アクティブ運用の投資信託はパッシブ運用と比べて、どのくらい高いリターンを期待できますか?
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2025/06/14 11:25
男性
40代
ファンドマネージャーが運用を行うアクティブ運用のほうが、市場にあわせたパッシブ運用のファンドよりも利回りが大きそうな気がします。アクティブファンドは信託報酬が高いと聞きますが、それでも指数に連動するインデックスファンドより高いリターンを期待して良いのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
アクティブ運用は、市場平均を上回る「超過リターン(アルファ)」を目指しますが、実際にそれを達成できるファンドはごく一部に限られます。SPIVA®日本スコアカード(2023年末)によれば、ベンチマークを上回ったアクティブファンドの割合は、日本の大型株で約15%、米国では約13%にとどまります。
主な要因は、①信託報酬などのコスト負担、②頻繁な売買による取引コストや課税、③一貫して優良銘柄を選び続ける難しさ、の3点です。短期的には好成績を収めるファンドもありますが、長期になるほど市場平均を下回る傾向が強くなります。
そのため、アクティブファンドには「常に高いリターンが得られる」と過信せず、選定時には次の点を丁寧に確認しましょう。
- 過去5~10年以上のリスク調整後リターン
- 運用方針や哲学の一貫性
- 運用チームの継続性と費用構造
実務的には、資産運用の中心(コア)には低コストのインデックスファンドを据え、アクティブファンドはサテライト(補完的役割)として余裕資金で取り入れる構成が現実的です。特に、高コンヴィクション型(銘柄数を絞り込んで運用者が強く信頼する企業に集中投資するタイプ)や成長テーマに絞ったファンドを慎重に選ぶことで、リスクとリターンのバランスを保ちやすくなります。
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パッシブ運用
パッシブ運用とは、投資信託を選ぶ際の運用手法の一つ(対義語:アクティブ運用)。比較のために用いる指標であるベンチマーク(日経平均やNASDAQなど)と同様の動きを目標とする運用手法で、組み入れ銘柄数は多くなる傾向がある。パッシブ運用はアクティブ運用に比べて販売手数料や信託報酬などのコストは安くて済むが、リスクが分散される分、リターンも小さくなるという特徴がある。
アクティブ運用
アクティブ運用は、日経平均やNASDAQなどの市場指標(ベンチマーク)を上回る運用成績を目指す投資手法です。この手法では、ファンドマネージャーが特定の銘柄やセクターを積極的に選別して投資を行います。 運用手法には主に2つのアプローチがあります。トップダウンアプローチは市場全体を俯瞰して投資環境を予測し、そこから投資対象を決定します。一方、ボトムアップアプローチは、個別企業への調査や訪問を通じて投資対象を選定していきます。 アクティブ運用は、パッシブ運用と比べて高いリターンが期待できる反面、運用コストが高くなり、リスクも増大する傾向があります。また、運用成績はファンドマネージャーの運用能力に大きく依存するという特徴があります。
インデックスファンド
インデックスファンドとは、特定の株価指数(インデックス)と同じ動きを目指して運用される投資信託のことです。たとえば「日経平均株価」や「TOPIX(東証株価指数)」などの市場全体の動きを示す指数に連動するように設計されています。この仕組みにより、個別の銘柄を選ぶ手間がなく、市場全体に分散投資ができるのが特徴です。また、運用の手間が少ないため、手数料が比較的安いことも魅力の一つです。投資初心者にとっては、安定した長期運用の第一歩として選びやすいファンドの一つです。
ベンチマーク
ベンチマークとは、特定の目標や標準として用いる指標のことを指し、ビジネス、金融、技術など様々な分野で利用されます。この指標を用いて、パフォーマンスの測定や戦略の効果を評価し、改善点を見つけることができます。特に投資分野においては、ベンチマークはポートフォリオのパフォーマンスを評価するための基準点として活用され、特定の市場指数や同業他社の成績などが用いられます。 たとえば、投資ファンドの管理者は、自身のファンドのパフォーマンスをS&P 500やナスダックなどの市場指数と比較して評価することが多いです。この比較によって、ファンドの戦略が市場全体と比べてどの程度効果的であるか、またはリスクが適切に管理されているかを判断します。 ベンチマークは、透明性と目標設定を促進し、継続的な改善を目指すための重要なツールです。しかし、ベンチマークを選定する際には、その適切性や関連性を慎重に評価する必要があります。適切でないベンチマークを選ぶと、誤った方向性を示すことがあり、結果的にパフォーマンスの誤解を招くことになるためです。したがって、目標とする成果と密接に関連する、かつ実現可能なベンチマークを設定することが極めて重要です。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。
α(アルファ)
α(アルファ)とは、投資において期待収益率と実際の収益率の差を示す指標で、運用成果が市場平均(ベンチマーク)をどれだけ上回ったかを測るものです。具体的には、CAPM(資本資産評価モデル)に基づき、以下のように計算されます。  αの値がプラスであれば、市場全体の動きに対して超過リターンを得たことを意味し、逆にマイナスであれば、市場平均を下回るパフォーマンスだったことを示します。市場平均(ベンチマーク)には、米国株式市場のS&P500や、日本市場のTOPIXなどが用いられます。 αは、ファンドマネージャーやアクティブ運用の投資戦略がどれだけ市場を上回る成果を出しているかを評価する際に使われます。高いαを持つファンドは、単なる市場の上昇ではなく、独自の運用戦略によって優れたリターンを生み出していると考えられます。ただし、αが高いからといって常に良い投資先とは限りません。短期間で高いリスクを取ることでαが生まれているケースもあり、リスク調整後のリターン(シャープレシオやインフォメーションレシオ)と合わせて評価することが重要です。 また、αは主にアクティブ運用の評価指標として使われ、インデックスファンドなどのパッシブ運用ではαは基本的にゼロに近くなります。そのため、アクティブ運用を選択する際には、αの継続性や一貫性にも注目し、過去の高いαが将来のリターンを保証するものではない点に注意が必要です。