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遺贈とは?遺贈寄付や包括遺贈の仕組みを

遺贈とは?遺贈寄付や包括遺贈の仕組みや相続との違いを解説

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執筆者:

公開:

2025.09.10

更新:

2025.09.10

相続

自分の財産を誰にどのように残すかを決める「遺贈」は、相続や生前贈与と似ているようで手続きや税制に大きな違いがあります。

例えば不動産登記の登録免許税は相続(相続人に対する遺贈を含む)で0.4%、相続人以外への遺贈(特定・包括)で2.0%と負担が変わり、包括遺贈の放棄には原則3か月以内という期限も存在します。見落としやすいこれらのポイントを押さえてこそ、安心した財産承継につながります。

本記事では遺贈の基本から、相続や死因贈与との違い、特定遺贈と包括遺贈の特徴、遺贈寄付や税金の扱いまでをわかりやすく解説します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むと、遺贈の仕組みを相続や死因贈与と比較しながら体系的に理解でき、自分の意思に沿った財産承継の形を選べるようになります。

特定遺贈と包括遺贈の違いや活用場面、遺贈寄付の意義、相続税の基礎控除「3000万円+600万円×法定相続人」、相続税の申告・納付期限は、被相続人の死亡の翌日から起算して10か月以内です(延長には要件・手続きが必要)、といった重要な数値を踏まえて、実務での注意点を整理できます。税負担や期限を正しく知ることで、安心して承継計画を立てる一歩を踏み出せます。

目次

遺贈とは?基本の仕組みや関係者(受遺者・遺贈者)

登場人物は2者|財産を遺す「遺贈者・遺言者」と受け取る「受遺者」

遺贈を有効にするには「法律に沿った遺言書」が必須条件

遺贈・相続・贈与・死因贈与の違いとは?特徴を比較

遺贈と相続の最大の違いは「渡す相手を自由に選べるか」

遺贈と死因贈与の違いは「契約(合意)の有無」

遺贈と生前贈与の違いは「効力発生のタイミング」と「税金の種類」

包括遺贈と特定遺贈、どちらを選ぶべきか?それぞれの特徴を説明

特定遺贈:「この財産だけ」をピンポイントで引き継ぐ方法

包括遺贈:プラスもマイナスも財産全体を割合で引き継ぐ方法

選び方:特定遺贈と包括遺贈、どちらが適しているか?

遺贈寄付とは?社会貢献をしながら税制優遇も受ける方法

遺贈寄付の仕組み|誰に、いくらからできる?

遺贈寄付の3つのメリット|社会貢献と節税を両立

遺贈寄付の進め方|5つのステップで解説

遺贈にかかる税金と費用はいくら?相続税から登記費用まで解説

遺贈でかかる税金は「相続税」が基本(贈与税ではない)

不動産の遺贈でかかる費用|登録免許税と不動産取得税

遺贈のトラブルを防ぐ「遺留分」対策:揉めないための3つのポイント

遺留分とは?:法定相続人に保証された最低限の取り分

遺留分侵害が起きやすいケース

事前対策でトラブル予防|付言事項・生命保険・代償金の活用

遺贈の手続きと流れ|遺言者・受遺者のやることリスト

遺言者側:生前に行うべき5つの準備ステップ

受遺者側:遺贈の連絡を受けたらやるべきこと

よくある遺贈のトラブル事例と、それを防ぐための対策

事例1:家族以外への遺贈が感情的な火種に

事例2:遺言書の不備で想いが実現できない

事例3:遺留分を無視してしまい裁判沙汰に

事例4:遺言執行者の選任ミスで計画が頓挫

遺贈とは?基本の仕組みや関係者(受遺者・遺贈者)

遺贈とは、遺言によって特定の人や団体に財産を無償で譲る制度です。読み方は「いぞう」。

この章では、誰が関わるのか(遺贈者・受遺者)、どのような場合に有効となるのか(遺言書の要件)など、遺贈を理解するための最も基本的な知識をわかりやすく解説します。

登場人物は2者|財産を遺す「遺贈者・遺言者」と受け取る「受遺者」

遺贈では、財産を遺す人を「遺贈者」、財産を受け取る人を「受遺者(じゅいしゃ)」と呼びます。受遺者は友人などの個人に限らず、NPOや学校法人といった団体を指定することも可能です。たとえば「お世話になった友人に自宅を遺贈する」「応援したい団体に100万円を寄付する」といった内容を、遺言書に明記して実行する仕組みです

遺贈を有効にするには「法律に沿った遺言書」が必須条件

遺贈を実現するには「法律に沿った遺言書」が欠かせません。 遺贈は遺言によってのみ効力を持ちます。口頭での約束やエンディングノートへの記載では法的効力がなく、民法で定められた方式に従った遺言書が必須です。遺言とは、自身の死後に備えて残す法的な意思表示であり、確実に遺贈を実行するには、公証役場で作成する公正証書遺言などが推奨されます。

遺言書には「誰に、どの財産を遺贈するのか」を明確に記します。なお、法定相続人(配偶者や子など)に財産を渡す場合には「相続させる」と記載するのが一般的です。例えば「長男に自宅を相続させる」と書けば長男が単独で手続きできます。

「遺贈する」と記した場合、相続人以外への遺贈による所有権移転登記は共同申請が必要です。遺言執行者がいる場合は『受遺者+遺言執行者』、いない場合は『受遺者+相続人全員』で申請します。なお、相続人への遺贈(2023年4月1日以降)は受遺者(相続人)単独で申請できます。

このように、手続き上の違いがあります。「遺贈」と「相続」は厳密には異なりますが、まずは「遺贈=遺言による財産の譲渡」と理解すれば十分です。

また近年では、NPO法人や自治体などに財産を託す「遺贈寄付」も増加しています。これは社会貢献を目的とした遺贈の一形態で、生前の寄付とは異なり、亡き後に自分の想いを未来へ託す方法として注目されています。

エンディングノートと法的に有効な遺言については以下の記事で詳しく解説しています。

遺贈・相続・贈与・死因贈与の違いとは?特徴を比較

財産を誰かに譲る方法は、亡くなった後か生前か、またその方法によって様々です。「遺贈」の他に「相続」「死因贈与」「生前贈与」があり、それぞれ仕組みや手続き、税金が異なります。この章では、これらの制度の違いを比較し、それぞれの特徴をわかりやすく解説します。

遺贈と相続の最大の違いは「渡す相手を自由に選べるか」

相続では、財産は法律で定められた親族(法定相続人)が引き継ぎます。遺言がなければ、プラスの財産も借金などのマイナスの財産も、すべて法定相続人が受け継ぐのが原則です。

一方、遺贈は遺言によって財産を渡す制度です。最大の特徴は、法定相続人以外の友人や知人、お世話になった団体など、血縁関係にかかわらず誰にでも財産を遺せる点にあります。相続が法律に基づく承継であるのに対し、遺贈は個人の意思を反映できる自由な財産承継の方法といえます。

遺贈と死因贈与の違いは「契約(合意)の有無」

死因贈与とは、贈与者(財産をあげる人)の死亡によって効力が生じる「契約」です。亡くなった時に財産が渡る点は遺贈と似ていますが、決定的な違いは生前の「合意」があるかどうかです。遺贈は遺言者の一方的な意思表示で成立しますが、死因贈与は贈与者と受贈者(もらう人)双方の合意がなければ成立しません。

この違いから、遺贈には受遺者が一方的に放棄する権利が認められていますが、死因贈与は契約のため原則として放棄できません。税金はどちらも相続税の対象ですが、不動産取得税の扱いで死因贈与が不利になる場合があるなど、実務上の違いもあります。

遺贈と生前贈与の違いは「効力発生のタイミング」と「税金の種類」

生前贈与は、生きている間に財産を無償で譲る「契約」です。一方、遺贈は亡くなった後に効力が生じます。これに伴い、かかる税金も異なります。遺贈は亡くなったことによる財産移転のため「相続税」の対象ですが、生前贈与は「贈与税」の対象です。「贈」の字から混同されやすいですが、明確な違いがあるので注意しましょう。

どちらを選ぶかは目的によります。生前に財産を渡して将来の相続税を抑えたい場合は生前贈与、自身の生活資金を確保しつつ亡くなった後に財産を渡したい場合は遺贈が適しています。それぞれのメリットを理解し、専門家と相談しながら計画的に使い分けることが大切です。

包括遺贈と特定遺贈、どちらを選ぶべきか?それぞれの特徴を説明

遺贈には、主に「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。包括遺贈は財産全体を割合で譲る方法、特定遺贈は特定の財産を指定して譲る方法です。

どちらを選ぶかによって、受遺者(財産を受け取る人)の権利や負担、手続きが大きく変わるため、その違いを正しく理解することが重要です。

特定遺贈:「この財産だけ」をピンポイントで引き継ぐ方法

特定遺贈とは、どの財産を誰に譲るかを具体的に指定する方法です。遺言書には「A銀行の預金100万円をBに遺贈する」「自宅の土地建物をCに遺贈する」のように記載します。

指定した財産だけが譲渡の対象となるため、遺言書に記載のない借金などのマイナスの財産を、受遺者が引き継ぐことはありません。遺産の一部だけを特定の人に渡したい場合に適した、一般的な方法です。

包括遺贈:プラスもマイナスも財産全体を割合で引き継ぐ方法

包括遺贈とは、特定の財産を指定せず「全財産の3分の1をXに遺贈する」のように、遺産全体に対する割合で譲る方法です。

この方法で財産を受け取る受遺者は、法律上、相続人とほぼ同じ立場になります。そのため、預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金や連帯保証といったマイナスの財産も指定された割合に応じて引き継ぐことになるため、注意が必要です。

選び方:特定遺贈と包括遺贈、どちらが適しているか?

どちらの方法を選ぶべきか、それぞれの特徴から判断基準を解説します。

両者の違いを表で確認してみましょう。

区分特定遺贈包括遺贈
指定内容特定の財産項目を個別に指定遺産全体に対する割合のみ指定
承継範囲指定した財産のみ承継(負債は原則承継しない)遺産のプラス・マイナス全てを割合で承継
遺贈放棄期限なく、いつでも可能3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要
遺産分割協議参加しない参加する(相続人と同等の地位)
不動産取得税(相続人以外が取得する場合)課税対象非課税
登録免許税(相続人以外が取得する場合)固定資産評価額の2.0%固定資産評価額の2.0%

このように、特定遺贈と包括遺贈では受遺者の負担や手続きが大きく異なります。遺言を作成する際は、財産を譲り受ける方の状況を十分に考慮し、ご自身の希望に最も合った方法を専門家と相談しながら選ぶことが大切です。

特定遺贈が適しているケース

受遺者が遺産分割協議に参加する必要がなく、手続きの負担が比較的軽いため、「受遺者に迷惑をかけたくない」「特定の財産だけを贈りたい」という場合に適しています。多くの遺贈寄付もこの形式が採られます。

包括遺贈が適しているケース

遺産全体を網羅するため、「遺言書に書き漏らした財産も含めて、すべてを確実に譲りたい」という場合に有効です。法定相続人がいない場合や、相続人以外の人に遺産の大部分を譲りたい場合にも利用されます。ただし、受遺者は他の相続人と遺産分割協議に参加する必要があり、手続きが複雑になる点に注意が必要です。

遺贈寄付とは?社会貢献をしながら税制優遇も受ける方法

近年、自身の財産を社会貢献のために遺贈する「遺贈寄付(いぞうきふ)」を選ぶ方が増えています。これは、遺言書によって公益法人やNPO、大学、自治体などへ財産を寄付する仕組みです。自ら築いた財産を自身の亡き後に社会へ役立てる、新しい貢献のかたちとして注目されています。

遺贈寄付の仕組み|誰に、いくらからできる?

遺贈寄付は、財産を受け取る相手(受遺者)が公共性の高い団体である点が特徴です。遺言書に「A医療支援団体に全財産の10%を寄付する」のように記載することで意思を示します。

寄付先は、公益法人、社会福祉法人、認定NPO法人、大学、自治体など多岐にわたります。多くの団体が相談窓口を設けており、寄付金の使い道や受け入れ可能な財産の種類について事前に相談が可能です。遺贈寄付は遺産の総額にかかわらず、一部の財産からでも始められます。「未来に夢を託したい」「社会へ恩返しがしたい」という想いを、誰もが形にできる制度です。

遺贈寄付の3つのメリット|社会貢献と節税を両立

遺贈寄付には、単なる社会貢献にとどまらない、主に3つのメリットがあります。

メリット1: 財産の使い道を自由に決められる

法定相続では財産を渡せる相手が法律で定められていますが、遺贈寄付なら、ご自身が支援したいと強く願う団体や目的に、直接財産を役立てることができます。

メリット2:生前の生活に影響がない

生前の寄付とは異なり、財産が移転するのは自身の亡き後です。そのため、将来の生活資金に不安を感じることなく、最後まで安心して財産を保有し続けられます。

メリット3:相続税の負担を軽減できる

相続や遺贈で取得した財産を申告期限までに「国・地方公共団体・公益社団(財団)法人等・認定NPO法人」へ寄附した場合、その寄附財産は相続税の課税価格に算入しません。一般NPOは対象外のため、認定の有無を必ず確認しましょう。

遺贈寄付の進め方|5つのステップで解説

遺贈寄付を実現するには、法律に沿った有効な遺言書を作成することが不可欠です。ここでは、実際に寄付を考え始めてから、その想いが実現されるまでの流れを5つの具体的なステップに分けて解説します。各段階でのポイントを押さえ、スムーズな手続きを目指しましょう。

Step 1:寄付内容の検討と相談

まず、どの財産を、どの団体へ寄付したいか具体的に検討します。寄付先の団体が決まったら、寄付金の使い道や受け入れ態勢について事前に相談しておくと安心です。弁護士や信託銀行などの専門家に相談するのも良い方法です。

Step 2:遺言書の作成

公正証書遺言など、法的に有効な方式で遺言書を作成し、寄付の内容を明記します。その際、遺言の内容を確実に実現する責任者「遺言執行者」を指定することが重要です。信頼できる専門家などに依頼すると手続きが円滑に進みます。

Step 3:遺言書の保管

作成した遺言書は、確実に発見されるよう安全に保管します。公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。自筆証書遺言の場合は、法務局の遺言書保管制度を利用するなどの対策が有効です。

Step 4:逝去と遺言の執行

遺言者が亡くなると、遺言執行者が手続きを開始します。遺言執行者は寄付先の団体へ連絡し、遺産目録の作成や名義変更など、遺言の内容を実現するための事務手続きを進めます。

Step 5:財産の引き渡しと寄付の実現

最終的に、遺言書の指示に従って財産が団体へ引き渡され、寄付が実現します。団体から発行される受領書は、相続人が相続税の非課税手続きを行う際に必要となります。

なお、不動産など現金以外の財産を寄付する場合、団体によっては換金してからの受け取りを希望されることもあります。また、トラブルを避けるため、ご自身の想いを事前に家族へ伝えておくことも大切です。

遺贈にかかる税金と費用はいくら?相続税から登記費用まで解説

遺贈によって財産を受け取る際には、通常の相続と同じように税金や名義変更の費用が発生します。特に相続人以外の方が財産を受け取る場合は、税負担が重くなることもあるため注意が必要です。ここでは、遺贈に伴う主な税金と費用の種類について整理して解説します。

遺贈でかかる税金は「相続税」が基本(贈与税ではない)

遺贈によって財産を受け取った個人にかかる税金は、原則として「相続税」です。「贈」の字から贈与税と混同されがちですが、相続税の対象となる点をまず押さえましょう。計算方法や基礎控除額(3,000万円+法定相続人×600万円)は通常の相続と同じで、友人など法定相続人以外が受け取った場合も同様です。

ただし、例外もあります。

一つは、公益法人や自治体などの法人が遺贈を受けた場合で、この場合は原則として相続税はかかりません。もう一つは「みなし譲渡所得税」です。これは主に、価値が変動する不動産や株式などを法人へ遺贈する際に発生しうる税金で、遺贈した財産の取得時からの値上がり益に対して課税されるものです。専門的な判断が必要になるため、該当する場合は税理士などの専門家へ相談しましょう。

不動産の遺贈でかかる費用|登録免許税と不動産取得税

遺贈で特に注意が必要なのが、不動産の名義変更にかかる費用です。主なものに「不動産取得税」と「登録免許税」があります。誰が、どのような方法で不動産を取得するかによって、課税されたり税率が大きく変わったりするため、その仕組みを正しく理解しておきましょう。

不動産取得税は「相続人以外の第三者への特定遺贈」で課税される

不動産取得税は、土地や建物を取得した際に課される地方税です。相続の場合は非課税ですが、遺贈では条件によって課税されることがあります。課税の有無は以下の通りです。

取得方法相続人が取得相続人以外が取得
相続非課税(該当なし)
包括遺贈非課税非課税
特定遺贈非課税課税される
死因贈与課税される課税される

上表の通り、不動産取得税は基本的に「法定相続人以外の第三者が、特定遺贈によって不動産を取得した場合」にのみ課税されます。税率は原則4%(住宅・土地は3%の特例あり:令和9年3月31日まで)です。包括遺贈の場合は相続と同様とみなされ、取得者が誰であっても非課税となります。

住宅・土地の不動産取得税3%特例は時限措置(現行は2027年3月31日まで)です。制度は見直し・延長される場合があるため、適用可否は取得時点で最新の自治体情報を確認してください。

登録免許税は相続人以外だと税率が5倍になる

登録免許税は、不動産の所有権移転登記(名義変更)の際に課される国税です。この税率は、不動産を取得する人が相続人か否かで大きく異なります。

  • 相続(相続人に対する遺贈を含む):0.4%
  • 相続人以外への遺贈(特定・包括):2.0%

なお、相続人に対する遺贈は登録免許税上は相続として扱われます。

例えば、評価額1億円の土地の場合、相続人である長男が取得すれば登録免許税は40万円ですが、相続人ではない友人が取得すると200万円となり、5倍もの差が出ます。この税率の違いは、遺贈を計画する上で非常に重要なポイントです。

税金以外にも必要な諸費用(専門家への報酬など)

上記の税金以外にも、遺贈の手続きには様々な費用がかかります。

  • 専門家への報酬:遺言執行者を弁護士などに依頼した場合の報酬や、登記を司法書士に依頼した場合の手数料など。
  • 手続き実費:公正証書遺言を作成する際の公証役場の手数料や、必要書類の取得費用など。

特に相続人以外への遺贈では、受遺者の税負担や費用が重くなる可能性があります。遺言を作成する際は、相手に過度な負担がかからないよう配慮することが大切です。

遺贈のトラブルを防ぐ「遺留分」対策:揉めないための3つのポイント

遺贈は自由な財産承継の方法ですが、残される家族への配慮も欠かせません。特に「遺留分(いりゅうぶん)」は、一部の法定相続人に保証された最低限の財産の取り分です。これを無視した遺言は、深刻なトラブルの引き金になりかねません。この章では、遺留分の基本からトラブル防止策まで解説します。

遺留分については以下記事でも詳しく解説しています。

遺留分とは?:法定相続人に保証された最低限の取り分

遺留分とは、配偶者、子、親など一部の法定相続人に法律で保障された、最低限の財産の取り分のことです。兄弟姉妹にこの権利はありません。

たとえ遺言で「全財産をAさんに遺贈する」と指定しても、遺留分を持つ相続人は、財産を受け取ったAさんに対して、自身の取り分に相当する金銭を請求できます。これを「遺留分侵害額請求」といいます。

遺留分として請求できる金額の合計は、相続人の構成によって以下のように定められています。

  • 配偶者や子がいる場合:遺産全体の2分の1
  • 親のみが相続人の場合:遺産全体の3分の1

遺留分を無視した遺言も直ちに無効になるわけではありませんが、相続人が権利を主張すれば、財産を受け取った側は金銭の支払いに応じる義務が生じます。これが相続トラブルの大きな原因となり得るのです。

遺留分侵害が起きやすいケース

例えば、「長年お世話になったヘルパーに、自宅不動産の一部を遺贈する」という遺言があったとします。遺族である子どもたちがその内容に納得できず、不動産という分けにくい財産であったことも相まって、「遺留分を侵害している」と主張し、争いに発展する可能性があります。

事前対策でトラブル予防|付言事項・生命保険・代償金の活用

遺言を作成する際は、遺留分を侵害しないよう配慮することがトラブル防止の鍵です。大切なのは、遺留分への配慮が、残される家族への配慮にも繋がるという視点です。円満な遺贈を実現するため、専門家と相談しながら最良の方法を検討しましょう。

具体的には、以下のような対策が有効です。

1.遺留分相当額を相続させる

まずは、遺留分を持つ相続人には、その取り分以上の財産を遺すように遺言の内容を設計するのが基本です。

2.理由と想いを付言事項に記す

どうしても遺留分を侵害する内容になる場合は、遺言書の「付言事項」というメッセージ欄に、なぜその遺贈をしたいのか、受遺者への感謝の気持ちなどを具体的に書き記しましょう。法的な効力はありませんが、遺族の感情に配慮することで、争いを避けられる可能性があります。

3.別の方法で財産を準備する

生前に意思を伝えておくだけでなく、生命保険の受取人に指定するなど、遺言とは別の形で相続人に財産が渡るように手配しておくのも一つの方法です。

遺贈の手続きと流れ|遺言者・受遺者のやることリスト

遺贈を円滑に実現するためには、財産を遺す「遺言者」と、受け取る「受遺者」の双方が、それぞれの立場で必要な手続きを理解しておくことが大切です。ここでは、遺贈に関する一般的な手続きの流れを、それぞれの立場に分けて解説します。

遺言者側:生前に行うべき5つの準備ステップ

遺言者の主な役割は、ご自身の想いを法的に有効な形で遺言書に遺すことです。財産の洗い出しから専門家との相談、そして遺言書の作成・保管まで、生前に行うべき準備は多岐にわたります。ここでは、その手続きを5つのステップに分けて具体的に解説します。

遺言の基本方式については以下Q&Aでも説明しています。

Step 1:財産と相続人を正確に把握する

まず、ご自身の全財産をリストアップした「財産目録」を作成し、どの財産を誰に遺贈したいかを考えます。同時に、誰が法定相続人にあたるかを確認しましょう。相続人が多い場合など、遺贈の内容が相続人の遺留分を侵害する可能性がある場合は、トラブルを避けるためにも専門家への相談をお勧めします。

Step 2:専門家への相談と方針決定

遺贈を法的に間違いなく実現するには、専門知識が不可欠です。弁護士や信託銀行などの専門家に相談し、税務や手続きに関する助言を受けましょう。特に遺贈寄付や相続人以外への遺贈を計画している場合は、「誰に何を遺贈するか」「遺言執行者を誰に依頼するか」といった基本方針を専門家と共に固めていきます。

Step 3:法的に有効な遺言書を作成する

一般的には、公証人が関与し無効になるリスクが低い「公正証書遺言」が安全です。遺言書には遺贈の内容を明確に記載し、必要に応じて理由や想いを伝えるメッセージ(付言)も添えましょう。円滑な手続きの鍵となる「遺言執行者」の指定も忘れてはいけません。

公正証書遺言が有効なケースは以下Q&Aでも説明しています。

Step 4:遺言書を安全に保管し、情報を共有する

作成した遺言書は適切に保管します。公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため安心ですが、遺言書の存在自体が誰にも知られなければ意味がありません。遺言執行者や信頼できる親族には、遺言書を遺したことと、ご自身の死後すぐに連絡がつく方法を伝えておきましょう。

Step 5:逝去と遺言の執行

遺言者が亡くなると、指定された遺言執行者が遺言の実現に向けて動き出します。遺言執行者は、相続人や受遺者へ遺言内容を通知し、財産目録を作成した上で、不動産の登記申請や預貯金の払い戻しなど、財産の引き渡し手続きを進めます。

受遺者側:遺贈の連絡を受けたらやるべきこと

ある日突然、遺言執行者から「あなたが受遺者です」という連絡が来たら、どうすればよいのでしょうか。遺贈を受け取るかどうかの判断から、名義変更、税金の申告まで、受遺者として対応すべき手続きは様々です。ここでは、その流れを順を追って解説します。

Step 1:遺言内容を確認する

まず、遺言執行者や相続人から連絡を受けたら、遺言書の写しを入手し、ご自身がどの財産を受け取ることになっているのかを正確に確認します。

Step 2:遺贈を受け取るか、放棄するか判断する

次に、その遺贈を受け取る(承認する)か、受け取らない(放棄する)かを決めます。負債が多い、管理が難しい不動産である、高額な税金がかかるなどの理由で、放棄を選択することも可能です。

遺贈放棄の手続きは、遺贈の種類によって異なります。

特定遺贈の放棄の場合、期限はなく、いつでも可能です。遺言執行者や相続人に対して、放棄する意思を伝えれば手続きは完了です。ただし、相続人や遺言執行者から放棄・承認の催告を受けた場合、指定期間内に放棄の意思表示がなければ承認したものとみなされます。証拠化のため内容証明での通知が安全です。

包括遺贈の放棄の場合遺贈があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所で「遺贈放棄の申述」を行う必要があります。相続放棄と同様の厳格な手続きが求められ、この期間を過ぎると放棄できなくなるため注意が必要です。

相続放棄の手続きについては以下記事で詳しく解説しています。

Step 3:名義変更や財産の引き渡し手続きを進める

遺贈を受け取ることを決めたら、財産の名義変更や引き渡し手続きに進みます。通常は遺言執行者が主導しますが、受遺者自身も住民票や印鑑証明書の提出など、様々な場面で協力が必要です。

また、遺産総額が基礎控除を超える場合は、相続税の申告と納税を被相続人の死亡の翌日から起算して10か月以内に行わなければなりません。

Step 4:財産を受け取り、適切に管理する

すべての手続きが完了すれば、財産は正式にご自身のものとなります。ただし、遺言に「負担付遺贈」として何らかの義務(例:ペットの世話をすること)が課せられている場合は、その義務を誠実に履行する必要があります。

よくある遺贈のトラブル事例と、それを防ぐための対策

遺贈は、ご自身の想いを実現できる有意義な制度ですが、時に相続人間の争いの火種になることもあります。ここでは、遺贈をめぐって起こりがちな4つの代表的なトラブル事例と、それを未然に防ぐための具体的な対策を紹介します。

事例1:家族以外への遺贈が感情的な火種に

被相続人が生前お世話になったヘルパーに「全財産の10分の1を遺贈する」と遺言したところ、残された遺族が不満を抱き、トラブルに発展するケースがあります。遺産の多くが分割しにくい不動産だったこともあり、遺族は感情的に納得できず、遺留分侵害額請求も視野に入れてヘルパー側と対立する事態となりました。

こうしたトラブルの背景には、家族以外の第三者への遺贈が、残された家族に「なぜ知らない人へ財産を渡すのか」という心理的なわだかまりを生みがちな点があります。特に財産が分けにくいものだと、不満がさらに大きくなる傾向があります。

これを防ぐには、遺言書に遺贈する理由や感謝の気持ちを具体的に書き記す(付言する)ことが有効です。また、不動産のように分けにくいものではなく「現金〇万円」と指定したり、生前に家族へその意思を伝えておいたりすることも、円満な解決に繋がります。

事例2:遺言書の不備で想いが実現できない

被相続人が自筆の遺言書を遺したものの、日付の記載がなかったために法的に無効と判断され、遺贈が実現できないことがあります。また別のケースでは、遺言書に一部の財産しか記載されておらず、書かれていない財産の分け方をめぐって相続人が対立しました。

手軽に作成できる自筆証書遺言は、日付や署名・押印といった法律上の形式を一つでも欠くと無効になってしまいます。また、財産の一部しか記載がないと、残りの財産の扱いで争いが生じる原因となります。

最も確実な対策は、公証人が関与して形式不備のリスクがない「公正証書遺言」を作成することです。また、すべての財産を記載した「財産目録」を添付し、記載漏れを防ぐことも重要です。正確で網羅的な遺言書が、トラブル予防の基本です。

事例3:遺留分を無視してしまい裁判沙汰に

被相続人が、配偶者と子に一切財産を遺さず「全財産を愛人に遺贈する」という遺言を遺した結果、納得できない遺族が「遺留分侵害額請求」を行い、最終的に裁判で争うことになったケースがあります。

遺留分は、一部の相続人に法律で保障された最低限の取り分です。これを無視した極端な内容の遺贈は、ほぼ確実に相続人からの権利主張を招き、深刻な争い(争族)に発展します。

こうした事態を避けるには、遺留分を持つ家族がいる場合は、最低限その権利に配慮した遺言内容にすることが不可欠です。どうしても特定の相手に多くの財産を遺したい場合は、生命保険を活用して相続人に別途資金を遺すなど、代替案を検討しましょう。「裁判になっても構わない」と考えるのではなく、初めから争いを回避する設計が肝心です。

事例4:遺言執行者の選任ミスで計画が頓挫

遺言執行者に指定された親族が手続きを怠り、遺贈先への財産の引き渡しが大幅に遅れることがあります。また、遺言執行者が遺産の一部を私的に流用し、受遺者が受け取るはずの財産が減ってしまうという問題も起きています。

遺言執行者には、財産管理や法的な手続きを正確に行う重い責任が伴います。知識が不足していたり、不誠実な人物を選んでしまったりすると、遺言の内容が正しく実現されないリスクがあります。

これを防ぐ最も重要な対策は、信頼できる人物を選ぶことです。複雑な手続きが予想される場合は、弁護士や司法書士、信託銀行といった専門家を遺言執行者に指定すると安心です。適切な報酬を遺言書で定めておくことも、誠実な職務遂行を促す一助となります。

この記事のまとめ

遺贈は相続に比べて自由度が高い一方、税率や期限などを誤ると負担やトラブルにつながりかねません。財産の全体像と相続人の権利を正しく把握し、遺留分への配慮や放棄期限3か月などの実務上の要件を押さえることが安心への第一歩です。さらに不動産登記の登録免許税0.4%と2.0%の違いのように数値で確認し、納得感のある承継設計を行うことが重要です。不安が残る場合は専門家に早めに相談し、最適な方法を選択できる体制を整えましょう。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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関連する専門用語

遺贈

遺贈とは、遺言書によって自分の財産を相続人や第三者に無償で譲ることを指します。生前の贈与とは異なり、遺贈は本人が亡くなったときに初めて効力が生じるのが特徴です。たとえば、「私の預金を○○さんに渡す」といった内容を遺言書に書いておけば、その人が相続人であってもなくても、遺贈として財産を受け取ることができます。 遺贈は、特定の財産を指定して渡す「特定遺贈」と、財産の一定割合を指定して渡す「包括遺贈」に分けられます。また、相続人以外の人や団体(たとえば知人や慈善団体など)にも遺贈することが可能なため、本人の意思を柔軟に反映できる方法として活用されています。資産運用や相続の場面では、誰にどの財産をどのように渡すかを明確にする手段として、遺贈はとても大切な制度です。

遺言

遺言とは、自分が亡くなったあとに財産をどのように分けるかや、誰に何を遺すかなど、自分の最終的な意思を文書として残すものです。遺言を書くことで、遺産の分け方を自分の意志で決めることができ、相続人同士の争いを未然に防ぐことにもつながります。 遺言には、自筆で全文を書く「自筆証書遺言」、公証人が関与して作成される「公正証書遺言」、特別な状況で認められる「秘密証書遺言」などいくつかの形式があり、それぞれ法的なルールに従って作成する必要があります。法的に有効な遺言があれば、その内容は相続において優先されます。資産運用や相続計画において、遺言は自分の思いを形にし、家族に円滑に財産を引き継がせるためのとても大切な手段です。

相続

相続とは、人が亡くなった際に、その人が所有していた財産や権利、さらには借金などの義務を、配偶者や子どもなどの相続人が引き継ぐことを指します。相続の対象となるのは、不動産、預貯金、有価証券などの資産に加え、住宅ローンや借入金などの負債も含まれるため、慎重な対応が求められます。 相続が発生すると、まずは誰がどの財産をどの程度受け取るかを決める「遺産分割」の手続きが必要になります。この分配は、民法で定められた割合に基づく「法定相続」によって進めることもあれば、亡くなった方が遺言書を残していた場合は、その内容に従って行われることもあります。 資産運用の観点では、相続によって得た財産をいかに管理し、長期的に活かしていくかが重要なテーマとなります。たとえば、相続した不動産を売却して資産を分散投資に振り向けるケースや、相続した株式をそのまま長期保有する戦略など、相続後の運用方針によって将来の資産価値が大きく変わる可能性もあります。 また、相続には相続税の申告・納付期限や、不動産の名義変更、金融機関での手続きなど、時間的制約と法的手続きが伴うため、早めの準備と専門家のサポートが不可欠です。資産を次世代へスムーズに引き継ぎ、無駄なコストやトラブルを避けるためにも、生前からの対策と継続的な資産設計が求められます。

死因贈与契約

死因贈与契約とは、「自分が亡くなったときに、ある財産を特定の人に贈与する」という約束を生前に結ぶ契約のことです。遺言と似ていますが、死因贈与は契約であるため、贈与する側と受け取る側の双方の合意が必要です。この契約が成立すると、贈与者が亡くなった時点で契約が効力を発し、指定された人が財産を受け取れるようになります。生前に意志を確実に伝えておく方法の一つであり、特定の人に感謝の気持ちを込めて財産を渡したいと考える方に向いています。ただし、相続税の対象となるため、税務上の確認や、後々のトラブルを防ぐための契約書の作成が重要になります。

生前贈与

生前贈与とは、本人が亡くなる前に、自分の財産を家族や親族などに贈り与えることを指します。たとえば、子どもや孫に現金や不動産などを自分の意思で生きているうちに渡す行為がこれにあたります。生前贈与を活用することで、相続時に財産が一度に多額に移転するのを防ぎ、相続税の負担を軽減する効果が期待できます。ただし、贈与にも贈与税がかかるため、贈与額やタイミング、誰に贈るかによって課税額が大きく変わることがあります。また、一定の条件を満たせば非課税になる特例制度もあるため、計画的に行うことが重要です。資産運用や相続対策として、生前贈与は家族に財産を無理なく引き継がせるための有効な手段のひとつです。

受遺者

受遺者とは、遺言書によって財産を受け取ることが指定された人のことを指します。つまり、亡くなった方(遺言者)が生前に書いた遺言書の中で、「この人に財産を渡します」と明記された受取人です。受遺者は相続人である場合もあれば、相続人以外の第三者であることもあります。たとえば、「長男に不動産を渡す」「お世話になった知人に預金の一部を贈る」などと記載されていれば、その対象となる人が受遺者です。遺言による財産の受け取りは、法律で定められた相続とは別の仕組みで行われるため、遺言書の内容に従って確実に権利を得ることができます。資産を特定の人に託したいという希望を実現するために、遺言と受遺者の制度は非常に重要な役割を果たします。

遺贈者

遺贈者とは、自分が亡くなったときに、遺言書によって財産を他の人に譲ると決めた人のことを指します。生きているうちに、「この人に自分の財産を渡したい」と考え、それを遺言という形で正式に残すことで、亡くなった後にその意志が実現されます。 遺贈は贈与の一種ですが、生前ではなく死亡後に効力が生じる点が特徴です。遺贈者は、譲る相手が家族であっても他人であってもかまいませんし、個人ではなく団体や法人に対しても遺贈することができます。資産運用の観点からは、自分の財産をどう使うか、亡くなった後まで考えて設計することが、遺贈者になるという行為の本質です。

包括遺贈

包括遺贈とは、遺贈の方法の一つで、遺言書によって「財産の全部」や「財産の一定割合」を指定して譲ることを意味します。たとえば「私の財産のすべてを○○に遺贈する」や「私の財産の3分の1を○○に遺贈する」といった形がこれにあたります。 このような遺贈を受けた人は、相続人と似た立場となり、財産だけでなく債務(借金など)も引き継ぐことになります。そのため、包括遺贈を受ける人は、遺産全体に対する責任を持つことになります。資産運用や相続対策を考える際には、包括遺贈が持つメリットとリスクの両面を理解しておくことが大切です。

特定遺贈

特定遺贈とは、遺言書において「特定の財産」を指定して誰かに譲ることをいいます。たとえば「自宅の土地建物を長男に遺贈する」や「保有しているA社の株式を友人に遺贈する」といったように、明確に財産の種類や内容が決められている遺贈方法です。 この場合、遺贈を受ける人は、指定された財産のみを受け取ることになり、他の遺産や借金などの負債を引き継ぐ必要はありません。そのため、包括遺贈と比べて責任の範囲が限定されているという特徴があります。資産運用や相続設計の場面では、特定の財産を誰に引き継がせたいかという意志を明確に反映できる手段として活用されます。

遺贈寄付

遺贈寄付とは、自分が亡くなったあとに、遺言書によって財産の一部または全部を公益法人やNPO、大学、病院などの団体へ寄付することをいいます。これは、相続人や家族以外の「社会貢献」を目的とした遺贈の一つで、遺言書に具体的な寄付先や金額、財産の内容を記載することで実現されます。 遺贈寄付は、税制面での優遇措置がある場合も多く、相続税の節税効果を期待できることもあります。また、生前に支援したい分野を明確にしておくことで、自分の意思を社会に残す方法としても注目されています。資産運用や終活の一環として、遺贈寄付を検討する人が増えているのも近年の傾向です。

遺留分

遺留分とは、被相続人が遺言などによって自由に処分できる財産のうち、一定の相続人に保障される最低限の取り分を指す。日本の民法では、配偶者や子、直系尊属(親)などの法定相続人に対して遺留分が認められており、兄弟姉妹には認められていない。遺留分が侵害された場合、相続人は「遺留分侵害額請求」によって不足分の金銭的補填を請求できる。これは相続財産の公平な分配を確保し、特定の相続人が極端に不利にならないようにするための制度である。

遺言執行者

遺言執行者とは、遺言書に記された内容を実際に実行するために選任される人物で、相続財産の名義変更や不動産の登記、銀行預金の払戻し、相続人への遺産分配などを法的権限をもって行います。遺言書であらかじめ指名しておくことができ、相続開始後は家庭裁判所の選任状を受けて職務を開始します。 遺言執行者がいると、相続人全員の同意を都度取り付ける手間が省け、紛争を避けながら遺言の内容を迅速かつ確実に履行できるメリットがあります。一方、職務に必要な費用や報酬は相続財産から支払われるため、事前に相続人へ説明しておくことが望ましいです。

遺贈放棄

遺贈放棄とは、遺言によって財産を受け取ることになっていた人(受遺者)が、その財産を受け取らないと意思表示することをいいます。遺贈には、財産だけでなく債務(借金など)を含むこともあり、特に包括遺贈の場合は受け取る責任も大きくなります。 そうした背景から、受遺者が自らの判断で「その遺贈は辞退したい」と考えた場合に行うのが遺贈放棄です。相続放棄とは異なり、家庭裁判所の手続きを必要とせず、相手(遺言執行者など)に対して明確に放棄の意思を示すだけで足ります。ただし、遺贈を受けると一度承諾してしまうと、基本的には放棄できなくなるため、受け取るかどうかは慎重に判断することが大切です。

負担付遺贈

負担付遺贈とは、遺言によって財産を譲る際に、「ある義務や条件を果たすこと」を受け取る人に課す形の遺贈をいいます。たとえば「私の自宅を○○に遺贈する。ただし、私の死後は母の介護を続けること」や「財産を○○団体に遺贈するが、地域福祉のために使うこと」など、財産の受け取りと引き換えに何らかの行為を求める内容です。このような遺贈は、財産を受け取る側にとって義務が発生するため、内容によっては慎重な判断が求められます。 義務を果たさない場合は、遺言執行者や相続人から遺贈の取消しを求められることもあります。資産運用や相続設計の場面では、自分の財産を将来的に有効に使ってもらうための手段として活用されることがあります。

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