「学資保険はいらない」という意見がありますが、本当ですか?
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2025/08/20 09:03
女性
30代
教育資金準備を検討する中で「学資保険はいらない」という意見をよく目にします。確かに現在の学資保険は利回りが低く魅力に欠けますが、保障機能や確実性を考えると一概に不要とは言えない気もします。学資保険の必要性をどのように判断すればよいのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
学資保険がいらないかどうかは、結論として各家庭の優先順位で異なります。まず返戻率(払込総額に対する受取割合)が物足りないなら、貯蓄と保障を分ける設計が有力です。
学資保険の問題は運用効率の悪さです。現在の学資保険の返戻率(払込保険料に対する受取総額の割合)は103~120%程度で、年利換算すると0.2~0.7%程度にとどまります。
また、学資保険はインフレリスク(物価上昇により実質的な購入力が低下するリスク)への対応力も不足しています。教育費は過去30年で約1.5倍上昇しており、固定利率の学資保険では将来の教育費高騰に追いつけない可能性があります。
短中期の基礎資金は定期預金や個人向け国債など元本確保の手段に置き、長期部分はNISAで市場平均に連動するインデックスファンド(分散投資の投資信託)を積み立てるとよいでしょう。NISAで投資信託を運用すれば、過去実績では年3~5%のリターンが期待でき、複利効果で大きな差が生まれます。
一方で、学資保険の強みは払込免除(契約者が所定の状態で以後の保険料が免除)による万一時の継続性と、目的別に受取時期を固定しやすい点です。強制貯蓄効果により確実に教育資金を準備でき、契約者(親)の死亡時には以後の保険料払込が免除され、満額受け取れる保障機能は学資保険ならではの強みです。
ただし、解約返戻金(途中解約時に戻る金額)は初期ほど低く、柔軟性は高くありません。保障が必要なら教育資金と切り離し、定期保険で必要保障額のみ確保する方法が合理的です。
目標額と期限、毎月の積立余力、価格変動に耐えられる幅、流動性の必要度を数値で整理し、時間分散と資産配分を決めましょう。
貯蓄が苦手で確実性を重視する方、万一の保障を求める方には学資保険を有効活用できます。運用効率だけでなく、家計管理能力や価値観を総合的に考慮しましょう。
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返戻率
返戻率とは、生命保険や学資保険などの貯蓄型保険において、支払った保険料の総額に対して、満期や解約時に受け取れる金額(解約返戻金や満期保険金)がどのくらいの割合で戻ってくるかを示す指標です。たとえば、200万円の保険料を支払って、満期時に220万円を受け取れる場合、返戻率は110%となります。 この数値が100%を上回れば「支払った保険料より多く戻る」、下回れば「元本割れ」ということになります。返戻率は商品選びの際の比較指標としてよく使われ、特に学資保険や個人年金保険など、将来の資金準備を目的とした保険において注目されます。 ただし、返戻率が高い商品は契約条件が厳しかったり、途中解約に弱かったりする場合もあるため、利率だけでなくライフプラン全体を見据えて判断することが大切です。保険を「貯蓄」としても考える初心者にとって、返戻率は理解しておくべき基本的な指標です。
学資保険
学資保険とは、子どもの教育資金を計画的に準備するための保険商品で、一定期間保険料を支払うことで、子どもの進学時期(中学・高校・大学入学など)に合わせて祝い金や満期保険金が受け取れる仕組みになっています。保険であるため、契約者(通常は親)に万が一のことがあった場合でも、以後の保険料の支払いが免除され、満期時には予定どおりの給付金が支払われる点が大きな特徴です。 貯蓄機能と保障機能が組み合わさっており、「教育費を積み立てながら万一に備えたい」と考える家庭に人気があります。ただし、途中解約すると元本割れするリスクがあるため、長期的な資金計画としての活用が前提となります。初心者の方にとっては、預貯金とは違う形で将来の教育資金を準備できる手段のひとつとして、選択肢に入れて検討する価値があります。
払込免除
払込免除とは、生命保険や医療保険などの契約において、契約者や被保険者が高度障害状態になったり、所定の重い病気にかかったりした場合に、それ以降の保険料の支払いが免除される制度のことを指します。免除されたあとも、保険契約は有効に継続され、保障内容はそのまま維持されるのが特徴です。 たとえば、がんなどの重病を患い、働くことが困難になった場合でも、保障を失うことなく保険を続けられる仕組みとして、多くの保険商品に組み込まれています。払込免除はあくまで保険料の支払い義務を免除する制度であり、解約や満期金の支払いとは異なります。契約時にこの特約が付いているかどうか、また発動条件がどうなっているかを確認しておくことが大切です。経済的な負担が大きくなる場面で、保険契約の継続を支える安心の仕組みです。
解約返戻金
解約返戻金とは、生命保険などの保険契約を途中で解約したときに、契約者が受け取ることができる払い戻し金のことをいいます。これは、これまでに支払ってきた保険料の一部が積み立てられていたものから、保険会社の手数料や運用実績などを差し引いた金額です。 契約からの経過年数が短いうちに解約すると、解約返戻金が少なかったり、まったく戻らなかったりすることもあるため、注意が必要です。一方で、長期間契約を続けた場合には、返戻金が支払った保険料を上回ることもあり、貯蓄性のある保険商品として活用されることもあります。資産運用やライフプランを考えるうえで、保険の解約によって現金化できる金額がいくらになるかを把握しておくことはとても大切です。
元本割れ
元本割れとは、投資で使ったお金、つまり元本(がんぽん)よりも、最終的に戻ってきた金額が少なくなることをいいます。たとえば、100万円で投資信託を購入したのに、解約時に戻ってきたのが90万円だった場合、この差額10万円が損失であり、「元本割れした」という状態です。 特に、価格が変動する商品、たとえば株式や投資信託、債券などでは、将来の価格や分配金が保証されているわけではないため、元本割れのリスクがあります。「絶対に損をしたくない」と考える方にとっては、このリスクを正しく理解することがとても重要です。金融商品を選ぶときには、利回りだけでなく元本割れの可能性も十分に考慮しましょう。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。