日本の個人投資家がVYMに投資する際の注意点は何ですか?
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2025/06/26 11:59
女性
40代
最近「VYM」という米国の高配当ETFに興味を持ちましたが、海外の金融商品を買うのは初めてです。円ではなくドルで投資する場合、為替や税金などで損をすることがあると聞きました。初心者として、こうした商品を購入するときにどんな点に気をつければよいのでしょうか?具体的なリスクや対策があれば教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
VYMは米国の高配当株に投資するETFで、ドル建てで運用されるため、株価や配当だけでなく「為替の動き」や「税金」が実際のリターンに大きく影響します。初心者が注意すべきポイントは、次の4つです。
①為替変動による影響 VYMは米ドル建てのため、円高になるとたとえ株価が上がっても、円換算の評価額や分配金が目減りすることがあります。これを避けるには、一度にまとめて購入せず、買付時期を分散する「ドルコスト平均法」が有効です。また、将来の外貨支出(留学費用や旅行など)がある場合、それに合わせてドル建て資産を持つと為替変動のリスクを相殺しやすくなります。
②税金の仕組みと控除の活用 VYMからの配当金には、まず米国で10%の源泉徴収がかかります。日本の課税口座で保有している場合、その後さらに国内で20.315%の税金が課されますが、確定申告を通じて「外国税額控除」を行えば、米国側の課税分を一部取り戻すことが可能です。
一方、新NISAや旧NISA口座でVYMを保有している場合、日本国内では非課税になるものの、米国の源泉税は戻ってきません。このため、実際の受取利回りは見た目より0.3〜0.4%低くなる点に注意が必要です。
③為替コストと売買手数料 VYMを購入する際は、為替スプレッド(円⇄ドルの交換時に生じるコスト)や売買手数料(国内証券会社では約0.495%、上限22ドル程度)もかかります。また、配当を都度円に戻すたびに再び為替コストが発生します。できるだけコストを抑えるには、配当金をドルのまま再投資するか、ある程度まとまった金額になってから円に換えるとよいでしょう。
④米国資産に対する相続税の注意点 もう1点見落とされがちなのが「米国遺産税」です。たとえばVYMなどを含む米国資産の評価額が60万ドルを超えた状態で相続が発生した場合、米国側で課税される可能性があります。すぐに該当するわけではありませんが、資産形成が進んだ後のリスクとして頭に入れておくとよいでしょう。
これらのリスクを踏まえたうえで、為替や税の影響を抑えたい場合は、円建ての高配当ETFや為替ヘッジ付きの投資信託を組み合わせる方法もあります。また、配当金を自動で再投資する仕組みを利用すれば、税コストの効率化や複利効果の向上も期待できます。
VYMは長期的なインカム収入と分散投資を両立できる魅力的な商品ですが、周辺コストや税務まで含めた総合的な設計が、失敗を防ぐためのカギになります。
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為替リスク
為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。
米国源泉税
米国源泉税とは、米国株式や米国籍の投資信託から受け取る配当金・利息などに対して、支払時点で米国があらかじめ差し引く税金のことです。日本の個人投資家が米国株の配当を受け取る場合、通常は日米租税条約に基づき10%が自動的に源泉徴収されます(条約がなければ30%)。 この源泉税は日本で確定申告を行う際に「外国税額控除」を利用すれば、一定上限まで日本の所得税から差し引くことができ、二重課税を調整できます。なお、税率軽減を受けるには証券会社を通じて「W-8BEN」という書類を提出し、受取人が日本の居住者であることを米国側に登録しておく必要があります。
外国税額控除
外国税額控除とは、日本に住んでいる個人や法人が、海外で所得を得てその国で税金を支払った場合に、同じ所得に対して日本でも課税される「二重課税」を避けるために、日本で支払う税金からその分を差し引くことができる制度のことをいいます。たとえば、外国株式の配当金を受け取った際に、外国で源泉徴収された税金がある場合、その金額を一定の計算に基づいて日本の所得税や法人税から控除することができます。この制度を利用することで、国際的な投資やビジネスを行う際の税負担を適正に調整できるようになります。ただし、控除できる金額には上限があり、正確な申告と証明書類の提出が必要です。資産運用や海外取引を行ううえで、知っておきたい重要な税務上の仕組みです。
為替スプレッド
為替スプレッドとは、外貨を売るときと買うときに適用される為替レートの差額のことをいいます。たとえば、ある通貨を買うときのレート(TTS)と売るときのレート(TTB)には差があり、この差がスプレッドです。銀行や証券会社などの金融機関は、このスプレッドの中に利益やコストを含めています。 投資家にとっては、スプレッドが広いほど取引コストが高くなるため、外貨預金や外国為替取引(FX)などを行う際には注意が必要です。特に頻繁に取引をする場合や、短期での為替差益を狙う取引では、このスプレッドが実質的な負担となることがあります。為替スプレッドは見えにくいコストのひとつですが、運用の成果に影響するため、取引前にレートの内訳を確認することが大切です。
ドルコスト平均法
ドルコスト平均法とは、一定の金額を定期的に投資する方法です。価格が高いときは少なく、価格が低いときは多く買えるため、購入価格が平均化され、リスクを分散できます。市場のタイミングを読む必要がないため、初心者に最適な方法とされています。長期投資で効果を発揮し、特に投資信託やETFで利用されることが多い手法です。
米国遺産税
米国遺産税とは、アメリカに所在する資産を持っている人が亡くなった際に、その資産に対して課される税金で、アメリカ政府が徴収します。この税金は、被相続人の国籍にかかわらず、アメリカ国内にある不動産や株式などの資産に対して課税されるのが特徴です。 特に日本人が米国株を保有していた場合や、アメリカに不動産を所有していた場合など、一定の評価額を超えると課税対象となります。ただし、日米租税条約によって、日本人が受ける影響は一部緩和されており、相続税の二重課税を防ぐ仕組みも整っています。