政策保有株式とはなんですか?なぜ企業による売却・縮減が進んでいるのでしょうか?
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2025/09/02 08:27
男性
30代
企業が保有する株式の中には「政策保有株式」というものがあると聞きましたが、これは具体的にどのような株式を指すのでしょうか。また、近年では企業が政策保有株式を売却・縮減する動きが広がっているということなのですが、その背景にはどのような理由があるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
政策保有株式とは、企業が純粋な投資目的ではなく、取引先や金融機関との関係を安定させたり、経営上のつながりを強化するために保有する株式のことを指します。例えば、主要な仕入先や販売先、取引銀行の株式を持つことで、長期的な関係性を維持しようとする狙いがあります。短期的な株価の上昇や配当収入を目的としない点が特徴です。
しかし、近年は多くの企業がこの政策保有株式を売却したり、縮減する動きを強めています。その大きな理由のひとつは、コーポレートガバナンス・コードなどによる規制の強化です。企業は株主に対して「資本効率を高める努力」を示すことが求められるようになり、収益に結びつきにくい政策保有株式は見直し対象となっています。
さらに、株式を売却することで得た資金を、自社の成長投資や株主への還元(配当や自社株買いなど)に使えるというメリットもあります。資産を効率よく活用する考え方が広まる中で、戦略的な効果が薄れた株式を持ち続けるのは合理的ではないと判断されやすくなっているのです。
加えて、海外投資家を中心に、企業の資本効率や経営の透明性を重視する視点が強まっています。政策保有株式が多い企業は「資本の使い方が非効率」と見られ、株価評価で不利になる傾向があります。そのため、株主からの圧力も売却や縮減を後押しする要因となっています。
まとめると、政策保有株式はかつては企業間の安定的な関係づくりに役立っていましたが、現在はガバナンス強化や資本効率の重視といった流れから、見直しや売却が進む傾向にあるのです。
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関連する専門用語
政策保有株式
政策保有株式とは、単純に投資利益を得るためではなく、取引先や金融機関との関係を円滑にする目的で企業が保有する株式のことを指します。たとえば、取引先との関係強化や安定的な資金調達を目的として株を持ち合うことがあります。 これにより企業間の結びつきが強まり、取引の安定性が高まる一方で、株主の利益に必ずしも直結しない場合があるため、近年では保有の合理性や透明性を投資家から厳しく問われるようになっています。投資初心者にとっては「会社同士の付き合いのために持っている株」と理解すると分かりやすいです。
コーポレートガバナンス・コード
コーポレートガバナンス・コードとは、上場企業が持続的に企業価値を高めるために守るべき原則をまとめた指針のことです。正式には「企業統治指針」とも呼ばれ、経営の透明性、公正性、迅速な意思決定、株主との建設的な対話などを促進することを目的としています。 日本では、金融庁と東京証券取引所が共同で策定し、2015年に導入され、2021年には改訂も行われました。このコードは法的拘束力はないものの、企業には「原則を守るか、守らない場合は理由を説明する(コンプライ・オア・エクスプレイン)」という方針が求められており、上場企業にとって実質的に強い影響力を持ちます。経営の信頼性を高めるだけでなく、国内外の投資家からの評価向上にもつながるため、資本市場との関係構築において極めて重要な役割を果たしています。
資本効率
資本効率とは、企業が株主から預かった資本をどれだけ効率よく使って利益を生み出しているかを示す考え方です。限られたお金(自己資本や総資本)を使って、どれだけのリターン(利益やキャッシュフロー)を得られているかを見る指標であり、経営の質や企業価値を評価する際の重要な要素となります。代表的な指標にはROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)などがあります。 資本効率が高い企業は、少ない資本で大きな利益を生み出す力があると評価され、投資家にとって魅力的な投資先とされます。近年では、アクティビスト(物言う株主)などが経営陣に対して資本効率の改善を求めるケースも増えており、企業にとっては資本の使い方を戦略的に考えることが求められています。
配当(配当金)
配当とは、会社が得た利益の一部を株主に分配するお金のことをいいます。企業は利益を出したあと、その一部を将来の投資に使い、残った分を株主に還元することがあります。このときに支払われるお金が配当金です。株を持っていると、持ち株数に応じて定期的に配当金を受け取ることができます。多くの場合、年に1回または2回支払われ、企業によって金額や支払い時期は異なります。配当は企業からの「お礼」のようなもので、株を長く持ち続ける理由の一つになることがあります。
自社株買い
自社株買いとは、企業が市場に出回っている自社の株式を自ら買い戻すことを指します。この行為は、企業が余剰資金を使って株主への利益還元を図る方法のひとつであり、株価の下支えや上昇を促す目的でも行われます。自社株を買い戻すことで市場に出回る株式の数が減少し、1株あたりの利益(EPS)が相対的に高まるため、投資家にとっては企業の価値向上のサインと受け取られることもあります。 また、買い戻した株式は「自己株式」として保有するか、将来的に消却(完全に廃止)されることが多く、それによって株式の希少性が高まるという効果もあります。自社株買いは、配当と並ぶ株主還元策として注目される一方で、その実施の背景やタイミングには注意が必要です。
海外投資家
海外投資家とは、日本以外の国や地域に住んでいる個人や法人が、日本の株式や債券、不動産などに投資を行う場合に用いられる呼び方です。日本市場にとって海外投資家は大きな存在であり、株価の動きや取引量に大きな影響を与えることがあります。 特に株式市場では、海外投資家の売買動向が日経平均株価や為替相場に反映されやすいため、マーケット全体を見通すうえで欠かせない存在といえます。投資初心者にとっては「外国から日本の資産に投資している人や会社」と理解すると分かりやすいです。