個人事業主として独立するデメリットを教えてください。
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2025/10/27 09:46
男性
30代
個人事業主として独立することを考えていますが、会社員と違って安定した収入が得られないことや、社会保険・税金の負担が増えると聞き、不安を感じています。実際にどのようなデメリットがあるのか、生活面や将来の資金計画にどんな影響が出るのかを詳しく教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
個人事業主として独立する最大のデメリットは、収入の不安定さと社会保険・税金の負担増、そして将来の保障が薄くなることです。会社員のように固定給やボーナス、休暇中の給与がないため、働かなければ収入は止まります。仕事の繁忙期と閑散期で大きく収入が変動するうえ、取引先の支払い遅延なども自己責任となるため、資金繰りの安定化が重要です。
社会保険面では、健康保険と年金をすべて自分で負担する必要があります。会社員は会社と折半して支払う厚生年金や健康保険に加入していますが、個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入し、保険料を全額自己負担します。そのため、老後に受け取れる年金額は会社員時代よりも減りやすく、国民年金基金やiDeCo、小規模企業共済などの上乗せ制度を利用することがほぼ必須になります。
さらに、国民健康保険では扶養という仕組みがなく、配偶者や子どももそれぞれ保険料を支払う必要があります。失業手当や傷病手当金、育児休業給付といった会社員向けの公的保障も受けられません。病気やケガで働けない期間が発生した場合、収入が途絶えるリスクが高くなります。
税金面でも、確定申告を自分で行わなければなりません。所得税、住民税、国民健康保険料、個人事業税、消費税などを自己管理し、納税のための資金をあらかじめ積み立てておく必要があります。利益が出ると翌年には予定納税が発生し、課税事業者であれば消費税の納付義務も生じます。帳簿付けやインボイス対応などの事務負担も増えるため、会計ソフトや税理士の活用が現実的です。
与信面でも注意が必要です。独立したばかりの個人事業主は、住宅ローンやクレジットカードの審査で不利になりやすく、安定した収入実績を2〜3年分求められることが一般的です。金融機関や取引先に信用を得るには、安定した契約や売上実績を積み上げる必要があります。
生活面では、月ごとの収入が不安定になるため、生活費や固定費を抑えた設計が欠かせません。病気や家庭の事情で働けなくなると収入が止まるため、6〜12か月分の生活防衛資金を確保し、納税・保険料用の積立口座を分けて管理することが望ましいです。また、就業不能保険や所得補償保険でリスクに備えると安心です。
老後の資金計画にも影響があります。厚生年金の報酬比例部分がないため、国民年金だけでは生活費を賄いにくくなります。老後資金を自助で積み立てる必要があり、付加年金や国民年金基金、iDeCo、小規模企業共済の活用が効果的です。
まとめると、個人事業主は収入や保障の不安定さ、税・社会保険の負担増といったリスクを伴います。しかし、納税や保険料の積立ルールを決め、保険や積立制度を活用し、帳簿管理を早期に整えることで、これらのデメリットは管理可能な範囲に抑えられます。独立を成功させるためには、収入を増やすスキルだけでなく、キャッシュフローと保障を設計する力が不可欠です。
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国民健康保険
国民健康保険とは、自営業者やフリーランス、退職して会社の健康保険を脱退した人、年金生活者などが加入する公的医療保険制度です。日本ではすべての国民が何らかの健康保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されており、会社員や公務員が加入する「被用者保険」に対して、それ以外の人が加入するのがこの国民健康保険です。 市区町村が運営主体となっており、加入・脱退の手続きや保険料の納付、医療費の給付などは、住民票のある自治体で行います。保険料は前年の所得や世帯の構成に応じて決まり、原則として医療機関では医療費の3割を自己負担すれば診療を受けられます。病気やけが、出産などの際に医療費の支援を受けるための基本的な仕組みであり、フリーランスや非正規労働者にとっては重要な生活保障となる制度です。
国民年金
国民年金とは、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入しなければならない、公的な年金制度です。自営業の人や学生、専業主婦(夫)などが主に対象となり、将来の老後の生活を支える「老齢基礎年金」だけでなく、障害を負ったときの「障害基礎年金」や、死亡した際の遺族のための「遺族基礎年金」なども含まれています。毎月一定の保険料を支払うことで、将来必要となる生活の土台を作る仕組みであり、日本の年金制度の基本となる重要な制度です。
国民年金基金
国民年金基金とは、自営業者やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者が、将来の年金額を上乗せするために任意で加入できる制度です。これは、国民年金(基礎年金)だけでは老後の生活費として不十分な場合に備えて、公的に用意された追加の年金制度です。加入者は自分の希望に合わせて受け取る年金の型や金額を選ぶことができ、掛金もそれに応じて決まります。終身で年金を受け取れる選択肢もあるため、長生きリスクへの備えとして有効です。また、支払った掛金は全額が所得控除の対象となるため、節税効果も得られます。資産運用の視点では、自分で備える年金制度の一つとして、iDeCoなどと並んで重要な選択肢となります。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
小規模企業共済
小規模企業共済とは、中小企業の経営者や役員、個人事業主の方のための退職金制度です。「小規模企業」という文言が含まれているとおり、一定の要件を満たす中小企業や個人事業主が対象です。 小規模企業共済制度は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が運営している「小規模企業共済法」という法令に基づいた共済制度です。 掛金は全額所得控除され、加入者は事業資金の借入れも可能です。 加入資格は、従業員が20人以下(商業・サービス業では5人以下)の個人事業主や会社役員などです。ただし、兼業で会社員をしているなど、給与所得を得ている場合は加入資格がないため注意が必要です。
予定納税
予定納税とは、前年の所得をもとに、その年の所得税額をあらかじめ見積もって前払いする制度のことです。個人事業主やフリーランスなど、毎月の給与天引き(源泉徴収)がない人が対象となります。前年の確定申告で一定額以上の所得税を納めた場合、翌年の7月と11月の2回に分けて予定納税を行うことが原則です。 具体的には、前年の所得税額の3分の1ずつをそれぞれの時期に納める仕組みです。ただし、その年の所得が前年より大幅に減少すると見込まれる場合は、税務署に申請することで予定納税の減額が認められることもあります。予定納税を行うことで、年度末に一度に多額の税金を支払う負担を避け、安定的な納税管理を行うことができます。なお、予定納税で納めすぎた場合は、確定申告の際に精算され、還付されることもあります。




