだと多額の税金が発生しますが、この制度を活用すれば、事業を継続する限り税金の支払いを猶予してもらえます。制度は申請制で、都道府県知事の認定を受ける必要があり、事業継続や雇用維持などの条件も課せられています。企業の後継者問題を解決し、地域経済の活性化や雇用の安定にもつながる重要な制度です。

個人版事業承継税制

個人版事業承継税制とは、個人事業を営む方が、事業を次の世代へ引き継ぐ際に発生する贈与税や相続税の負担を軽くするための特例制度です。この制度を利用することで、親から子どもなどへの事業用資産の承継にかかる税金が一時的に猶予されることになります。 たとえば、個人で商店や農業、サービス業を営んでいる方が、事業を家族に引き継ぐときに、そのままだと多額の税金がかかる可能性がありますが、この制度を活用すれば条件を満たす限り、その税金の支払いを猶予してもらえます。 法人向けの「事業承継税制」と似ていますが、こちらは法人ではなく個人事業主を対象としています。事業の継続を促進し、地域経済の安定や雇用の維持にも貢献することが期待されています。

特例承継計画

特例承継計画とは、法人版事業承継税制における「特例措置」を利用するために、中小企業が事前に作成・提出する必要がある計画書のことです。この計画には、後継者が誰であるか、どのような方法で事業を引き継ぐのか、承継の時期をどう見込んでいるのかといった内容を明記します。 提出先は都道府県であり、知事の認定を受けることが特例措置適用の前提条件となります。つまり、単に自社株式を後継者に譲渡するだけでは税制優遇は受けられず、あらかじめ計画を立て、正式に認定を得ることが必要です。 また、提出期限や記載内容に不備があると、せっかくの税制優遇が受けられない可能性があります。そのため、専門家の助言を得ながら慎重に準備することが重要です。特例承継計画は、単なる事務手続きにとどまらず、経営の将来像を明確にし、円滑で持続的な事業承継を実現するための土台となる書類です。

経営承継円滑化法

経営承継円滑化法とは、中小企業の経営者が引退や死亡によって事業を後継者に引き継ぐ際に、その手続きを円滑に進められるよう支援することを目的とした法律です。正式には「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」といいます。経営者が亡くなった場合には、相続税や贈与税の負担が重く、事業の継続が難しくなることがあります。そこでこの法律では、相続税の納税猶予制度や、事業に必要な株式や資産をスムーズに後継者に渡すための手続きを整備しています。また、遺留分に関する民法の特例を適用することで、親族間の相続トラブルを回避しやすくする効果もあります。資産運用と同様に、企業の資産や経営権のスムーズな引き継ぎを実現するために欠かせない法律です。

資産管理会社

資産管理会社とは、不動産や株式などの資産を法人の名義で保有・管理し、それらから得られる賃料収入や配当金などによって利益を上げることを目的とした会社のことです。もともとは個人が持っていた資産を法人に移す、いわゆる「資産の法人化」によって設立されるケースが多く見られます。 このように資産を法人として持つことで、個人で所有していた場合と比べて税金面でのメリットを得られることがあります。たとえば、法人の方が税率が低くなることがあるため、収益が大きい場合にはトータルの税負担が軽くなる可能性があります。また、家族を役員にして給与を支払うことで所得を分散し、所得税を抑えるといった節税対策も可能になります。 さらに、資産管理会社を通じて不動産などの資産を保有することで、相続や事業承継の計画を立てやすくなるという側面もあります。個人名義で資産を持つよりも、法人として一括管理するほうが、将来的な引き継ぎや財産の分配を円滑に行いやすくなるのです。 ただし、税務メリットだけを目的に設立すると、かえって不利になる場合や、運営コストがかさむこともあります。そのため、資産管理会社をつくる際は、収益の規模や資産の種類、将来の相続までを見据えて慎重に検討することが大切です。

継続届出書

継続届出書とは、法人版事業承継税制において納税猶予を受けた後継者が、制度の要件を満たし続けていることを毎年税務署に報告するための書類です。提出内容を通じて、税務当局は事業が継続しているか、後継者が経営を担っているか、自社株式を保有し続けているかなどを確認します。 もし提出を怠ったり、虚偽の記載があった場合には、納税猶予が取り消され、猶予されていた相続税・贈与税を一括で納めなければならなくなる可能性があります。そのため、継続届出書は制度を利用し続けるための「確認書」の役割を果たし、期限内に正確に提出することが極めて重要です。 後継者にとっては、制度を守るための義務であると同時に、事業承継を安定的に進めるうえで欠かせない手続きといえます。

利子税

利子税とは、預貯金や債券などから得られる利子収入に対して課される税金のことです。日本では、銀行の普通預金や定期預金、国債、社債などから受け取る利子について、原則として20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が源泉徴収される仕組みになっています。 つまり、利子が支払われる段階で自動的に税金が差し引かれて手取り額として振り込まれます。資産運用においては、利子収入が得られる商品を選ぶ際に、この税金の存在を考慮しないと、実質的な収益が目減りする可能性があります。そのため、非課税制度(例:NISA)などを活用して利子税の負担を抑える戦略も重要となります。

遺留分

遺留分とは、被相続人が遺言などによって自由に処分できる財産のうち、一定の相続人に保障される最低限の取り分を指す。日本の民法では、配偶者や子、直系尊属(親)などの法定相続人に対して遺留分が認められており、兄弟姉妹には認められていない。遺留分が侵害された場合、相続人は「遺留分侵害額請求」によって不足分の金銭的補填を請求できる。これは相続財産の公平な分配を確保し、特定の相続人が極端に不利にならないようにするための制度である。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ財産を贈与する場合に利用できる、特別な贈与税の制度です。この制度を使うと、贈与を受けた年に2,500万円までの金額については贈与税がかからず、それを超えた部分にも一律20%の税率が適用されます。そして、その後贈与者が亡くなったときに、過去の贈与分をすべてまとめて「相続財産」として扱い、最終的に相続税として精算します。 つまり、この制度は「贈与税を一時的に軽くし、あとで相続税の段階でまとめて精算する」という仕組みになっています。将来の相続を見据えて早めに資産を移転したい場合や、大きな金額を一括で贈与したい場合に活用されることが多いです。 ただし、一度この制度を選ぶと、同じ贈与者からの贈与については暦年課税(通常の贈与税制度)には戻せないという制限があるため、利用には慎重な判断が必要です。資産運用や相続対策を計画するうえで、制度の特徴とリスクをよく理解しておくことが大切です。

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