傷病手当金が貰えないケースにはどのようなものがありますか?
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2025/08/29 08:41
男性
40代
傷病手当金は、病気やケガで働けないときに生活を支える大切な制度だと理解していますが、実際には条件を満たさないと支給されない場合があると聞きました。具体的にどのようなケースで「支給されない」ことになるのか教えていただけますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
傷病手当金は、会社員や公務員など健康保険に加入している人が、業務外の病気やケガで働けなくなったときに支給される制度です。しかし、条件を満たさなければ支給されないことがあります。
まず、医師が「働くことが可能」と判断した場合は受け取れません。本人が働けないと感じていても、診断書で労務不能と認められなければ支給の対象外です。また、休業中にアルバイトや軽作業をして収入を得ている場合も、労務不能とはみなされず不支給になります。
次に、待期要件を満たしていない場合も注意が必要です。傷病手当金を受けるには、最初の3日間を連続して休業する必要があります。この間に出勤してしまったり、有給休暇を使って給与が支払われると、待期が成立せず給付が受けられません。
さらに、会社から給与が出ているときも支給されないことがあります。給与額が傷病手当金より多ければ給付はゼロとなり、給与が一部だけ支払われている場合は、その差額分だけが支給される仕組みです。
また、退職後に傷病手当金を受け取る場合には、退職日までに待期期間が完成していなければなりません。退職後に病気で働けなくなった場合は対象外です。さらに、国民健康保険に加入している人は原則として傷病手当金の制度がないため、そもそも受け取ることができません。
加えて、病気やケガの原因にも制限があります。業務上や通勤中の事故や病気については、健康保険ではなく労災保険が適用されるため、傷病手当金は支給されません。
このように、傷病手当金を受け取るためには「健康保険の加入」「業務外の病気やケガで労務不能」「待期成立」「給与の支給状況」など、複数の条件を満たす必要があります。制度を正しく理解しておかないと、申請しても却下される可能性があるため、事前に条件をしっかり確認しておくことが大切です。
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傷病手当金(しょうびょうてあてきん)
傷病手当金(しょうびょうてあてきん)とは、会社員など健康保険に加入している被保険者が、業務外の病気やけがによって働けなくなり、給与の支払いを受けられない場合に支給される所得補償制度です。 原則として、連続する3日間の待期期間のあと、4日目以降の働けなかった日から支給されます。支給期間は同一の傷病につき、支給開始日から通算して最長1年6か月です。支給額は、休業前の標準報酬日額の3分の2に相当する額で、収入減少を一定程度補う役割を果たします。 支給を受けるには、医師による「労務不能」の証明が必要です。また、会社から給与が一部支給される場合は、その分が差し引かれて調整されます。なお、退職後であっても在職中に支給要件を満たしていれば、継続して受給できる場合があります。 一方で、国民健康保険(自営業者やフリーランスなどが加入する制度)には原則として傷病手当金の仕組みがありません。 これは、国民健康保険が「個人単位」での医療費給付を目的とした制度であり、勤務先を持たない人には“給与の喪失”という概念が存在しないため、所得補償を行う仕組みが制度設計上含まれていないことが理由です。 ただし、一部の自治体では独自に「国民健康保険傷病手当金」を設けており、新型コロナウイルス感染症など特定の事由に限って給付されるケースがあります。とはいえ、全国的には例外的な措置にとどまります。 このように、傷病手当金は会社員や公務員など被用者保険に加入している人のための制度であり、自営業者など国民健康保険加入者は対象外となる点に注意が必要です。
健康保険
健康保険とは、病気やけが、出産などにかかった医療費の自己負担を軽減するための公的な保険制度です。日本では「国民皆保険制度」が採用されており、すべての人が何らかの健康保険に加入する仕組みになっています。 会社員や公務員などは、勤務先を通じて「被用者保険」に加入し、自営業者や無職の人は市区町村が運営する「国民健康保険」に加入します。保険料は収入などに応じて決まり、原則として医療費の自己負担は3割で済みます。また、扶養されている家族(被扶養者)も一定の条件を満たせば保険の対象となり、個別に保険料を支払わなくても医療サービスを受けられる仕組みになっています。健康保険は日常生活の安心を支える基本的な社会保障制度のひとつです。
労務不能
労務不能とは、病気やけがなどが原因で、これまで行っていた仕事や業務を一時的に行えない状態のことをいいます。たとえば、体調を崩して医師から就労を控えるよう指示された場合などが該当します。 これは、単に休みたいという意思ではなく、医学的な理由に基づいて就労が困難と判断されている状態です。健康保険制度においては、労務不能であることが「傷病手当金」を受け取るための重要な条件となっており、医師の診断書や意見書が必要になることもあります。また、労務不能の状態は一時的なものであり、回復後には再び労務に復帰することが前提とされています。
待期要件
待期要件とは、雇用保険や健康保険などの給付金を受け取る際に、支給開始までに一定の日数を待つ必要があるという条件のことを指します。たとえば、失業保険(基本手当)を受給する場合、原則として7日間の「待期期間」があり、その間は失業の状態であっても給付は行われません。 この7日間をすべて「就労していない日」として満たすことで、初めて受給資格が成立します。また、自己都合退職の場合は、7日の待期期間に加えて2か月(以前は3か月)の給付制限があるため、実際に給付が始まるまでに時間がかかります。待期要件は、給付の不正受給を防ぐとともに、制度の公平性を保つために設けられている仕組みです。
有給休暇
有給休暇とは、働いている人が会社を休んでも、その日数分の給与が支払われる休暇のことです。正式には「年次有給休暇」といい、一定期間働いた後に労働者の権利として付与されるものです。たとえば、1年間継続して勤務した場合には最低でも年に10日間の有給休暇が法律で認められており、会社の許可がなくても取得することが可能です。 休暇中でも給与が支給されるため、生活の安定を図りながら心身のリフレッシュができる制度です。資産運用や家計管理の視点では、有給休暇を計画的に使うことで、突発的な収入減少を避けたり、無給の休暇と混同しないようにしたりすることが大切です。
労災保険
労災保険とは、働いている人が仕事中や通勤中にけがをしたり、病気になったり、あるいは亡くなってしまった場合に、その人や遺族を金銭的に支援するための公的保険制度です。正式には「労働者災害補償保険」といい、すべての労働者が対象となります。保険料は事業主(雇用主)が全額負担し、労働者自身が支払うことはありません。 治療費の補償だけでなく、働けない期間の生活費を支える給付や、障害が残った場合の補償、遺族への年金など多くの給付内容が含まれています。資産運用の視点から見ると、万が一の事態に備えるセーフティネットとして、この制度を理解しておくことが安心につながります。





