分配金と配当金の違いを教えて下さい
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2025/08/15 08:42
男性
30代
資産運用について調べていると投資信託や株式で「分配金」や「配当金」という言葉が出てきます。これらはどんな違いがありますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
分配金と配当金の違いを理解するためには、まず原則的な定義を押さえることが大切です。配当金は、企業が株主に対して利益の一部を還元するものであり、会社の決算で得られた利益から支払われます。一方、分配金は投資信託やREITの運用成果から投資家に還元されるお金で、利息や配当、売買益などの収益だけでなく、場合によっては元本の一部が含まれることもあります。
配当金の原資は企業の当期利益や内部留保です。支払額は取締役会や株主総会で決定されます。これに対し、分配金の原資は投資信託やREITが保有する資産から生じた運用収益であり、分配可能額の範囲で支払われます。REITの場合は、不動産賃料や売却益などが主な原資です。
配当や分配を受け取ると、株価や基準価額はその分下落します。株式は配当落ち日に理論上、配当額分株価が下がります。投資信託やREITでは分配金相当額だけ基準価額や投資口価格が下がるのが原則で、現金を受け取っても資産価値が同額減る点を理解しておく必要があります。
税金の扱いにも違いがあります。配当金は原則として所得税と住民税合わせて約20.315%が源泉徴収され、NISA口座なら非課税です。投資信託の分配金は「普通分配金」と「特別分配金」に分かれ、普通分配金は配当と同様に課税されますが、特別分配金は非課税で、その分取得価額が下がります。REITの分配金は基本的に課税されますが、NISAなら非課税です。
金額の決まり方と支払い頻度も異なります。配当金は企業の配当方針や業績によって年1〜2回、多くても四半期ごとに支払われます。分配金は商品ごとの方針や運用成果に応じて毎月、隔月、年2回などさまざまです。REITは年2回が一般的です。
受け取り方法は現金か再投資かを選べますが、再投資を選んでも普通分配金や配当金は受け取った時点で課税されます(NISAを除く)。特別分配金の場合は非課税のまま再投資されます。
よくある誤解として、分配金が高いほど良い投資商品とは限らないことが挙げられます。元本払戻しによって見かけの利回りが高くても、資産が目減りする可能性があります。また、分配や配当をもらっても価格は下がるため、トータルリターンで評価する必要があります。
資産形成期には無分配型や配当再投資を活用し、課税を繰り延べて複利効果を高めることが効果的です。取り崩し期には分配金や配当金を定期的な収入源として活用できますが、その場合でも分配原資や利回りの持続性をしっかり確認することが重要です。
このように、配当金と分配金は似ているようで原資・課税・価格への影響などに違いがあります。NISAなどの税制優遇も活用しながら、自分のライフステージや運用目的に合った受け取り方法と商品選びを行うことがポイントです。
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配当(配当金)
配当とは、会社が得た利益の一部を株主に分配するお金のことをいいます。企業は利益を出したあと、その一部を将来の投資に使い、残った分を株主に還元することがあります。このときに支払われるお金が配当金です。株を持っていると、持ち株数に応じて定期的に配当金を受け取ることができます。多くの場合、年に1回または2回支払われ、企業によって金額や支払い時期は異なります。配当は企業からの「お礼」のようなもので、株を長く持ち続ける理由の一つになることがあります。
分配金
分配金とは、投資信託やREIT(不動産投資信託)などが運用によって得た収益の一部を、投資家に還元するお金のことです。これは株式でいう「配当金」に似ていますが、分配金には運用益だけでなく、元本の一部が含まれることもあります。そのため、分配金を受け取るたびに自分の投資元本が少しずつ減っている可能性もあるという点に注意が必要です。分配金の有無や頻度は投資信託の商品ごとに異なり、毎月、半年ごと、年に一度などさまざまです。投資初心者にとっては、「お金が戻ってくる」という安心感がありますが、長期的な資産形成を考えるうえでは、分配金の出し方やその内容をしっかり理解することが大切です。
普通分配金
普通分配金とは、投資信託が運用によって得た収益(利子や配当、売却益など)から投資家に分配される金額のうち、課税対象となる部分を指します。たとえば、投資信託が保有する株式の配当金や売却による利益が出た場合、それらが原資となって支払われる分配金が普通分配金です。この分配金は「所得」と見なされるため、受け取った投資家には20.315%の税率で源泉徴収が行われます。確定申告の際には、課税口座かどうかに応じて申告が必要な場合があります。普通分配金は、投資信託の運用が順調であることを示す一つのサインでもありますが、受け取るたびに課税されるため、再投資との比較で利回りに差が出ることもあります。
特別分配金
特別分配金とは、投資信託が支払う分配金のうち、運用収益ではなく投資元本を取り崩して支払われる部分です。元本払い戻しに該当するため受取時に課税されませんが、その分だけ基準価額(1万口当たりの純資産価値)が同額下がるため、受け取った現金のぶんだけ資産が増えたわけではない点に注意が必要です。 特別分配金は、基準価額が取得価額を下回っているとき以外にも、次のようなケースで発生します。 1. 定額・高水準の分配を維持している場合 毎月一定額を分配するファンドが運用収益を上回る金額を支払うと、不足分が元本の取り崩しとなり特別分配金になります。 2. 大口解約や急落で分配原資が急減した場合 解約損や評価損で内部留保が減少した状態で予定額を分配すると、超過分が特別分配金に振り替わります。 3. 為替ヘッジコスト・信託報酬などのコスト負担が膨らんだ場合 想定外のコスト増により実質収益が目減りし、分配ポリシーを据え置くと元本を取り崩すことになります。 4. 配当・利息の入金時期がずれた場合 決算期直前に配当やクーポンが未入金のまま分配を行うと、その不足分が元本扱いとなり特別分配金が発生します。 分配利回りが高く見えるファンドでも、特別分配金の比率が大きいと実質リターンは伸びにくい傾向があります。投資信託を選ぶ際は、交付運用報告書で普通分配金と特別分配金の内訳を確認し、基準価額の推移と合わせたトータルリターンが安定してプラスかどうかを重視することが重要です。また、長期運用を目指す場合は、特別分配金の再投資や普通分配金比率の高い商品を検討し、複利効果を高める運用を心掛けるとよいでしょう。
基準価額
基準価額とは、主に投資信託の商品価格を表すもので、投資信託1口あたりの価値を示しています。毎営業日に一度計算され、投資信託が保有している株式や債券などの資産の時価総額から、運用にかかる費用を差し引いた金額を、発行済みの総口数で割って算出されます。 投資信託の購入や売却の際には、この基準価額が参考になりますので、価格の動きに注目することが大切です。ただし、基準価額は市場価格とは異なり、リアルタイムで変動するわけではないため、翌営業日の価格になることが多い点にもご注意ください。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。