iDeCoは会社員にとっても検討する価値のある最強の節税商品と聞きましたが本当でしょうか?
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2025/10/10 09:59
男性
30代
iDeCoは「節税効果が高い」とよく聞きますが、実際に会社員にとってどの程度メリットがあるのか知りたいです。所得税や住民税の軽減効果がどのくらい見込めるのでしょうか?また、デメリットや注意点も含めて詳しく教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
会社員にとってiDeCoは非常に優れた節税制度です。掛金は全額が所得控除となり、たとえば企業年金がない会社員が月2万3,000円を拠出した場合、税率20%(所得税10%+住民税10%)で年間約5万5,000円の税負担を軽減できます。さらに運用益も非課税で、受け取り時にも退職所得控除や公的年金等控除が適用されるため、税制上のメリットは極めて大きいといえます。
一方で、iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、流動性の低さが最大のデメリットです。途中で資金が必要になっても解約はできず、老後資金専用の制度として割り切る必要があります。受け取り時にも注意が必要で、退職金と同じ年に一時金として受け取ると課税上不利になる場合があるため、受け取り時期をずらすなどの工夫が求められます。
会社員の掛金上限は企業年金の有無で異なります。企業年金がない場合は月2万3,000円、確定給付年金(DB)に加入している場合は2024年12月以降に月2万円まで拡大されます。企業型DC(確定拠出年金)に加入している人は、企業拠出分との合計が月5万5,000円を超えない範囲でiDeCoを追加拠出できます。ただし、企業年金の掛金が多い場合はiDeCoの拠出枠が小さくなるため、勤務先の制度内容を確認することが大切です。
加入や維持にかかるコストも把握しておきましょう。初回登録時に2,829円、月々の手数料は最低で171円程度です。拠出額が少ない場合は手数料負担の割合が高くなるため、節税効果を十分に得るには月1万円以上の拠出が現実的です。2024年12月からは勤務先への「事業主証明書」提出が不要となり、加入手続きはより簡単になります。
総合的に見ると、iDeCoは課税所得がある会社員にとって、所得税と住民税の軽減、運用益の非課税という二重の節税メリットを得られる強力な制度です。ただし、流動性の低さや受け取り時の税務調整が必要である点を理解したうえで、生活資金や中期資金とは分けて運用することが重要です。生活防衛資金や短期運用にはNISAを活用し、老後資金に余裕があればiDeCoを上限まで利用するという併用戦略が最も効果的です。
したがって、iDeCoは「条件が合う会社員にとって非常に強力な節税ツール」ですが、すべての人に最適というわけではありません。老後まで資金を動かせないことを理解し、長期で積み立てが続けられる人にこそ大きな効果を発揮する制度です。
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iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
所得控除
所得控除とは、個人の所得にかかる税金を計算する際に、特定の支出や条件に基づいて課税対象となる所得額を減らす仕組みである。日本では、医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などがあり、納税者の生活状況に応じて税負担を軽減する役割を果たす。これにより、所得が同じでも控除を活用することで実際の税額が変わることがある。控除額が大きいほど課税所得が減少し、納税者の手取り額が増えるため、適切な活用が重要である。
退職所得控除
退職所得控除とは、退職金を受け取る際に税金を軽くしてくれる制度です。長く働いた人ほど、退職金のうち税金がかからない金額が大きくなり、結果として納める税金が少なくなります。この制度は、長年の勤続に対する国からの優遇措置として設けられています。 控除額は勤続年数によって決まり、たとえば勤続年数が20年以下の場合は1年あたり40万円、20年を超える部分については1年あたり70万円が控除されます。最低でも80万円は控除される仕組みです。たとえば、30年間勤めた場合、最初の20年で800万円(20年×40万円)、残りの10年で700万円(10年×70万円)、合計で1,500万円が控除されます。この金額以下の退職金であれば、原則として税金がかかりません。 さらに、退職所得控除を差し引いた後の金額についても、全額が課税対象になるわけではありません。実際には、その半分の金額が所得とみなされて、そこに所得税や住民税がかかるため、税負担がさらに抑えられる仕組みになっています。 ただし、この退職所得控除の制度は、将来的に変更される可能性もあります。税制は社会情勢や政策の方向性に応じて見直されることがあるため、現在の内容が今後も続くとは限りません。退職金の受け取り方や老後の資産設計を考える際には、最新の制度を確認することが大切です。
公的年金等控除
公的年金等控除とは、年金を受け取っている人の所得税や住民税を計算する際に、年金収入から一定額を差し引ける控除制度です。これにより課税対象となる金額が減り、税負担を軽減できます。 対象となるのは、国民年金・厚生年金・共済年金などの「公的年金」に限られます。これらは所得税法上の「公的年金等」に分類され、控除の対象となります。 一方で、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC、個人年金保険などは、たとえ年金形式で受け取ったとしても税法上は「公的年金等」に該当せず、公的年金等控除の対象外です。これらは「雑所得(その他)」として課税されます。 控除額は受給者の年齢と年金収入の額に応じて異なり、特に65歳以上の高齢者には手厚い控除が設けられています。 | 年齢 | 公的年金等の収入額 | 控除額 | | --- | --- | --- | | 65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 | | | 130万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 37.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 78.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | | 65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 | | | 330万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 27.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 68.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | たとえば、65歳以上で年金収入が250万円であれば、110万円の控除が適用され、課税対象となる所得は140万円に圧縮されます。
確定給付企業年金 (DB)
確定給付型企業年金(DB)とは、企業が従業員の退職後に受け取る年金額を保証する企業年金制度です。あらかじめ決められた給付額が支払われるため、従業員にとっては将来の見通しが立てやすいのが特徴です。DBには規約型と基金型の2種類があります。規約型は、企業が生命保険会社や信託銀行などの受託機関と契約し、受託機関が年金資産の管理や給付を行う仕組みです。基金型は、企業が企業年金基金を設立し、その基金が資産を運用し、従業員に年金を給付する仕組みです。確定拠出年金(DC)との大きな違いは、DBでは企業が運用リスクを負担する点であり、運用成績にかかわらず従業員は決まった額の年金を受け取ることができます。一方、DCでは従業員自身が運用を行い、将来受け取る年金額は運用成績によって変動します。DBのメリットとして、従業員は退職後の給付額が確定しているため安心感があることが挙げられます。また、企業にとっては従業員の定着率向上につながる点も利点となります。しかし、企業側には年金資産の運用成績が悪化した場合に追加の負担が発生するリスクがあるため、財務的な影響を考慮する必要があります。
確定拠出年金(DC)
確定拠出年金(DC)は、毎月いくら掛金を拠出するかをあらかじめ決め、その掛金を自分で運用して増やし、将来の受取額が運用成績によって変わる年金制度です。会社が導入する企業型と、自分で加入する個人型(iDeCo)の二つがあり、掛金は所得控除の対象になるため節税効果があります。 運用対象は投資信託や定期預金などから選べ、運用益も非課税で再投資される仕組みです。60歳以降に年金や一時金として受け取れますが、途中で自由に引き出せない点に注意が必要です。老後資金を自ら準備し、運用の成果を自分の年金額として受け取る「自助努力型」の代表的な制度となっています。