インフレに強い資産にはどういうものがありますか?
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2025/07/24 09:34
男性
60代
物価が上昇すると銀行預金の価値が実質的に減ると聞いて不安になっています。投資を検討していますが、インフレに影響を受けにくく価値を守れる資産には、具体的にどのようなものがありますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
物価が上昇すると現金や銀行預金の購買力が目減りするため、インフレに強い資産を取り入れて資産価値を守ることが重要です。代表的な選択肢の一つが物価連動国債です。これは、元本や利息が物価の変動に応じて増減する仕組みの債券で、インフレ下でも実質的な価値を保ちやすいという特長があります。ただし、日本国内で発行されている物価連動国債は流通量が限られており、個人が直接売買するには取り扱い証券会社や情報が限られているという現実があります。一方、米国の物価連動債に連動する海外ETFを活用する選択肢もありますが、これらは米国の物価指数に基づいており、日本のインフレとは連動しません。また、為替変動の影響も受けるため、実際に国内の物価上昇への備えとして使う場合には、性質の違いとリスクを理解しておくことが大切です。
次に、金や原油、小麦などの資源は、物価が上昇する局面で先行して価格が上がりやすいため、インフレ初期の資産防衛手段として用いられます。特に金は長期的な価値保存資産としての歴史があり、インフレや通貨の信認低下時に買われやすい傾向があります。ただし、商品市場は価格の変動が大きく、商品先物を用いた投資信託では運用上のコストや保有構造による価格のずれも発生するため、全資産の一部にとどめるのが現実的です。
不動産投資信託もインフレ対策の選択肢となります。賃貸物件の賃料は一般的に物価に連動しやすく、不動産の実物価値もインフレによって押し上げられることがあります。一方で、金利が上昇すると借入コストが増加し、収益や価格の圧迫要因になるため、不動産市場全体の状況や物件の用途(住宅、物流、オフィスなど)にも注目が必要です。
また、電力や水道、食品、医薬品など生活に欠かせない商品・サービスを提供する企業の株式は、価格転嫁力が高く、物価が上がっても収益を維持しやすい傾向にあります。こうした業種は一般に景気変動にも強く、配当水準が安定している場合も多いため、長期投資の一部に組み込むことで安定性の向上が期待できます。
金利上昇時に利息が自動的に増える変動金利型の債券も、インフレ対策の一手段です。これらは市場金利に応じて受取利息が変動するため、固定金利型の債券よりもインフレ局面に適した性質を持ちます。
さらに、空港や道路、送電線などインフラ関連事業に投資するファンドや企業も、長期契約にインフレ連動型の料金設定が含まれていることが多く、安定した収益とインフレ耐性の両立が見込まれます。こうしたインフラ資産は、株式や不動産と異なる動きをすることもあり、分散投資先として有効です。
その他にも、外国通貨建ての資産を一部持つことで、円の購買力が落ちた場合の備えになります。外貨預金や外貨建ての投資信託などを通じて実行できますが、為替リスクや手数料への注意が必要です。また、長期的には企業の利益や配当も物価の上昇にある程度連動するため、実体経済と結びついた株式全体も現金より購買力を守りやすい資産として位置づけられます。
これらの資産にはそれぞれメリットと注意点があり、単一の資産でインフレを完全に防ぐことはできません。したがって、資産の一部に分散して組み入れることで、物価上昇への対応力を高め、総合的な資産防衛を図るのが現実的な戦略となります。ただし、実際にどの資産をどの程度組み入れるべきかは、保有資産の構成や将来の資金ニーズによって大きく異なります。不安や迷いがある場合は、インフレと資産運用に精通したアドバイザーに相談し、自分に合った最適な対策を立てることをおすすめします。
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物価連動国債
物価連動国債は、元本を全国消費者物価指数(コアCPI)に連動させ、実質固定利率を調整後元本に掛けて利息を計算する国債です。たとえば表面利率0.2%の10年債なら、物価が2%上昇して元本が102円に増えれば利息も0.204円に増えます。逆にデフレが進んでも元本は額面100円を下回らないフロアが設けられており、元本毀損は限定的です。ただしCPIは公表にタイムラグがあり、発行から利払いまで概ね3か月遅れて反映されるため、急激なインフレ局面では追随がやや遅れます。 税制上は名目利息に加え、元本調整で増えた分も利子所得として課税されるため、実質利回りより手取り利回りが低くなる傾向があります。また日本の物価連動国債市場は発行量が少なく流動性が限られるため、価格が振れやすい点にも注意が必要です。 投資判断では、同じ年限の名目国債利回りとの差で算出するブレークイーブン・インフレ率を確認し、市場が織り込むインフレ期待と照らして割高・割安を見極めます。インフレヘッジの有力手段である一方、指数ラグや流動性、税務コストも踏まえ、ポートフォリオ全体の資産配分を検討することが大切です。
TIPS
TIPSとは、「Treasury Inflation-Protected Securities」の略で、アメリカ財務省が発行するインフレ連動国債のことです。日本のJGBiと同様に、物価上昇に応じて元本や利子の額が調整されるしくみになっており、投資家がインフレから資産の実質価値を守るために利用します。 TIPSの最大の特徴は、米国の消費者物価指数(CPI)に連動して元本が増減する点です。利率(クーポン)は固定ですが、元本が物価に応じて変動するため、利息の金額も自動的に調整されます。物価が上がれば元本と利息の両方が増え、逆に物価が下がれば元本が減ることもありますが、TIPSには元本保証があるため、満期時には最低でも額面金額が返済されます。 資産運用の分野では、TIPSはインフレ対策として広く利用されており、米国の物価や実質金利、インフレ期待を読み解くための手がかりとしても活用されます。特にインフレが意識される局面では、債券ポートフォリオの中でリスクを抑えつつ実質リターンを確保する手段として注目されます。
コモディティ
コモディティは、世界で標準化された形で売買される原材料・一次産品の総称で、貴金属(金・銀・プラチナ)、エネルギー資源(原油・天然ガス)、農産物(小麦・トウモロコシ・大豆)、産業用金属(銅・アルミニウム)などに分類される。 投資経路は大きく四つある。①現物保有(地金やコイン)、②先物取引、③商品指数連動型ETF・ETN、④コモディティファンド。実務では先物を組み込んだETFが主流で、代表的な指数にブルームバーグ・コモディティ・インデックスや S\&P GSCI がある。 価格は需給バランス、在庫統計、OPEC政策、地政学リスク、天候、為替など多様な要因で変動する。先物運用では限月乗り換え時のロールコスト(コンタンゴ)や信託報酬がリターンを圧迫し、現物保有では保管・保険料、税制(例:金地金の譲渡益は総合課税)が影響するため、コスト構造の把握が欠かせない。 コモディティは株式・債券との相関が相対的に低く、インフレ率と連動しやすいことから、分散投資とインフレヘッジに有効とされる。一方で短期的な価格変動が大きく、資産配分比率や取引手段を目的に合わせて設計し、損失許容度に応じたリスク管理を徹底することが重要となる。
REIT(Real Estate Investment Trust/不動産投資信託)
REIT(Real Estate Investment Trust/不動産投資信託)とは、多くの投資家から集めた資金を使って、オフィスビルや商業施設、マンション、物流施設などの不動産に投資し、そこで得られた賃貸収入や売却益を分配する金融商品です。 REITは証券取引所に上場されており、株式と同じように市場で売買できます。そのため、通常の不動産投資と比べて流動性が高く、少額から手軽に不動産投資を始められるのが大きな特徴です。 投資家は、REITを通じて間接的にさまざまな不動産の「オーナー」となり、不動産運用のプロによる安定した収益(インカムゲイン)を得ることができます。しかも、実物の不動産を所有するわけではないので、物件の管理や修繕といった手間がかからない点も魅力です。また、複数の物件に分散投資しているため、リスクを抑えながら収益を狙える点も人気の理由です。 一方で、REITの価格は、不動産市況や金利の動向、経済環境の変化などの影響を受けます。特に金利が上昇すると、REITの価格が下がる傾向があるため、市場環境を定期的にチェックしながら投資判断を行うことが重要です。 REITは、安定した収益を重視する人や、実物資産への投資に関心があるものの手間やコストを抑えたい人にとって、有力な選択肢となる資産運用手段の一つです。
生活必需品株
生活必需品株とは、人々の生活に欠かせない日用品や食品、飲料、医薬品などを製造・販売している企業の株式を指します。不況や景気変動にかかわらず一定の需要があるため、景気に左右されにくい「ディフェンシブ株」として知られています。 代表的な企業としては、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)、ネスレ、花王などがあり、洗剤、歯磨き粉、食料品といった日常的に使われる製品を扱っています。株価の値動きは比較的安定しており、配当利回りが高い銘柄も多いため、安定した収益を重視する長期投資家や、初心者にも人気があります。一方で、高成長はあまり期待されにくいため、大きなリターンを狙う投資には向かない場合もあります。