任意後見制度とはどのような制度ですか?
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2025/07/29 06:58
男性
60代
最近、自分の親戚が高齢になり、認知症になったときの財産管理や介護について考え始めました。本人が元気なうちに準備できる任意後見制度に関心があります。任意後見制度はどんな仕組みか教えていただけますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
任意後見制度は、ご自身が健康で判断能力があるうちに、公証役場で契約を結び、将来の認知症など判断能力が低下した際に備える仕組みです。契約では、財産管理や介護支援などを行う代理人(任意後見人)を事前に指定します。任意後見人は親族でも専門職(弁護士・司法書士など)でも指定可能で、ご本人が病気や加齢で判断能力を失った際に家庭裁判所の審判を経て任意後見が発効します。その後は、任意後見監督人(家庭裁判所が選任)が任意後見人の行動をチェックするため、不正を防ぎ安全性が保たれます。
具体的な業務は、預貯金や証券口座の管理・運用、不動産の売却や賃貸、税金や介護サービスの契約手続きなど、ご本人が行えなくなる日常的な資産管理や生活サポートを代理して実行します。これにより、ご本人の判断能力低下後も資産凍結や投資停止といったリスクを避け、円滑に資産運用や生活を継続できます。
一方で、任意後見人には契約内容以外の行動や財産処分を取り消す権限はありません。また死亡後の手続きも対象外となるため、資産規模が大きい方は家族信託や法定後見制度と併用することで、より充実した財産保護体制を整えることが一般的です。近年では、このような併用を正式に認める法改正も検討されています。
つまり、任意後見制度はご本人の意思を最大限尊重しつつ、財産と生活を守るための基本的な仕組みです。早めの契約締結と適切な制度の組み合わせを検討すると、将来の安心につながります。
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関連する専門用語
任意後見人
任意後見人とは、本人が将来判断能力を失った場合に備えて、あらかじめ信頼できる相手と結んでおいた「任意後見契約」に基づき、本人の財産管理や生活支援などを代わりに行う人のことです。この契約は、本人がまだ判断能力のあるうちに公正証書で結ばれ、実際に判断能力が不十分になったと家庭裁判所が判断し、任意後見監督人が選任された段階で効力が発生します。 任意後見人の業務は、日常の金銭管理や契約手続き、介護サービスの手配、不動産の管理など多岐にわたり、本人の意思を尊重しつつ、その権利や生活を守ることが求められます。家族や専門職(司法書士・弁護士など)が任命されることが多く、安心して老後を迎えるための備えとして注目されている制度です。
任意後見監督人
任意後見監督人とは、将来に備えてあらかじめ結んでおいた「任意後見契約」が実際に発効されたときに、任意後見人の業務が適正に行われているかを監督する立場として、家庭裁判所により選任される第三者のことです。本人の判断能力が低下し、任意後見契約の内容に基づいて後見が開始された場合、任意後見人だけでは不正やミスが起きるおそれがあるため、それをチェックする役割を担います。 任意後見監督人は通常、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれ、定期的に家庭裁判所へ報告を行いながら、任意後見人の活動を見守ります。資産管理や生活支援を本人に代わって行う制度を円滑かつ安全に機能させるための重要な存在であり、任意後見制度の信頼性を支える柱となります。
身上監護(しんじょうかんご)
身上監護(しんじょうかんご)とは、本人の生活や健康、福祉などに関わる事柄について、本人の意思を尊重しながら必要な支援や意思決定の代行を行うことを指します。これは成年後見制度において、後見人が担う重要な役割のひとつで、財産管理とは異なる側面の支援です。 たとえば、介護サービスの利用手続き、施設への入所契約、医療機関との対応、日常生活の環境整備などが含まれます。身上監護は、本人の人格と尊厳を守り、その人らしい生活を送れるよう支援することを目的としており、後見人には単なる「代行者」ではなく、本人の意思をくみ取り、必要な配慮をしながら行動することが求められます。高齢者や障がいのある方の生活を支えるうえで、身上監護は法的・実務的に非常に重要な概念です。
家族信託
家族信託とは、ご自身の財産を信頼できる家族に託し、その管理や運用を契約で定めた目的に沿って行ってもらう仕組みです。委託者さまは公正証書で信託契約を締結し、現金や不動産、株式などを信託財産として受託者名義に移転します。これにより、たとえ将来認知症を発症されても資産が凍結されず、受益者さまへ生活費や医療費を継続して届けられる点が大きなメリットです。相続発生後は受益権そのものが相続対象となるため、遺産分割協議を簡素化できる効果も期待できます。 もっとも、家族信託には手続きと費用が伴います。不動産を組み入れる場合は信託登記が必要となり、登録免許税や司法書士報酬、公証人手数料が発生いたします。また、受託者さまは信託口座の開設、収支報告書の作成、信託財産とご自身の財産の分別管理など、煩雑な事務を担う義務があります。税務面では契約締結時に贈与税が課税されることは原則ございませんが、信託財産を売却した際の譲渡所得税や信託終了時の相続税は避けられません。そのため、成年後見制度や遺言信託と比較しながら、費用対効果や家族の負担を総合的に検討することが大切です。
法定後見制度
法定後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分になった人を保護・支援するために、家庭裁判所が選任する「後見人」が本人に代わって財産管理や契約行為などを行う制度です。本人の意思決定が難しくなった後でも、生活や財産を適切に守るための仕組みであり、民法に基づいて運用されています。法定後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」という3つの類型があり、それぞれに必要な支援の範囲や後見人の権限が異なります。 たとえば、銀行口座の管理、不動産の処分、介護サービスの契約などを後見人が代行します。制度を利用するには家庭裁判所への申立てが必要であり、親族や市区町村などが申し立て人になるケースも多く見られます。本人が元気なうちに備える「任意後見制度」との違いを理解することも大切です。