加給年金の手続きはいつ行えばいいのでしょうか?
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2025/08/12 10:49
男性
30代
公的年金を受給する際に加給年金という制度があると知りました。配偶者がいる場合などに受け取れると聞きましたが、申請が必要とのことです。具体的にいつ、どのような状況で手続きを行えばよいのでしょうか?また、手続きの漏れを防ぐための注意点があれば教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
加給年金とは、老齢厚生年金(特別支給のものを含む)を受給する方が、生計を維持している65歳未満の配偶者や一定の年齢以下の子どもを扶養している場合に、年金に上乗せして受け取れる制度です。会社員などとして厚生年金に20年以上加入していた人が対象となり、扶養対象者がいると一定額(配偶者:年間約39万円程度)が加算されます。
この加給年金の手続きは、基本的に老齢厚生年金の受給を請求する際に同時に行うのがベストです。具体的には、65歳の誕生日の3か月前から受け付けが始まる裁定請求のタイミングで、加給年金の対象となる配偶者や子の情報を請求書に記入し、あわせて戸籍謄本や所得証明などの必要書類を添付して提出します。ここで手続きを行えば、年金支給開始時点からスムーズに加算を受けることができます。
一方、年金の受給開始後に加給年金の要件を満たした場合(たとえば新たに結婚した場合や、子どもが生まれた場合など)は、「加給年金額加算開始事由該当届」という書類を提出することで、加算を受けられます。このようなケースでは、要件を満たした日の翌月から支給対象になりますが、手続きが遅れた場合、さかのぼって支給されるのは最大で5年間です。それより前の分は時効により失われてしまうので注意が必要です。
加給年金を受け取るために提出が求められる主な書類には、戸籍謄本、住民票、配偶者や子の所得証明、年金証書や基礎年金番号が確認できる書類などがあります。また、マイナンバー確認書類や本人確認書類も必要です。これらをもれなく揃えておくことが重要です。
手続きの流れとしては、65歳の誕生月の3か月前を目安に年金事務所から届く書類をもとに、必要事項を記入して必要書類とともに提出します。審査が終わると、誕生月の翌々月の15日に最初の年金と一緒に振り込まれます。なお、裁定請求を忘れずに行うことで、加給年金の取りこぼしを防ぐことができます。
なお、加給年金は永久に続くものではなく、配偶者が65歳になった場合などには打ち切られ、配偶者が自身の老齢基礎年金に「振替加算」という形で切り替わることになります。また、子どもが一定年齢を超えた場合や、収入要件を超えた場合、離婚・別居などで生計維持要件を満たさなくなった場合も、加給年金は終了となります。その際は、「加算額終了届」の提出が必要です。
実務上の注意点としては、まず初回の年金請求時に必ず家族構成や扶養状況を正確に申告することです。ここで記入漏れがあると、本来受け取れるはずだった加算が支給されなくなることがあります。また、結婚や退職、子の誕生といったライフイベントがあった場合には、その都度、年金事務所へ相談することをおすすめします。書類には有効期限(原則3か月以内)があるため、手続きの際は発行日にも注意が必要です。
時間や手続きに不安がある方は、社会保険労務士などの専門家に相談するのも一つの方法です。とくに夫婦共働き世帯で収入の兼ね合いが微妙なケースでは、プロの視点が有効です。
まとめると、加給年金の手続きは「年金請求と同時」が原則であり、それ以外のケースでは「加算要件を満たしたらできるだけ早く」が基本です。最大5年まではさかのぼって申請できますが、それを過ぎると受け取れなくなる可能性があります。加給年金は見落としやすい制度のひとつなので、制度の理解と早めの行動が大切です。
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