日本株は長期投資に向かないと聞きました。どのような理由が考えられますか?
日本株は長期投資に向かないと聞きました。どのような理由が考えられますか?
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2025/11/05 09:26
男性
30代
株式投資を調べる中で、日本株が長期投資に向かないと聞きました。いまいち理由はピンと来ませんでした。日本企業のどのような要因が影響しているのかを詳しく教えてください。また、日本株で長期投資を行う際に注意すべき点や、対策となる投資方法があれば知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
日本株が長期投資に向かないと言われるのは、過去の構造的な要因によるものです。結論から言えば、市場全体をそのまま長期保有するとリターンが伸びにくい時期が長く続きましたが、近年は企業改革が進み、投資先を選べば長期的な資産形成にも十分活用できます。
背景として、日本企業は長らくROE(自己資本利益率)が低く、現金をため込みがちで資本効率が悪い傾向にありました。経営陣の株主意識も弱く、社外取締役の独立性や報酬制度の透明性に課題があったため、成長投資や株主還元が進まなかったのです。さらに、企業間の株式持ち合いや政策保有株が多く、経営の規律が働きにくい構造も株価の低迷を長引かせました。
加えて、日本の株式市場は成熟産業の比重が高く、成長産業の比率が低いため、インデックス全体の成長力が弱い時期が続きました。デフレや人口減少などのマクロ要因も企業業績の重しとなり、長期的な株価上昇を妨げる要因となっていました。
しかし近年は、企業統治や資本政策の改革が進み、状況は大きく変わりつつあります。自社株買い・増配の拡大、政策保有株の解消、資本コスト意識の浸透などにより、株主還元の姿勢が強まりました。政府によるガバナンス強化策や市場区分の再編も後押しし、企業が株主価値向上を意識した経営に変わりつつあります。
長期投資をする際は、単に市場全体に投資するよりも、資本効率が高く還元姿勢の明確な企業を選ぶことが重要です。特にROEやROICが高く、配当や自社株買いを継続している企業は長期複利の恩恵を受けやすいです。また、為替や景気変動に左右されにくい構造を意識し、外国株や他資産との分散も有効です。
つまり、日本株が長期投資に不向きというのは過去の傾向にすぎず、今後は「選び方次第」で十分に長期成長が狙える市場です。ガバナンス改革や還元強化の流れを踏まえ、質の高い企業を長期で保有することが、今の日本株投資で最も有効な戦略といえます。
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ROE(Return On Equity/自己資本利益率)
ROE(Return On Equity/自己資本利益率)とは、企業が株主から預かった自己資本をどれだけ効率的に活用し、利益を生み出しているかを示す財務指標です。計算式は「ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」または「ROE(%)= EPS(一株当たり利益)÷ BPS(一株当たり純資産)× 100」で求められます。 ROEが高いほど、株主資本を効率的に活用して収益を上げていると判断され、投資家にとって魅力的な企業と見なされやすくなります。ただし、自己資本を減らしてROEを意図的に高める手法もあるため、借入依存度(財務レバレッジ)とのバランスも考慮する必要があります。長期投資の際は、ROEの推移や業界平均と比較し、持続的な成長が可能かを見極めることが重要です。 「Return On Equity」(自己資本利益率)の略。企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合で、計算式はROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100、またはROE(%)=EPS(一株当たり利益)÷ BPS(一株当たり純資産)× 100。ROE(自己資本利益率)は、投資家が投下した資本に対し、企業がどれだけの利益を上げているかを表す重要な財務指標。ROEの数値が高いほど経営効率が良いと言える。
株主還元
株主還元とは、企業が利益を出した際に、その一部を株主に対して返すことを指します。具体的には、配当金の支払い、自己株式の取得(自社株買い)、株主優待などの形で行われます。 これらは、株を保有している人にとっての「見えるリターン」であり、企業がどれだけ株主を大切にしているかを示す指標にもなります。特に長期投資を考えるうえでは、企業の成長性だけでなく、株主還元の姿勢も大切な判断材料になります。安定的な配当を出している企業は、収益基盤がしっかりしていると考えられるため、投資先として安心感があります。
政策保有株式
政策保有株式とは、単純に投資利益を得るためではなく、取引先や金融機関との関係を円滑にする目的で企業が保有する株式のことを指します。たとえば、取引先との関係強化や安定的な資金調達を目的として株を持ち合うことがあります。 これにより企業間の結びつきが強まり、取引の安定性が高まる一方で、株主の利益に必ずしも直結しない場合があるため、近年では保有の合理性や透明性を投資家から厳しく問われるようになっています。投資初心者にとっては「会社同士の付き合いのために持っている株」と理解すると分かりやすいです。
コーポレートガバナンス
コーポレートガバナンスとは、企業が経営を適切に行い、株主をはじめとする利害関係者(ステークホルダー)に対して責任ある経営を果たすための仕組みのことを指します。直訳すると「企業統治」で、企業の経営陣が独断的な行動を取らず、透明性のある判断を行うように監視・制御する体制全般を意味します。 たとえば、社外取締役の設置、内部統制の整備、情報開示の充実、株主の意見を反映させる仕組みなどがコーポレートガバナンスの具体的な取り組みにあたります。これにより、不正や粉飾決算の予防、長期的な企業価値の向上、投資家からの信頼獲得が期待されます。 資産運用の観点からは、コーポレートガバナンスがしっかりしている企業は、経営の安定性や成長性が高く、長期的に投資対象として魅力があると判断されやすいため、重要な評価項目の一つとなっています。特にESG投資や株主アクティビズムの広がりの中で、その重要性は年々高まっています。
自社株買い
自社株買いとは、企業が市場に出回っている自社の株式を自ら買い戻すことを指します。この行為は、企業が余剰資金を使って株主への利益還元を図る方法のひとつであり、株価の下支えや上昇を促す目的でも行われます。自社株を買い戻すことで市場に出回る株式の数が減少し、1株あたりの利益(EPS)が相対的に高まるため、投資家にとっては企業の価値向上のサインと受け取られることもあります。 また、買い戻した株式は「自己株式」として保有するか、将来的に消却(完全に廃止)されることが多く、それによって株式の希少性が高まるという効果もあります。自社株買いは、配当と並ぶ株主還元策として注目される一方で、その実施の背景やタイミングには注意が必要です。
資本効率
資本効率とは、企業が株主から預かった資本をどれだけ効率よく使って利益を生み出しているかを示す考え方です。限られたお金(自己資本や総資本)を使って、どれだけのリターン(利益やキャッシュフロー)を得られているかを見る指標であり、経営の質や企業価値を評価する際の重要な要素となります。代表的な指標にはROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)などがあります。 資本効率が高い企業は、少ない資本で大きな利益を生み出す力があると評価され、投資家にとって魅力的な投資先とされます。近年では、アクティビスト(物言う株主)などが経営陣に対して資本効率の改善を求めるケースも増えており、企業にとっては資本の使い方を戦略的に考えることが求められています。





