為替ヘッジなしのETFを選ぶメリットはなんでしょうか?
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2025/08/02 08:50
男性
30代
最近、海外ETFに興味があります。海外ETFだと為替リスクがあると聞きますが、あえて為替ヘッジなしのETFを選ぶメリットはあるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
為替ヘッジなしのETFを選ぶ最大のメリットは、長期的な資産運用において「通貨分散」と「コストの低さ」という2つの利点を享受できることです。為替ヘッジをかけないことで、投資対象の国の通貨の値動きがそのまま反映されるため、たとえば米ドルが円に対して上昇した場合、ETFの基準価額は為替差益を含めて上昇します。円安傾向が続く局面では、日本円で資産を持つよりも資産価値の目減りを防ぐ手段となります。
また、ヘッジを行うには通貨先物やスワップ取引を利用するため、一定のヘッジコストが発生します。為替ヘッジなしのETFはこの費用がかからないため、同じ指数に連動するETFで比べた場合、信託報酬や総経費率が抑えられる傾向にあります。このコスト差は長期運用では積み重なり、リターンを押し上げる要因となります。
さらに、為替ヘッジを行うファンドはヘッジ比率の調整やヘッジ取引のタイミングのずれによって、指数との乖離(トラッキングエラー)が起こることがあります。一方、ヘッジなしのETFはこうした構造上の誤差が生じにくく、対象指数に対してより素直な値動きを期待できます。
為替ヘッジをしない場合、為替変動によるリスクはありますが、長期分散投資においては、複数の国・地域・通貨に分散することで、通貨ごとの変動が相互に打ち消し合う効果も期待できます。こうした自然な通貨分散を活用することで、あえてコストをかけてリスクを抑えるよりも、結果的に合理的な選択となる場合があります。
NISA口座での投資においても、ETFの売却益や分配金が非課税になるため、為替差益も含めたリターンをそのまま享受できるという利点があります。特に、円安が進んだ場合には、非課税の恩恵がより大きくなりやすい点も見逃せません。
ただし、短期的に円高が進んだ場合には、評価額が大きく下がることもあるため、為替変動に耐えられるかどうか、自身のリスク許容度を事前に確認することが重要です。もし為替リスクが不安であれば、円高局面で積立額を増やすなど、長期的に平均取得単価を調整する工夫も有効です。
このように、為替ヘッジなしのETFは、コスト効率や通貨分散の観点から、長期的な資産形成に向いた選択肢です。今後、海外旅行や子どもの留学など外貨での支出を予定している人や、円の購買力低下に備えたいと考える投資家にとっては、特に相性の良い商品と言えるでしょう。
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ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)とは、証券取引所で株式のように売買できる投資信託のことです。日経平均やS&P500といった株価指数、コモディティ(原油や金など)に連動するものが多く、1つのETFを買うだけで幅広い銘柄に分散投資できるのが特徴です。通常の投資信託に比べて手数料が低く、価格がリアルタイムで変動するため、売買のタイミングを柔軟に選べます。コストを抑えながら分散投資をしたい人や、長期運用を考えている投資家にとって便利な選択肢です。
為替ヘッジ
為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。
為替リスク
為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。
通貨分散
通貨分散とは、資産を複数の異なる通貨で保有することで、特定の通貨に偏ったリスクを抑える投資手法のことです。たとえば、すべての資産を日本円で持っていると、円の価値が下がったときに資産全体の価値も目減りしてしまいますが、米ドルやユーロなど他の通貨で一部を保有していれば、その影響をやわらげることができます。通貨分散を行うことで、為替変動による影響を平均化し、より安定した資産運用を目指すことができます。 特に外貨建ての債券や投資信託などを活用することで、自然と通貨分散が実現できます。長期的な資産形成を考えるうえで、重要なリスク管理の一つです。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。