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親の土地に家を立てる場合の注意点を教えて下さい

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2025/07/31 08:17


男性

30代

question

親が所有する土地にマイホームを建てようと考えていますが、将来的な相続や贈与に関連して注意すべき点が多いと聞きました。どのような点に注意すればよいでしょうか?


回答

佐々木 辰

株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長

親御さん名義の土地に家を建てる際は、法律や税務、将来の相続を見据えて慎重に準備することが重要です。安易に建築を進めてしまうと、後々のトラブルや予期しない税負担につながる恐れがあります。ここでは注意すべきポイントを順を追ってご説明します。

まず、土地の利用形態を明確にすることが必要です。親御さんから土地を「無償で借りる」形(使用貸借)が一般的ですが、この場合は借地権の登記がされないため、第三者に権利を主張することができません。

また、将来親御さんが亡くなった際に、他の相続人から土地の返還を求められるリスクもあります。これに対して「地代を支払う賃貸借契約」とすれば、借地権を登記でき、法的保護が強まりますが、相続時に評価対象となることや、地代の支払い能力が融資の審査項目になる点には注意が必要です。土地をあらかじめ贈与する方法もありますが、高額な贈与税が発生する可能性があるため、相続時精算課税や家族信託を活用して対策を講じる必要があります。

次に、建物の建築資金の出所にも注意が必要です。親御さんが建築費を負担する場合、その建物は原則として親御さんの名義になります。その状態でお子さんが住むと「使用貸借」と見なされ、将来的に贈与税の問題が生じることもあります。名義をお子さんにする場合は、親子間で金銭消費貸借契約を締結し、返済計画を明記したうえで贈与ではなく貸付であることを示す必要があります。一方、お子さんが自分でローンを組んで建築費を支払う場合でも、親御さんの土地を担保にするには、土地に対する使用権や担保設定について親御さんの同意を得る必要があり、契約書や覚書を金融機関に提出するケースが多くあります。

相続や贈与への備えも重要です。たとえば、小規模宅地等の特例を活用すれば、相続税評価額を大幅に下げられる可能性があります。ただし、同居の有無や所有権の移転時期など厳格な条件がありますので、税理士とよく相談しておくべきです。また、相続時に土地が共有状態になると、将来的な建替えや売却が困難になる恐れがあるため、遺言や家族信託を使って土地の帰属先を明確にしておくと安心です。

将来、親御さんが高齢者施設に入居したり、認知症を発症したりする可能性も考慮すべきです。その際には土地の使用目的が変わるため、税制上の特例が使えなくなったり、契約行為ができなくなったりします。これを防ぐには、あらかじめ任意後見契約や家族信託を設計しておき、意思決定を託せる仕組みを整備することが大切です。

具体的な実務としては、まず土地の契約形態を家族で話し合い、合意を文書化することが第一歩です。次に、登記や契約書を公正証書にして明文化し、将来の証拠に残します。そして住宅ローンを利用する場合は、金融機関との事前相談と必要書類の準備を丁寧に行います。最後に、税務負担の試算と遺言や信託による相続対策を専門家と一緒に行うことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

親の土地に家を建てることは、経済的には大きなメリットがありますが、その裏には複雑な法律・税務の問題が潜んでいます。将来的な安心と家族関係の維持のためにも、事前に司法書士・税理士・ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、契約や登記をきちんと整えることが何よりも重要です。

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使用貸借

使用貸借とは、お金の貸し借りではなく、物や土地などを「無償で貸す」契約のことをいいます。たとえば、親が子どもに土地を無償で貸して家を建てさせるようなケースが典型です。賃貸借との大きな違いは、貸す側が使用料や家賃などの対価を受け取らないことです。 そのため、使用貸借は信頼関係に基づいて行われることが多く、契約終了の条件や返還時期などについては慎重に取り決めておく必要があります。また、税務上では「贈与」と見なされるケースもあるため、相続や不動産活用の場面では専門家のアドバイスを受けることが重要です。

借地権

借地権とは、他人が所有している土地を借りて、その土地の上に自分の建物を建てて利用することができる権利のことをいいます。土地を借りる代わりに、地主(貸主)に地代と呼ばれるお金を定期的に支払うのが一般的です。借地権は法律によって強く保護されており、契約期間や更新、建物の建て替えに関するルールも細かく定められています。 住宅地や商業地の限られた土地を有効活用したいときや、土地を購入するよりも初期費用を抑えて利用したい場合に利用されることがあります。不動産投資や相続の場面でも関係する重要な権利であり、土地の所有権とは異なるものとして理解しておくことが大切です。

贈与税

贈与税とは、個人が他の個人から金銭・不動産・株式などの財産を無償で受け取った際に、その受け取った側(受贈者)に課される税金です。通常、年間110万円の基礎控除を超える贈与に対して課税され、超過分に応じた累進税率が適用されます。 この制度は、資産の無税移転を防ぎ、相続税との整合性を保つことを目的として設けられています。特に、親から子へ計画的に資産を移転する際には活用されることが多く、教育資金や住宅取得資金などに関しては、一定の条件を満たすことで非課税となる特例もあります。 なお、現在は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2制度が併存していますが、政府は近年、相続税と贈与税の一体化を含めた制度改正を検討しており、将来的に制度の選択肢や非課税枠、課税タイミングが見直される可能性があります。 こうした背景からも、贈与税は単なる一時的な贈与の問題にとどまらず、長期的な資産承継や相続対策の設計に深く関わる重要な制度です。税制の動向を踏まえた上で、専門家と連携しながら最適な活用方法を検討することが求められます。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ財産を贈与する場合に利用できる、特別な贈与税の制度です。この制度を使うと、贈与を受けた年に2,500万円までの金額については贈与税がかからず、それを超えた部分にも一律20%の税率が適用されます。そして、その後贈与者が亡くなったときに、過去の贈与分をすべてまとめて「相続財産」として扱い、最終的に相続税として精算します。 つまり、この制度は「贈与税を一時的に軽くし、あとで相続税の段階でまとめて精算する」という仕組みになっています。将来の相続を見据えて早めに資産を移転したい場合や、大きな金額を一括で贈与したい場合に活用されることが多いです。 ただし、一度この制度を選ぶと、同じ贈与者からの贈与については暦年課税(通常の贈与税制度)には戻せないという制限があるため、利用には慎重な判断が必要です。資産運用や相続対策を計画するうえで、制度の特徴とリスクをよく理解しておくことが大切です。

家族信託

家族信託とは、ご自身の財産を信頼できる家族に託し、その管理や運用を契約で定めた目的に沿って行ってもらう仕組みです。委託者さまは公正証書で信託契約を締結し、現金や不動産、株式などを信託財産として受託者名義に移転します。これにより、たとえ将来認知症を発症されても資産が凍結されず、受益者さまへ生活費や医療費を継続して届けられる点が大きなメリットです。相続発生後は受益権そのものが相続対象となるため、遺産分割協議を簡素化できる効果も期待できます。 もっとも、家族信託には手続きと費用が伴います。不動産を組み入れる場合は信託登記が必要となり、登録免許税や司法書士報酬、公証人手数料が発生いたします。また、受託者さまは信託口座の開設、収支報告書の作成、信託財産とご自身の財産の分別管理など、煩雑な事務を担う義務があります。税務面では契約締結時に贈与税が課税されることは原則ございませんが、信託財産を売却した際の譲渡所得税や信託終了時の相続税は避けられません。そのため、成年後見制度や遺言信託と比較しながら、費用対効果や家族の負担を総合的に検討することが大切です。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、相続が発生した際に、被相続人が居住や事業に使用していた土地について、一定の条件を満たせば、その土地の相続税評価額を大幅に減額できる制度です。主な目的は、相続税負担によって自宅や事業用不動産を手放すことを防ぎ、円滑な資産承継を支援することにあります。 たとえば、亡くなった方の自宅に配偶者や同居していた親族が引き続き居住する場合、その宅地の評価額を最大で80%まで減額できる可能性があります。事業用地や貸付事業に用いられていた土地についても、50%〜80%の減額が認められるケースがあります。この減額によって相続税の課税対象となる財産の価額が抑えられるため、納税資金の負担が軽減され、不動産を売却せずに相続を完了できる事例も多く見られます。 ただし、この特例の適用には、居住や事業の継続に関する要件、土地の面積制限(最大330㎡まで)など、細かな条件を満たす必要があります。また、相続税申告期限内に適用を受ける旨を申告することが必須であり、準備不足や誤解によって適用を逃すケースもあるため注意が必要です。 自宅や事業用不動産を含む資産を次世代に円滑に引き継ぐ上で、この特例は極めて重要な制度のひとつです。早めに対策を講じ、制度の内容を正しく理解したうえで、税理士など専門家のサポートを受けながら計画的に進めることが求められます。

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