Loading...

MENU

記事>
東証プライム市場とは?上場基準や投資のメリットや注意点、TOPIXとの関係まで徹底解説

東証プライム市場とは?上場基準や投資のメリットや注意点、TOPIXとの関係まで徹底解説

難易度:

執筆者:

公開:

2025.08.26

更新:

2025.08.26

東証プライム市場とは、2022年4月の市場再編で誕生した東京証券取引所の最上位区分です。旧東証一部を引き継ぎつつ、株主数800人以上や流通株式時価総額100億円以上といった厳格な基準が設けられ、世界の機関投資家から信頼される市場として設計されました。さらに2025年3月には経過措置が終了し、基準未達の企業が退出するなど、市場全体の質が向上しています。本記事では、市場の定義や基準の詳細、投資メリットやリスク、TOPIXとの関係までを整理し、今なぜ注目すべきかを解説します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むと、東証プライム市場の役割や仕組みを体系的に理解できます。2022年4月に創設され、株主数800人以上や流通株式時価総額100億円以上などの厳しい基準を設けたこの市場は、2025年3月の経過措置終了により基準未達企業が退出し、質の高い企業だけが残る構造へと進化しました。本文では、プライム・スタンダード・グロースの違い、上場基準や維持条件、投資メリットとデメリット、さらにTOPIXとの関係まで幅広く解説します。読了後には、投資判断に必要な視点と安心感を得られるでしょう。

目次

東証プライム市場とは?日本の株式市場を代表する最上位マーケット

東証プライム市場の定義と位置づけ

なぜ市場再編が行われた?旧市場が抱えていた3つの課題

旧・東証一部との違いは?単なる名称変更ではない厳格化された基準

プライム・スタンダード・グロース市場の3つの違いとは?

コンセプトの違い:対象企業と成長ステージで役割が明確化

上場基準の違い:求められる企業規模やガバナンス水準を比較

東証プライム市場の上場基準:新規・維持に必要な厳しい条件とは

要件1.流通株式・時価総額:市場での取引活発さが求められる

要件2.流動性・売買代金:継続的な投資家からの関心が必須

要件3.収益基盤・財政状態:安定した経営基盤の証明が必要

要件4.コーポレート・ガバナンス:より高い透明性と規律が義務に

企業が東証プライム市場に上場するメリット・デメリット

プライム市場に上場するメリット

プライム市場に上場するデメリット

プライム市場の銘柄に投資する際の3つの視点

プライム銘柄の特徴:安定性とガバナンスに裏付けられた信頼感

投資する際の注意点:成長性の限界と大型株のリスク

投資方法の選択肢:個別株か、ETF・投資信託か

プライム市場の最新動向と上場企業数の確認方法

経過措置の終了がもたらした市場への影響

プライム市場の上場企業数の最新推移

上場企業数確認のための公式確認手段

プライム市場とTOPIXの関係:知っておくべき株価指数との違い

プライム市場の銘柄=TOPIX構成銘柄ではない

TOPIXと日経平均株価の根本的な違いも合わせて理解しよう

構成銘柄やセクターの偏りから市場全体を読み解く視点

東証プライム市場とは?日本の株式市場を代表する最上位マーケット

東証プライム市場とは何か、その定義から市場再編の背景、旧東証一部との違いまでを解説します。日本の株式市場の頂点に位置づけられるプライム市場は、グローバルな投資家から注目される厳しい基準を持つ市場です。その本質を理解するための基礎知識を、3つのポイントに分けて紐解きます。

東証プライム市場の定義と位置づけ

東証プライム市場とは、2022年4月に新設された東京証券取引所の最上位市場です。旧東証一部を継承しつつ、より厳しい基準が設けられました。国内外の機関投資家の投資対象となる、日本を代表する大企業が集まる市場としての役割や、その社会的信用の高さを解説します。

東証プライム市場は、2022年4月に東京証券取引所が導入した新しい市場区分です。旧来の東証一部に相当する最上位市場であり、国内外の機関投資家が投資対象とする大企業で構成されます。

旧東証一部より厳しい基準で選ばれるため、プライム上場企業は持続的な成長が期待でき、社会的信用も非常に高いと評価されます。プライム上場は、企業にとっては知名度と信頼性の向上に、投資家にとっては日本を代表する優良企業への投資機会につながります。

なぜ市場再編が行われた?旧市場が抱えていた3つの課題

2022年の市場再編は、旧市場が抱えていた課題を解決するために行われました。各市場のコンセプトの曖昧さ、新規上場と市場変更の基準の不整合、一度上場すると降格しにくい構造。これら3つの問題点が市場の魅力を損ねていた背景を、具体的に解説します。

市場再編の背景には、旧市場区分が抱えていた主に3つの課題がありました。

第一に、各市場のコンセプトが曖昧でした。東証一部、二部、マザーズ、JASDAQが併存し、対象企業層が重複していたため、特に海外投資家から違いが分かりにくいと指摘されていました。

第二に、市場間の格付けに問題がありました。例えば、マザーズから東証一部への市場変更基準が、新規上場基準より大幅に緩く、昇格が容易すぎると見なされていました。

第三に、上場維持基準が緩やかすぎました。一度東証一部に上場すると、業績が悪化しても降格されにくい構造でした。これが市場の新陳代謝を妨げ、企業の価値向上への意欲を削ぐ一因となっていました。

旧・東証一部との違いは?単なる名称変更ではない厳格化された基準

東証プライム市場は、旧東証一部からの単なる名称変更ではありません。その本質的な違いは、グローバル投資家を意識した明確なコンセプトと、より厳格化された上場・維持基準にあります。企業に持続的な成長を促すための、新しい市場設計のポイントを解説します。

プライム市場と旧東証一部の最も大きな違いは、そのコンセプトと基準の厳格さにあります。プライム市場には、以下のような明確なコンセプトが設定されました。

「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」

このコンセプトに基づき、上場基準や上場維持基準も旧一部より高く設定されています。これにより、企業には持続的な成長と企業価値向上への取り組みが強く求められます。まさに、選ばれた企業だけがその地位を維持できる市場として設計されているのです。

プライム・スタンダード・グロース市場の3つの違いとは?

東証の株式市場は、企業の特性や成長段階に応じて3つの区分に分かれています。日本を代表する大企業向けのプライム、中核企業向けのスタンダード、新興企業向けのグロース。それぞれの市場が持つ役割やコンセプト、そして上場するために求められる基準の違いを、比較しながら解説します。

コンセプトの違い:対象企業と成長ステージで役割が明確化

3つの市場は、それぞれ対象とする企業像が明確に定義されています。グローバルな大企業から成長可能性を秘めたベンチャーまで、どのような企業が集まる市場なのか。各市場のコンセプトを比較することで、その役割と位置づけの違いを理解することができます。

各市場のコンセプトは以下の通りです。

  • プライム市場:グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた、日本を代表する大企業向けの市場
  • スタンダード市場:公開された市場における投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた、日本経済の中核企業向けの市場
  • グロース市場:高い成長可能性を有する新興企業向けの市場

上場基準の違い:求められる企業規模やガバナンス水準を比較

市場のコンセプトは、具体的な上場基準にも反映されています。特に株主数や流通株式時価総額など、企業規模や市場での流動性に関する要件には大きな差があります。3市場の主な上場基準を表で比較し、特にプライム市場に求められる基準の高さについて解説します。

市場区分 (Market)  主な上場基準要件(新規上場)  上場企業数 ※(2025年8月時点)    
プライム市場株主数800人以上
流通株式時価総額100億円以上
流通株式比率35%以上等
約1,625社(全上場企業の約41%)
スタンダード市場株主数400人以上
流通株式時価総額10億円以上
流通株式比率25%以上等
約1,570社(全上場企業の約40%)
グロース市場株主数150人以上
流通株式時価総額5億円以上
流通株式比率25%以上等
約610社(全上場企業の約15%)

例えば、市場で自由に売買可能な株式の価値を示す流通株式時価総額は、スタンダード市場の10倍にあたる100億円以上が求められます。さらに、市場に流通する株式の割合を示す流通株式比率も35%以上と、他の市場より厳しい基準が設定されています。

東証プライム市場の上場基準:新規・維持に必要な厳しい条件とは

プライム市場に上場し、その地位を維持するには厳しい基準を満たす必要があります。最大の特徴は、新規上場と上場維持の基準がほぼ同水準である点です。求められる条件は、時価総額などの定量的な基準から、企業統治といった定性的な基準まで多岐にわたります。その具体的な内容を解説します。

プライム市場の上場基準は、旧東証一部の反省を踏まえ、新規上場時と上場維持時でほぼ同じ水準に設定されている点が特徴です。主な基準を以下の表に示します。

項目       新規上場基準           上場維持基準        
株主数800人以上800人以上
流通株式数20,000単位以上20,000単位以上
流通株式時価総額100億円以上100億円以上
時価総額250億円以上ー(規定なし)
流通株式比率35%以上35%以上
利益基盤・最近2年間の利益合計25億円以上
または
・最近1年の売上高100億円以上
 かつ時価総額1,000億円以上
ー(定量基準なし)
財政状態連結純資産50億円以上純資産が正であること
流動性ー(時価総額要件で代替)1日平均売買代金0.2億円以上

要件1.流通株式・時価総額:市場での取引活発さが求められる

プライム市場の企業には、多数の投資家が参加し、株式が円滑に売買される環境が不可欠です。そのため、株主数、市場で売買可能な株式の規模や比率について高い基準が設けられています。新規上場時には、企業全体の規模を示す時価総額も問われます。

プライム市場では、株主数800人以上、流通株式時価総額100億円以上、流通株式比率35%以上など、多くの投資家が参加し、活発な取引を促すための基準が新規・維持ともに課されます。新規上場時には、企業規模を示す要素として時価総額250億円以上という要件も加わります。

要件2.流動性・売買代金:継続的な投資家からの関心が必須

上場はゴールではありません。プライム市場の地位を維持するためには、日々の株式売買が活発に行われている必要があります。そのため、上場後も投資家からの関心が継続している証として、具体的な取引実績、すなわち1日あたりの平均売買代金が基準として設けられています。

上場維持基準では、新規上場時の時価総額要件の代わりに「1日平均売買代金0.2億円(2,000万円)以上」という取引実績が求められます。これは、上場後の株価変動よりも、日々の取引が円滑に成立する「流動性」を重視しているためです。

要件3.収益基盤・財政状態:安定した経営基盤の証明が必要

プライム市場に新規上場する企業には、高い水準の収益力が求められます。一方で上場維持の段階では、短期的な赤字よりも、企業存続の基盤となる財務の健全性が重視されます。純資産がマイナスとなる債務超過は、上場廃止につながる重大な問題と見なされます。

収益面では新規上場時に高いハードルが課されますが、上場維持基準に明確な利益要件はありません。ただし財政状態については、純資産がマイナスとなる債務超過の場合は上場廃止基準に抵触します。

要件4.コーポレート・ガバナンス:より高い透明性と規律が義務に

数値的な基準だけでなく、企業の質そのものも厳しく問われます。グローバルな投資家の信頼を得るため、プライム上場企業には、経営の透明性や規律を確保する「コーポレートガバナンス」の高度な実践が求められます。これには、独立した社外取締役の設置などが含まれます。

プライム上場企業には、より高度なコーポレートガバナンス・コードの全原則適用が求められます。具体的には、独立社外取締役の設置や英語での情報開示など、企業統治の面で高い水準が義務付けられています。表の項目以外にも、事業継続年数や監査法人の適正意見なども要件に含まれます。

企業が東証プライム市場に上場するメリット・デメリット

プライム市場に上場することは、企業にとって単なる「ステータス」以上の意味を持ちます。最上位区分に属することは、世界中の機関投資家からの信頼や、取引先・金融機関・求職者に対する強力なアピール材料となります。一方で、その地位を維持するためには高額なコストや厳格なガバナンス対応を伴い、経営陣には継続的な努力と体制強化が求められます。つまり、プライム市場は企業に「大きな機会」と「重い責任」の両方を突きつける舞台であり、メリットとデメリットを正しく理解することが欠かせません。

プライム市場に上場するメリット

資金調達力の向上

プライム市場は国内外の機関投資家の主要な投資対象となるため、株式発行や社債発行を通じた資金調達が容易になります。特にTOPIXや日経平均に組み入れられれば、インデックス連動型ファンドからの自動的な資金流入が期待でき、調達コストを下げる効果もあります。

社会的信用・ブランドの強化

最上位市場に上場している事実は、企業の信用力を高めます。取引先や金融機関からの信頼が増し、事業提携やM&A交渉において有利に働くほか、海外投資家からの認知度も向上します。CSRやサステナビリティの観点でも「プライム企業」というラベルはブランド価値の向上につながります。

優秀な人材の獲得・定着

厳格な基準をクリアした企業であることは、就職希望者にとって大きな安心材料です。経営の透明性や社会的信用の高さから、新卒採用や中途採用で優秀な人材が集まりやすく、従業員のロイヤルティ強化にも寄与します。

プライム市場に上場するデメリット

高額な維持コスト

上場料、監査費用、IR活動費、システム対応コストなど、上場維持にかかる固定費は数億円規模になるケースも少なくありません。特にプライムでは開示要件が高度化しているため、他市場に比べて負担は大きくなります。

厳格な情報開示とガバナンス負担

有価証券報告書や適時開示の精度はもちろん、サステナビリティ報告や英語での開示、独立社外取締役の設置など、国際基準に沿ったガバナンスが求められます。これらは企業価値を高める一方で、管理部門や取締役会に相当な負担を与えます。

株主からの短期的圧力

海外投資家を中心に株主構成が多様化することで、四半期ごとの業績改善や株主還元を強く求められる場面が増えます。経営の規律強化というプラス効果がある反面、中長期的な成長投資が軽視されるリスクや、アクティビストによる経営関与の可能性も高まります。

プライム市場の銘柄に投資する際の3つの視点

投資家にとってプライム市場は、安定性と信頼性の高さから長期投資に適した投資先です。ただし、メリットと同時に特有の限界やリスクも存在します。ここでは「特徴」「注意点」「投資方法」という3つの視点から、プライム銘柄投資を考える際に押さえておくべきポイントを整理します。

プライム銘柄の特徴:安定性とガバナンスに裏付けられた信頼感

プライム市場に上場している企業は、大型で財務基盤が安定し、コーポレートガバナンス体制も国際基準に沿って整備されています。これにより株価の変動は比較的穏やかで、ポートフォリオの中核を担う存在になりやすいのが特徴です。

投資家にとっての主な魅力は以下の3点です。

  • 高い流動性:売買が活発で、希望するタイミングで取引を成立させやすい。
  • 株価の安定性:財務や業績が堅調な大企業が中心のため、極端な値動きが少なく長期投資向き。
  • 企業の信頼性:厳しい基準を満たし、ガバナンスも強化されているため、透明性と持続可能性が高い。

投資する際の注意点:成長性の限界と大型株のリスク

安定していることはメリットですが、同時に「大きな伸びしろは限られる」という現実もあります。新興市場のように株価が急騰する機会は少なく、成熟企業ならではの課題があることを理解する必要があります。

特に注意したいのは以下の3点です。

  • 成長性の限界:成熟した大企業が多いため、短期間での大幅な株価上昇は期待しにくい。
  • 個別企業の見極め:経過措置で残留している企業など、必ずしも基準を完全に満たしているとは限らない。銘柄ごとに業績・財務を確認することが重要。
  • ポートフォリオの偏り:プライム市場は金融・製造業など特定業種が時価総額の大部分を占めるため、分散投資の観点を欠かすとリスクが集中する。

投資方法の選択肢:個別株か、ETF・投資信託か

プライム市場の企業に投資する方法は、大きく分けて2つあります。

個別株投資

銘柄を選定して直接株式を購入する方法。企業研究が必要ですが、リターンを自らコントロールしやすいのが特徴です。

インデックス投資(ETF・投資信託)

プライム市場の多くの銘柄はTOPIXやJPX日経インデックス400など主要指数に含まれており、これらに連動するETFや投資信託を買えば、分散投資を一度に実現できます。少額から始めやすく、NISAを活用する初心者にも適しています。

この方法を使えば、一つの商品を購入するだけでプライム市場の有力企業群に幅広く投資でき、長期的な資産形成においても効率的です。

インデックス投資の仕組みや注意点はこちらの記事で詳しく解説しています。

プライム市場の最新動向と上場企業数の確認方法

経過措置の終了がもたらした市場への影響

東証は2022年4月4日に市場再編を行い、「一部・二部・マザーズ・JASDAQ」の4市場を廃止して、プライム・スタンダード・グロースの3市場へ移行しました。

このとき、プライム市場には約1,839社(外国会社を含む)が上場しましたが、すべての企業が新基準を満たしていたわけではありません。そこで、基準を満たさない企業も改善計画を提出すれば一時的に残留できる「経過措置(猶予期間)」が設けられていました。

この経過措置は2025年3月以降に順次終了し、基準未達の企業はスタンダード市場への移行や上場廃止を余儀なくされました。その結果、プライム市場全体の質が底上げされ、市場の新陳代謝が進むこととなりました。

プライム市場の上場企業数の最新推移

経過措置終了後、プライム市場の企業数は次のように推移しています。

  • 2022年4月(再編直後):約1,839社
  • 2025年3月(経過措置終了時点):1,634社(外国会社を含む)
  • 2025年6月30日:1,624社
  • 2025年7月31日:1,620社
  • 2025年8月21日(最新):1,617社

この推移から、2022年の再編以降に設けられた経過措置の効果が終わりを迎え、2025年以降は企業整理が本格化していることが分かります。プライム市場は「数から質」への転換が進み、投資家にとっても構成銘柄の変化が実感できる局面に入っています。

上場企業数確認のための公式確認手段

最新の上場企業数や詳細なリストを確認するには、日本取引所グループ(JPX)の公式サイトを利用するのが最も確実です。情報源はすべてJPXに集約されており、以下のページを使い分けると便利です。

プライム市場とTOPIXの関係:知っておくべき株価指数との違い

プライム市場と、市場全体の動きを示すTOPIXは密接な関係にありますが、同一ではありません。両者の違いを正しく理解することは、投資判断の精度を高める上で重要です。プライム市場とTOPIXの関係性、代表的な株価指数である日経平均株価との違いまでを解説します。

市場指数(インデックス)については以下記事で詳しく解説しています。

プライム市場の銘柄=TOPIX構成銘柄ではない

プライム上場企業とTOPIXの構成銘柄は、重なる部分が大きいもののイコールではありません。プライム市場が企業が所属する「区分」であるのに対し、TOPIXは一定の基準で選ばれた銘柄で構成される「指数」です。両者の定義と、なぜズレが生じるのかを解説します。

プライム市場は企業が上場する「市場区分(場所)」、TOPIX(東証株価指数)は株価の動きを示す「指数(指標)」であり、両者は本質的に異なります。

かつてTOPIXは旧東証一部の全銘柄を対象としていましたが、市場再編でルールが見直されました。現在、TOPIXの構成銘柄は、主にプライム上場企業の中から「流通株式時価総額100億円以上」などの基準を満たす銘柄が選定されます。

そのため、プライムに上場していてもTOPIXから除外される企業もあれば、将来的にはスタンダード市場などからTOPIXに採用される企業が現れる可能性もあります。

TOPIXと日経平均株価の根本的な違いも合わせて理解しよう

日本の代表的な株価指数として、TOPIXと並び称されるのが日経平均株価です。しかし、算出方法や対象銘柄が全く異なるため、示す内容も変わります。投資信託のベンチマークとして重要なTOPIXの特性を、日経平均株価との比較を通じて明らかにします。

TOPIXは、構成銘柄の時価総額を基に算出され、市場全体の動きを反映する指数です。多くの投資信託やETFのベンチマークとなっており、銘柄に採用されると、それらの金融商品を通じた資金流入が期待できます。

一方、日経平均株価は、日本を代表する225社の株価を基にした平均値です。TOPIXとは算出方法が異なり、値がさ株(株価の高い銘柄)の動きに影響されやすい特徴があります。

日経平均株価やTOPIXとその関連ETFなどについては以下の記事で解説しています。

構成銘柄やセクターの偏りから市場全体を読み解く視点

TOPIXは市場全体を反映しますが、構成比率は均等ではありません。時価総額の大きいプライム銘柄、特に特定の業種の影響を強く受けます。TOPIX連動商品に投資する際に、自分の資産がどの業種に集中しているのかを意識することの重要性を解説します。

プライム市場の企業は時価総額の大きい特定の業種に偏る傾向があり、その構成はTOPIXにも反映されます。

そのため、投資家がTOPIXに連動する金融商品を購入するということは、間接的にそれらの特定業種へ資金を投じていることになります。どのような業種の企業に資金が向かっているのかを意識することで、より深く市場を理解することにつながります。

この記事のまとめ

東証プライム市場は、日本を代表する大企業が集まり、厳しい上場・維持基準を満たすことで信頼性と透明性を備えた市場です。投資家にとっては安定性や流動性の高い銘柄にアクセスできる一方で、成長性の限界や大型株特有のリスクも考慮が必要です。個別株だけでなくETFや投資信託を通じて分散投資することで、プライム市場の特性を活かした堅実な資産形成が可能となります。今後の投資判断にあたっては、基準や動向を正しく理解し、必要に応じて専門家へ相談することで、より確かな選択につながるでしょう。

投資のコンシェルジュを使ってみませんか?

コンシェルジュ編集部に相談CTA
投資のコンシェルジュ画像
投資のコンシェルジュ編集部

MONO Investment

投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

関連記事

TOPIXと日経平均株価の違いとは?日本の2大指数の仕組みや特徴を徹底解説

TOPIXと日経平均株価の違いとは?日本の2大指数の仕組みや特徴を徹底解説

2025.08.20

難易度:

インデックスとは

資産運用に欠かせないインデックス(指数)とは?初心者向けにわかりやすく解説

2025.07.28

難易度:

基礎知識ポートフォリオ運用経済指標投資信託・ETF投資理論

関連する専門用語

東京証券取引所(東証)

東京証券取引所とは、日本国内で最も規模が大きく、中心的な株式市場のことです。「東証(とうしょう)」という略称でも知られており、株式会社や投資信託などの金融商品が日々売買されている場所です。 上場企業は、一定の基準を満たすことで東京証券取引所で株式を公開でき、投資家はこれらの株を売買することで資産運用を行います。2022年には、従来の市場区分が見直され、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つに再編されました。東京証券取引所の動向は、日本の経済全体を反映する指標としても注目されており、日経平均株価やTOPIXなどの主要な株価指数もここで算出されています。資産運用を始めるうえで、非常に基本かつ重要な取引所です。

プライム市場

プライム市場とは、東京証券取引所(東証)が2022年に市場区分を再編した際に新設された3つの市場のうち、最も上位に位置づけられる市場区分のことです。 この市場には、安定した企業経営や高いガバナンス(企業統治)、適切な情報開示が求められ、主に国内外の機関投資家が投資対象とすることを想定しています。 プライム市場に上場するためには、株主数や流通株式比率、コーポレートガバナンス体制などの厳しい基準を満たす必要があります。そのため、プライム市場に上場している企業は、信頼性や成長性が高いと評価される傾向があります。投資初心者にとっても、この市場に上場している銘柄は比較的安心して調べ始める対象として適しています。

スタンダード市場

スタンダード市場とは、東京証券取引所が設ける市場区分のひとつで、一定の規模やガバナンス体制を備えた企業が上場する市場です。 2022年の市場再編により、新たに「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3区分が導入され、それまでの「東証一部」や「二部」「JASDAQスタンダード」などが統合・整理されました。 スタンダード市場に上場する企業は、プライム市場のような高いガバナンス要件までは求められないものの、安定した事業基盤と適切な情報開示を行うことが期待されています。そのため、投資家にとっては、グロース市場よりもリスクは控えめでありながら、プライム市場ほどの成熟企業ではない「中堅・中小企業」を中心に投資できるバランスの取れた市場といえます。安定性と成長性の両方を重視する投資家にとって、選択肢のひとつとなる市場です。

グロース市場

グロース市場とは、東京証券取引所が設けている株式市場のひとつで、特に成長性の高い企業が上場するための市場区分です。主に新興企業やスタートアップが対象となっており、まだ規模は小さいものの将来の事業拡大や革新的なビジネスモデルによって、高い成長が期待される企業が多く上場しています。 グロース市場は2022年に新設され、それまでの「マザーズ市場」や「JASDAQグロース」などを再編する形で誕生しました。この市場に上場している企業は、安定性よりも成長性を重視する傾向があるため、投資家にとってはハイリスク・ハイリターンの投資先とされます。 将来性のある企業に早い段階で投資できる魅力がある一方で、業績の変動や株価の上下も大きいため、慎重な情報収集とリスク管理が求められます。

流通株式

流通株式とは、証券取引所などの市場で一般の投資家が売買できる状態になっている株式のことを指します。会社が発行した株式のうち、創業者や大株主、役員などが長期保有して売買をあまり行わない株式以外の、日々の取引で実際に流通している部分がこれに該当します。 投資家にとっては、市場で売買できる株式がどれくらいあるかを把握することで、価格の変動性や売買のしやすさ(流動性)を判断する材料になります。流通株式が少ない企業は、株価が大きく動きやすい傾向があるため、取引する際には注意が必要です。証券取引所では、この流通株式の比率が一定以上あることを上場維持の条件とする場合もあります。

流通株式時価総額

流通株式時価総額とは、企業の株式のうち、市場で実際に売買される可能性の高い「流通株式」に現在の株価をかけて算出される合計金額のことです。これは企業全体の価値を表す「時価総額」とは異なり、大株主や役員などが長期保有していて市場に出てこない株式を除いた、一般投資家が売買できる部分だけを対象としています。 この指標は、企業の株がどれだけ市場で取引されているかを把握するのに役立ちます。特に東京証券取引所では、上場区分(プライム・スタンダードなど)の維持条件として、一定以上の流通株式時価総額が必要とされており、上場企業にとっては非常に重要な基準のひとつです。投資家にとっても、流通株式時価総額が大きい企業は株式の売買がしやすく、安定した取引が期待できるとされています。

流通株式比率

流通株式比率とは、ある企業の発行済株式のうち、市場で実際に売買される可能性が高い株式の割合を示す指標のことです。これは、創業者や大株主、役員などが長期保有していて市場に出回らない株式を除いた「一般投資家が取引できる株式」の比率を意味します。 この比率が高いほど、その企業の株は多くの投資家の手に渡りやすく、売買が活発であると見なされます。逆に比率が低すぎると、売買が成立しにくく価格が不安定になりやすいため、上場維持の基準としても重視されています。特に東京証券取引所では、一定以上の流通株式比率を満たさない企業は上場廃止のリスクがあるため、企業にとっても投資家にとっても重要な数字となります。

時価総額

時価総額、株式時価総額とは、ある上場企業の株価に発行済株式数を掛けたものであり、企業価値や規模を評価する際の指標。 時価総額が大きいということは、業績だけではなく将来の成長に対する期待も大きいことを意味する。

コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスとは、企業が経営を適切に行い、株主をはじめとする利害関係者(ステークホルダー)に対して責任ある経営を果たすための仕組みのことを指します。直訳すると「企業統治」で、企業の経営陣が独断的な行動を取らず、透明性のある判断を行うように監視・制御する体制全般を意味します。 たとえば、社外取締役の設置、内部統制の整備、情報開示の充実、株主の意見を反映させる仕組みなどがコーポレートガバナンスの具体的な取り組みにあたります。これにより、不正や粉飾決算の予防、長期的な企業価値の向上、投資家からの信頼獲得が期待されます。 資産運用の観点からは、コーポレートガバナンスがしっかりしている企業は、経営の安定性や成長性が高く、長期的に投資対象として魅力があると判断されやすいため、重要な評価項目の一つとなっています。特にESG投資や株主アクティビズムの広がりの中で、その重要性は年々高まっています。

TOPIX

TOPIXとは、「東証株価指数(Tokyo Stock Price Index)」の略で、東京証券取引所に上場している日本企業の中で、プライム市場に属するすべての銘柄の株価をもとに算出される株価指数です。 この指数は、上場企業全体の株価の動きを表しているため、日本の株式市場全体の健康状態や傾向を知るための「ものさし」として使われます。投資信託やETF(上場投資信託)などでは、TOPIXに連動する商品も多く販売されており、個別の企業に投資しなくても、日本経済全体に分散して投資するような効果が得られます。投資初心者にとっては、日本市場の動きをざっくりとつかむために、まず注目しておきたい指数のひとつです。

日経平均株価

日経平均株価とは、東京証券取引所に上場している日本の代表的な企業225社の株価をもとに算出される、日本を代表する株価指数のひとつです。正式には「日経225」とも呼ばれ、日本経済新聞社が算出・公表しています。 この指数は、対象となる225銘柄の「株価の平均値」で構成されており、時価総額ではなく株価そのものの水準が影響を与える「株価単純平均型」の指数です。つまり、株価が高い銘柄の動きが、指数全体に与える影響が大きくなります。日経平均株価は、景気や市場全体の動向を知るうえで広く利用されており、ニュースや経済指標でも頻繁に登場するため、資産運用の初歩として知っておきたい重要な指標です。

ETF(上場投資信託)

ETF(上場投資信託)とは、証券取引所で株式のように売買できる投資信託のことです。日経平均やS&P500といった株価指数、コモディティ(原油や金など)に連動するものが多く、1つのETFを買うだけで幅広い銘柄に分散投資できるのが特徴です。通常の投資信託に比べて手数料が低く、価格がリアルタイムで変動するため、売買のタイミングを柔軟に選べます。コストを抑えながら分散投資をしたい人や、長期運用を考えている投資家にとって便利な選択肢です。

投資信託

投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。

NISA

NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。

経過措置

経過措置とは、法律や制度が新しく変更・施行されたときに、すぐにすべての人や取引にその新制度を適用するのではなく、一定期間だけ旧制度や特例を認めることで、影響を緩やかにするための対応措置のことです。 資産運用や税制の分野では、例えば税率が上がる場合や控除制度が変わる場合に、それまでのルールで手続きした人に対しては旧ルールをしばらく適用し続ける、という形で使われます。 これにより、投資家や納税者が急な制度変更による不利益や混乱を避けられるようになります。ただし、経過措置には期限があるため、その適用期間や条件をよく確認しておくことが大切です。

債務超過

債務超過とは、企業や個人の財務状況において「資産よりも負債のほうが多い」状態を指します。つまり、持っているお金や資産をすべて使っても、借金や支払い義務を返済しきれない状況のことです。 企業の場合、貸借対照表(バランスシート)上で純資産がマイナスになっていると債務超過とみなされ、財務的には非常に厳しい状態とされます。このような状態が長く続くと、資金調達が困難になり、最終的には倒産や再建手続きに進む可能性もあります。 ただし、債務超過だからといって直ちに破綻するわけではなく、将来的に収益を上げる見込みがあったり、資本注入や再建策が講じられたりすれば、回復の可能性もあります。投資家にとっては、企業の健全性を見極めるうえで、債務超過かどうかを確認することは非常に重要なポイントとなります。

資産運用に役立つ情報をいち早くGET!

無料LINE登録

資産運用について気軽にご相談したい方

プロへ相談する

当メディアで提供するコンテンツは、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。 銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。 本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。 また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。

投資のコンシェルジュ

運営会社: 株式会社MONO Investment

Email:

運営会社利用規約各種お問い合わせプライバシーポリシーコンテンツの二次利用について

「投資のコンシェルジュ」はMONO Investmentの登録商標です(登録商標第6527070号)。

Copyright © 2022 株式会社MONO Investment All rights reserved.

「投資のコンシェルジュ」はMONO Investmentの登録商標です(登録商標第6527070号)。

Copyright © 2022 株式会社MONO Investment All rights reserved.