「iDeCoは節税にならない」って本当ですか?
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2025/05/29 16:53
女性
40代
iDeCoを使えば節税できるとよく聞きますが、「iDeCoは節税にならない」という意見もあり、本当にお得なのか不安に感じています。特に、将来の受取時に元本を含めて課税されると聞き、損をするケースもあるのでは?と気になっています。節税どころか税金の先送りにすぎないのでは?という疑問もあるため、受取時の控除制度も含めて、実際にどれほど節税効果があるのかを教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
iDeCoでは、将来の受取時に元本+運用益の合計額に対して課税されます。つまり、掛金を自分で拠出した部分(元本)も課税対象に含まれますが、ここが「損」になるとは限りません。なぜなら、受取時には退職所得控除(一時金の場合)や公的年金等控除(年金形式の場合)という強力な非課税枠が適用されるからです。
たとえば、30年間iDeCoに加入し800万円を一括で受け取る場合、退職所得控除は1,500万円程度あり、課税対象はゼロとなるケースもあります。また、年金形式なら65歳以上で年120万円までの受取に対して非課税枠があります。このように、制度上の控除を活用すれば、課税対象であっても実際の税負担は軽減される仕組みです。
一方、積立時には掛金全額が所得控除となり、毎年の所得税・住民税が減税されます。さらに、運用益もすべて非課税です。こうした積立時の控除+運用益非課税の恩恵が、受取時の課税を上回ることが多く、トータルでは高い節税効果が期待できる制度です。
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運用益とは、資産運用によって得られる利益のことを指します。主に株式や債券、不動産、投資信託、仮想通貨などの投資商品から得られる収益が含まれます。運用益には、売却益(キャピタルゲイン)と配当・利息収入(インカムゲイン)の2種類があります。市場の変動や経済状況により変動するため、安定した運用益を得るには分散投資やリスク管理が重要です。企業や個人投資家にとって、資産を増やすための重要な手段の一つとなっています。
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公的年金等控除とは、年金を受け取っている人の所得税や住民税を計算する際に、年金収入から一定額を差し引ける控除制度です。これにより課税対象となる金額が減り、税負担を軽減できます。 対象となるのは、国民年金・厚生年金・共済年金などの「公的年金」に限られます。これらは所得税法上の「公的年金等」に分類され、控除の対象となります。 一方で、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC、個人年金保険などは、たとえ年金形式で受け取ったとしても税法上は「公的年金等」に該当せず、公的年金等控除の対象外です。これらは「雑所得(その他)」として課税されます。 控除額は受給者の年齢と年金収入の額に応じて異なり、特に65歳以上の高齢者には手厚い控除が設けられています。 | 年齢 | 公的年金等の収入額 | 控除額 | | --- | --- | --- | | 65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 | | | 130万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 37.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 78.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | | 65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 | | | 330万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 27.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 68.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | たとえば、65歳以上で年金収入が250万円であれば、110万円の控除が適用され、課税対象となる所得は140万円に圧縮されます。
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元本とは、投資や預金を始めるときに最初に出すお金、つまり「もともとのお金」のことを指します。たとえば、投資信託に10万円を入れた場合、その10万円が元本になります。 運用によって利益が出れば、元本に運用益が加わって資産は増えますが、損失が出れば元本を下回る「元本割れ」の状態になることもあります。 元本が保証されている商品(例:定期預金、個人向け国債など)もありますが、多くの投資商品では元本保証がないため、どれくらいのリスクを取るかを理解しておくことが大切です。
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課税繰延とは、本来なら利益が出た時点で支払うべき税金の負担を、制度や仕組みによって将来に先送りできるしくみです。代表例には、確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)や個人年金保険、不動産の減価償却、事業用資産の買換え特例などがあり、運用中の利益に税金がかからないことで、資産を効率よく成長させることができます。 また、株式や投資信託の含み益についても、売却するまでは課税されないため、制度によらず**結果的に繰延効果が生じるケース**もあります。ただしこれらは税制上の特例ではなく、一般的な課税のタイミングに基づくものです。 課税繰延を活用することで、複利効果を最大限に引き出しつつ、将来の税負担をコントロールすることが可能になります。ただし、いずれ課税される前提で、出口戦略を意識した計画的な運用が求められます。