老後資金の準備で退職前に考えておくべきことはありますか?
老後資金の準備で退職前に考えておくべきことはありますか?
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2024/06/07 19:28
男性
60代
退職金や公的年金、確定拠出年金など老後資金に影響するものがこれから一気に押し寄せてきて、考えることがたくさんあります。老後資金の準備で退職前に考えておくべきことはありますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
退職前に取り組むべき老後資金対策は、①生活費の精密試算、②受取戦略の最適化、③資金繰りシミュレーション、④リスク備えの4本柱で考えると整理しやすくなります。
① 生活費の精密試算
住居費・食費・保険料・医療・介護・趣味娯楽などを現在価値で洗い出し、物価上昇率や平均寿命延伸をかけ合わせて「将来価値」を算出します。物価2%上昇が続くと30年後の生活費は約1.8倍に膨らむ点を忘れずに。
② 受取戦略の最適化
公的年金、退職金、確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)の受取時期と方法を組み合わせ、税・社会保険負担を最小化します。
- 退職金と確定拠出年金を同一年に一時金受取→退職所得控除枠を最大活用
- 公的年金を70歳まで繰下げ→受給額42%増で長寿リスクをカバー
- 確定拠出年金を年金形式で受取→運用継続でインフレ耐性を高める
③ 資金繰りシミュレーション
手取りベースのキャッシュフロー表を作成し、赤字転換点や必要運用利回りを可視化します。これが退職前に追加投資・資産配分変更・年金繰下げなどを検討する羅針盤になります。
④ リスク備え
医療・介護費、住宅修繕費など突発支出に備え、生活費1年分以上の流動資金と必要最低限の保険(医療・介護・長期保証型火災保険など)を確保します。
金融庁が示した「老後2000万円不足」は、長寿化とインフレでさらに拡大しかねません。退職後も安全資産(預金・短期債)と成長資産(株式・投資信託)を組み合わせ、つみたてNISAや企業型DCの運用を継続しながら、計画的に取り崩す“ライフタイム・リバランス”を実践してください。少なくとも退職3年前には専門家と計画を策定し、毎年アップデートする――これが安心して長い老後を過ごすための王道です。
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退職金
退職金とは、長年勤務した従業員が退職する際に企業から支給される一時金のことです。その金額は、勤務年数や役職、企業の規模や方針などによって決まり、退職後の生活を支える目的で支給されます。また、従業員にとっては将来への安心感を得るための制度であり、企業にとっては長年の貢献に対する感謝の意を示すとともに、円滑な人事の移行を促す役割も果たします。 退職金は、通常の給与とは異なり、特別な支払いとして扱われるため、税金の計算方法も異なります。一定の条件を満たすと税優遇措置が適用され、受け取る金額に対する税負担が軽減されることがあります。そのため、退職金を受け取る際には、税制や受け取り方法について事前に確認しておくことが大切です。 退職金の制度や金額の決め方は、企業の就業規則や雇用契約によって定められています。また、一括で受け取る方法と分割して受け取る方法があり、運用方法によっては老後の資産形成にも活用できます。退職金をどのように管理・運用するかは、将来の生活設計に大きく影響するため、計画的に活用することが重要です。
確定給付年金
確定給付年金(Defined Benefit)とは、受給者の給与や勤務年数などによってあらかじめもらえる金額が決まっている年金のこと。給付額が制度資産の利回りに依拠しないという特徴がある。確定給付企業年金を指す言葉として用いられることもある。受給者に対するメリットとしては、確定給付年金(DB)は確定拠出年金(DC)と比べて資産管理に気を使わなくてよく、老後の安定的な収入源になるが、償却負担が重い場合には給料に悪影響を及ぼす可能性があり、受給権がわかりにくいというデメリットがある。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
企業型確定拠出年金 (企業型DC)
「企業型確定拠出年金(企業型DC:Corporate Defined Contribution Plan)」とは、企業が従業員のために設ける年金制度の一つです。企業が毎月一定額の掛金を拠出し、そのお金を従業員が自分で運用します。運用商品には、投資信託や定期預金などがあり、選び方によって将来の受取額が変わります。 この制度は、老後資金を準備するためのもので、掛金の拠出時に税制優遇があるというメリットがあります。ただし、運用によっては資産が増えることもあれば、減ることもあります。また、個人型確定拠出年金(iDeCo:Individual Defined Contribution Plan)と異なり、掛金は企業が負担します。企業にとっては福利厚生の一環となり、従業員の定着にも役立つ制度です。
退職所得控除
退職所得控除とは、退職金を受け取る際に税金を軽くしてくれる制度です。長く働いた人ほど、退職金のうち税金がかからない金額が大きくなり、結果として納める税金が少なくなります。この制度は、長年の勤続に対する国からの優遇措置として設けられています。 控除額は勤続年数によって決まり、たとえば勤続年数が20年以下の場合は1年あたり40万円、20年を超える部分については1年あたり70万円が控除されます。最低でも80万円は控除される仕組みです。たとえば、30年間勤めた場合、最初の20年で800万円(20年×40万円)、残りの10年で700万円(10年×70万円)、合計で1,500万円が控除されます。この金額以下の退職金であれば、原則として税金がかかりません。 さらに、退職所得控除を差し引いた後の金額についても、全額が課税対象になるわけではありません。実際には、その半分の金額が所得とみなされて、そこに所得税や住民税がかかるため、税負担がさらに抑えられる仕組みになっています。 ただし、この退職所得控除の制度は、将来的に変更される可能性もあります。税制は社会情勢や政策の方向性に応じて見直されることがあるため、現在の内容が今後も続くとは限りません。退職金の受け取り方や老後の資産設計を考える際には、最新の制度を確認することが大切です。
つみたてNISA
つみたてNISAとは、少額からの長期・積立・分散投資を応援するために、国が用意した税制優遇制度のひとつです。正式には「少額投資非課税制度(NISA)」の一種で、一定の条件を満たした投資信託やETFに積立投資をすることで、その運用益や分配金が最長20年間、非課税になります。 対象商品は金融庁が選定した長期投資にふさわしい商品に限られているため、初心者でも安心して始めやすい制度です。毎年の投資上限額が決まっており、計画的に資産を育てていくのに向いています。将来の資産形成を目指す人にとって、つみたてNISAは非常に有効な選択肢のひとつです。



