不動産投資は節税にならないと言われましたが本当ですか?
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2025/07/18 08:19
男性
30代
不動産投資は税金対策になるという話をよく耳にしていましたが、一方で「実際にはあまり節税にならない」とも聞きました。投資用マンションを購入したのに逆に税負担が増えたという話もあるようです。本当のところ、不動産投資に節税効果は期待できないのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
不動産投資による節税効果は、短期的・限定的なものであり、過度に期待すべきではありません。たしかに購入初期は、建物の減価償却費やローン利息などを経費として計上でき、所得税や住民税を一時的に抑えることが可能です。しかし、この効果は主に課税の「繰り延べ」に過ぎず、減価償却が進むにつれて経費計上額が減少し、やがて課税所得が増加します。
さらに、売却時には減価償却を反映した簿価で譲渡所得が計算されるため、「償却戻し」として売却益が増加し、長期譲渡所得として課税されることになります。これは、保有期間や取得価額・売却価額によっては、節税効果が帳消し、あるいは逆転するケースもあることを意味します。
また、近年の税制改正によって、節税スキームとして使われてきた手法は厳しく制限されています。特に2020年以降、国外中古不動産を用いた損益通算が認められなくなり、さらに居住用不動産の消費税還付スキームにも大幅な規制が加えられました。これにより、従来一般的だった「海外物件での大幅な節税」は実質的に封じられています。
実務面でも、固定資産税、修繕費、管理費、空室による賃料減少などのコストが想定以上にかさみ、節税分を上回るキャッシュアウトにつながるケースは珍しくありません。加えて、賃貸規模や事業性の要件を満たさないと、青色申告や損益通算が制限される場合もあります。
一方で、不動産は相続税評価額が時価よりも低く出やすいという特徴があり、借入を活用すれば債務控除による相続税の圧縮も可能です。このため、相続・贈与の文脈では、依然として一定の節税効果を持ちうる資産として位置づけられます。
節税だけを目的に不動産投資を選ぶことはリスクが高く、税制変更の影響をもろに受ける可能性もあります。したがって、物件の収益性、キャッシュフローの安定性、将来的な資産価値や流動性といった本質的な収支を重視し、投資として成立するかを慎重に見極めることが重要です。法人を活用したスキームや長期の相続対策まで視野に入れたうえで、税理士など専門家の助言を得ながら、総合的に判断することが賢明です。
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関連する専門用語
減価償却
減価償却とは、固定資産の購入価格をその使用可能年数にわたって経済的に分配する会計処理の方法です。企業が機械や建物、車両などの固定資産を購入した際に、これらの資産は使用することで徐々に価値を失います。減価償却を行うことで、資産のコストをその寿命にわたって費用として計上し、その結果として企業の財務報告が実態に即したものになることを目指します。 減価償却には様々な方法がありますが、一般的なものに直線法、定率法、数字和法があります。直線法はもっとも単純で、資産の耐用年数にわたって均等に費用を計上します。定率法は残存価値を基に毎年一定の割合で費用を計上し、数字和法では耐用年数の初年度に最も多くの費用を計上し、年数が経過するにつれてその額を減らしていきます。 減価償却は税務上も重要で、企業は減価償却費を経費として計上することで課税所得を減少させることができます。このため、適切な減価償却方法の選択と計算は、企業の税負担の管理にも直接関連しています。
所得税
所得税は、個人が1年間に得た所得に対して課される税金です。給与所得や事業所得、不動産所得、投資による利益などが対象となります。日本では累進課税制度が採用されており、所得が高いほど税率が上がります。給与所得者は源泉徴収により毎月の給与から所得税が差し引かれ、年末調整や確定申告で精算されます。控除制度もあり、基礎控除や扶養控除、医療費控除などを活用することで課税所得を減らし、税負担を軽減できます。
固定資産税
固定資産税は、土地や建物、償却資産(事業用設備など)を所有している人が、その資産の所在する市区町村に納める地方税です。この税金は、毎年1月1日時点の固定資産の所有者に課されます。課税額は、資産の「課税標準額」に基づき、標準税率1.4%を乗じて算出されますが、市区町村によっては条例で異なる場合もあります。また、土地や住宅には負担軽減措置が設けられることがあり、課税額が抑えられるケースもあります。固定資産税は、その地域のインフラや公共サービスの維持・運営を支える重要な財源となっており、納税通知書は通常、毎年4~6月頃に送付されます。不動産を所有する際には、この税金を考慮して資産計画を立てることが重要です。
キャッシュフロー
お金の流れを表す言葉で、一定期間における「お金の収入」と「支出」を指します。投資や経済活動では特に重要な概念で、現金がどれだけ増えたか、または減ったかを把握するために使われます。キャッシュフローは大きく3つに分かれます。 1つ目は本業による収益や費用を示す「営業キャッシュフロー」、2つ目は資産の購入や売却に関連する「投資キャッシュフロー」、3つ目は借入金や配当などの「財務キャッシュフロー」です。 キャッシュフローがプラスであれば手元にお金が増えている状態、マイナスであれば減っている状態を示します。これを理解することで、資産の健全性や投資先の実態を見極めることができ、初心者でも資金管理や投資判断の基礎として役立てられます。