国内債券型インデックスファンドでも元本割れするというのはなぜですか?
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2025/09/17 10:18
男性
50代
国内債券型インデックスファンドは比較的安全と説明されることが多いですが、それでも元本割れする可能性があると聞きました。なぜ債券を対象にしたインデックスファンドでも元本保証ではなく、損失が出るリスクがあるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
国内債券型インデックスファンドが元本割れする理由は、金利変動や信用リスクによって保有債券の価格が下がるからです。
まず、ファンドの基準価額は保有している債券を毎日「時価」で評価して算出されます。そのため、預金のように元本が保証されるわけではなく、市場環境によっては評価額が下がり、元本割れとなることがあります。
次に、債券価格は金利と逆の動きをします。金利が上がると将来の利息の価値が低下し、価格が下がります。特に長期国債を多く含むファンドでは金利上昇の影響が大きく、短期的に評価損を抱えることもあります。
また、社債を含む指数では信用リスクも影響します。景気悪化や企業の信用不安が強まると、社債価格が下がり、ファンド全体の基準価額が押し下げられる場合があります。
さらに、インデックスファンドは個々の債券を満期まで保有するのではなく、指数に合わせて銘柄を入れ替えます。そのため、「保有を続ければ額面が返ってくる」という性質はなく、価格下落が長引く可能性もあります。
分配金についても注意が必要です。利息収入を原資に分配が行われることがありますが、場合によっては元本を取り崩して分配するケースもあります。分配金があるからといって必ず利益が出ているわけではなく、トータルリターンで判断する必要があります。
さらに、国内債券は利回りが非常に低いため、信託報酬や売買コストの影響が相対的に大きくなり、金利が動かなくてもマイナスになることがあります。ETFを利用する場合は売買手数料やスプレッドも実質コストとなります。
元本割れが起こりやすいのは、金利が上昇する局面や景気が悪化する局面、そして利回りが低くコスト負担が重い局面です。短期間で売買する場合は一時的な評価損の影響を受けやすいため、注意が必要です。
リスクを抑えるには、自分の保有期間とファンドのデュレーションを照らし合わせたり、国債と社債の割合や信託報酬を確認したりすることが重要です。分配方針を理解し、分配金ではなくトータルリターンで評価することも欠かせません。
まとめると、国内債券型インデックスファンドは「比較的安全性が高い資産クラス」ではあるものの、金利変動や信用リスク、コストの影響で元本割れが起こる可能性は常にあります。そのため、運用にあたっては性質を理解し、資産全体の中での位置づけを考えることが大切です。
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信用リスク(クレジットリスク)
信用リスクとは、貸し付けた資金や投資した債券について、契約どおりに元本や利息の支払いを受けられなくなる可能性を指します。具体的には、(1)企業の倒産や国家の債務不履行(いわゆるデフォルト)、(2)利払いや元本返済の遅延、(3)返済条件の不利な変更(債務再編=デット・リストラクチャリング)などが該当します。これらはいずれも投資元本の毀損や収益の減少につながるため、信用リスクの管理は債券投資の基礎として非常に重要です。 この信用リスクを定量的に評価する手段のひとつが、格付会社による信用格付けです。格付は通常、AAA(最上位)からD(デフォルト)までの等級で示され、投資家にとってのリスク水準をわかりやすく表します。たとえば、BBB格付けの5年債であれば、過去の統計に基づく累積デフォルト率はおおよそ1.5%前後とされています(S&Pグローバルのデータより)。ただし、格付はあくまで過去の情報に基づいた「静的な指標」であり、市場環境の急変に即応しにくい側面があります。 そのため、市場ではよりリアルタイムなリスク指標として、同年限の国債利回りとの差であるクレジットスプレッドが重視されます。これは「市場に織り込まれた信用リスク」として機能し、スプレッドが拡大している局面では、投資家がより高いリスクプレミアムを求めていることを意味します。さらに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料率は、債務不履行リスクに加え、流動性やマクロ経済環境を反映した即時性の高い指標として、機関投資家の間で広く活用されています。 こうしたリスクに備えるうえでの基本は、ポートフォリオ全体の分散です。業種や地域、格付けの異なる債券を組み合わせることで、特定の発行体の信用悪化がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。なかでも、ハイイールド債や新興国債は高利回りで魅力的に見える一方で、信用力が低いため、景気後退時などには価格が大きく下落するリスクを抱えています。リスクを抑えたい局面では、投資適格債へのシフトやデュレーションの短縮、さらにCDSなどを活用した部分的なヘッジといった対策が有効です。 投資判断においては、「高い利回りは信用リスクの対価である」という原則を常に意識する必要があります。期待されるリターンが、想定される損失(デフォルト確率×損失率)や価格変動リスクに見合っているかどうか。こうした視点で冷静に比較検討を行うことが、長期的に安定した債券運用につながる第一歩となります。
デュレーション
デュレーションは、債券価格が金利変動にどれほど敏感かを示す指標で、同時に投資資金を回収するまでの平均期間を意味します。 一般に「Macaulay デュレーション」を年数で表し、金利変化率に対する価格変化率を示す「修正デュレーション」は Macaulay デュレーションを金利で割って算出します。 数値が大きいほど金利 1 %の変動による価格変動幅が大きく(例:修正デュレーション 5 年の債券は金利が 1 %上昇すると約 5 %値下がり)、金利リスクが高いと判断できます。一方で金利が低下すれば同じ倍率で価格は上昇します。デュレーションを把握しておくことで、ポートフォリオ全体の金利感応度を調整したり、将来のキャッシュフローと金利見通しに応じて保有債券の残存期間やクーポン構成を選択したりする判断材料になります。特に金利の変動が読みにくい局面や長期安定運用を重視する場面では、利回りだけでなくデュレーションを併せて確認することが重要です。
トータルリターン
トータルリターンとは、株式や債券、投資信託などの資産から得られる利益を、値上がり益(キャピタルゲイン)と分配金・利息・配当金などのインカムゲインを合わせて総合的に捉えた指標です。配当や利息をその都度再投資すると仮定して計算するのが一般的であり、単に価格変動だけを追う「価格リターン」と比べ、投資の実質的な運用成果をより正確に示します。このため、長期投資のパフォーマンス評価や異なる資産クラスの比較を行う際には、トータルリターンで見ることが重要です。